アサシンとアーチャーの力を使うエミヤ   作:影後

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プリズマイリヤ
衛宮志戸


俺は何故ここにいるのか判らない。

衛宮士郎となり、聖杯戦争を生き抜き、地獄を見てきた。

義父のような存在にはならず、最終的に言峰のように教会の代行者となった。

カレンに言われ地獄を見て、遠坂に追われ地獄を見て、桜に追われ地獄を見て………

独身を貫いて……いや、カレンと結ばれ言峰を名乗った俺は相当狂っていたのかもしれない。

原作を知っている筈なのに俺は言峰綺礼の言葉が激しく耳に残った。

というより、カレンと結ばれたのも彼奴のせいだった気がする。俺を永遠の忠犬にするとかそんな理由で。

もし、この世界にカレン・オルテンシアがいるなら頼む。俺(志戸)じゃなくてこの世界の衛宮士郎をお前の犬にしろ。

俺は、衛宮士郎だが衛宮士郎(主人公)じゃない。言峰綺礼の言葉を理解でき、感性が壊れているとすら感じてしまう。

 

「それでも……俺は…………」

 

英霊なんかにはならない、あの馬鹿野郎みたいにはならない。

俺はカレンを見送り、息を引き取った。

はずだったのだが。

 

「……なぁ、俺達は双子なんだよな」

 

「今更か、士郎。俺とお前は双子だぞ、どうした?頭でも打ったのか?」

 

「なっ…そんな言葉しか言えないのかよ!志戸!」

 

俺はいや、衛宮士郎ではなく今衛宮志戸として生きている。家族にはかつて守れなかったイリヤ、それが普通に生きて生活している。

 

「じゃあな、俺はサボる」

 

「なっ!そんなの一成が」

 

「……生憎、俺は成績優秀なんでな」

 

俺はもう衛宮士郎じゃない、同じ顔でももう違う。元々、俺は衛宮士郎じゃないんだ。

 

「……投影開始」

 

親父が持つ武家屋敷に入り浸る俺。

ここは俺がずっと一人で生活してきた証だ。

ここにいれば、藤ねえ、セイバー、桜、遠坂達との記憶が蘇る。

ライダーを倒した時、セイバーと別れたあの日の事、アーチャーに殺されかけた事。

イリヤのバーサーカーに殺されかけた事。

ランサーに貫かれたこと。

………ろくな事覚えてない。

 

「あっ……」

 

それはボロボロの少女だった、摩耗した記憶の中にある衛宮士郎の可能性の一つに存在する妹。

 

「…お帰り」

 

「………おにい……ちゃん」

 

ボロボロの服を着て、俺に抱きついてくる少女。

それと同時に、俺の頭に並行世界の記憶が生まれる。俺の役割は……美遊の兄なのだろう。

士郎はイリヤの兄。俺は、この孤独な少女の兄。

 

「……ごめんな、お前の……お前の本当の兄じゃなくて………家族なのに……」

 

「え………」

 

「ごめん……ごめん……美遊、俺は……俺は……お前の………」

 

それは……懺悔だったと思う。俺は……美遊と一緒に泣いてしまった。止まらなかった、止まれなかった。

 

「お兄ちゃんは……お兄ちゃんじゃないんだ」

 

「美遊……そうだ。俺は……衛宮志戸。この世界に衛宮士郎は居る。俺は……士郎の兄か弟か」

 

「それでも、お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ。私の……私の大切な」

 

「この世界なら……俺は……お前の願いを叶えられるかな、美遊」

 

「え?」

 

「海だ」

 

俺は武家屋敷に布団を敷いた。誰かが来るわけじゃない、でも妹を床には寝させられない。

 

「美遊が布団を使えよ、っとそうだ。先にお風呂だよな。あと」

 

「そんなに焦って……大丈夫?お兄ちゃん」

 

記憶で、最後に見たのは涙だったか。

せめて、今の笑顔を守りたいと思った。

 

「料理まで手伝わなくて良いんだぞ?俺が全部」

 

「駄目!お兄ちゃんの妹だもん、手伝わないなんておかしいよ」

 

片付けが終わり、美遊がお風呂に入っている。

俺は土蔵に入って布団を探していた。

ここは、第四次で親父とお袋が拠点にした場所だ。アインツベルンの城は入れないし、予備の布団ぐらいならと思ったが有るのは魔法陣だけだった。

 

「………コレは」

 

それは本来存在しない力だった。並行世界の衛宮切嗣の成れの果て。抑止の代行者アサシンエミヤのクラスカード。そして、2枚目のアーチャーのクラスカード。

 

「……守れって事か美遊を」

 

命に変えても?馬鹿だ、そんなに考えより自分の命も守って守る。それが出来ないなら二流以下だ。

 

「キャァァァァ」

 

浴場から悲鳴が聞こえてくる。

 

「投影開始」

 

干将莫耶を投影し、美遊の為に動いた。

 

「舐めるな!」

 

入った瞬間、桶が飛んできたがそれを真っ二つに斬ると……見てはいけない。

妹の裸体がそこにはあった。

 

「変態!」

 

「待て!まってくれ!美遊」

 

俺が驚いた瞬間、美遊の姿が変わった。

いや…変わってしまった。見覚えのある魔術礼装、性格が終わり黒歴史を量産したあの悪魔。

 

「何故……カレイドステッキが」

 

「あの……助けてもらえませんか」

 

俺はカレイドステッキを叩き折ろうとしたが美遊が待ったをかけた。

 

「お兄ちゃん、待って」

 

「ありがとうございます」

 

おかしい、というよりこんな感じだったか?

あの黒歴史製造機が

 

「私、サファイアと申します。貴男の仰る通りカレイドステッキです」

 

「あのキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグの魔術礼装が何故一人でに居る。遠坂凛は」

 

「あの、何故そこまで詳しいのか存じませんが、私の主はルヴィ」

 

「まさか…ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトか?」

 

「お兄ちゃん、遠坂凛とかルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトとか誰?」

 

美遊から絶対零度の視線が向けられてくる。

仕方ない、後で説明しよう。

 

「待てよ、そうかルヴィアと凛は犬猿の仲だよな。まさか…カレイドステッキ使って魔術の撃ち合いでもしたのか?!」

 

「本当に見ていたように言いますね、はい。そのとおりです。私達の目的はこの冬木市に現れたクラスカードの回収。それを私怨で喧嘩に使われては……」

 

「主を見限り、新たな主をか。それで、何故美遊何だ」

 

理由は判る、大体この予想であっているはずだ。

 

「魔力量です」

 

「やはりか、しかしクラスカードか」

 

美遊は話を聞いている、そして覚悟が目に灯る。

 

「サファイア、アナタと契約すれば私は戦える?」

 

「はい、しかし」

 

「お兄ちゃん、私は…私は……護られるだけは嫌。お願い、お兄ちゃん。もう……」

 

俺は何も言えなかった。

 

「どうすれば良いの?」

 

「血を1滴私にいただければ」

 

「…これでいい?」

 

薄っすらと中指から血が出る。

俺は…………すまない衛宮士郎。お前の願いを俺は……踏み躙った。

 

「これで…契約は完了です」

 

「……お兄ちゃん」

 

「待て……冗談だろ」

 

俺は美遊の姿より学校の方に感じる魔力に恐怖した。存在しないはずだった。

出てきてはいけない、こんなモノだったのだろう。原作もとうに覚えていないが、俺が衛宮士郎として戦った英霊は憶えている。

 

「お兄ちゃん……どうして」

 

「美遊、必ず帰るからここで待っててくれ」

 

「投影開始(トレース・オン)」 

 

黒化英霊となっても変わらないスピード、死の感覚。忘れられない、忘れちゃいけない。

俺を、初めて殺した英雄。

 

「…クー・フーリン」

 

俺が真名を言った事に気付いたのかランサーはヤリを構えて俺を狙って来た。

 

「………仕方ない。クラスカード、アサシン。夢幻召喚(インストール)」

 

「お兄ちゃん?」

 

「悪いな、ランサー。どうやら、俺は正義の味方よりも暗殺者が向いてるみたいだ」

 

赤い外套そして、アーマーを装着し、腰にはトンプソンコンテンダーとキャリコ、サバイバルナイフが装備される。

 

「妹の前だ、格好つけさせてくれ」

『時のある間に薔薇を摘め(クロノス・ローズ)』

 

俺の時間が加速する、現実ではどう見えるのだろう。恐らくはランサーが無惨に斬り捨てられる映像が流れているのだろうか。

 

「終わりだ」

 

最後にコンテンダーに装填された起源弾をランサーに撃った。

ランサーの心臓が破裂し、静かに霧散していく。

 

「美遊様、あのお兄様はいったい」

 

「衛宮士郎、私のお兄ちゃんで、私のヒーロー」

 

 

 

 

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