隣の部屋の前に黒ずくめがいたから金○を蹴り上げてやった 作:ハッピーエンド大好きクラブ
次回は虎次郎とあかねの絡みを書くといったな。あれは、嘘だ。
ウワァァァァァァ
有馬かなは冷静な判断が出来ないほど困惑していた。クラスメイトの井上摩耶花が「虎次郎さんが、虎次郎が〜」と大号泣するためまさか奴に酷いことをされたのかと話を聞くと、彼女は虎次郎が恋愛リアリティショーに出ていたと口を開いた。
なんだそんなことかと安心し、どんな内容なのかスマホで見せてもらうとなんと、そこにはアクアも出ていたのだ。
「え、アクア!?!?」
考えてもいなかった。知能指数小学二年な虎次郎ならこの手の番組に出演するのは納得できる。けれど何をどうしたらアクアまで参加するのか。
これは一体どういう状況だと、かなの表情が言葉を発している。
「なんで……虎次郎さんがこんな…こんな野蛮人しかいない番組に出てるのかなぁ?」
全くもって同意見だ。恋愛リアリティショーに出演する理由は事務所からの圧によるものだったり、メディアに自分を売り込むためだったりと各々異なる。
高校生となると恋愛がしたい、彼女が欲しい、彼氏が欲しいと単純な理由になってくるが、かなはもう考えるのをやめた。
もうこれ以上の思考は不要。本人に直接聞けばいい。
かなは摩耶花の手を取って下の階へ降りていく。アクアの教室は「1ーF」、ついでに虎次郎も呼んで問い詰める。
「か、かなちゃん!ど、どうしたの……?」
「二人に理由を聞けば済む話よ。行くわよ摩耶花」
「え!?え、ちょっ、手を引っ張らないで〜!」
「1ーF」教室を覗いてみたが二人の姿はどこにもなかった。ルビーにどこに行ったか聞いてみると「図書室に行くって」と教えてくれた。
「ルビーちゃん、有馬先輩怒ってはったよね?」
「うん……虎がまたからかったのかな。ていうか隣にいた人誰だったんだろ」
ズンズンと音を立てて廊下を歩くかなと摩耶花の二人。
すると、図書室に続く渡り廊下でアクアと虎次郎を見つけた。
「アクア!虎次郎!そこ動くな!!聞きたいことがあんのよ!!」
「んぁ?」
「────?」
怒鳴るような声で名前を呼ばれたアクアと虎次郎は同時に後ろへ振り向いた。
そこには鬼の形相を浮かべたかなと泣きべそをかいている摩耶花が立っていた。
かなの強烈な気迫に自然と後ずさる。
「お、おいアクア。なんで妖怪重曹ペロペロ女のやつあんなブチ切れてんだ?」
「お前が重曹なんて呼ぶからだろ……」
「いや呼ぶ前にキレてるよね?え、何?ついに俺達を重曹でブチ殺しに来たってこと?」
「聞きたいことがあるから、そこ動くんじゃないわよっ!!」
身の危険を感じた虎次郎は妖怪重曹ペロペロ女の命令なんて聞けないねとおちょくってからアクアを担いで逃走することを選んだ。
逃げた獲物を追うのは当然。自然の摂理、獣の本能。
かなは全力で走り出した。狙うはアクア、こちらの疑問に全て答えてもらわないといけない。
調理室に逃げ込んだ虎次郎はアクアを降ろして物陰に隠れる。
気配を殺して己の存在を抹消する。まずは状況の整理だ、虎次郎は外の様子を伺いながらアクアへ話しかけた。
「なぁアクア。なんでアイツあんなキレてんだよ。お前なんかやらかしたか?」
「何もしてねぇよ。お前こそ有馬を怒らせるようなことしてないよな?」
「ブチ切れさせるまではやらねぇよ。そこの線引きは考えてる。しっかしあの妖怪重曹ペロペロ女、俺達を末代まで祟りそうだな。重曹があれば注意を引けるんだが……」
「キレる原因それだろ」
────十分後。結局隠れ場所を発見された虎次郎とアクア。もう逃げられないと悟ったのかアクアに向けて「ここは俺がなんとかする!お前は金の重曹と銀の重曹を集め──」、
虎次郎は妖怪重曹ペロペロ女に投げ飛ばされた。
「アクア!アンタなんで恋愛リアリティショーの仕事なんか受けてんのよ!」
「いや……あくまでも経験値を貯めるためで」
「ごほっ……井上先輩……俺はもう駄目みたいだ。せめて……先輩にカッチョいいサインを……書いてあげたかった……ぜ」
「と、虎次郎さん!目を覚まして!虎次郎さーん!」
「うっさいわね!外野は黙ってなさい!今大事な話してるんだから!」
「井上先輩、アイツのスカート千切ってこいよ」
────かなに顔面を踏み付けられた。
「あの妖怪重曹ペロペロ女、加減ってのを知らねぇのかよ」
夜20時過ぎ、星野家の自宅でくつろいでいる虎次郎は顔を手の甲で擦りながらかなへ文句を言っていた。
アクアの説明のおかげで事態の悪化は免れたが、二人共納得いってない表情だった。
ああやって詰め寄られても迷惑だ。虎次郎とアクアはスキルを磨くためにリアリティショーに参加したのだから。
彼女が欲しいからとか、甘酸っぱい恋愛を体験したいといった下心なんてこれっぽっちもない。
どういうわけかさっきから「今ガチ」を視たルビーも機嫌が悪いし、今日は厄日だとため息をついた。
「ねぇママ。私、いつになったらアイドルになれるのかな?」
パソコンを閉じたルビーがアイスを食べているアイへ話しかける。
「んー、アイドルグループを作ります、即オーディションってわけじゃないからね。ちゃんとした手続きがあるし、ルビーはまだ焦らなくてもいいと思うけど」
「でも……お兄ちゃんと虎がクラスでモテモテなのに私がモテないのはおかしいよっ!」
イスから立ち上がり、アイスを食べていたアクアとソファーに座っている虎次郎を交互に指差し声を荒げた。
「思いっきり私怨入ってんな。ならカラオケで80点以上取ってみろよ」
「うぐっ!?そ、それは………歌が下手でもアイドルやれるもん!ほら、下手な子がちょっとずつうまくなっていく喜び!これを私はファンに提供しようと思ってるんですぅ!ドラマ性があるんですぅ!」
「ルビーは絶対凄いアイドルになれるよ?だって私の娘なんだから。でもそれに甘えちゃダメ。顔が可愛くても、アイドルなら歌唱力がないといけない。可愛くてダンスがうまくても、歌が下手なだけでファンはめっちゃ減点してくる。まぁ……私は可もなく不可もなくだったけど…………」
伝説的アイドルだった母親からの言葉はルビーの胸に深く突き刺さった。
アイドルになりたい、即アイドルグループ結成というわけにはいかないことは分かった。
けれど歌唱力なんてある程度あればいいとルビーは考えていた。
アイドルとして成長していく自分の姿を多くの人に見てもらいたいからだ。
星野ルビーという「存在」を好きになってくれたらアイのようなアイドルになれる。
自分の夢を否定された気がしたルビーはうっすら目に涙を浮かべて虎次郎のところへ走って泣きついた。
「うわーん!お兄ちゃんとママがいじめるー!」
「ダメ出しされたくらいで泣くんじゃねぇよ。たく、まだ我儘な所は治ってねぇなルビーちゃんは」
膝に頭を埋めて声を上げるルビーの頭を虎次郎は優しく撫でる。
「ルビーちゃんはママから才能を受け継いでるんだから焦らなくていいって」
「でもぉ……私…………ホントにアイドルになれるかなぁ?」
「────ルビー」
呼び捨てで名前を呼ばれたルビーは直ぐに顔を上げて虎次郎と目を合わせた。
「ちゃん」付けで呼ばないときは真剣な話のときか、怒っているときだけだ。
けれど虎次郎の瞳は怒ってはなく、寧ろ愛らしいものをみる表情をしていた。
「お前はお前が思ってる以上に努力してる。アイドルになるためにな。俺はそんなお前が大好きだ。だからこそ、夢を叶えてほしいって思ってる。約束する、お前はすんげぇアイドルになれる、だから自分の努力を否定するんじゃねぇ。自分を疑うな。俺が好きになった星野ルビーは、そんなつまらねぇ女だったのか?」
「………………違う」
「よく聞こえねぇな」
「………………違うよ」
「やっぱり俺の目は節穴だったかな?これならそこら辺にいる女のほうがよっぽどアイドルに──」
「違うっ!!!!」
ルビーは立ち上がる。自分はつまらない女なんかじゃない。夢を叶えるために努力を重ねる女子高生だ。
アイドルになるために。アイと同じアイドルになりたいから。
だから叫ぶ。腹の底から本音を口にする。
「私はママみたいになりたい!歌って踊れるアイドルに!何も出来ないまま終われない!終わりたくない!だって……だって…………ママは私の憧れだから!憧れは……止められないから!!」
「よく言った!それでこそ俺が惚れた女だぜ、ルビー!!」
「私もっと頑張る!歌がうまくなれるように頑張るよ!虎!」
「アクア見て…………私のルビーがいつの間にかあんなに大きくなっちゃって…………」
娘の決意に涙したアイはアクアからティッシュを受け取って鼻を噛んだ。
「よーし、今からカラオケだ!虎、朝まで付き合ってもらうからね!」
元気を取り戻したルビーは意気揚々となって自宅用のカラオケを取り出す。
「OK。気が済むまで歌い明そうじゃないか。所でルビーちゃん、俺の告白の返事は?」
「ごめん無理」
「よしアクア。今から切腹するから介錯頼むわ」
翌日の「今ガチ」第二話の収録に虎次郎はギリギリで出勤した。
そして虎次郎は番組側が用意した「指令」というものに苦しめられることになる。
YouTuberにある恋愛リアリティショーを適当に何本か見てみたんですけどあの「指令」ってやつ正気か!?、と思いますねハイ。
ならこっちでもやってやろうじゃねぇか!!手を繋ぐイベント、見つめ合うイベント、抱きしめ合うイベント、全部やってやるよぉ!
虎次郎とあかねの距離を縮めてやるぜぇっ!!!!
次回こそ虎次郎とあかねの絡みを書きます。何も考えずに待っていてくれ!!
虎次郎はルビーに告白しても無理ってことは理解してるよ。他に好きな人がいるんだなってことも気づいてる。でも少しでも気を引きたいからあーだこーだ言ってるだけで、身を引く覚悟はもうとっくに出来てます。好きだからこそ、ルビーが幸せになれるのなら彼女の隣に立つのは自分じゃなくていい、こんな奴です。
押しに超弱いです。
感想、待ってるぜ!!