ぼっち・ざ・ろっく!短編集   作:黒糖煎餅

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ぼっちちゃんの誕生日に殴り書きした半同棲ぼ虹です。
支部から。


燻る紫煙、君の隣

虹夏ちゃんと半同棲になってから、早くも一年が過ぎた。虹夏ちゃんは大学生としての生活と結束バンドの活動、STARRYスタッフとしての生活を両立させている。大学とSTARRYの中間の距離に一人暮らしをするようになった虹夏ちゃんだったけど、夏頃に過労で一度倒れた頃に、店長さんから言われて、週末以外は虹夏ちゃんの家で過ごすようになった。今日も今日とて、虹夏ちゃんの家へと向かう私。日曜日だから本当は実家にいるつもりだったんだけど、母親の「せっかくのお誕生日だもの、彼女と一緒に過ごさなきゃ。」の一声と、父親の力強い頷きで、私は虹夏ちゃんの家へと向かうことになった。ふたりには、ちょっと悪いことをしたかも。

そんなことを考えながら歩みを進めると、虹夏ちゃんの家へと辿り着いた。店長さんが、家賃の半分を出してくれているとのことで、セキュリティのかっちりとした、良いマンション。私は、虹夏ちゃんから渡されていた合鍵を挿して、マンションへと入る。階段を二つほど登り、突き当たりまでくる。表札に伊地知と書かれている部屋なのを確認して、私は鍵を捻った。かちゃん、と、鍵の開く音が響く。

「お邪魔します。」

部屋に入ると、整った綺麗な部屋が顔を覗かせた。廊下は少し薄暗く、奥のダイニングから、光が溢れている。靴を並べて、細い廊下を歩き、ダイニングの扉を開けた。

「…寒い。」

底冷えするような寒さが、全身を震わせる。私はマフラーを巻いたまま、家主のいるであろうベランダへと足を進めた。

がらっ。網戸の開く音に、ベランダで座っていた人影が、ゆっくりこちらを向く。

「いらっしゃい。」

「お邪魔します。煙草一本もらえます?」

「良いよ。はい。私のだけど、いい?」

虹夏ちゃんはトントンと煙草のの箱を叩き、一本を摘んで私に渡す。

「あ、ありがとうございます。メンソール吸いたい気分だったので、ちょうどよかったです。」

虹夏ちゃんはつけたばかりの煙草をゆっくりと吸い、ゆるゆると空へ吐き出した。まっすぐに伸びていく紫煙が、薄い雲のように広がっていく。

「…ライター、忘れました。」

「えー。わたし、ライター無いよ?マッチも、探せばあるだろうけど…」

手元に持っていたマッチ箱が空箱なのを確認した虹夏ちゃんは、お手上げ、と言ったようなジェスチャーを取る。

「探しにいくのも面倒だなぁ…ね、ぼっちちゃん。こっち向いて?」

「はい?」

煙草を咥えたまま、虹夏ちゃんの方へと顔を向ける。目と鼻の先に虹夏ちゃんの顔があって、私の煙草に、自分の煙草の火種を押し付ける虹夏ちゃん。雲間から漏れる月明かりが、虹夏ちゃんを照らす。

「早く吸ってよ。」

「あ、はい。」

すうっ、と息を吸い込むと、ジジ、ジジジ、と私の煙草に火種が移る。ふうっ、と息を吐くと、2本の紫煙が空に向かって伸びていった。虹夏ちゃんは座り込んで、トントンと灰皿に灰を落とす。

「にしても…」

「…?」

紫煙を吐きながら虹夏ちゃんへと視線を向けると、少し感慨深そうに虹夏ちゃんは微笑んだ。

「煙草吸うのがサマになっちゃってるねぇ。」

「それは、どうも。」

私の返しに、少しムッとした表情になる虹夏ちゃん。

「褒めてはないよ。」

つん、とそっぽを向きながら、虹夏ちゃんはそう言った。

「知ってます。そもそも、私に煙草教えたの、虹夏ちゃんじゃないですか。」

私の返しに、少し目をぱちくりとさせた虹夏ちゃん。何が面白かったのかはわからないけど、くすくすと笑い声を漏らした。

「それはそう。あーあ、あの純粋だったぼっちちゃんが、まさか未成年喫煙してるなんてなぁー。」

「…良い先輩がいたから、ですかね。」

「…可愛くない。昔みたいに、もうちょっとおどおどしてくれても良いのに。」

「虹夏ちゃんが揶揄うつもりなの、分かってますから。」

「いやー、ぼっちちゃんに皮肉で返されるの、すごい感慨深いなぁ。」

「着々と虹夏ちゃん色になってきてますよ。」

「ふふ、嬉しいこと言ってくれる。さて、ぼっちちゃんもきたし、ご飯にしよっか。」

「はい。何か手伝いましょうか?」

「お客さんは座ってて。」

「半同居人ですし。」

「だめ。今日は、ぼっちちゃんの誕生日だもんね。おもてなしさせて。」

「…じゃあ、寝る時はいっぱい甘やかしますから。」

「おっ、ぼっちお姉ちゃんだ。」

「覚悟しててくださいね。」

「ひゃー、骨抜きにされちゃう。」

なんて、馬鹿みたいに甘い会話をして。

「どう?おいしい?」

「虹夏ちゃんのご飯は、いつも美味しいですよ。」

「またまた、嬉しいことばっかり言って。」

「本当ですから。」

「ね、ぼっちちゃん。」

「はい。」

「誕生日、おめでとう。」

「ありがとうございます。私、すごく幸せです。」

虹夏ちゃんと、キスを交わす。虹夏ちゃんの唇は、柔らかくて、とろけてしまいそうなほどに、吐息が甘くて。

何度も唇を重ねても、彼女は初めての頃のように、少し恥ずかしそうに笑う。その顔が、可愛くて。

 

 

 

「だいすきです。虹夏ちゃん。」

「あたしも。だいすきだよ、ひとりちゃん。」

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