隣の部屋の前に黒ずくめがいたから金○を蹴り上げてやった   作:ハッピーエンド大好きクラブ

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恋愛リアリティショー開幕

 

 

恋愛リアリティショー。

台本を用いずに10代から30代くらいの男女が惹かれ合い、恋に落ちるまでの物語のことで、主に中高生から多くの支持を受ける作品だ。

甘酸っぱさもあればほろ苦さもある「恋愛」に胸を躍らせる若者は数え切れないほどいる。

それは分かっているのだが、まさか自分が視聴者の胸を躍らせる側になるとは思いもしなかった。

 

帰路についたあとも、虎次郎は貰った資料をぼーっと眺め、ため息をこぼす。

正直やる気はない。経験を積まなきゃいけないのは理解しているが、これは別だろうと思っているからだ。

 

「しっかしアクアのやつ……よくこんなのに出ようと思ったな」

 

リアリティショーは台本を通して演技を魅せるのではなく、本当の自分をいかに上手くさらけ出すかが重要になってくる。

視聴者が求めるのはドキドキする演出。

恋愛リアリティショーとなれば尚更それが重要になる。

 

しかし敢えて個性的なキャラを演じることで人気を獲得することもある。丁度良い塩梅が難しいところだ。

虎次郎は徐に押し入れを開き、ダンボールに入っている小道具を引っ張り出した。

 

「俺にはルビーちゃんという女神様がいるんだ、どうせなら好き勝手にやらせてもらおうかな」

 

そう口にしながらシマウマの被り物を手に取った。これは小学生のときにルビーへ求婚したときに使ったやつだ。

頭に被って「結婚してくれ」と迫ったがランドセルでぶん殴られたっけな。懐かしい思い出だ。

 

「これ被って収録行ってやろ」

 

虎次郎は無邪気な笑顔を浮かべた。

 

 

────────収録当日。

 

 

ついに始まった恋愛リアリティショー「今からガチ恋始めます☆」。

略して「今ガチ」は高校生の甘酸っぱい恋愛模様を描くストーリーを想定されている。

番組としてのエンタメ性を担保しつつ、各々の個性に任せたリアリティの演出方法は全てキャスト次第。

番組側が用意したイベントに対して男女の絡みを定点カメラは見逃さない。

 

リアリティショーに台本はない。だが演出はある。

 

「今ガチ」第一話の舞台は青空広がる砂浜ビーチ。

綺麗な海と真っ白な砂浜は眺めるだけでも最高の景色となる。

 

ここで七人の高校生が出会う。

 

 

「皆よろしくね〜!すっごい緊張する〜!」

 

セミロングで黒髪の清楚な美少女で、ファッションモデルをしている高校1年生鷲見(すみ)ゆき。

 

 

「俺は熊野ノブユキ、よろしくな!」

 

ちょっぴり軽いノリが好印象の熊野(くまの)ノブユキ。高校2年生でダンサーをしている。

 

 

「黒川あかねです……宜しくお願いします」

 

実力派揃いの劇団「ララライ」に所属する若きエース、女優の黒川(くろかわ)あかね。

クールな顔立ちの高校2年生の美少女。

 

 

「みんなよろしく!MEMちょだよ〜!」

 

美少女YouTuberにしてインフルエンサー、TikTokでバズりまくりの小柄な高校3年生のMEM(めむ)ちょ。

 

 

「俺は森本ケンゴ。バンドやってます」

 

高校3年生でバンドマンをしているイケメンの森本(もりもと)ケンゴ。作詞作曲をして余所に楽曲を提供してたりもする。

 

 

「めっちゃ緊張するわ〜!皆よろしくね!」

 

苺プロダクション所属の美しい顔立ちをした役者、星野アクア。

収録のために普段の闇系中二病キャラを脱ぎ捨て爽やかなイケメンへと翼を広げた。

妹に見られでもしたら「キモッ!」と蔑まれる事だろう。

 

 

そして最後は────────

 

 

 

「なんか一人足りなくね?」

 

ノブユキが皆を見渡して1人足りないことに気付いた。

今は親交を深めるためのコミュニケーションの時間だ。なのにあと一人居ないのはおかしい。

 

「もう一人って虎次郎だよね?大人しそうな人だったけど、トイレかな?」

 

収録中はアクアと虎次郎の関係はあくまでもその場で出会った初対面同士。

虎次郎がやんちゃしても他人の振りをしていられるし、そっちのほうが都合が良い。

探しに行こうかとケンゴが提案したとき、MEMちょが「なにか走ってきてる!」と声を上げた。

 

皆がMEMちょの指を差した方へ顔を向けると、シマウマの被り物をした変質者(虎次郎)が全速力でこちらへ疾走してきた。

 

「オッス〜!サバンナから来ました!ハイエナに左足噛み千切られたシマウマで〜す!よろ〜!」

 

初々しい雰囲気が一気にぶち壊されて、爆笑の渦が巻き起こった。

 

「ぶははははは!なんだよそれっ!シマウマって……おもしれぇっ!」

 

ノブユキが腹を抱えて笑い転げる。初心な恋がこれから始まるというのにシマウマの被り物を被った不審者が現れては恋愛リアリティショーもクソもない。

本当に不審者であったならいいのに、キャストの一人というのが余計に質が悪い。

 

定点カメラを持ち撮影しているカメラマンやディレクター達も笑い声を出さないように必死な様子だ。

 

「………………人参ない?」

 

「ぶはっ!」

 

仁王立ちで人参ないか尋ねられた鷲見ゆきはビジュアルの面白さに吹き出してしまった。

 

「お前………いい加減にしろっ!」

 

ここでアクア、遂にキレた。もはや他人のフリどうこうの問題じゃない。

虎次郎へ近づいて被り物を掴み、引っ剥がそうとした。

 

「うぎゃぁ!?ちょっ、止めろアクア!暴力反対暴力反対!俺シマウマだから!おい……誰か助けてくれぇ!動物愛護団体を呼んでくれぇ!頼むぅ!!」

 

「お前がちゃんとやるって期待してなかった俺が正解だったよ!」

 

「なんで俺がポカやらかす前提なんだよ!!」

 

「現在進行系でやらかしてんだろ!!おらっ!早く外せっ!」

 

「あ、やだ、取れちゃううう!人間に戻っちゃう!誰かコイツに麻酔をかけてやってくれ!」

 

みんなが見守る中、アクアと虎次郎の死闘は直ぐに決着がついた。

被り物を剥がされ、虎次郎の顔が顕になる。

 

「なんだよぅ!折角俺が緊張の輪を解してやろうって思ったのによ!」

 

「いや最悪の方向に持ってってどうすんだよ」

 

 

しかし虎次郎のやったことは全てが間違いじゃない。

初収録の緊張感が薄れたし、何より皆の表情が明るくなり笑顔が生まれている。

コイツは面白いやつだというイメージを強烈な印象だけで植え付けた。

 

「あーもう面倒くせぇな!俺は虎次郎、よろしく!」

 

砂浜に寝そべって自己紹介をした虎次郎。すると彼の側へ黒川あかねが近づいて、膝を屈ませ顔を覗かせる。

 

「虎次郎君、私のこと……覚えてる?黒川あかねだけど…………」

 

「ああ、劇団ララライの大女優だろ?それがどうしたんだよ。俺いま機嫌悪いからな、会話したいなら人参もって来いよ」

 

「やっぱり覚えてないかな……子役時代のときに共演した映画…あったよね?」

 

「子役時代?…………あー、あ?」

 

あかねの顔をじっと見つめる。子役時代で出演したことのある作品といえば一つしかない。

 

「あ!思い出した!お前あん時の黒川あかねか!」

 

「うん、そう、あの時の黒川あかね。思い出してくれてよかったぁ」

 

「はぇー、綺麗になったなぁ黒川」

 

「虎次郎君こそ……その、カッコよくなったね」

 

「なんか恥ずかしいから前世のシマウマに戻るね」

 

スポッとシマウマの被り物を被った虎太郎。あかねは変わってないねと口元へ手を添えて微笑む。

 

「アクア、大丈夫か?」

 

「大丈夫。胃に穴が空きそうなだけだよ」

 

ノブユキの心配の言葉に真顔で答えるアクア。その後もシマウマになって収録を続けた虎次郎だったが、意外にも第一話は好評だった。

 

 

 

 

アクアの胃がどうなるかは知ったことじゃない虎太郎だった。

 

 

 

 








よっしゃぁああああ!!!あかねちゃん出たゾォオオオ!!!!
さて恋愛リアリティショー初収録後、ネット配信された第一話はネット民に強烈な衝撃を与えました。
それはナゼでしょう?そう!虎次郎がやらかしたからです!!
でも批判とかはなく、逆に視聴率が予想よりも高かったようですね。

次回は黒川あかねと虎次郎の絡みを書きたいと思います。

感想いっぱいくださいね。
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