隣の部屋の前に黒ずくめがいたから金○を蹴り上げてやった   作:ハッピーエンド大好きクラブ

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最初はあかね視点から始まるヨ



恋愛リアリティショー第三幕

 

「十秒で泣ける天才子役」。私は有馬かなのような人になりたくて役者の道を進もうと思った。

テレビで映るかなちゃんの演技が太陽みたいに眩しくて、役者になったら友達になれるかもしれないと私なりにたくさん頑張った。

 

かなちゃんに近づくために。それを目標にして。

 

端役を決めるためのオーディションに参加して、そこでかなちゃんと出会った。

オーディションはより良い演技をした子が選ばれる。私はかなちゃんのような天才子役じゃないけど、一緒に競え合えることがとても嬉しかった。

このオーディションが、出来レースと気付くまでは。

 

かなちゃんの口からは端からこれは自分を選ぶためのオーディションだと語られた。

表面上行うだけで結果はもう決まっている。そこそこ演技ができればいいだけの端役なら、無名の子役よりも知名度のあるかなちゃんを使うのは普通のこと。

良い演技よりも、有名な子役を使うほうが視聴率が取れるからって。

 

要はお金になるかならないか、それだけだってかなちゃんは叫んだ。

 

演技なんてどうでもいいって。違う、違うよ。かなちゃんは本当はそんなこと思ってない。

演技がどうでもいいだなんて────────

 

頭を叩かれて、被っていた帽子が床に落ちる。

 

「私はアンタみたいなのが一番嫌い」

 

怒りと嫌悪が混じった声色で口にされた言葉は、私の憧れを殺してしまった。

そして、私は不合格でかなちゃんが端役に選ばれた。

どうして………あんなのかなちゃんじゃない。私が憧れたかなちゃんは、もっと…………。

 

 

 

いや、あれが「有馬かな」だったんだ。その後も数え切れないくらいオーディションを受けたけど全部落ちていって、かなちゃんは変わらず天才子役と称される。

 

何が足りないんだろう。才能?努力?気持ちの問題?疑問が次々と浮かびあがって頭の中を埋め尽くす。

 

 

やっと合格した役も主人公の弟のクラスメイトっていう小さな端役だった。

「迷宮入りの憎悪」っていう作品で、猟奇的殺人鬼に両親を殺された主人公が警察と一緒に犯人を探し出す典型的なミステリー映画。

 

 

そこで私は虎次郎君と出会った。

主人公「鷹丸真司(たかまるしんじ)」の弟、「鷹丸聖夜(たかまるせいや)」役で急遽決められた子役が虎次郎君。

母親が大人気女優の立川明美さんで、息子の虎次郎君にも演技の才能があるってスタッフの皆は彼をちやほやしてた。

 

私はこんなに頑張ってるのに、なんで女優の息子だからって理由でそれなりの役がもらえるの?

 

この子は違う。子役なんかじゃない、演技なんて出来やしない。

兄を尊敬していて困っている人を放っておけない「鷹丸聖夜」を完璧に演じられるわけないよ。

 

 

「兄さんは間違ってる!復讐なんて、父さんと母さんが望むはずないよっ!兄さんが道を踏み外すだけだ!」

 

 

物語終盤、遂に復讐を果たそうとする真司を人殺しにさせないために説得する聖夜を、虎次郎君は完璧に演じた。

私は言葉が出なかった。きっと聖夜も犯人が憎くて仕方がないのに、兄を引き留めようと憎悪を押し殺して叫ぶ姿に、私はただ魅入っていた。

 

 

「ダメだ。監督、もう一回お願いします」

 

「──────え?」

 

虎次郎君が録り直しを要求する。私は理解が追いつかなかった。今の演技は完璧だ、切なくもあり兄弟の絆がより強く結ばれる感動的なシーンを再現できているのに。

テイク10、テイク20と数を重ねるたびに虎次郎君の演技は洗練されていく。

テイク36でやっと撮影は終わり、一旦休憩を挟むことになった。

トイレを済ませて楽屋に入ると先に虎次郎君が壁にもたれかかって台本を読んでいた。

私は緊張しつつ虎次郎君へ疑問に思っていることを尋ねる。

 

「あ…………あの」

 

「ん、どした?」

 

「どうして……さっきの演技、もう一回お願いしたの?」

 

虎次郎君は台本を閉じて一呼吸をおいてから「単純に駄目だったから」と答えた。

 

「で、でも完璧だったよ?鷹丸聖夜っていうキャラクターを再現出来てたと思うけど」

 

「再現じゃ駄目なんだ。ソイツそのものにならないといけねぇ。俺はこの世界じゃ底辺だ、まだ……俺の演技は脆い」

 

キャラクターの再現じゃなく、本物になる。虎次郎君はそう口にした。自分の演技はまだ完璧じゃないと。

私は開いた口が塞がらなかった。虎次郎君の演技に対する情熱は他の誰よりも強かったんだ。

だからこそ妥協なんてしないし、完璧のその先を求める。

 

「なぁ、お前ってキャラ演じるときどんなこと考える?教えてくれよ」

 

虎次郎君は私にアドバイスを求めた。何もかも君のほうが上なのに。

演技に真剣に向き合う虎次郎君の姿を見て私はいつの間にか彼に憧れを抱いていた。

 

撮影が全て終了して打ち上げが行われたときも虎次郎君は「あれがダメだった、もっとこうすればよかった」と頭を抱えてた。

 

お別れしたあとも、いつかきっと共演できる日が来ることを信じて私は自分なりに努力しようと誓った。

 

 

でもあの作品以降、虎次郎君の姿を見ることはなくなった。

 

 

それから暫く経って、私は高校2年生になった。劇団ララライに所属して舞台を中心に活動しているけど虎次郎君の名前が業界内で聞こえることはない。

引退したとは考えにくいし、私のように舞台役者になったわけでもなかった。

 

もう会えることはないのか諦めを抱いた時、偶然テレビから新ドラマの番宣が流れた。そのドラマにはなんと虎次郎君が出演していた。

 

「す、凄い………!虎次郎君、とてつもないよ……!」

 

一月に放送されたアクションドラマ「ディアボロ〜特別犯罪対策処理班〜」に出演した虎次郎君の演技を見て、私は心の底から震え上がった。

罪を犯す者を決して許さず、あらゆる手段を用いて確実に殺す異常者「悪鬼羅刹」は原作では主人公を超える人気キャラだ。

それを虎次郎君はまるで原作から飛び出したと錯覚させるほどの凄まじい迫力で演じてみせた。

 

テレビ越しでも「悪鬼羅刹」がどれだけ異質で悍ましいかが伝わってくる。

一秒たりとも目が離せない。周りの俳優や女優の演技を凌駕し、息遣いだけで視聴者の本能に恐怖を与える。

 

「虎次郎君……やっぱり凄いなぁ…………私ももっと頑張らないと」

 

同じ役者の夢を目指しているなら、いつか共演できる日が必ずやってくる。

 

「でも…………会いたいなぁ」

 

仕事じゃなくて、プライベートで再会したいな……。

なんてことを思っていると、マネージャーから新しい仕事が入ってきたと教えてもらった。

 

 

詳しく話を聞いてみると恋愛リアリティショー「今からガチ恋始めます☆」の新シーズンのメンバーに私が選ばれたようだった。

私はそういうのは初めてだからどうしようかと悩んでいたけど資料を貰って他のメンバーを確認したら──

 

「と、虎次郎君だ────!」

 

────憧れの人が選ばれていた。

 

 

 

 

 

十数年ぶりに再会できた私と虎次郎君だけど、カッコよくなり過ぎてて心臓がバクバク鳴り止まない。

積極的に動くべきだけど自分の役割を果たすので精一杯だからそんな余裕ないし……………。

目を合わせるのも恥ずかしいし、会話なんて全然続かない。でもこれは恋愛リアリティショー、爪痕を残さないと選ばれた意味がなくなる。

 

 

ていうか虎次郎君がカッコ良すぎるのが悪いんだよ!!なんなの虎次郎君は!!声もカッコイイし良い匂いするし純粋で可愛いし!!

あんなの危険すぎるよ!!こっちがどれだけキュンキュンしてるか分かってないよ虎次郎君は!!

 

 

 

 

 

………………落ち着いて。今は第三話の収録中。SNSだと私と虎次郎君のカップリングが熱いって話題になってるし、積極的にアピールすれば私の存在がもっと注目されるはず。

 

 

「虎次郎君、今大丈夫?」

 

アクアさんと話をしてた虎次郎君に声をかける。虎次郎君はぎこちない動きでこっちを向いてくれた。

 

「な、ナンスカ?く、黒川さん……」

 

「お前この前のことまだ引き摺ってんのかよ」

 

「アハハ、私は気にしてないのに。これ、クッキー焼いてきたの。良かったら食べて」

 

昨日四時間かけて作った私の自信作。しっとりとして甘さ強めのクッキーに仕上げてるからきっと虎次郎君の口にも合うはず。

 

「……………俺に?」

 

「うん。頑張って作ったから、受け取ってくれると嬉しいな」

 

「マジで!?え、やった。おいアクア、黒川からクッキー貰ったぜ!」

 

「ああそうだな、良かったな」

 

「おいみんな聞けよ!黒川からクッキー貰っちゃったぜー!」

 

クッキーの入った袋を両手で大事そうに抱えて虎次郎君はみんなに自慢する。

 

「アイツ、ホント純粋でさ。バレンタインのときとかチョコ貰ったときもあんなふうに喜んでたんだよ。嘘なんか付けない奴だからな」

 

「そうなんだ…………」

 

「おい黒川!これ食っていいよな!?ていうか食う!………………うまっ!?これ超うめぇぞ!!」

 

────────可愛い。

 

リスみたいに口いっぱいにクッキーを頬張って幸せそうに笑ってる。

 

「うめぇなぁ」

 

──────超可愛いんだけど。

 

 

 

「お前料理できんだな。今度俺もなんか作って持ってくるわ」

 

「虎次郎君料理なんてできるの?」

 

「失礼なやつだな。俺はこう見えても料理得意なんだぜ?クッキーの一つや二つ、簡単に作れる」

 

「ほんとに?なんだか嘘くさいけど」

 

「テメェ舐めてんなぁ?おいアクア、俺がどれだけ料理うめぇか言ってやってくださいよ!」

 

「食える程度ではある」

 

アクアさんの返しに思わず笑っちゃった。虎次郎君は傷付いたのかアクア君の頭を軽く引っ叩いて「嘘つくんじゃねぇ!」と怒った。

 

「虎次郎君のクッキー楽しみにしてるね」

 

「おう、期待しとけよ。お前のほっぺたが落ちるからな」

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

その日の夜。虎次郎はお返しのクッキーは何にしようかなとスマホで色々検索していると、SNSのDMからメッセージが届いた。

メッセージを開いてみると画像が一枚添付されていてこんな文が送られていた。

 

『もう黒川あかねには近づかないで。貴方が穢れてしまう』

 

添付されていた画像はあかねの顔写真をズタズタに引き裂いたものだった。

 

「アホくさ」

 

『ばーか』とだけ送信してブロックしてやった。

 

 

 






一人称視点ってめっちゃむずぃ…………。粗しかないけどみんな許してね。できるだけ面白く書いてるつもりなんだけどワイは他の投稿者さんにくらべてヘタだし。
どんだけ低評価付けられようが完結まで走りますよ。
ま、頑張りますよっ!!!!みんな感想いっぱいくれるし!!

次回はルビーが虎次郎のことをどうおもってるか書きたいと思います。
感想でルビーの虎次郎に対しての印象は?ってのがあったのでね。


あと、アクアとかなはくっつけるつもりだよん。楽しみにしててね。
感想いっぱいくれよ!!!!

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