アサシンとアーチャーの力を使うエミヤ   作:影後

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カルデアは

俺がカルデアに召喚されて数日、既に心は壊れかけていた。

 

「あの……シロウ」

 

「見るな……俺を……俺を…そんな目で見るな」

 

アルトリア・グループと呼ばれるアルトリアの可能性達、彼女達が何故か気にかけてくる。中には知っているアルトリアもいる、それに、藤姉(ジャガーマン)、桜(パールバティほか多数)、遠坂(エレキシュガル…イシュタルとか言うのもいたが、あれは嫌悪感しかなかった)、言峰は変わらず言峰で逆に安心した。

 

「出てこい、シロウ。青い私も今はいない」

 

「……俺は……俺は………何で呼ばれたんだ………俺は」

 

「……入るぞ」

 

「…アルトリア」

 

「そんなに苦しいか」

 

「当たり前だ!何故平然としてられる!これなら、昔のように壊れたままの方が良かった!あの、壊れた俺(エミヤ・オルタ)の様に!全てが忘れられたら良かったのに!」

 

「………」

 

シトナイ、ジャガーマン、パールヴァティ、エレシュキガル、見覚えのある顔がそこら中に存在している。それどころか、時折記憶があるような発言さえ行ってくる。

 

「……イリヤスフィール姉さんもだ、何故俺を憎まない!守れなかった!約束を守れなかったんだぞ!何故、何故俺を………贖罪も…できないじゃないか」

 

「そうか」

 

アルトリアは手を掲げ、俺に振り下ろした。

 

「総員、突撃」

 

「シロウ!何を悩んでいるのかと思えばそんな事なの?良い?私は憎んでない!私はね、貴方に救われたの!」

 

「!!!!」

 

イリヤスフィール姉さんとバーサーカーが部屋に入ってくる。

イリヤスフィール姉さんは俺にただ、「大丈夫、シロウ」としか言ってくれない。責めてくれない。

 

「先輩、駄目ですよ。ほら、何時も寝るときはお布団でって」

 

「!」

 

「衛宮くん」

 

「クラスカードアサシン、夢幻召喚。そんなに俺を苦しめたいか」

 

俺はアサシンのクラスカードの気配遮断を使い、部屋から離れる。バーサーカー、ランスロットのカードを使い変装しても良いだろう。

 

「何故呼ばれた、何故呼んだ、この俺を」

 

「おい、お前だな……スカサハの奴を殺したのは」

 

それはクー・フーリン。だが、黒く染まり魔獣の力を持った存在。クー・フーリン・オルタ。

 

「なんだ…師匠の敵討ちか?殺せ……殺してくれ」

 

「ちっ」

 

濁りきった目だろう、でも今俺は死にたい。

この場から消え去りたい、

 

「死にてぇ割に、ずいぶんと動く身体だな」

 

「なにを」

 

俺の体はゲイ・ボルグを投影し、目の前のクー・フーリン・オルタとしのぎ合っている。

 

「死にたがり…じゃねぇな、迷ってるだけか」

 

「なぜ、一思いに殺さない……何故だ」

 

クー・フーリン・オルタの槍捌きが手を取るようにわかる。

いなし、弾き、穿つ。

だが、クー・フーリン・オルタも犬馬を見せ笑みを浮かべる。

 

「面白え、俺が本気じゃなくとも殺す気の攻撃を避けるなんてな」

 

「…殺し合いにくだらない話し合いは無しだろ」

 

槍と槍のぶつかり合い、通路が凹み両者から鮮血が飛び散る。

 

「良いな、迷っても強い。だが、お前は迷わなければより強いはずだ」

 

「……なら、殺してくれ」

 

「殺せと言う割に……随分と俺を滾らせるな!お前は!!」

 

スピードも力も本来の物よりも数段遅い。

だが、クー・フーリン・オルタの攻撃が手に取るようにわかってしまう。人類史に刻まれている限り、やはり俺には勝てないと言うのか。

 

「全呪開放、加減は無しだ……絶望に挑むがいい。」

――『噛み砕く死牙の獣(クリード・コインヘン)』!

 

「…宝具か、ならフィールドを変えてやる」

 

死にたい筈なのに体が無意識に動いている。

何をすれば良いか、手を取るようにわかってしまう。

 

『I am the bone of my sword

(体は剣でできている)

Steel is my body,and fire is my blood.

(血潮は鉄で心は硝子)

Standing on many corpses

(いくつもの屍の上に立ち)

Imprisoned for eternity

(悠久に囚われる)

Still I seek meanin in my life

(それでも我は生涯に意味を求める)

That’s my why this body

(だからこそ、この体は)

”Infinited sword works”

(無限の剣でできていた)』

 

楽園を思わせる花畑を月光が照らす。

数多の墓地の様に剣が地面に突き刺っている空間。

そして、目の前には祭壇と祀られるように突き刺さった一本の剣。

 

「来い、クー・フーリン」

 

「良い目だ、獣!」

 

クー・フーリン・オルタの爪を『唯一つ忘れられない絆の剣』で受け流し、斬る。そして、円卓の盾と鎧を投影し、かつて彼女と共に戦ったあの日のようにクー・フーリン・オルタとの戦闘を続ける。

 

「流石だな…好い目だ。殺し甲斐のある!」

 

「少々、いや俺も昂っている。やはり、そうか……」

 

勝てない、なんてない。

クー・フーリン・オルタは俺の命を奪おうとしている。

そうだ、彼は幻想。聖杯により生み出された英雄。

クー・フーリン・オルタはクー・フーリンの別側面ではない。

望まれて生み出された英霊。つまり、

 

「流石だよ、狂王!お前は俺を殺せる!人類史に刻まれた英雄でないお前なら、この獣を消しされる!」

 

歓喜した、自分を殺してくれる存在に。

 

「やっぱりだ、臭ったぜ。その隠された獣の匂いがなぁ!」

 

「アハッ…アハハ…アハハハハハ」

 

「らぁぁぁぁ!!!」

 

固有結界の維持も難しくなり、カルデアに戻ってきてしまう。

そこでは人類最後のマスターとサーヴァント達が驚愕の目を向けていた。

 

「殺し甲斐のある!」

 

「ソレでこそだ!狂王、君は私を殺す、殺せる英雄だ!」

 

高ぶりが収まらない、普段の俺とは違う。

殺し合いが、この戦場が楽しい。

 

「待ってよ、クー・フーリン・オルタも、士郎さんも」

 

「「口を出すな!」」

 

マスターの小僧が何か言っているが、関係ない。今は、此奴との戦いを楽しみたい。

 

「…マスター、私には言うなよ。逆立ちしても奴には勝てん」

 

「マスター、黒い私とその他を連れてくるべきでは?」

 

外野が騒がしいが俺もクー・フーリン・オルタも怪我が増えてきた。俺達二人、やる事は決まっている。盾と鎧を破壊し、3枚のクラスカードを構える。

 

「蠢動しな、死棘の魔槍。『抉り穿つ鏖殺の槍(ゲイ・ボルク)』!!」

 

「義理母さん、親父、ランスロットさん、英雄の力。お借りします!」

 

止まった時間の中で切り刻む、破戒すべき全ての符で斬られていくのだ。サーヴァントはダメージが多いだろう。

固有結界の入った弾丸で内部から裂かれているにも関わらず、狂王は生きていた。

 

「らぁぁあ!」

 

最期の力なのだろうか、奴の魔槍が俺に迫る。

 

「無毀なる湖光(アロンダイトォォォォ)!!!!」

 

ゲイボルグと真正面からぶつかり合うアロンダイト。

心臓に当たることはないだろう。しかし、右脇腹を奴の槍はぶち抜いた。抉られた部位からは血が溢れ、俺自身、死を感じている。

 

「次は……殺してやる」

 

「フハッ…フハハハハッ!良い目だ……良い目だ、狂王!お前のおかげだ、感謝する。俺は思い出した、俺の反面を!殺戮を!血に塗れた半生を!そうか…それがビーストの、破滅の由来か!

最高だ!最高に……狂ってやがるぜ!」

 

何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

アロンダイトをこの腹に突き立てる。死ねない。死なない。

不死身じゃない、俺という存在に、死が無い。

夢幻へと繋がる未来、幻想へと還るアカシック・レコードの中。

この俺は、今模造聖杯を通し……虚無になったのだ。

 

「何処だ…何処で間違えた!俺は…私は……」

 

「少しは落ち着け」

 

「貴様は……そうか、俺がビーストならお前がセイヴァーか」

 

「分裂した?!」

 

「違うさ、マスター。俺も此奴も同じ魂。二人は1人。1人は二人。まぁ、眠っとけ。表に居るから」

 

「…感謝する」

 

俺は眠って、俺が目覚めた。

 

「…警戒するな、今の俺は問題ない。まぁ、精神が安定してる状態だな」

 

「お兄ちゃん!」

 

「あはは…判るのか?クロエ」

 

「うん、さっきまでのお兄ちゃんは何処か違ったから」

 

「…むっ」

 

「美遊様、クロエ様は行きましたよ?お兄様に抱きつきたいなら」

 

「サファイア、静かに」

 

「美遊も来なさい、ね?」

 

「うん」

 

俺は美遊とクロエを抱き締める、そこで寂しそうにするのがイリヤだ。

 

「イリヤ、肩車ならできるぞ?」

 

「なら!」

 

イリヤを肩車し、左手に美遊、右手はクロエ。と妹3人に囲まれる。

 

「……本当にどういう事だ?」

 

「俺も、さっきの俺も、元は同じだ。でも、人格を構成する記憶が違う。アレは守れなかった、助けられなかった。できなかった。殺してしまった。衛宮切嗣のスペアとして作られ、アルトリアを愛し、教会の代行者として殺戮をし、お前という存在を許せない俺がさっきのだ」

 

「貴様はどうなんだ?」

 

「冬木でお前とやりあった俺だよ。イリヤ、美遊、クロエの3人の妹と英雄姫やらカレンやら……兎に角、面倒事と愛する家族に包まれ、お前に殺されかけ、お前を殺したいほど憎んでる俺だよ」

 

「俺を嫌いなのは同じか!」

 

「当たり前だ、お前には酷い目に遭わされました!それに、元となった記憶は違うけど、持ってる記憶は俺も彼奴も同じ。その時に関した苦しみや、痛み、哀しみ、俺も全て理解してるし、俺が感じた嬉しさや楽しさをアッチもちゃんとわかってる」

 

「なら、私が居ても問題ないか?」

 

「アルトリア、あぁ、俺は君を愛してる。たとえ、エクスカリバーに貫かれようとも。例えば、再開と同時に宝具を放たれたとしても」

 

「…やめろ」

 

「待ってください!では、先程のシロウは」

 

「うん、セイバー。君を王として、君のマスターではなく、騎士として、一緒に戦った俺だよ。慎二も殺した。姉さん達も護れなかった、過去の俺。だから。君と距離を離したんだ。それに、俺が愛して居るのはセイバーだけだよ。俺はセイバーの配下であり、俺はセイバーだけのもの。セイバーがこの人類最後のマスターを見限るなら俺もセイバーの為に最後まで尽くすし、セイバーも俺のものだ」

 

「あぁ、そうだな。シロウ」

 

「俺達の愛は不滅だ、あぁそうだ。世界の抑止力も打ち消そう。俺は、君の…騎士の一人なのだから」

 

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