真夜中、0時を過ぎようとする時間。
俺、美遊、ルヴィアは学校に居た。
「それが貴男の礼装ですのね」
「ノーコメントさ、さて……美遊行こうか」
「うん、サファイアお願い」
「はい、美遊様」
サファイアの魔力で俺達を鏡の中へと向かわせる。ランサーの時はあっちで限界していたが、本来ならこんな世界なのだろう。
「……ライダーか」
間桐桜のサーヴァントにして俺達が最初に仕留めたサーヴァント。思えば、あの時からだ。
俺は聖杯戦争を止めると言いながら、親友を殺した。慎二から桜を救った?
全然だ、間桐臓硯すら起源弾を使い仕留め、桜すら殺しかけた。
「……だが、過去の話だ」
今の世界で桜がどうとか関係ない。
「美遊、ランサーを使え。ゲイ・ボルグなら霊器を一撃で砕ける」
「クラスカード『ランサー』
限定展開(インクルード)
『刺し穿つ死棘の槍』ゲイ・ボルグ」
美遊の一撃でライダーの霊器が消える。
そして、俺は再びあの世界に呼び出された。
「お久しぶりです」
「…ライダーか、」
「えぇ…桜はあのあと」
「生きてる、子供もいる」
「そうですか、しかし……この世界は私の知る世界ではない。シロウ、せめて桜を」
「……努力する、桜は俺(衛宮志戸)じゃなくて衛宮士郎に惚れてるんだからな」
空間から戻る、そしてルヴィアに蹴りを入れようとする遠坂の足を受け止めた。
「…」
「ちょっと、アンタ邪魔しないでよね!」
「この世界から出るのが先決だ、たわけ!サファイア」
「はい!」
サファイアが俺達を鏡の世界から外に出す。
「ふふっ…遠坂凛、哀れなり!行きますわよ!美遊!Mr.!!この勝負、
貴方様と美遊さえいれば勝ちですわ!」
「何なのよ……あの男」
(……あの声)
この中でイリヤだけがアサシンの正体に近付いていた。
「Mr.そして美遊!戸籍はなんとかなりましたわ!」
「へぇ、教えてくれよ」
「名前は美遊・エーデルフェルトですわ」
「……わかりましたわ」
流石に衛宮を名乗らせる訳には行かないからな。
美遊には悪いと思っているが、仕方がない。
「家はどうするんだ?」
「お兄ちゃんと居たいです」
「構いませんわ、でも稀には来て頂きます」
「わかりました」
______________
「翌日、俺は悪友である間桐慎二とどうやってお目付役である柳洞一成から逃げるかを計画していたのだ」
「それを目の前で言うかバカタレ」
「なんだよ、俺は学校に迷惑かけてないぞ!祝日はボランティアのゴミ掃除、頼まれれば士郎と一緒に備品の修理、成績優秀、女子生徒からの人気も高く俺の親友間桐慎二とゲームしたり」
「まてよ!そこまで志戸と親しくなった覚えはないぞ!」
「なんだ?残念だ友よ、憐れにもワカメとして〘わくわくざぶーん〙の流れるプールに沈みたいらしい」
「怖いわ!てか何だよ、ワカメって!」
「ふむ、昆布の方が良いか?」
「おい、衛宮!お前の兄貴どうにかしてくれよ!!」
「「え?どうしんたんだよ慎二」」
「あぁぁぁぁあ!!!!」
「「え?いたずらやめろよ志戸!!」」
「くそ……志戸め、衛宮を知り尽くしているから同じにされたら判らん」
「俺が士郎だ!一成昨日の」
「俺だ!一成、昨日」
「何故二人共書類の件を知っている!どっちが志戸だ!!!!」
俺は士郎の真似をする。いや
真似なんか必要ない。俺と、士郎は同一だ。
だから、こういう時何をいうかすら予想できる。
「あららっと……何だ二人の判別ができないのか?なら、簡単だ!出てこい、間桐!」
「あのぉ……美綴先輩?」
「なに、部活に来ないバカをさっさと連れて行くためだ。あと、一成、部費よこせ」
「今言うか!」
桜は不味い、色々と不味い。
「はい、左側が先輩です。志戸先輩ですね」
「おっと……速すぎないか?バレるのが」
「なっ!」
「っと、それではだ。美綴、お前は間桐を呼ばなくても気付けたんじゃないか?」
「まぁな、じゃあな志戸」
「あぁ」
誰かと話すこともなく出ていくはずだった。
「あれ?遠坂さん?」
「あっ…衛宮くん」
俺は今極限まで魔力を抑えている。それはこの世界の俺(衛宮士郎)と同じレベルまでだ。
「どうしたんだ?誰かを待ってるとか……もしかしてルヴィアゼリ」
「絶対違うから」
「ところで……イリヤさんは元気?」
「当たり前だろ」
俺はここで遠坂の顔が変わったのを見た。
「ねぇ、衛宮くん。なんで…〘私がイリヤさんを知ってる〙て思ったの?」
初等部には遠坂は向かっていない。それどころか、俺も士郎もイリヤの事を教えていない。
兄弟と考えつくか、答えはNoだ。イリヤはアインツベルンを名乗っている。
兄妹とは瞬時に理解はできないだろう。
「………答えなさい、衛宮士郎いえ衛宮志戸。貴方は」
「固有時間制御・三重加速」
アサシンのカードによって生身でも使えるようになっている爺さんの固有時間制御。だが、やはりクラスカードを使用した時と違い代償が大きい。
だが、それでも100m走るのはなんとかなった。
元々の身体能力は異常である俺は100を10秒台で走れる。それを三重加速でやれば3秒で視界から消えられる。
「くそ……二度と使わない」
一瞬だけの筈なのに身体は悲鳴を上げ、内出血を起こしている。
「投影開始……全て遠き理想郷」
アヴァロンを投影し身体に触れさせる、これだけで俺の身体の再生は早まる。
「くっ……流石にきついな」
美遊は今日はルヴィアの家に泊まるはずだ。
なら、寝ていても問題はなさそうだ。
「お兄ちゃん!」
「……美遊、どうして」
雑木林の中で隠れるようにアヴァロンを使っていた俺に美遊は声をかけてきた。
「その身体」
「……遠坂二バレかけてな。それよりも、美遊学校で友達は」
「ルヴィアさんの家に……サファイア」
「この傷、いったいどんな魔術を使えば………ますます謎が深まりますね。志戸さんは」
「聞かない、それが契約だろ?サファイア」
「わかりました、美遊様行きましょう」
俺と美遊はルヴィアの家に向かって居たはずなのだが……
「お兄ちゃん?」
「不味いな、俺はこれから先にいけない」
俺は近くに気配をけして隠れる。案の定、美遊とイリヤとセラがばったりと出くわした。
何か喋っているようだが、美遊とイリヤの関係は悪い。いや、仲良くなるのは良いがルヴィア陣営だし、遠坂から逃げたから余計に面倒臭くなる。
俺はイリヤとセラが消えたのを確認しルヴィアの家に入った。
「お兄ちゃん、大丈夫だった?」
「ごめんな、ちょっと治療しないとやばいんだ」
「貴方がMr.ですか」
「ええ、Mrs.の契約者にして美遊の本当の兄です。この度は妹の事、ありがとうございます」
「いえ…しかし貴方もですかな?」
「そういう貴方も、私と同じ様に匂いますね。人殺しの匂いが」
俺とルヴィアの執事さんは睨み合ってしまった。
「オーギュスト、Mr.と争うのはよしなさい」
「美遊、Mr.こちらですわ」
ルヴィアと俺は互いにMr.、Mrs.と呼んでいる。
これなら最悪、俺を名前も知らない存在であると切り捨てられる。そして、美遊をルヴィアの力で守ってもらえる。
「さて、今日の目的はキャスターのクラスカードですわ。場所は橋のふもとの公園、美遊は此方で送りますが、Mr.はどうしますの?」
「悪いな、遠坂凛から逃げるのに代償のでかいのを使ってしまった。一度家に戻り時間には合流する。変わらず0時だろ?」
「はい、ではそれで」
「お兄ちゃん?」
「美遊、お前は俺の妹だ。強くあれ。心が折れない限り、必ず俺がお前を助けるからな」
「美しい兄妹愛ですね、ルヴィア様」
「えぇ、私とあの子のように」
俺は静かにルヴィアの家を後にした。
「あっ、志戸!今日は武家屋敷じゃないのか」
「これから帰る」
「一緒に住むのは」
「悪いな、俺は……今のうちから自立して生活するんだ。あの家を親父から買って、あそこで暮らすためにな」
「昔から武家屋敷が好きだよな、まぁいいさ。偶にはイリヤに顔見せろよ!」
士郎はそう言って家に戻っていく。
アレは魔術を知らず、災害にすら合わなかった俺。
だからこそ羨ましい、何故俺はあの絶望を。
切嗣との別れを、イリヤの死の瞬間を、セイバーとの別れを覚えているのか。
忘れられたら、どれほど良かったものか。
「……殺意じゃないな、なぁ…俺(衛宮士郎)。お前はいったい何になるんだ?」
俺の言葉は虚空に消えた。