「第二魔法、まさか……」
「さぁね、話す必要はないさ。大まかな事は話したろ、並行世界の住人が何故か並行世界の自分自身と暮らす。それがどれ程苦痛だったか」
「それで、士郎いや志戸と呼ぶよ」
「構わないさ親父」
「なぜ、言峰に接触を?」
「……同じだからだ。俺は前から魔術師殺しの異名を受け継いで時計塔やアトラス院、それに雇われ代行者として幾つも命を刈り取った。それに、金を稼ぐには実力を示せば良かった」
「だからといって……シロウ、お前は彼のようになるつもりだったのか!」
「セイバー、俺はアーチャーにはならないさ」
「すまない、そのアーチャーとは?英霊の事では」
「簡単だ、衛宮切嗣の正義の味方という理想を抱いてアラヤと契約した哀れな男の成れの果て。抑止力として永遠に囚われた無様な存在、衛宮士郎の成れの果ての一つさ」
「……志戸、士郎の成れの果ての一つとは?」
「殺生院キアラって知ってるか?」
「えぇ、教会もマーク…そういうことか」
「流石だな、言峰神父。カレンも笑うな。兎に角だ、殺生院キアラは中々に面倒な女でだ、抑止となるはずの衛宮士郎を堕落させ墜ちた衛宮士郎の成れの果て。また、別の世界だと月にあるムーンセルと契約した衛宮士郎の成れの果て、そして……俺のように外道と人外を狩り続ける死装束の神父。まだあるかもな。まぁ、これが衛宮士郎の成れの果ての話だ」
親父は顔を下に向けていた、何も話さない。
「まってくれ、なら私が呼び出したサーヴァントを知っているのか!」
「えぇ、ウェイバー・ベルベット。覚えているぞ、征服王の事もな。嫌な記憶だ、まぁ、貴様の顔面に約束された勝利の剣を振るったのは良い思い出だ」
「巫山戯るな!」
兎に角、並行世界の事は話し終えた。
「では士郎じゃなくて志戸だ。志戸、そこの美遊という子は」
「並行世界の衛宮士郎の妹だ。どうやら遠坂凛の宝石剣の影響で転移したらしい。そこでまぁ、ある種の根源?に繋がってる俺に彼女の記憶が入ってきた」
「並行世界の同一人物の記憶か、確実に封印指定だな」
「時計塔と全面戦争か?良いぜ、知り合いのアトラス院の奴等も巻き込んでやる」
「止めろ、冗談ではない」
「あら、忠犬。その場合私はどうなるのかしら?ねぇ」
「…カレン、止めろ」
話が終わった。兎に角だ、話はこれ以上広げる気はないらしい。教会は優秀な代行者を失う事を恐れ、時計塔はセイバーというサーヴァントと代行者との敵対を恐れ、親父達は何も言わない。
「そういえば…ねぇ!志戸、貴方って前の世界で死んだって言ったけど…子供はいるのよね?」
「……アイリ、ここで聞くのかい?」
あからさまに魔力を感じる、背中にひしひしと冷たい魔力を。
「……いない」
「嘘だな、私の直感がそう言っている。シロウ、誰の子だ。サクラか、リンか、それとも別のか」
「待ってくれ、セイバー。その士郎って」
「そうだな、少なくとも私とリンとはしたな。サクラとも行っていてもおかしくない」
「……お兄ちゃん?」
「美遊様、落ち着いて下さい!美遊様!」
美遊がハイライトが消えた目で転身し、俺にステッキを向けている。
セイバーも約束された勝利の剣を俺の肩に………
「………あら、何時も私に熱い視線を向けたというのに、忠犬は……」
「何でこっちのお前が……あ」
「聞かせろシロウ早く!」
「リンと一人、サクラと一人、カレンと二人子供を作りました。ついでに前の名前はシロウ・衛宮・オルテンシアでした」
「忠犬、」
「シロウ」
「お兄ちゃん」
「ふふっ、切嗣、私の子供は人気ねぇ」
「あはは……僕は君だけで良いさ」
「フッ、まさかお前がこのように笑うとはなぁ」
「だまりなさい外道神父」
俺さ、真面目な話してたんだぜ。
なんで、ここまで痛めつけられなきゃ行けないんだよ。
「なんでさ」
翌日は学校に行かなかった。
セイバーと美遊の機嫌を治すのにかなり時間を食った。腹立つのはセイバーの味覚が残念になった事だ。
「むっ…シロウ、私はハンバーガーを所望したぞ!」
「セイバー、ハンバーガーも良いけどな。こうして皆で同じ食卓で食べるのが良いんじゃないか、昔みたいに」
「まぁ…嫌いではない」
「セイバーさん、お兄ちゃんは渡しません」
「ふっ…小童よ、シロウは我が鞘だ。諦めろ」
《ガルルルル》
「美遊様、女の子がしちゃいけないです。その顔」
サファイア、我が家の常識枠
美遊、妹ブラコン
セイバー、エンゲル係数消費量増加枠
俺、殺戮者
やばいな、まぁ、嫌いじゃないが。
「行ってきます!」
「おう、イリヤによろしくな!」
そんな話を朝した。今は……
「シロウ、運転を」
「駄目、せめて服を買ってからな」
なんて話をしたんだが、何故かセイバーは黒い服を好む。逆に俺は白い服を好むけど、基本的に白いスーツだし、何か白黒で……駄目だ。
「そう言えばだ、シロウ。アレの意味だ」
「何だ、セイバー」
「言わせる気か、『唯一つ忘れられない絆の剣(エクスカリバー・ブライダル)』の事だ」
「あっ……」
「ブライダルだなんて……私は」
「嫌……違わないけど、その俺も」
「ん!」
「セイバー?!」
「今はこれだけだ!行くぞ!他にも買いたい物があるのだからな!」
頬に伝わった暖かな感触、ソレを体感だと何十分を感じていたと思う。
「行くぞ、シロウ!」
「待てよ、セイバー!それに、俺は志戸だよ!」
――同じ時間別の場所で
「えっと……美遊さん?」
「何、イリヤ」
持っていた鉛筆が急に砕け、教室に大きな音が響いた。
「えっと…………うん、誰も何も見ていない!いいわね!諸君!」
「はい!タイガー!」
「タイガー言うな!」
――――
「シロウ、どうだ!コレは!!」
「………」
それは漆黒のドレスだった、セイバーのイメージは青だった。でも、今の彼女は何者にも染まらない。漆黒の黒。
「……似合ってる、俺も……君になら染められて良い」
「そっ…そうか、まぁ……シロウがそう言うならな。しかし……私もシロウは赤が似合うと思ったが、白か、良いな」
「純白のスーツさ、なぁ……セイバー」
「どうした、シロウ」
「ゴメンな、すぐに迎えに行けなくて」
「……良い。それに、感じていた。シロウ、何度も私の墓所に足を運んで居たのだろう?」
「…そうだな」
「それに、今の私は生きている。魔力でもなく、生きているんだ。シロウ」
「令呪もない、でも確かに君を俺は感じている」
「私は剣で」「俺は鞘だ」
「だが、言うぞ。小童には渡さない、あのシスターにもだ」
「………」
「別に妾を持つなとは言わないが、正妻は私だ。そこは譲らんさ」
「………セイバー、何か食べよう」
「あぁ、シロウ」
セイバーが飲食店に消える、俺もソレを追いかけようとした瞬間
「貴様はやはり死なねばならないさ、衛宮士郎」
虚空から響く声に何もできなかった。
「シロウ?どうした……シロウ!」
寒い…遠く……何も………
――――
「シロウ!逝くな!!何故だ!何故アヴァロンが!破戒すべき全ての符だと?いや……違う、コレは」
私の目の前でシロウは倒れた。純白の衣装は赤く染まり、背からは破戒すべき全ての符が生えていた。私は知っている、これが贋作だと。
「アーチャー……貴様は何処まで」
シロウの成れの果て等という存在は関係ない。
私の鞘を、私のシロウを傷つけたのだ。
アーチャー、
「必ず殺してやる」
私はシロウをバイクに乗せると記憶にある学園に向かった。覚えている、あの女、遠坂凛が居るはずだ。
「失礼するぞ」
「なっ!何だ君は」
「遠坂凛、来てもらうぞ」
「ちょ!待ちなさいよ!」
騒ぐ遠坂凛を引っ張り、バイクに近づかせる。
「なによこれ、なんで…志戸君が」
「何をだと?アーチャーは貴様のサーヴァントだろうが!」
「待て……セイバー」
「シロウ!喋るな、すぐに」
「遠坂……聞いてくれ、アーチャーの…クラスカードはどうなった」
「それならイリヤが」
「……俺はアーチャーに襲われた。もしかしたら、セイバーと同じくクラスカードを媒体に再び召喚されたのかもしれない。気を付けろ、彼奴は……衛宮士郎の成れの…果て…だ」
「シロウ!遠坂凛、貴様の家と我が家!何方が魔術結界として優秀だ!」
「それは……志戸君の家よ、」
「ならば…最初から向かえばよかったのか、すまないシロウ。アーチャーは私が必ず殺す、だから安心して待つといい」
「………」
シロウは既に喋らない。
破戒すべき全ての符のせいでアヴァロンによる回復が阻害されている。
どうすれば良い、どうすれば。
「……君は僕を頼りはしないのかい?セイバー」
「……キリツグ!どけ!私はシロウを」
「手当ぐらいなら可能だ、サーヴァントとの戦いは苦しいが、忘れていないかい?アインツベルンだよ。我が家は」
―――
「冬木にあるアインツベルンの古城、まさか再び使うことになるとは」
「キリツグ、シロウを利用するのなら貴様を斬る」
「安心してくれ、セイバー。自分の子を裏切る事はしないさ」
どの口がとセイバーはその言葉を飲み込んだ。
少なくともイリヤスフィールとシロウに対してキリツグは純粋だった。と記憶しているからだ、イリヤスフィールに関してはすれ違いがあったが、
シロウが何かしたのは覚えている。
「ここだ」
「コレは何だ?いや…コレは」
「……そうだ、あの武家屋敷よりもこの城のほうが霊脈の収束地として優秀だ。ここに志戸を寝かせよう」
それは自分の記憶にすらない泉、魔力が満ちかつてのブリテンの泉のような気配すらある。
「ここは……」
「言ったろ、霊脈の収束地だ。ここなら志戸も助かる、かもしれない」
キリツグはそう言いながらシロウを泉に沈めた。
本来溺れ死ぬはずだが、何故かシロウは生きている。それどころかシロウを中心に波紋が広がっている。
「志戸は無事さ、ここは元々日本の禊に使われていた場所だ。神様はもういないけど、神聖さは変わってないはずだ」
「そうか、ならば…この泉の神よ。どうか、我が鞘を頼みます」
私は約束された勝利の剣を泉に刺し、祈った。
「行くのかい?」
「アーチャーを殺す、でないとシロウは狙われ続けるだろう。今のシロウを殺そうとしているのはあくまでもアーチャーの意志だ。ならば…アーチャーを殺せば終わる」
「…良いだろう、ただセイバー。負けるなよ」
「誰に物を言う、私はアルトリア・ペンドラゴン。騎士王と呼ばれた女だ」
私は約束された勝利の剣を腰に携え、アーチャーを仕留めに向かった。