アサシンとアーチャーの力を使うエミヤ   作:影後

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衛宮士郎

「…意外だな、いや君を知っている身からするとその行動力は変わらずと言うべきか」

 

俺は遠坂にカフェオレを出し、自身もコーヒーを飲んでいる。

 

「貴方の口ぶりだと、まるで私を知っているように言うのね」

 

遠坂は昔から抜けているよりも鋭い所が目立つ。

普段は呪われたうっかりなのにな。

 

「……第2魔法、遠坂凛。君なら理解できるかな」

 

俺の出した一言で遠坂が青ざめた。コレはルヴィアにも話していない事だ。

遠坂には此方を話し、ルヴィアにはあちらを話す。

 

「まさか………貴女は衛宮くんなの?」

 

恐る恐る聞いてくる遠坂、そうか……君だけは俺を衛宮士郎と。

 

「……もう違うさ、この世界の俺(衛宮士郎)は魔術も知らない。聞かせてくれよ、遠坂。お前は……俺をどうしたい?」

 

遠坂は何も答えない、当たり前だ。

言えないのだから、遠坂は魔術師にしては優しすぎる。ルヴィアもだが………

 

「聞かせて、貴方の世界では」

 

「遠坂、聖杯戦争って知ってるか?」

 

「えぇ…7人の魔術師と7騎のサーヴァントによって行われる……まさか」

 

遠坂の言葉に俺はうなずきを返す。

 

「俺はかつて、冬木で行われた第五次聖杯でセイバーのマスターとして聖杯戦争に参加し、勝利した」

 

「……私を殺すの」

 

「なんでそうなる」

 

「だって…」

 

「言うが、遠坂と俺は味方どうしだぞ。

(俺とアーチャーは敵同士だけど)」

 

「そう、私は生き残れたのね」

 

「まぁ、並行世界の話だ。気にする必要も無い、無意味な事だ。気にするな」

 

静かにそう呟くと、遠坂から叩かれる。

 

「ねぇ、衛宮くんならどうして……そんな風になっちゃったのよ!一体…何が」

 

そうか……遠坂はこの世界の俺(衛宮士郎)に惚れたのか。なら、この世界の俺(衛宮士郎)が衛宮士郎にならないようにするだけだ。

 

「簡単だ、俺は……悪の敵になった。誰かを裁く私刑を行いながら、教会の代行者として人の成れの果てや、外道、魔術師を殺してきた。そしたら…わからなくなったんだ。ある時、俺は子供を殺した。自分の息子と娘、その子達と変わらない歳の子を」

 

「……それは」

 

「吸血鬼と化していた、殺しが救いになるはずだ。殺さなければ誰かが何時か死ぬはずだ」

 

俺は拳を握りしめる。

 

「でも……未だに夢を見る。俺の事を最後に……お父さんと呼んだあの子供を。幻覚だと言えた、なのに……俺は抱きしめた。塵になるまでその子を抱き締めてしまった。今でも覚えてる、塵になっていく瞬間を。消えた瞬間を、熱を失ったあの時を………」

 

あの時、俺は自分の子供を殺したように錯覚した。たから、殺し続けた。忘れるために、思い出さない為に……俺は正義の味方(衛宮士郎)じゃなかった。

 

「これが……俺の全てだ」

 

話し終わる頃には俺は汗を滝のように流していた。こっちに来てまで代行者を続けるのも、全てがそうだ。死んでも、彼女の鞘になれずこんな世界に来た。俺は……何なんだ。

 

「ねぇ…衛宮くん」

 

「なんだ遠さがぁ?!」

 

遠坂に左頬を思いっきり殴られた。

 

「ウジウジしてんじゃないわよ!衛宮くん!よく聞きなさい!そっちの世界の私は止めなかったの?!桜や、イリヤ、そういえば慎二も居たでしょうが!」

 

「なんでイリヤまで……慎二とイリヤは聖杯戦争で死んだ!特に…慎二は俺がこの手で殺した!親友も殺して……桜と遠坂は俺を止めようとしてくれたが………俺は聞く耳なんて持ってなかった」

 

「馬鹿ね、筋金入りよ。兎に角!そっちの私に変わって言うわ、衛宮くん!」

 

こっちの遠坂と同じ気迫、どこに行っても赤い悪魔は健ざ

 

「休みなさい!」

 

「は?」

 

「わくわくざぶーんでも、何処でも良いから行きなさいよ。思い詰めすぎなのよ、その点、こっちの衛宮くんは良いわよ。色々とあるけど、元気だもの。良いわね、もっとゆとりを持って楽しく生きなさいよ!誰かに背負った物を手伝って貰うとか!」

 

「フッ………フハハハ…フハハハフハハハハ」

 

「何よ急に笑いだして」

 

「いや、遠坂は何処の世界も変わらないと思ってさ。そうだな、俺は俺、衛宮士郎だがこの世界じゃ衛宮志戸、それで良い、悪いな遠坂」

 

もういい、笑ったら何か吹っ切れた。

 

「そうだ、俺はルヴィア陣営だからな。キャスターのクラスカードは渡さないからな?」

 

「良い顔になった瞬間それ?良いわよ、宣戦布告受けてやろうじゃない!」

 

遠坂は帰った、俺も静かにアサシンと、アーチャーのクラスカードを見る。

 

「力借りるぞ、爺さん、俺」

 

一瞬、クラスカード達が輝いたように見えた。

 

 

 

―――――――

夜、今だけは……このときだけは美遊にも、イリヤにも、誰にも邪魔はさせない。

 

「二重夢幻召喚」

 

アサシンとアーチャーをその身に宿す。

肉体が張り裂けそうな程苦しい、だが…片方は親父、片方は俺の成れの果て。

 

「力を……かせ!!!!」

 

黒い外套にプレートアーマー。

キャリコだけでなくガンブレードとなった干将莫耶を腰に装備し戦える。

 

「……キャスター」

 

そして、サバイバルナイフのかわりに破戒すべき全ての符を鞘に収めた。

 

「今いく……義理母さん」

 

俺が出現したポイントに寸分違わず、爆撃が飛んでくる。回避しながら昔のように俺の身体に全て遠き理想郷を投影する。

 

「固有時間制御三重加速!」

 

地面を駆け抜ける俺、降り注ぐ爆撃。俺は走りながらキャリコをキャスターに向けて撃つ。

魔術障壁を展開され防がれ、キャスター自身もそれに並列して俺に魔術を放つ。

この空間で止まってはいけない、止まれば死。

走り続け、進み続け、キャスターの心臓に〘破戒すべき全ての符〙を突き立てるために。

 

「まさか下からもか!」

 

上だけでなく下からも狙われる。

だが、それならより加速するだけだ。

 

「固有時間制御……四重加速」

 

英霊となった身体が軋む。

中身が張り裂けそうになりながら、俺は走る。

だが…殺したくない、キャスターにも消えてほしくない。

 

(坊や)

 

「宝具二重解放!I am the bone of my sword. So as I pray,時ある間に薔薇を摘め」

 

キャスターを破戒すべき全ての符で斬り刻む。

俺以外の全ての時間が止まったと錯覚した世界の中で涙を流した。

 

「……ありがとう」

 

起源弾ではなく、俺(エミヤ・オルタ)の魔弾を装填したコンテンダーの引き金を引いた。

 

―――――

「まったく!この前よりはマシな顔になったわね、坊や」

 

目の前で、かつて恩師と共に生活していた時と変わらない笑顏を向けてくれる女性。

母親を知らない俺に、母親として愛情を向けてくれた女性。

 

「ごめんなさい……守れなくて………」

 

「良いのよ、あの腐れ神父と英雄王に私が勝てるはずがないもの」

 

「それでも、あの時俺とセイバーが間に合っていれば」

 

「たら…とか、れば…っていうのは変わらないわよ。それに……私に沢山の料理を教えてくれたじゃない。ねぇ…坊や、あの人は……宗一郎様は」

 

「キャスターと……一緒に眠ってる」

 

「最後まで……最後までキャスターを思って」

 

「………そう、それ(破戒すべき全ての符)は持っていなさい。良いわね?」

 

「あぁ、必ず」

 

「………坊や、貴方も宗一郎様と同じ誠実で、純粋よ。セイバーは貴方の前に必ず現れるわ」

 

「伝えるよ、最後まで」

 

「じゃあね、私の坊や」

 

最後、キャスターは俺を抱き締めて消えていった。

 

「ありがとう、義理母さん」

 

 

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