隣の部屋の前に黒ずくめがいたから金○を蹴り上げてやった 作:ハッピーエンド大好きクラブ
「誰が妖怪重曹ペロペロ女よっ!」
「あぴゃぁっ!?」
有馬かなの逆鱗に触れた虎次郎は顔面を綺麗なフォームで蹴り飛ばされた。
廊下に後頭部をぶつけて悶絶。そこでかなは誰を蹴りつけたのかに気付く。
「えっ、もしかして虎次郎!?嘘、マジで!?」
「虎のこと知ってるのか?」
「知ってるも何も、ウチのクラスでガチファンがいるからよ!ディアボロは私も見てたし!」
虎次郎が母親から許可を貰って出演したアクションドラマ「ディアボロ〜特別犯罪対策処理班〜」は、濃密なストーリーと激しいアクションに加え、キャラの個性や内面もしっかりと描かれていたことで人気を博し、一世を風靡する人気ドラマとなった。
SNSでも話題となり原作者の
先週最終回を迎えたドラマだが「
かなはボロッボロに号泣しながら視聴していた。
「あー、俺がここに受験出来たのも人気出たおかげだしな」
おかげで母親から陽東高校受験資格を貰えた。苦渋の決断みたく「頑張りなさい」と応援してくれた母親の顔はお笑いだったぜ。
「アクア、ルビーちゃんどうする?コイツ誘って飯でも食いに行くか?」
「えー、私この人昔から好きじゃないのよね」
「でも受かったら後輩になるんだぞ」
「別に敬う必要ないだろ」
「おーい、聞こえてんぞ」
合格すれば三人は有馬かなの後輩になる。有馬かなは三人の先輩になる。
このスパイラルに不満を感じた虎次郎は床に唾を吐く真似をして「誰がお前なんか敬うかよ」と失礼な態度を取った。
即座に鳩尾をかなに撃ち抜かれ、膝をつく虎次郎。かなは彼のことを芸能界に突然現れたダークホースかと思っていたが、良いのは演技力だけでそれ以外は壊滅してると確信した。
今のうちに上下関係を教えないと。
「言っとくけどね、あんたよりも私のほうが芸歴長いから!私のほうが先輩だから!」
「うわぁ………ルビーちゃん、こういう芸歴でマウント取るような大人にはなっちゃダメだよ?」
「大丈夫だよ虎ちゃん。ロリ先輩のようにはならないから」
「二人まとめて引っ叩いてやんぞ!」
宣言通り二人まとめて引っ叩いてやった。
もうやることもないし、アクアは監督のところへ寄って帰るとルビーに言ってから虎次郎の襟首を掴んで引っ張って行く。
まだルビーと戯れたい虎次郎はグズりながら彼女にハンカチを振り続ける。
かなはまだアクアに聞きたいことがあったようだ。二人の後を追って、矢継ぎ早に疑問を投げかける。
「どこに行くの!監督って誰のこと!?」
「今どのへん住んでるの!?」
「どうして虎次郎と友達なの!?」
「あんたどこ中!?」
「ヤンキー女子?」
ヤンキー漫画でよくあるセリフにアクアは反応してくれた。
かなは自分の疑問に全部答えてくれるまで付いていくつもりのようだ。
どこかで話がしたいかなは「カラオケ行かない?」と二人を誘う。
「行かねぇよ」
「まだカラオケ開いてる時間じゃないだろ」
まだ昼過ぎ。近くにあるカラオケ店はまだ開いてない。
喫茶店に行くにもかなのような有名人(?)は直ぐに目立ってしまう。
それを自分で言うかと虎次郎からツッコまれるも敵意剥き出しに「あんたより芸歴長いんだから!」とまた芸歴マウントを取り始めた。
「えっ、じゃあ私の家とか?」
「距離の詰め方やばくない?」
「アクア、コイツには関わらない方が良いと思う。割とマジで」
ここでまた一悶着が起きたが、アクアが五反田監督の自宅で話そうと提案して虎次郎VSかなの戦いはドローになった。
五反田監督の自宅で昼飯をご馳走してもらい、アクアは虎次郎との関係をかなへ話した。
保育園に入園した初日に背後から飛び蹴りをくらい、俺の子分になれと宣言されたこと。
ルビーにボコボコにされてギャン泣きしながら園長に泣きついてと思い返せばなかなかインパクトのある出会い方だった。
そこから何かと因縁をつけてきてはルビーに殴られ泣かされて。いつの間にか仲良くなっていた。子役として五反田監督の作品に参加できるアクアを羨み、明るく前向きで可愛げのあるルビーを好きになって、虎次郎は二人のことを自分の家族だと思い、大切に接している。
「俺はアクアとルビーを本当の家族だと思ってる。だから、俺はコイツと役者目指すって決めたんだ。スーパースターになりたいからな!」
アクアの肩を叩き、弾けるような笑顔を見せる虎次郎。
五反田監督の助手として裏方の仕事をこなしてきたアクアだが、自分の才能の無さを思い知り役者の夢を諦めようとしていた。
そんなとき、暗闇の中から引っ張り出してくれたのが虎次郎だ。
スーパースターになるぞと自信満々にバカでかい夢を、半分託してくれた。
だからアクアは役者を目指す。親友のために。
「なんか……思ったより深い友情で結ばれてんのね」
「やだっ、虎照れるぅ」
脳天にチョップをくらう。
「ねぇ監督、アクアの演技やってる映像とかないの?」
「あるにはあるけど」
「見てどうするんだよ」
「あんたがどんな演技するようになったのか確かめるだけよ」
「おばちゃんご飯おかわり!大盛りな!」
昼食のあと、五反田監督の部屋でアクアが出演した作品を何本か見せてもらった有馬かな。
子役時代の異質さは消えているがそれでもかなが満足する演技力は身に付けていた。
培ってきた経験による演出の意図を汲み込んだ演技。
才能では語れないものが映像越しに伝わる。
端役とはいえ、アクアの存在のせいか作品をかなり楽しめた。
「まだまだだ。虎次郎には遠く及ばない」
「でも嬉しい。まだこの業界に居てくれて」
子役時代、初めて共演した作品でかなはアクアの演技に衝撃を受けた。
アクアが役者を目指すのなら、何か役に立てることがあるかもしれない。
これから先共演することだって────────
「……今ね、私がヒロインやってる作品あるんだけど、まだ役者決まってない役があるんだ」
妖艶な笑みを浮かべて、アクアに一つ提案を持ちかけた。
「偉い人に掛け合ってみようか〜?」
「……………なんて作品?」
「今日は甘口でっていう少女漫画が原作のドラマ」
「今日あま?」
「今日は甘口で」といえば吉祥寺頼子原作の大人気少女漫画じゃないか。
中高生で知らない子はいないと断言できるくらいの名作中の名作。
ドラマ化されて、かなが主演で出演している。二重の意味で驚いたが、その作品に自分も出してもらえるとなるとアクアは首を縦に振ろうとしたが。
「虎のほうが適任じゃないのか?」
どんな役かはわからないが、虎次郎のほうが自分より遥かに上手くやってくれるだろう。
「ロリ先輩、その偉い人に連絡しとけよ、アクアを推薦するって」
「ちょっ、俺まだ出るとは」
「いいじゃねぇか。ロリ先輩がお前に持ってきた話だ、お前以外誰がやれるってんだよ」
「オッケー、じゃあ後で連絡入れとくから!」
「じゃあ帰るか。じゃあなアクア、ロリ先輩、五反田のおっさん、俺バイオリン教室に行かないとだから!」
「お前そんなの通ってないだろ!待て!話はまだ終わってないぞ虎!」
その後、かなの要望を聞き入れたドラマ「今日は甘口で」プロデューサーの鏑木勝也は最終回に登場するヒロインのストーカー役にアクアを抜擢した。
急な話ではあったが、粘着質で嫌悪を抱くストーカー役を見事演じきったアクア。
原作には登場しないオリキャラの活躍や、原作キャラを演じる大根役者のせいでいまいち人気の出なかったドラマになったものの、最終回だけは良かったとSNSで評判だった。
収録を無事終えて打ち上げをしている最中、アクアは鏑木プロデューサーに声をかけられた。
「最終回評判だったよ。収益的にはキビかったけど、君のアドリブのおかげだ。そういえば、君苺プロの子だっけ」
「まあ、そうですけど」
「君は顔が良いし、うまく活用すれば人気が出るかもしれない」
一呼吸、間をおいて鏑木プロデューサーはアクアへ指を差す。
「恋愛リアリティショーに興味はある?」
次の仕事を持ちかけてきた。アクアはほんの数秒、思考を働かせる。
そして至った答えは、
「条件があります。もう一人、出してほしい奴がいるんです」
虎次郎を、巻き添えにすること。
もうすぐだ…………もうすぐ、俺の最推しを登場させられる。あと、もうすぐ!!!!!!
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