チップ、点数状況。
片岡優希:25000
井川ひろゆき:25000
赤木しげる:25000
原村和:25000
清澄軍:9枚(9万点) 赤木軍:13枚(15万点)
南四局、原村和の親。
原村和
{19一九東南西北中中456}
国士、十枚スタート……
いや?
九種九牌で倒牌。流局にするか?
……できるのか?
そういえば、そういう流局が可なのかという決めを正確に聞いていない。和は考えた。しかし、とは言え、自分自身がさっき考えていた事。30符4翻のアガリの裁定を保留にする事。その考えと類ずるものとして捉えれば、ここで流局を主張して、さあ裁定をどうすると揉めた時、話はきっと、低きに流れる。つまり、和の親番でもある事だし、親役満は怖いもの。それに特殊流局で親が流れるという裁定もパターンとして存在する。それさえ飲んでしまえば通るのではないか。ここでの流局は。
「九種です」
「……」
「……」
「ああ……流局だな」
赤木がそう言った。
「ちょっといいですか?」
「宮永さん」
麻雀部員、宮永咲が卓に近づき、意見する。
「今、一回戦、南場が終わりましたよね。私、喋っていいですか?」
宮永咲はさりげなく、九種九牌による流局では親が流れるという裁定を通そうとする。
「ああ……そうだな。一戦目の半荘はこれで終わりだ。なんだ?選手交代か?」
赤木は、そのさりげない主張を認めた。そして状況は次の段階に移ろうとする。
「ひとつ、変更していただきたい事があるんです。このゲームのルールについて」
宮永咲は提案した。誰かが飛んだ場合は、親番は流れるものとしよう、と。
……赤木はそれを承諾した。
「原村さん、ちょっといい?」
作戦タイムだ。咲は和を、少し離れた位置に連れてゆく。
「確認、なんだけど」
「はい……なんでしょうか」
「南一局二本場の事、覚えてる?」
南一局、二本場のこと……
{111222333444西}
四暗刻!しかも、南場の優希ちゃんにダブル役満の四暗刻単騎!和了なるかっ?
「ポン」
井川ひろゆき
{横白白白}
「……」
{裏裏中裏裏裏裏}
「ぐうっ、ドラポンが追ってきたじぇ……」
そして、流局直前、ひろゆきの手番。
「カン」
この嶺上牌が実質の海底となった。ひろゆきはその牌を手の中に入れ、別の牌を打ち、そして流局。
「テンパイ」
井川ひろゆき
{②③④⑤⑤⑧⑨} {裏發發裏} {白横白白}
「ノーテン」
「うう、テンパイだじぇ……井川さんもそんな高かったのか……」
片岡優希
{111222333444西}
「ノーテンです」
――――
「あの局、流局の時、リーチの優希ちゃんは当然テンパイ。そして井川さんがテンパイ。赤木さんと原村さんがノーテンだったよね。でも、ほんとにそうだった?もしかして原村さん、こっそり張ってた?張ってたけど、伏せた?」
和は、咲のその質問に回答する。
「いえ……本当にノーテンでしたよ。でも、宮永さんの予想している事は分かります。私はあの局、テンパイしていても伏せるつもりでした」
「そっか。でも最終ツモで危険牌を引いたから降りたのかな」
「はい。そうです」
和は、あの局での目的をしっかりと理解していた。それは元を辿れば、更に一局前の話。南一局一本場。優希が赤木から6100をアガった。これにより、赤木の持ち点は18900。赤木たちの狙いは、南二局でひろゆきが赤木を親の跳満で飛ばす事。であれば、その前段階でのノーテン罰符はかなり重要だ。和は伏せた。赤木も当然伏せる。あとはひろゆきさえノーテンなら、優希の一人テンパイで、赤木は千点払いだった。無論、17900になってしまうから、18000で飛ぶその条件は変わらない。しかし、もしも赤木以外の三人がテンパイで、赤木が3000点払っていたら、赤木の持ち点は15900になり、子の倍満でも飛ぶ状況が生まれてしまっていた。それを防ぐ為に和は敢えて伏せた。これは間違いなく良い機転。しかし、うっかりひろゆきが張ってしまっていた事により、やる事はやったのに、いまいち目的の達成に至れなかった。
「それで、いいからね」
咲は和に助言する。
「そのまんま打って。時に失敗しても、自分の芯を揺らさない事だよ。麻雀ってほら、そういうゲームでしょ?目的が成せなくても、待つの。成せる機会を」
「……はい」
「それから……色々と苦しいと思うけど、優希ちゃんを許してあげて」
「……」
「選手交代は、しないよ」
「……」
「はい。分かりました。引き続き頑張ります」