「ほう、こやつ等が古の勇者たちか……」
目の前に立つ4人を見て、メルロマルクの王―――オルトクレイ=メルロマルク32世はそう呟いた。
ここは、メルロマルクの城の王の謁見の間。
この国はとある事情により、先程伝説の4人の勇者を召喚したばかりであった。
そして、王は召喚した勇者との謁見を家臣に命じ、現在その勇者たちと対峙していた。
王の前に立つ4人の姿を改めて観察する。
剣を持った鋭く光る切れ長瞳とどこか中性的な顔が特徴のクールそうな青年
槍を持った軽薄そうな印象を受けるが面倒見が良さそうで色々な人間に好かれそうな青年
弓を持った大人しそうではあるが正義感が強そうなウェーブパーマの青年
盾を肩に装備したでっぷりと出た腹にギザギザヒゲの極悪人の様な人相の臭そうな中年(?)
王はその4人の中の最後の男――臭そうな中年を舐めるように見つめる。
………別に1人だけ場違い過ぎて思わずガン見してしまったわけではない……半分くらいは
(…………こやつが盾の勇者か……)
メルロマルク王は頭の中で考えた。
実は、メルロマルク王はとある理由から盾の勇者を憎んでいた。
この初対面の男に何かされたわけではなく、盾の勇者という
だからこそ、メルロマルク王は臭そうな男を見てめていた。こいつに自分の憎しみをぶつける算段をするために……
「あの……王様……?」
あまりにも長く沈黙が続いたためか、家臣の1人が心配そうに顔を覗き込む。
「むぅ……すまん、考え事をしていたのだ………ワシがこの国の王、オルトクレイ=メルロマルク32世だ。勇者共よ面を上げい」
メルロマルク王は、威厳のある声で言った。
………誰も頭を垂れていないのは、ツッコミなしである。
「さて、まずは事情を説明しなければなるまい」
そう言うとメルロマルク王は、この国のこと、この世界のことを説明し始めた。
この世界には終末の予言というものがある事
いずれ世界を破滅へと導く幾重にも度重なる魔物の大群の侵攻、通称「波」の脅威が迫っていること
その厄災を防ぐ為に、国の重鎮たちと相談し、伝承にあった勇者償還の儀式を行った事
「話は分かった。で、召喚された俺達にタダ働きしろと?波を押しのけて平和になった後、俺達をお払い箱にする気ではないか?」
「都合のいい話ですね。せめて平和になった時の報酬と、元の世界に帰れる保証を付けて欲しいものです」
「………そうだな、自分勝手としか言いようがない。滅ぶなら勝手に滅べばいい。俺達にとってどうでもいい話だ」
盾以外の勇者が不平不満を隠さずに漏らす。
その表情や声色からは「報酬が欲しい」「自分たちの待遇を良くしたい」という魂胆が透けて見えていた。
(まったく、浅はかだな……)
王は心の中で勇者たちを見下した。
「もちろん!勇者様方には存分な報酬を与える予定です!!」
王の隣に控えた臣下の者が言った。
その言葉を聞き、“グッ!”と拳を握る勇者たち………せめて隠すとかして欲しいものだ。
「他に援助金の用意もできております。勇者様達には世界を守っていただきたく、そのための支援は惜しまない所存です」
「へー………まぁ、約束してくれるなら良いけどさ」
「俺達を飼いならせると思うなよ?敵にならない限りは協力しておいてやる」
「ですね」
援助金の話も出て、満足そうにニヤつく勇者達。
………これ以上、こいつらの醜態を見るのも苦痛なので、早めに話を切り上げるか。
そう考えた王は話を進めようとする。
「では勇者達よ。それぞれの名「ちょーっと待った!!」むっ?」
しかし、その話に待ったをかける者が現れた。
声のした方向を見ると、臭そうな男が手を前に突き出していた。
「………どうかしたのか勇者よ?」
メルロマルク王は、話を途中で切られて“ムッ”としながら男に聞いた。
「おう!存分な報酬ってーと、具体的にはどれくらいだよ?それと支援金についても最低いくら保証してくれんだ?」
臭そうな男は、先程の報酬の話を聞いてきた。また金の話か…
「おいおっさん!その話はもう済んだだろ?次の話へ進もうぜ」
「そうですね。それ以上のお金の話は金にがめつい人としか思われないですよ」
そんな男の姿を見て、流石に欲張りすぎだと他の勇者も男を非難する。
しかし、男は悪びれる様子もなく、逆に呆れた顔で他の3人に向き直る。
「おいおい…こういう金の話は後々絶対揉めるから、わかるときにはっきりさせた方がいいぜ?お互いの認識の違いとかあるからな。城を貰えるって言われて全財産叩いたのに、貰えたのは鳥の巣でした~とか、実は海賊とも取引してたので報酬は全部海賊の総取りです~なんてこともありえるんだからな」
「いやありえねぇだろ!?なんだよ鳥の巣って!?」
「支援金の話も、いくらくらい貰えて周期はどの程度かはっきりさせた方が金銭管理やりやすいだろ?それに国の財政にも左右されそうだし、最低保証金額だけでもこの場ではっきりさせた方がいいだろ?いざ旅に出てから『実は国の財政が悪化していたので、キノコ1個買えるくらいしか出せません~』なんて言われても、何も言えなくなるぞ」
「……確かに、一理あるな…」
「………そうですね。『金の切れ目が縁の切れ目』という言葉もありますし」
「だろぉ~?それにいいのかお前ら?報酬の話に夢中で元の世界に帰るって話が完全になくなってるぞ?俺様は大金手に入れたとしても、元の世界には帰りたいぞ」
「……あっ!そう言えばそうだな……そこのところどうなんだ?」
しかし、男の話を聞くにつれ、他の勇者たちも言い包められそうになっていた。
この、余計なことをしおって……!!
王は益々盾の勇者のことが嫌いになった。
「えぇ~っと……報酬に関しましては具体的には言えませんが……世界を救ってもらえるのですから、それはもう今後お金のことで不自由はしないくらいには出させていただきます……元の世界への帰還に関しましては………そのぉ…………」
帰還のことに関して、臣下は言いよどみ、王の顔をチラっと見る。
……やむを得んか
「…帰還に関してだが、実は方法がない。代わりの勇者を召喚しようにも、前に召喚した勇者全員の死亡が条件と研究者が語っている」
「「「なっ…!?」」」
その言葉を聞いた勇者3人は動揺し、言葉を失っている。
盾の勇者だけは、「やっぱりか……」と見透かした表情を浮かべた。
「し、しかしご安心下され!!今国の研究者たちが総力を挙げて勇者様方を帰還させる方法を探させております!!時間はかかりますが必ず見つけ出せるでしょう!!」
「だから、何卒お力をお貸しくだされ!!」と咄嗟に頭を下げる臣下。
その姿を見て「まぁ、そういうことなら……」と動揺が一旦落ち着く勇者達。
しかし、ギザヒゲ男はその姿も胡散臭そうな目で見ていた。
「……では、改めて勇者達よ。それぞれの名を聞こう」
場が落ち着いた瞬間を見計らった王は、勇者たちの名を問うた。
「俺の名前は天木錬だ。年齢は16歳、高校生だ」
剣を持った勇者――天木錬は一歩前に出て名乗りを上げた。
「じゃあ、次は俺の番だな!俺の名前は北村元康、年齢は21歳、大学生だ」
槍を担いだ勇者――北村元康は自信に溢れた笑みを浮かべた。
「次は僕ですね。僕の名前は川澄樹。年齢は17歳。高校生です」
弓を携えた勇者――川澄樹は大人しく、しかし力強く応えた。
「ふむ。レンにモトヤスにイツキk「俺様が有名なワリオ様だ!!ぐわっはっはっはっはっは!!!」……………と、ワリオか……」
王は盾の勇者を無視して話を進めようとしたが、盾の勇者――ワリオの自己主張が激しすぎる自己紹介に、無視するという選択肢はなくなってしまっていた。
他の勇者達も「圧が強いなぁ…」という引き気味の視線を向けている。
「ちなみに23歳だ」
ワリオが話を続け………!?
「はぁぁ!?23歳って嘘だろ!?どう見ても40代のおっさんだろ!?」
「むっ?失礼な奴め、俺様はまだピッチピチの20代だぞ」
「いや、そのビール腹で20代は無理あるだろ!?」
「そうですよ!サバを読むにしてももっと現実味のある年齢にしてください!」
「(コクコク……)」
ワリオの年齢に驚き、他の勇者たちが反応し、軽い言い合いになる。
王は早く話を進めたくて、「なんとかしろ」という視線を臣下に向ける。
しかし、臣下もワリオの年齢に衝撃的過ぎて唖然としており、その視線に気が付いていない。
…………いつになったら終わるのだ、この話は……!!
その後、ワリオの年齢の話が収まったのは良いが、支援金の話に脱線したり、ワリオが便意を催し「トイレはどこだぁ!?」と騒ぎ始めたりなど、王のイライラタイムは続いた。
「うーん……ここって、やっぱりゲームの世界っぽいよなぁ……」
豪華なベッドの上に座り、モトヤスは呟いた。
なんやかんやで王の話が終わった後、4人の勇者たちは来客用の部屋に通されていた。
勇者達は、王の説明に合ったステータス画面というのを開き、自分の能力などを確認している。
……ワリオだけはステータス画面を開かず「飯はまだか…!」と貧乏ゆすりをしている。
「というか、有名なオンラインゲームじゃないか?あれだよ、ブレイブスターオンライン!」
「違うだろ、VRMMOのエメラルドオンラインだろ」
「2人とも何言ってるんですか?コンシューマーゲームのディメンションウェーブですよ」
ステータス画面を確認していた3人は何気なく言った。
しかし、3人とも「ここはゲームの世界」という認識は共通しているが、そのゲームタイトルはそれぞれ違ったものであった。
「はぁ?なんだそのゲーム?てかVRMMOって現代の技術じゃ無理だろ」
「お前らこそ何を言ってるんだ?オンライン?コンシューマー?そんな化石みたいなゲームを何故今でもプレイしているんだ?」
「……なにか、おかしいですね」
3人は認識の差異に違和感を覚えた。
「あん?なんかあったのか?」
そんな空気感を感じたのか、ワリオも会話に入ってくる。
「あぁ、おっさ……ワリオ、最新のゲームと言ったらなんだよ?」
モトヤスはワリオに聞く。
23歳というのは今でも信じられないが、おっさんというのも失礼だと感じ名前呼びだ。
「最新のゲームぅ?そんなもんSwitchに決まってんだろ?」
「「「なんて?」」」
3人は聞き覚えのないゲームに疑問符を浮かべた。
「ちょっと待て、いくら何でもそれぞれの情報が食い違いすぎている……一般常識だ。お前ら、今の首相の名前を言ってみろ」
「しゅしょー?なんだそいつ?食いもんか?」
「あぁ…ワリオさん外国人っぽいですもんね……自分の国で一番偉い人のことです」
イツキに補足されて、ワリオはようやく理解した。
「一斉にいうぞ。せーの……」
「湯田正人」
「谷和原剛太郎」
「小高緑一」
「ダイヤモンド城の殿様。名前は知らん」
「……いや誰だよ!?てか殿様っていつの時代だよ!?」
「ん?殿様ぐらいどこにでもいるだろ?多分」
「いねーよ!!」
「ははっ…どうやら僕達は別々の日本から来たみたいですね」
「そのようだ。間違っても同じ日本から来たとは思えない。というか、1名は日本かどうかもあやしい」
こうして4人は、互いが別々な世界から来たことを理解した。
4人は話の流れで、自分がこの世界に来る前のことを語りあった。
レンは殺人犯から幼馴染を庇ったところが最後の記憶
モトヤスは二股の末の愛憎劇に刺された記憶が最後
イツキは塾帰りにトラックに轢かれたのが最後の記憶
「俺様はゲームを作るための情報収集に本を開いたらここに居たのだ」
ワリオもここに来るまでの最後の記憶を答えた。
「ゲーム?ワリオはゲームを作ってるのか?」
「おう!俺様はゲーム会社の社長だからな!」
「へぇ!ワリオさん、社長なんですか!」
「…意外だな」
ワリオが社長という事実に他の勇者たちも驚く。
「へぇ~どんなゲーム作ってたんだよ?」
「ふふ~ん、俺様の作った『メイド・イン・ワリオ』シリーズは大ヒットタイトルで、ガッポガッポ稼いでたんだぜぇ~」
「えぇ…自分の名前をタイトルにしてんのかよ…………でも、いくら社長でも、盾じゃあなぁ……」
モトヤスは、ワリオの肩についている盾を見ながら落胆したような表情を浮かべる。
「なんだよ?これがどうかしたのか?」
ワリオは盾を“コンコンッ”と叩きながら聞いた。
「いや~……俺の知ってるゲームの話なんだが、盾の職業は負け組職業なんだよ。後半になると、盾でもカバーしきれない程のダメージがエグくてな…」
モトヤスが気まずそうに答えた。
他の2人の反応も似たようなもので、ハズレの職業だということがわかる。
「なんだ、そんなことか」
しかし、ワリオはそんなことはどうでもいいという様な反応を示した。
「なんだって……ほとんど役に立たない職業なんだぞ?それでもいいのか?」
「構わねぇよ。多分何とかなんだろ」
ワリオは自信満々に答えた。
それもその筈、ワリオが冒険するときは、基本的に力に任せたパワープレイで、プロレス技やタックルなどの近接戦を好んでいる。
逆に剣や槍、弓なんかの武器は使い慣れていないため、最悪打撃武器にできる盾の方が都合が良かったのだ。
「……強がり、ですかね………」
「………フン」
しかし、盾の不遇さしか知らないイツキとレンは、それは一種の空元気であると捉えた。
「ま、まぁ…同じ勇者のよしみだ!助け合っていこうぜ!」
モトヤスは、そんなワリオに気を遣って励ましの様な言葉をかけた。
「勇者様、お食事の用意ができました」
そんな4人の元に、、食事の用意が出来たことを伝える案内人がやってきた。
「おぉ!やっとか!早く案内しろ!!」
「はっ、はいぃ…こちらです…他の勇者様方もどうぞ……」
“ずずぃ!”と顔を寄せてくるワリオに引きながらも、案内人は食堂まで案内しようとする。
「おまっ……本当に大丈夫かよぉ……」
「まぁ、本人が大丈夫って言ってるんですから、良いんじゃないですかね?今は腹ごしらえでもしましょうよ」
「そうだな」
ワリオの食い意地に呆れながらも、他の3人も後に続いた。
食事の最中に、これまた一悶着あったのだが、それはまた別のお話
ワリオは書きやすいんだけど、気を抜くと両津勘吉になりそうなんだよなぁ…
続くかは未定…
マリオ映画公開中なので、是非映画館へ!
ここまでご拝読ありがとうございました