咲VS赤木   作:かさばる

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第一話

清澄高校、麻雀部、部室。

 

清澄のメンツがそこにいるのは当然だが、少し変わった光景なのは、風越のキャプテン、福路美穂子がそこにいた事だ。

 

「ねえ……上埜さん」

 

福路がそう呼ぶのは、清澄の部長、竹井久のことである。

 

「正当と、言えるのかしら」

 

それを受けて、久は天を仰ぐ。しかしすぐに向き直り。

 

「正当とは言い難いでしょうね」

 

「うう……」

 

「でも、そんな事、言ったって」

 

いったいどういう話なのか。

 

県予選。清澄は優勝した。という事は当然、他のチームは敗退している訳で。例にもれず風越もそうだ。そして、その事に一番悔しさを覚えたであろう雀士が、風越の大将を務めた、池田華菜。何しろ、あの龍門渕、龍門渕の天江衣と同卓し、一気挽回、四暗刻単騎を手にするも、超特殊な条件戦ゆえテンパイ放棄。そして、結局は清澄の宮永咲に、お得意の嶺上開花入りの数え役満でトップを取られ、終局。県予選には勝てず、その上、二体の怪物。宮永咲と天江衣のどちらを狩るにも至らなかった。

 

悔しい、悔しい、悔しい――!

 

そんな時、清澄及び風越の皆へ連絡が入った。赤木しげるという男から。無論、直接電話に出たのは赤木本人ではない。が、ともかくそういうベテラン雀士がいるという事を、少女たちは理解した。

 

赤木に、勝てば、池田華菜を、もう一度天江と当ててやる、というのだ――

 

しかも、天江と戦う席になったら、しっかりとキャプテンの福路の席もある。

 

やりたい。言うまでも無く挑戦したい。でも、しかしそれって?どこの誰とも分からぬ男との麻雀勝負で、勝ったら天江に会わせてやるだと?それってさ、危ない話だとか、そういうのはまあいいにしても。

 

道理として、正当なのか?

 

そんな訳、ないよね。

 

 

 

 

 

暑い夏の昼過ぎだった。清澄高校麻雀部員、風越からは福路と池田。それと、赤木しげる、井川ひろゆき、それと沢田という男。その面々は麻雀部の部室に集まった。

 

「えー、では」

 

沢田が前に出て説明をする。

 

「これより今回の勝負の説明をします。皆さましっかり集中してお聞きください」

 

「……」

 

黙りこくる少女たち。

 

「赤木軍、清澄軍という二軍の戦いです。赤木軍からは、赤木しげると井川ひろゆきの二名が固定。そして、清澄軍の打ち手については、ここに呼ぶ事ができるなら誰でもよし。何度でも選手交代はOKとします」

 

四人麻雀の闘牌を基本として、都度都度赤木側がゲームのルールを提案する。それに対して清澄側は、多少の範囲であれば注文を付けてよし。また、ルールのベースを作るのが赤木側である代わりに、清澄側は、後出しで都度都度、その卓に座らせる選手を決められるものとする。

 

ただし、その一回のゲームの途中での代走、交代は無しとする。

 

両軍は、最終成績として【200万点】の点棒、ライフポイントを持つものとする。

 

「例えば、です。分かりやすくワンスリーのウマが付いた麻雀で、赤木しげるがトップ、そしてそっちの宮永さんがラスだとするでしょう。その場合、素点も大体で加味して、両者の差が十万か十一万点くらいあるとする。そういう結果になったなら、清澄側の200万点から11万を引く。このような減点の方式です。これにより、色々なゲームで戦い続け、総合のライフが0になった側が負けとなります」

 

基本のルール説明はそれくらいだった。

 

そこで、赤木しげるが口を開く。

 

「じゃあ、いいか?早速最初のゲームを始めようかと思うが」

 

しかし、そこで、なんと赤木の仲間であるひろゆきが待ったをかけた。

 

「あ、あの、本当にいいんですか?その、赤木さんはまあ……そういう人だとしても、清澄高校の皆さん、それとあなた、池田さん。いいんですか?敵の僕が言うのもですけど、僕はこの勝負、おすすめしません。やって誰が得するんだか僕には分からない。仮に始めてしまったら、僕たちは手を抜きません。こっちにも責任がありますから。でも、それで清澄のあなたたちが負けてしまったら、どうなってしまうか、忘れていませんよね?」

 

【清澄軍が負けた場合、赤木軍に、一年分の麻雀部の活動費と、プラスアルファ―で50万円を支払うものとする】

 

「分かってますか?周囲に多大な迷惑をかけるんですよ?特に、池田さん、あなたが鍵を握っているんですよ。あなたが天江衣と戦いたいばっかりに、僕たちと勝負をして、もし負けたら。そんな事になるくらいなら、もっと真っ当な方法で天江衣と戦う事はできますよ!むしろそっちを僕は応援したい!それくらいだったら大して金もかからない。少しなら手助けできますから――!」

 

沈黙。そして。

 

「嫌です」

 

宮永咲が、応答した。

 

「私はもう、赤木さんと勝負をすると決めたんです。今の私はただ一人の雀士。それしか考えていません」

 

それなのに。それなのに難癖を付けて、貴重な勝負の機会を反故にしようとするなんて。

 

以ての外である。

 

「いっ、いや、そうは言っても!池田さん!あなたはどうなんですか!あなたは中心人物だが、しかしこの戦いのリーダーではなく権限は特に無い。事によってはあなたは、一回も卓に付かずに、仲間が負けてゆくのを眺め、そして色々なものを失うんですよ!」

 

池田華菜は、ひろゆきに答えた。

 

「それが、麻雀です」

 

「え……」

 

 

 

 

 

 

「ははは」

 

赤木が笑った。

 

「もういいじゃねえかひろ。そこの嬢ちゃんたちは、ひょっとしたらお前より麻雀が分かってるかも知れんぞ」

 

やるぞ。時間が惜しいんだ。

 

 

 

 

 

「一つ目のゲームのルールを説明する。簡単に言えば、満貫縛りの麻雀で、満貫をアガる度に卓の外からチップを獲得して、50枚用意されているチップが無くなったら終了、というゲームだ。獲れるチップは、満貫で一枚、跳満で二枚、倍満なら三枚というように増えていく。また親番の場合なら一枚増える。それと、一応点棒も使うぞ。誰かが飛んだら点棒はリセット。飛ばした者は一枚獲得だ。最後に。チップは一枚1万点。ただし10枚目、20枚目、30枚目、40枚目、50枚目だけ2万点とし、最終的に獲得したチップが多かった側が、相手の獲得チップとの差を、相手の総合ライフにダメージとして与えるのだ」

 

選手交代可能なタイミングは、東場、南場の終わり毎と定められた。

 

 

「はいっ!はいっ!一番手やるじぇ!やりますやりまーす!」

 

立候補を聞いて竹井久は、まあまあ妥当だろうと考えた。

 

東場で強いうちの子を、赤木さんに当ててやろうじゃないの。

 

「分かったわ。じゃあまずは、優希と和にお願いしようかしら。あ、和が上家ね」

 

「はい」

 

「はーい!」

 

起家

片岡優希

 

南家

井川ひろゆき

 

西家

赤木しげる

 

北家

原村和

 

 

 

 

 

東一局――

 

{一一一二二二四五六七八九九} {三}

 

「ツモっ!!メンチンツモ!6000オールと!親っぱねはチップ3枚!」

 

 

軽快に滑りだした優希。そして一本場。

 

「ローンっ!赤木さんから直ったじぇ!親っぱねはチップ3枚!」

 

 

二本場。赤木軍、ひろゆきがリーチ。が、それに対して。

 

「リーチ」

 

「ロン」

 

原村和←井川ひろゆき

{123789①②③二三九九} {四}

 

「千点です」

 

東二局。

 

「ロン」

 

井川ひろゆき←赤木しげる

{②③④⑤⑥⑥⑥789} {⑤} {裏白白裏}

 

{裏裏中中裏裏裏}

 

「24000。それと、親倍は4枚。赤木さんのトビと合わせて5枚です」

 

 

あれ――?

 

 

「ちょっ、ちょっと待った!」

 

清澄麻雀部の部員、須賀京太郎が声を上げた。

 

「よく見ろ優希っ!今の5枚は実質6枚だ!10枚目のチップを取られた!つ、つまり!」

 

優希の親番はもう終わっている。

 

このゲームは優希に有利なゲームではない。今更ながらそれが分かった。

 

東二局一本場。

 

「ツモッ」

 

赤木しげる

{56778②②} {6} {横二一三} {中中横中}

 

「三本五本だ」

 

 

 

 

 

「東場はまだ半分残ってるぞー。嬢ちゃん」

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