隣の部屋の前に黒ずくめがいたから金○を蹴り上げてやった 作:ハッピーエンド大好きクラブ
「なぁなぁルビーちゃん。いっこ聞いてもええ?」
お昼休み。今日はお弁当じゃなくて食堂で学食を食べることにしたルビーとみなみの二人。
味噌ラーメンを食べていたらみなみから聞きたいことがあると尋ねられた。
「なになに?」
「虎次郎君ってよくルビーちゃんのこと好きだって言うやん?あれってちっちゃいときからそうなが?」
「うん。何回も求婚されたことあるよ?」
なんなら幼稚園児の頃から現在進行系でアピールされてる。でも虎次郎は「好きだ」って気持ちを強引に押し付けてきたりはしない。
「そうなんや。今ガチであかねちゃんが虎次郎君攻めてるやん?照れてる虎次郎君可愛いなぁおもて」
「あー、虎はピュアだから……好きな人にはグイグイ行けるけど」
「そんなら虎次郎君の好きな人ってルビーちゃんなんや」
「そうだけど……今はどうなんだろ」
思い返してみれば小学生のときはほぼ毎日のように虎次郎から告白されていた。
気を引きたいのか授業中に消しゴムを近くに落としてきて拾ってくれるのを待ってたり、重い荷物を運ぼうとしたらわざとらしく手伝ってくれたり。
バレンタインの日は私からチョコを貰えると思ってそれとなく話題を振ってきたりしてた。
試しに十円チョコをあげてみたら目をキラキラさせて学校中を走り回ってた。
シマウマの被り物を被って求婚してきたときは反射的にランドセルでぶん殴ったがあれはやりすぎたとちょっと反省してる。
「初めて会ったときが保育園のときで…………私とお兄ちゃんにちょっかいかけてきたから殴ったの」
「殴ったんや…………」
「ムカついたから」
からかわれる度にぶん殴って泣かせたのが功を奏したのか、近づくとびっくりして園長のところに逃げ出していたのはよく覚えてる。
そこから小学生になって、調子を取り戻した虎次郎からアピールされて、求婚されての繰り返し。
「ルビーちゃんは虎次郎君のこと意識してないん?」
「男の子としては意識してないよ。でも…………」
「────でも?」
「もう一人のお兄ちゃんとして尊敬してる」
小学三年生のとき、公園で虎次郎とクラスメイトのみんなで遊んでいて将来はどんな人になるのかを一人ずつ言い合う遊びを始めたことがある。
消防士さん、お姫様、スーパースター、ユーチューバーとみんな楽しそうに夢を口にしていく。
ルビーは前世から抱いていた夢、アイドルになることを高らかに宣言した。
そんなときだ、近くで遊んでいた上級生の太っちょな男の子三人組がルビーに砂をかけてその夢を馬鹿にしだした。
「お前みたいなブスがアイドルになれるわけないじゃん!」
「私は本気だもん!絶対アイドルになるんだから!」
「嘘嘘!お前がアイドルなんかになれたら世も末だよ!」
また砂をかけようとした瞬間、リーダー格の太っちょの顔面へ虎次郎が豪快にドロップキックを決めた。
思い切り顔を蹴り飛ばされ、地面を転がっていく。
ルビーは唖然として虎次郎へ目をやった。
立ち上がった虎次郎は呆然としている上級生たちへ腹の底から言葉を叫ぶ。
「ルビーの夢を、なんも持ってねぇ奴が笑うんじゃねえよっ!!!!」
怒声が響き渡る。こんなに怒っている虎次郎を見るのは始めてだ。
「ルビーはアイドルになるって決めたんだ!夢を抱いてんだ!立派な夢じゃねぇか!人を笑うことしかできねぇテメェ等と違って、ちゃんと、前を見てるんだよ!!」
「な、なんだよお前!調子乗りやがって、ぶっ飛ばされ────」
喋る暇も与えず、渾身の力を込めて右側の上級生を殴りつけた。
拳と拳の殴り合いが勃発し、太っちょ三人組はぐうの音が出ないほど虎次郎に半殺しにされて泣きべそをかいて立ち去って行った。
「豚が、調子乗りやがってよ」
「虎……大丈夫?」
「ん?ああ、鼻血出てっけどまあ大丈夫だろ!あれ、みんなは?」
クラスメイト達は親を呼んでくると行ってしまったきりだ。
ルビーはハンカチを濡らして虎次郎の鼻に当てる。
虎次郎はルビーの髪を払って砂を落としながら「アイツ等にお前の魅力は伝わってねぇんだな」と落胆したように口を開く。
「ルビー、夢ってのは周りから笑われるもんだ。否定もされるしバカにもされる。それでも諦めなかった奴が叶えられるもんだと俺は思ってる。だから諦めんなよ?俺はお前を応援してんだからな」
「うん…………ありがとう」
アイのようなアイドルになる夢を虎次郎はずっと信じて応援してくれる。
「私がアイドルになる夢を一番側で応援してくれるのは、お兄ちゃんでもママでもなくて虎なんだよね」
他の誰よりも虎次郎はルビーが究極無敵のアイドルになれると確信している。だからルビーは虎次郎の期待に応えたい。
気持ちには応えられないとしてもだ。それを虎次郎は分かってくれている。
「だから私はアイドルになるの。絶対に」
「ウチも応援してるからね、ルビーちゃん」
ルビーはニッコリと笑う。その笑顔はアイとそっくりで人を惹き付ける魅力があった。
────────────
「よし。完成だな。後は袋に入れっと」
明日は「今ガチ」の収録日。虎次郎はこの前あかねから貰ったクッキーのお返しとしてキッチンでチョコレート・クッキーを焼いて袋に詰める作業を行っていた。
ラッピングをして見栄えが悪くないか確認する。
味見は何回かしてあるしチョコレート・クッキーのチョイスも悪くないだろう。
あとは明日になってあかねにそれとなく渡すだけ。
「さりげなく……さりげなく…………攻めるべきか?」
お前のことを想って作ったから食べてくれよ?、的なキザなセリフ吐いて渡すかと脳内で会議を始める。
この提案は即座に却下された。ルビーになら普通に渡せるが他の女子となると抵抗がある。
気持ちの悪いセリフなんか吐けられないし逆にグイグイこられるのも苦手だ。
さてどうするべきか。味は問題ない、袋の見た目も悪くはない。だがそれは虎次郎視点の感想であってあかね視点となると全く予想がつかない。
「こんなの食べられない」とバッサリ切り捨てられる可能性もゼロではない。
そんなことされたら普通に傷つく。一先ずクッキーの入った袋を安全な場所に隠して虎次郎は寝室へ入る。
明日は空き教室でやり取りすると思うが果たしてうまく渡せるだろうか。
「────ん?」
スマホがラインの着信音を発した。確認してみると、虎次郎は目を点にして固まる。
着信相手は────『黒川あかね』だった。
「な、なんだって!!???」
スマホを手にとって部屋の中をグルグル歩き出す。「今ガチ」のメンバー全員でグループラインを作っているし、なんなら個人とラインを交換もしている。
その気になれば通話なんて簡単にできる。しかし今の今まであかねと通話したことはない。勿論虎次郎の方からかけたこともない。
どうしてこのタイミングでかけてくるんだと焦りに焦った虎次郎は出るか無視するか必死になって考える。
一方その頃着信相手のあかねはというと──────
「きゅ、急にかけちゃったけど出てくれるかなぁ……うぅ、声が聞きたかったからって言ったら嫌われるよね…………!」
虎次郎は掃除洗濯家事全般そつなくこなすハイスペックピュア野郎です。
さて、突然あかねちゃんからの着信。果たして虎次郎は通話に出るのか出ないのか!!
これはみんなにぶん投げよっとぉ!!!!アンケートとるから決めてねん!!
感想いっぱいくれよなっ!