アサシンとアーチャーの力を使うエミヤ   作:影後

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家族とは

「……こうして、海を眺めて思うんだ。異物が入り込んだ世界で、俺は一体何をしてるんだってな」

 

「……私を呼んだのはクロエだと思ってた」

 

「……クロエなら寝ているさ、今回は俺が眠らせた」

 

膝の上で寝ているクロエを美遊に見せる。

 

「座るといい、座椅子だけど…立って話すより良いだろ?」

 

美遊は警戒せず座る。

 

「…美遊、例えば家族でも警戒は怠るなよ」

 

「お兄ちゃんが私達を裏切る事はないから」

 

美遊はその目を俺に向けてくる。撫でたいが、今動いたらクロエが起きてしまう。

 

「昔…冬木市にて7人のサーヴァントと7人の魔術師による聖杯戦争が行われた。それは聖杯という願望器を出現させる為の儀式でもあった。だが…それは熾烈を極めた。結末は民間人すら巻き込む大災害へと発展した。それは…一人の魔術師がある願いの為に犠牲を行ったから生まれた」

 

「その…魔術師って」

 

「魔術師殺し衛宮切嗣。美遊、クロエいやイリヤが一体何なのか理解できているな」

 

「……私と同じ聖杯」

 

「そうだ、正確には小聖杯だが……詳しく話すのは後の機会だ。小聖杯を偶然化させるにはサーヴァントを倒し、大聖杯に焚べなければいけない」

 

「大聖杯?」

 

「ソレも後で教える。兎に角だ、小聖杯を具現化させるにあたり、一つ犠牲を強いる事になる。当時の聖杯、アイリスフィール・フォン・アインツベルンは結果死んだ」

 

「なんで」

 

「簡単だ、人間じゃないからだよ。人間と同じように食べ、排泄し、子をなす。だが、本当の正体は小聖杯の外装。小聖杯を具現するにあたり、段々と外装は剥がれていく」

 

「まって……なら、イリヤも」

 

「そうだ、イリヤは衛宮切嗣と小聖杯の外装との間に生まれた小聖杯の外装。だが……この世界では衛宮切嗣とアイリスフィール・フォン・アインツベルンがその機能を封じ込めたようだ」

 

「……なら、何故クロエが」

 

「……コレは予想だがカレイドステッキのせいだ。サファイア、聞かせろ。転身だったか?その時、魔術回路はどうなる?例えばだ、使い続けて命の危機に瀕して、封印が解ける。という事もあり得るんじゃ無いか?」

 

「……恐らくはありえます。イリヤ様はアサシンに襲撃を受けた際にそれが発現し」

 

「……この前一件でより活性化した。教えてやる、彼処は大聖杯と呼ばれる物があった。ヨリにもよってそこを選んだせいだ。地脈の力と聖杯の外装としてのイリヤが共鳴した。だから……クロエが出たと予想する」

 

「まって……クロエはアーチャーのクラスカードが」

 

「そう、完全な肉体じゃないのさ。キスしたらしいが……それは魔力供給の一環だ。キスなのはクロエの小悪魔な性格からだろうな。面白いさ、士郎には積極的なのに俺に対しては…美遊お前と同じように接してくる。キスも強請らず、ただ俺に優しさを求めている。……なぁ、美遊」

 

「お兄ちゃん……」

 

「………志戸様、地雷を踏み抜きましたね」

 

「………なんでさ」

 

俺は転身した美遊の魔力砲を食らった。

 

「えっ!ちょっと!何これ!」

 

「……お兄ちゃん、許さない。クロエにばっかり………」

 

「待て!美遊!」

 

「ちょっと!美遊何してるの!」

 

「どいて……お兄ちゃんを一回躾ける」

 

「俺は犬じゃない!」

 

「シロウ……探したぞ、ふふ……まさか………私から逃げられるとでも?」

 

「アルトリアさん?!」

 

「美遊、協力しろ。シロウを捕まえるぞ」

 

「うん、アルトリアさん!」

 

「待て待て待て!俺は今回悪いことは」

 

「右腕、切り落したな」

 

「……」

 

「「私達が…どれだけ心配したと思っている!」」

 

「「約束された勝利の剣!!」」

 

「待てよ二人と」

 

もう…許してよ。

俺はクロエ、美遊、アルトリアに膝枕している。

こうしないと許されないからだ。

 

「むっ…流石だなシロウ。よく鍛えられている」

 

「うん…でも、良い感じ」

 

「わかる…お兄ちゃん、気持ちいいよ」

 

痛い、激しく痛い。お前たちが休む下で俺の足は剣山のような小石で固められた草の上だ。

 

「ねぇ…クロエはどうしてイリヤを殺そうと」

 

「……」

 

「クロエ、嫌なら俺が言うか?」

 

「……話すわよ。イリヤが私達を否定したから。イリヤは元の生活、魔術を知らない生活に戻りたいって言ったの。それは美遊やお兄ちゃんとの関係もない。あれだけ助けられて…あれだけ友達だと思ってた美遊も否定されて」

 

「……クロエ、それは違うぞ。イリヤは」

 

「違わないわよ、セイバー。イリヤは逃げたいの!この世界から、自分が普通でいられた日常に!

それで消えた存在の事なんて」

 

クロエが飛び出し、干将莫耶を投影している。

 

「………クロエ、お前が私に勝てると思っているのか」

 

「勝つ、セイバーにも、美遊にも…そしてイリヤを殺して偽りの日常も終わらせる」

 

セイバーが黒い鎧と約束された勝利の剣を出した。完全に戦うつもりだ。

 

「クロエ、貴方もイリヤ。なら、私の友達、友達が間違えたなら……私が止める」

 

「美遊まで」

 

「……今回、俺はアーチャーのサーヴァントなんでね。最後までクロエのサーヴァントだ」

 

「お兄ちゃん……いえ…行くよ、アーチャー」

 

「あぁ…だが、少々違うな。アーチャー、アサシン、夢幻召喚。クロエ、これがクラスカードの本当の使い方だ」

 

黒と赤の兵士となり共に戦闘開始のアイズを鳴らした。

 

「セイバー!夢幻召喚!!」「征くぞ!美遊!!」

 

「「投影開始」」

 

セイバーと美遊が迫る、俺はセイバーに対し干将莫耶を投げる。

 

「殺すつもりはない…だが気絶はしてもらう!壊れた幻想!!」

 

「その程度!」

 

「くっ…対魔力か」

 

干将莫耶を再び投影するが素の筋力が違いすぎる。今の俺はどう頑張ってもB程度だろう、セイバーは素でBだが…どう考えてもAはあるぞ。

 

「くっ…ならば!」

 

「その程度!!」

 

「未来でも見えているのか!!」

 

ブーメランのようにした干将莫耶が見ていないのに弾かれる。何の冗談だ、コレは!

 

「ちっ……ならば」

 

銃剣の干将莫耶を投影し、射撃戦に移行する。

 

「お兄ちゃん!ちょっとお願い!!」

 

「くっ!美遊までもが!!」

 

「お兄ちゃんはイリヤがどうなっても」

 

「俺が消えたらクロエは一人だ!美遊、お前ならそれが理解できるはずだ!」

 

「だが、それでも止める!セイバーさん!」

 

「良くやった!

『卑王鉄槌』、旭光は反転する。光を呑め・・・!約束された勝利の剣!!」

 

「舐めるな…投影の精度なら俺は彼奴よりも上だ!熾天覆う七つの円環!!」

 

「美遊!お前もだ!!」

 

「はい!約束された勝利の剣!!」

 

熾天覆う七つの円環の割られる速度が上がる。

なら、もっと投影するだけだ。

 

「…何だと」

 

「不味いです!セイバー様!確実にやばい所から」

 

「見える、俺の可能性、アカシックレコード疑似接続完了」

 

「くっ…魔力が」

 

「クロエ!時間は稼いだぞ!!」

 

「……投影開始、偽・偽・螺旋剣」

 

「なっ……」

 

俺の胴体を刃が貫いている、そうか……クロエ。

 

「…ごめんなさい……ごめんなさい………ごめんなさい」

 

「それが……選択か?」

 

「………なら、俺はおう…えん…す…る」

 

「お兄……ちゃん」

 

―――――

 

「……シロウ何をしている!鞘があるだろう、その程度なら」

 

「セイバー、無理よ。心臓を貫いたんだもの。今回はどう足掻いても……ね」

 

私はお兄ちゃんを殺した、もう…戻れない。

でも、セイバーはもう…良い。

セイバーを無力化するならお兄ちゃんを無力化すればいい。

まさか………成功するとは思わなかったけど。

 

「くっ!」

 

「許さない……なんで……なんでお兄ちゃんを殺した!!お兄ちゃんは最後まで貴女の…クロエの味方だったのに!」

 

「何?形だけ、どうせお兄ちゃんも私を」

 

心にもない、たった数日だけどお兄ちゃんは心から心配してくれたし、愛してくれた。

だから、私は決めた。死ぬって。

 

「きなよ…美遊、貴女もお兄ちゃんの所に送ってあげる!!」

 

美遊なら私を殺せる、美遊も線引が出来ているから。私とイリヤは別物、お兄ちゃんは私も救ってくれるだろう。でも、それに甘えたら私は……駄目になる。私はイリヤスフィール、小聖杯の外装。

 

「投影開始!!」

 

「真名解放!」

 

「止めて!」

 

私と美遊の前に私〔イリヤ〕が現れた。

だから憎い、なんで来た。

このまま行けば私は死ねたのに。

 

「二人共止めて!戦わないで!」

 

「イリヤ!止めないで…クロエはお兄ちゃんを殺した!ここで…トドメを刺す!」

 

「勝手すぎわよ、今更来たところでもう貴女にできる事なんてアリはしないの!

それに……『元の生活に戻りたい』のでしょう?良かったじゃない、ここで私を殺して、お兄ちゃんも死んだ。ほら、後は美遊も、ルヴィアも、凛も捨て去れば元の生活よ!」

「目を閉じて、耳を塞いで塞ぎ込んで、自室に閉じ籠もってなさいよ!それが…貴女の望みでしょ!」

 

「私はお兄ちゃんの敵を討つ!イリヤ!邪魔は」

 

「嘘つきだよ」

 

「……だって、クロエは私、そんなのもうわかってる!なら、出来ないもん。私は、お兄ちゃんを殺せない。クロエもそうでしょ!志戸お兄ちゃんに大切にされてて、殺せるはずがない!それに……なんでそんなに悲しそうなの」

 

「!」

 

「ねぇ…もう、止めよう。一緒に暮らそうよ。私は、もう決めた。迷わないって、逃げないってだから」

 

「……なんで、なんで、今なのよ。もう…遅いのよ。お兄ちゃんも刺しちゃった……もう、止められない。止まっちゃいけないの!」

 

私は全ての魔力を使って二人を

 

「……勝手に殺すなよ」

 

「お兄ちゃん!」

 

「……そんな……生きて」

 

「言ったでしょ、私はお兄ちゃん達を殺せない。

志戸お兄ちゃんは口が悪いけど、何時も見ていていくれた。迷子になったらすぐに見つけ出してくれた。お兄ちゃんは何時も優しい、そんな……そんな……大切な人達を私が殺せるはずがないもの」

 

「あぁ、俺は生きていぐぶ」

 

「「お兄ちゃん!!」」「志戸お兄ちゃん!?」

「シロウ!!!!」

 

―――

「ごめんなさい、まさか………ピンポイントで当たるとは思わなくて」

 

「いや…母さん……クソ痛い」

 

「セイバーもごめんなさい。家族の事に巻き込んで」

 

「いや…アイリスフィール。私もシロウとは家族だ。問題ない」

 

「あらあら……」

 

俺は今、武家屋敷の地藏に担ぎ込まれた。

 

「流石ね忠犬、全治5ヶ月の怪我が私の手当で全治1ヶ月に縮み、身体のソレでもうすぐ完治よ。久しぶりに良い怪我人が見れたわ」

 

「……なぁ、カレン。お前、記憶あるだろ」

 

「さぁ」

 

「もう、カレンちゃんも志戸が好きならキスぐらいしちゃいさないよ!」

 

「…フフ」

 

「……なんでさ」

 

結論から言えば全部母さんが終わらせたらしい。

クロエは衛宮家で生活することになった。

セラとリズはなんとなく察しているのだろう。

イリヤについては全て話したようだ。

 

「それでね、シドにごめんなさいを言いたい娘がいるの」

 

「クロエ、入るんだ」

 

生気が無いように見える、いや泣いているんだろう。俺は身体を起こしクロエの頭を撫でる。

 

「寝てねきゃ」

 

「………生きていてくれて、ありがとう」

 

それは俺が親父にかけられた言葉。

でも、ここで言うべきだと思ったんだ。

 

「さぁ、夕食を作ろ」

 

起き上がろうとするが身体が動かなかった。

 

「血が足りないんだ、シロウ。無理するな。美遊が作ってくれている」

 

「……お兄ちゃん、ごめんなさい、ごめんなさい」

 

「……笑うんだ、俺は家族が笑顔でいて欲しいから」

 

無理矢理俺も笑顔を作る、クロエもそれに応じて笑ってくれた。

 

「あら、私の前では疲れ切った顔、私の身体を求めてきたのに」

 

「カレンさぁ、覚えてるよな!てかそれ、何時のだ!使徒にけしかけたときか!アトラス院を爆破しろのときか!」

 

「……どうだったかしら」

 

「駄目だ……勝てねぇ」

 

「……お兄ちゃん?」「シロウ、何故私には」

 

「……あらあら、志戸。火遊びは駄目よ」

 

死んどけば良かったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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