アーチャーの現界事件は終わった。
遠坂とルヴィアは何か話したいようだったが、結局何も言わないでくれている。
「志戸!お前……今日はサボらず来たのだな」
「……柳洞か、サボってるわけじゃない。最低数しか来る気がないだけだ。それにだ、何か言いたいなら全教科満点取ってみせろ。俺は興味ないがな」
「…スポーツ万能、成績最優秀、だが性格が全てを打ち消している。のにもだ、今日は珍しく機嫌が良いな」
「何……いい日になると思ってな」
それは偶然だった。
「衛宮志戸、居るか」
「葛木先生、どうしました」
昼を食べようとしていると葛木先生からお声掛けが来る。並行世界であるここでも葛木先生は変わらず恩師だ。
「あぁ、藤村先生から家庭科の臨時メンバーとしてお前が選ばれた。一応聞くが、勉学は問題ないか」
「一応、ハーバードかMITなら余裕で受かれる頭はありますし、高校レベルなら3年前に全て終了済みです」
「わかっている、なら良い」
という会話があったのは50分前だ。
「シロウ、ご飯だ」
「……だっってぇ…どうせならセイバーちゃんも一緒に食べようかなっ?て思ったりしちゃったわけだぜ!」
「……まじか………食材、たりないよなぁ……」
(セイバー、一食だ。おかわりも無いからな)
(シロウ!それは私になんと!)
子犬みたいに泣きそうなセイバーがいる。
やめてくれよ、何時も食べてるだろ?
今朝もたらふく食べたのに…………
(帰ったら同じの作るから……な?頼む、セイバー)
(判った……我慢しよう)
セイバーは食べ物の事になると人が変わるというか……まったく。
「初めましての子は初めましてだな、衛宮志戸だ。イリヤと美遊の兄的存在だ。此方はセイバー、まぁ…俺の味見役だ」
「はいはーい!それは…私もいいんでしょ!」
生徒の前だぞ、いい加減にしろ。藤村!!
「藤村先生、生徒の前です。はい」
「………君達、藤村先生を監視しててくれ。既に飢えた虎なんだ」
「「「はい!」」」
と言っても俺がやることは藤ねぇとセイバーの分を作るだけ。
今回作るのはローストビーフ。
正直お高めのお肉なんだが…藤ねぇが食べたいらしくて自腹叩いたらしい。
「美遊は…少しソースの味が濃い目だな」
「判りますか」
「肉に合わせるとしてもそうだな………いや俺は好みの味だ」
「……ありがとうございます」
ソースを軽く舐め、頭を出してきた美遊を撫でる。美遊は素直じゃない仔猫か?
「美遊さん、凄く赤くなってる!」
「うわぁ……可愛い」
「えっ…!いや……あの!!」
「じゃあな」
続いてだ、イリヤの方に行くのだが………
「……イリヤ、俺は行ったぞ。直ぐに呼べとな。コレは何だ?」
「……ローストビーフです」
肉は真っ黒に焦げ、ソースはただ不味い。
塩味か甘味かとも思ったが、舐めて感じたのは刺激だ。何を入れればこうなるのか。
「君達もだ、そうだな………丁度よい。俺は衛宮士郎(正義の味方)じゃないからはっきり言ってやる。食材への冒涜だ、できるできると高を括った結果がこれだ。しかし………アレンジ精神は褒めてやる。型に囚われない料理という物もある種必要だからな。レシピに沿ってばかり……それでは己の料理とは言えん。ふむ、肉はまだ食べれるな、ソースを……ふむ、何とかマシになった」
「嘘……美味しい」
「衛宮さん格好良い!」
「なんで…」
「イリヤ、セラに学べ。少なくともマシにはなるだろう」
――――――
授業が終わって下校時間になったときだ。
私はもう一人のお兄ちゃんの以外な一面を見た。
私、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンにはお兄ちゃんが二人いる。
衛宮士郎と衛宮志戸。
衛宮士郎はお兄ちゃん、衛宮志戸は志戸お兄ちゃんと私は区別している。
堅物で女っ気がなくて、何時も私を悪く言う。
正直、志戸お兄ちゃんは皮肉屋だと思ってたのに……まぁ、撫でてくれたりセラに内緒で色々買ってくれるけど……
「へぇ……セイバーさんが………フフフ」
面白いネタを見た、これをセラとリズお姉ちゃんに見せれば……
「お兄ちゃん……なんで………なんで………」
「おや、イリヤさん、コレはバレたらまずいのでは」
「イリヤさん、見たら不味いのでは?流石に志戸さんを巡る三角関係に突っ込むきは」
「あら、元気でいるのね。忠犬、それに………あらあら、青い騎士王が真っ黒に」
「前々から思ってたが……カレンってもしかして」
「あら、イタリアで私に忠犬があんな言葉を話したなんて……覚えていないわよ?」
「待て!ここで話すな!」
「お兄ちゃん?」
「シロウ!それはどういう事だ」
「待てセイバー…って美遊まで?!」
「うはぁ!!四角関係!中々無いですよ!しかも士郎さんと違って朴念仁ではない!いやぁ……凄いですね志戸さん!歳上!同い年!年下!選り取り見取りの」
「ルビー、黙って!」
不味い、美遊さんが一瞬こっちを見た。
かなり不味い、バレてるかもしれない。
「……カレン、俺に何だ?あるんだろ、仕事か?」
「シロウ、仕事とは」「お兄ちゃん?」
「えぇ…まぁ……警告よ。貴方の妹、他の家族は知ってるのかしら」
「カレン、美遊の」
「違う、カレンが言いたいのはアレの事だな」
「シロウ…アレとは?」
「えぇ…だからその子と盗み聞きしている駄猫はさっさと帰りなさい」
「美遊、すまない。ルヴィアと合流してほしい、この件は聞かれたら不味いんだ」
「判った、サファイアわかってる?」
「大丈夫ですよ、では行きましょう。美遊様」
美遊さんは私の方に真っ直ぐ歩いてきた。
「イリヤ、行くよ。ルビー、サファイアも」
「え〜気になりま」
その時だ、ルビーを挟むように何かが飛んできた。それは…歴史の授業でみた雁股矢だ。
「…喋るな、カレイドステッキ。ここで運命を終わらせるか、それとも……どうするか、選べ」
「生きたい!」
「疾くと、失せろ」
それは…アーチャーと名乗ったあの人と同じ目だ。やっぱり、志戸お兄ちゃんはルヴィアさんの協力者なんだ。
なら、秘密を探るのも………
「ルビー!!!取れない!!!」
「イリヤさん!折れる!ルビーちゃん折れちゃうから!!!」
気づいたら美遊とサファイアだけが残ってた。
志戸お兄ちゃん達を見失った……無念。
あれ?美遊って、志戸お兄ちゃんの……え?
――――
「それで、カレン。話はいったい?」
「わかるかしら、あの子。そろそろ溢れるわよ」
「シロウ、どういう事だ」
「……なんでカレンがソレを知っているのか、実に気になるが……良いだろう。セイバー、イリヤをどう思う」
「何を…並行世界だからか随分と」
「そうだな………セイバー、イリヤが幼い頃に出会ってるんだよな。前にもそれで色々とあったし」
「あぁ、だがこちらのイリヤは私を見ても」
「……まぁな、イリヤが生まれたのは聖杯戦争の大体8ヶ月前だ。別にそこは並行世界の位差だと思えば良い。だが……聖杯としての力は持っていた」
「……まさか、いや……それでは」
「そうだ、イリヤは聖杯だ。魔術回路も変わらずある。だが、使い方は愚か知識もない。セラもリズも、衛宮家の全員が魔術を隠していたのさ。俺がバレるまでな」
「シロウがバレるとは………いったい誰に」
「リズだった、そこから親父と母さんに伝わったんだろう」
「シロウ、それは」
「どうでもいい、今はイリヤだ。何故、教会のお前が知っている。カレン」
「フフッ……忠犬、それは言えないわ。もう一度、私の忠犬になるなら」
「…シスター、それ以上私のシロウに近付くな」
面倒な事になり始めた、イリヤの事もだが……誰か、助けてくれ。
というより、カレン、お前は本当に何なんだ?