「終わったよ………」
キャスターのクラスカードを見ながら静かに言う。勿論出てきた先で眉間にシワを寄せている遠坂凛がいた。
「ふむ、遠坂凛。どうやら遅かったようだな。キャスターのクラスカードは私の契約者に渡させてもらおう。しかし、そこでプルプルとまるで子鹿のように震えている姿。実に愉快だな」
「黙れこの腐れ神父2号!」
遠坂凛のパンチを回避したらルヴィアの方に飛んでいった。
「やりましたわね、遠坂凛!!」
「今アンタはお呼びじゃないのよ!ルヴィア!!」
殴り合いを始める二人に笑いながら静かに美遊とサファイアの方に行く。
「えっと…お兄様、お一人でキャスターを?」
「そうだ、サファイア。人外を狩るのは私の仕事だ」
「格好いい!ねぇ、この人美遊さんのお兄さん?」
「ふむ、確かに兄ではある。君はイリヤスフィール・フォン・アインツベルンだな。妹をよろしく頼む」
だが、お前も妹である事には変わらない。
そして、何故目覚めない。
イリヤ、君はそこで寝ているだけなのか。
何故、いや……確かイリヤじゃなかったな。
「もう覚えていないか」
摩耗した記憶、自分が衛宮士郎だがそれ以前は既にゴミとかしている。思い出さなくて良い記憶、所詮忘れた過去だ。
「しかし………よくやる」
喧嘩を続けている少女を見ると笑えてしまう。
雑談を交え、笑っていると不意に風が吹いた。
不穏な風だ。いや、俺はソレを知っている。
「熾天覆う七つの円環」
美遊とイリヤを守るように展開する、ルヴィアと遠坂は生憎だが間に合わない。というより、守れない。
「まさか……君なのか、セイバー」
ルヴィアと遠坂を風が襲った。中に吹き飛び、墜ちてゆく二人を救った俺は姿の見えない英霊に声をかけた。
「……」
黒く染まった外装と剣。だが、ソレを俺が見間違えるはずがない。
「………美遊、イリヤ、二人を頼む」
「そんな、英霊と連戦だなんて」
「舐めるなよ小童よ。俺は貴様らよりも数段地獄を見てきているのだ」
時間がない、幸い遠坂とルヴィアは気絶している。
「ストライクエアか!」
干将莫耶で圧縮された空気を斬り裂き、突貫する。しかし、その先にはセイバーが約束された勝利の剣を構えて立っていた。
「顔を……顔を見せてくれ……セイバー」
「……」
無慈悲に振るわれる約束された勝利の剣を弾きセイバーの仮面を奪うために疾走する。
「なんでだ、セイバーなんだろ!セイバー!!!」
干将莫耶が砕かれれば投影し直し何度も弾く。
俺の原点は君だ、だからこそ俺は頑張れたのに。
「セイバー!」
約束された勝利の剣が振るわれる、ビームとなり俺達を飲み込まんと。
「熾天覆う七つの円環!!!」
光が迫った、8枚の花弁を持つ花がその枚数の盾を展開した。しかし、1枚1枚、砕けていく。
(やめてくれ)
3枚目、4枚目
(君を傷つけるなんて俺には)
5枚目、6枚目
(そうか…君はきっと俺を殺すために)
7枚目
(愛している、セイバー。俺の…愛しい女性)
8枚目も砕かれんとするとき、死を覚悟している俺に言葉がかかった。
「シロウ!」
「『I am the bone of my sword
(体は剣でできている)
Steel is my body,and fire is my blood.
(血潮は鉄で心は硝子)
Standing on many corpses
(いくつもの屍の上に立ち)
Imprisoned for eternity
(悠久に囚われる)
Still I seek meanin in my life
(それでも我は生涯に意味を求める)
That’s my why this body
(だからこそ、この体は)
”Infinited sword works”
(無限の剣でできていた)』」
確かに聞こえた彼女の声が。
数多の屍の中、血潮一つ付かずただ美しいままのあの時から変わらない聖剣。
「えっ?!ちょっとなにこれぇぇ!!!」
「……兄さん」
「サファイアちゃん、これって」
「ルビー姉様、もし話せば私達の命がありません」
「ですよねぇ〜〜」
「借りるよ、セイバー」
台座から引き抜き、まるで俺を待っていたかのようにセイバーは俺に剣を振るってきた。
「くっ!ならば…コレは俺が失い臨んだ夢の剣
『唯一つ忘れられない絆の剣(エクスカリバー・ブライダル)』
「!」
俺が宝具を展開したと同時にセイバーも約束された勝利の剣をふるった。2つのビームがぶつかり俺の心象世界に光が走る。
数多の死体が消え去り、月光だけの心象世界に数多の星が輝く。
「約束された勝利の剣!!!
(エクス、カリバー!!!)」
聞こえた、君がそこに居ると。
わかった、キャスターが、いや義理母さんがなぜ、破戒すべき全ての符を渡したのか。
「穿け…破戒すべき全ての符!!!」
俺の矢は必ず当たる、どんなにミスをしても狙った位置へと。
「……セイバー、□□□□□」
光に呑まれるすぐに消えさるかと思ったが、思いの外この身体の対魔力が高かったのか、それとも、別の要因か俺は生き残っている。
「あぁ……何故、お前はそこまで馬鹿なのだ」
「……俺が、君を傷付けるはずがないだろ?」
黒い鎧だが、確かに見えている。
俺には、彼女の瞳が。
「待っていた、待っていたのだぞ。お前を……私は」
「……ごめん」
「お前は……私の鞘なのだ!私の……私だけの物なのだ!」
意識が朦朧としてくる。
目の前で泣いている彼女を抱き寄せ、言えなかったあの言葉を伝えたい……
「待て……行くな……行かないで……行かないでください………シロウ」
泣いているが、血が流れすぎているもう。
俺にはどうしょうもない。
「行くな……逝くな!!シロウ!!!!」
――――
「よく知る天井だな」
「起きたのか、シロウ」
「セイバーに、美遊まで……」
起き上がろうとして気付いた俺の身体に傷のない事に。
「私の鞘だ、返されたがまた貸し出しても構わん。お前は私の鞘なのだからな、シロウ」
「むっ……あの、セイバーさん。先程から私の鞘と衛宮士郎いえ、衛宮志戸は私の兄です」
その言葉にセイバーもむっとした顔で言い返した。
「ならば…契を交わすこともできんだろう。それに……シロウの投影した武器を忘れたか。
エクスカリバー・ブライダル。届いたぞ、貴様の気持が」
「は?」
美遊から不穏なオーラがする、セイバーにはそのとおりだからなんとも言えない。
「あの、いい加減に話してください!私はもう、パンクしそうです!」
そう話すサファイア、俺は包み隠さず話した。
「つまり、お兄様も美遊様と同じく……いえ、また別の並行世界から。そして、そのセイバー様は並行世界で行われた聖杯戦争でお兄様のサーヴァントであり、恋人以上の存在だと」
「そうだ、シロウは私の鞘なのだから」
「でも、お兄ちゃんはお兄ちゃんです」
「……すまない、一旦家を出る」
「待てシロウ、何処に行く気だ」
「……殺し合いだよ」
顔のない王を投影する。パスは繋がっているが、セイバーは俺の居場所はわらがないはずだ。
しかし…懐かしいな。
彼女とこうして繋がっているのは。
俺は自分の死装束を投影する。
言峰と同じデザインの神父服、だが俺のは純白だ。
「来たか、衛宮志戸。その服装という事は……理解しているのだな?」
「カレンもか……埋葬機関も動いているのか」
「いいえ…ただ哀れな信徒を捕縛するだけ」
「それは困るな、まだやることがある」
「ふふっ…衛宮志戸。やはりお前は私の同類だ、貴様は所詮壊れた人形」
「言峰、僕の息子をそちらに誘うのはやめてもらえるか」
「衛宮切嗣……くくっ……クハハハフハハハ!まさか…、こうして貴様と相まみえるとは、しかし……まさか味方とはな」
「あぁ、僕もなんの冗談だと思うよ」
銃口を向ける親父と、ニタニタと嗤う言峰。
そして、何を考えているか理解できないカレン。
「固有時間制御二重加速」
親父のトンプソンコンテンダーに銃口を向けるが、背中から黒鍵が飛んできたが。
ソレを弾けば、今度はカレンの聖骸布だ。
「舐めるな」
黒鍵を投影し、聖骸布を切り裂く。
だが、今度は親父がコンテンダーの引き金を引く。
「っ!」
身を翻し、弾を避ける。コレは起源弾だ、当たれば俺は終わる。
「教会を破壊するつもりか!」
「何、僕には関係のないことさ」
「……この腐れ神父が治しますので」
「……私としては、君が何もしなければ良いのだがな」
「馬鹿を言う」
加速した体で外に出る、ここで気絶させるか殺すかしかない。
「どけ」
言峰の拳をいなし、受け流す。俺の八極拳の師であるこの男、一撃でも受ければ骨が逝く。
「逝きなさい」
「聖骸布が!」
だからこそ、囮として役に立ったのだろうか。
俺の左腕に聖骸布が絡みつく。解こうにも解けない。
「カレン!」
前は嫌味な女だった、でも結局はカレンを見送って消えた。だが、それがどうした。前ということに変わりはない。今の俺は俺だ、だから俺は撃てるはずだ。そのはずだった。
「何故撃てない」
カレンの顔に引き金が引けなかった。
殺したいほど憎んてもいなければ苦しませたい相手でもない。
むしろ、憎しみなら言峰綺礼に向ける物の方が多い。
「やはり貴方は私を撃てない。良い相棒でしたよ」
「舐めるな」
「porca miseria」
カレンの前に黒鍵を投げる。彼女自身が回避し、体勢を崩して倒れ、マグダラの聖骸布の効果は止まる。
「……休んでろ、俺を捕まえたいならせめて身体を労れ」
「言われる筋合いはないわ」
カレンからマグダラの聖骸布を取り上げ、そこら変に捨てる。簡単な治療は自分で行うだろう、今はあの二人だ。
「神父として、どんな者にも手を伸ばすお前は実に素晴らしい信徒だ」
「急にどうした」
「いや、あの根本の性格が歪んでいるシスターにあのように声をかけるとは。無慈悲な代行者ではないと言うことか」
「言峰、あまり僕の息子に話しかけるな」
「私にこのような協力を申し込んだ男の言葉とは思えないな。衛宮切嗣」
周りにも誰かがいる。
「彼の事は此方でも把握したいのだが」
「巫山戯ているな、ウェイバー・ベルベット。いや、ロード・エルメロイ二世か」
「……衛宮志戸。君に封印指定候補者として名が上がり始めている。どうか、一度我々と話して欲しい」
「わかった」
「貴様等、シロウに何をしている!」
「な…セイバーだと?!」
「お兄ちゃん!」
「カレイドステッキ?」
「二人共、場を掻き乱してくれてありがとう。これで俺は封印指定まっしぐらだ」
俺は覚悟を決めて干将莫耶を投影したのだが……
「あら、セイバーじゃない!久しぶりねぇ………元気してた?」
「アッ…アイリスフィール?待て、今そのような」
「仕方ない、言峰、教会を借りるぞ」
「構わないがね、封印指定はどうするのだね?」
「魔術師なら殺せば良い、それに……人形氏ともパイプはある」
「衛宮志戸、お前は私の胃を殺したいのか?おい!」
「ウェイバー・ベルベット、俺に関わった時点で運がなかったな」
言峰教会にさで全員が座るのを確認した後、俺は話し始めた。
「先ず…挨拶をしよう。俺は衛宮志戸」
「違うでしょう」
「…衛宮志戸、もといシロウ・コトミネ神父だ」
カレンがニタニタと笑うのが腹立たしい。
「先ずはじめに、俺は第二魔法によりこの世界に来た存在だ」
「第二魔法、並行世界への移動か」
「流石、ロード・エルメロイ二世だな。ここからは俺の来歴を話そう。俺の過去だ」