咲VS赤木   作:かさばる

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第九話

 四暗刻が、成った。

 

「提案だじぇ」

 

 親番で役満を決めた片岡優希が手を挙げた。

 

「この親番、終わらないものとしよう」

 

 何……?

 

 一応、一応見てみれば、点数状況は以下の通りである。

 

 井川ひろゆき:0

 

 原村和:−1000

 

 片岡優希:67000

 

 赤木しげる:34000

 

 獲得チップ:清澄軍:16枚(16万点)赤木軍:20枚(23万点)

 

 言うまでも無く、原村和の点棒がマイナスになっているから、トビ扱いで持ち点はリセット。親番も流れて南入するはずである。

 しかし、優希は今回例外的に、この親番を続けたいと主張する。

 そんな言い分は普通通らない。競技の場でなら通らない。しかし、これは、勝負。競技ではなく勝負なのだ。

 

「いいだろう」

 

 赤木が認めた。

 

「俺も、今のあんたと似たような事を、若い時分にやった覚えがあるよ。よし。続行だ。東四局一本場」

 

 

 特殊ルールで勝負再開。東四局一本場である。

 

 優希は「この親番を」と明言した。つまり、今回のことは例外的な取引であり、とどのつまり、優希以外の全員が飛ぶまで続くというように解釈できた。

 

 東場では、この子はモンスターだから。一度できた四暗刻は、二度三度とまで例外を呼び寄せる。

 

「ツモ」

 

 片岡優希

 {123456789一二三三三}

 

「天和」

 

 いともあっさりとその事実は出来上がり、そして。

 

 井川ひろゆき:−16500

 

 原村和:−17500

 

 片岡優希:116500

 

 赤木しげる:17500

 

 獲得チップ:清澄軍:21枚(22万点)赤木軍:20枚(23万点)

 

 「確認だが、これは続行でいいな?次は二本場でいいんだな?」

 

 「もちろんだじぇ」

 

 東四局二本場。片岡優希の親番、続行。

 

 片岡優希、配牌。

 {123456789二三三三西}

 

 「ダブルリーーーチ!」

 

 「ロン」

 

 {裏裏南裏裏裏裏}

 

 赤木しげる←片岡優希

 {234②③④⑤⑤⑥⑦⑧西西} {西}

 

「人和ドラ3。三倍満だ」

 

 ……??

 

 三倍満?

 

 人和は八役の倍満扱いということか。

 

 井川ひろゆき:−16500

 

 原村和:−17500

 

 片岡優希:89500

 

 赤木しげる:44500

 

 獲得チップ:清澄軍:21枚(22万点)赤木軍:24枚(27万点)

 

 残りチップあと5枚っ……!

 

 

 図らずも、優希の親番が終わってしまった。

 

「これは……どうなんだ?南入はするにしても、点棒は?リセットか?」

 

 赤木が問う。

 

 そして、井川ひろゆきが付け加えた。

 

「どうなんですか?原村さん」

 

 原村、和?

 

「リセットです」

 

「……そうか」

 

 南入。南一局、赤木の親番。

 

 北家、片岡優希。

 {東東東555西西西⑦⑧⑨⑨}

 

 「ダブリーだじぇ!」

 

 竹井久は感心していた。

 

「すごいわね、優希。南場になったのに全然衰えない。前の親番の流れを継いでいるんだわ」

 

 

「カン」

 

 赤木しげる

 {裏44裏}

 

 {裏裏東南裏裏裏}

 

 北家、片岡優希。

 {東東東四四四西西西⑦⑧⑨⑨}

 

「しかも、敵のカンによる新ドラがもろ乗り。すごい。やっぱり流れが来てるわよ」

 

 しかし、その後。

 

「カン」

 

 赤木しげる。

 {裏88裏}

 

「カン」

 

 赤木しげる。

 {白白白横白}

 

 {裏裏東南33裏}

 

 なんと赤木にドラ8っ……!確定の三槓子ドラ8っ……!

 

 

「……咲?」

 

 竹井久は宮永咲に問いかける。

 

 咲はゆっくりと言葉を発する。

 

「場が、沸騰している」

 

「え……?」

 

「天和や四暗刻。全てが異常事態。文字通りに場が沸騰している。異常。それが当たり前となったら、言うなら、ここでは異常こそが正常。赤木さんは三槓子を確定させた。白三槓子ドラ8は三倍満。そして……三暗刻が付けば数え役満」

 

「……!それってっ!」

 

「そう。赤木さんの手には四暗刻くらい確定していたはず。役満より難しい三槓子を作ったんだもの。だから、それを崩しての白の大明槓。これは……変」

 

「う……」

 

「ですから、部長……」

 

 

 片岡優希

 {東東東四四四西西西⑦⑧⑨⑨} {四}

 

 

 カン……?

 

 いや、嶺上でツモれなければ、四槓算了で流れてしまう。

 

 あ……!

 

 和が、合図を送っている。

 

 手牌を二枚ずつ、少しずつ感覚を開けてみせるという簡単な通し。素人のイカサマ。つまり、自分の手は七対子であるという表明?

 

 優希がリーチの後にツモった牌で悩んでいる。これはどう考えたって暗槓絡みだ。それを打てと言っているという事は。え?七対子じゃない?だって。

 

 四枚抱えている牌が、単騎で待たれている訳が無い。

 

 優希は、その牌をツモ切りした。

 

「ロンです」

 

 原村和

 {一二二三三11223377} {四}

 

 二盃口の……安め一盃口……

 

 ふう……

 

 

 

 

 

 

「ククク……」

 

 赤木……?

 

「ああ、俺の暗刻は、あんたの手牌の中にある。ふふ、その{四}だ」

 

 赤木しげる

 {五六六六} {四} {白白白横白} {裏88裏} {裏44裏}

 

「三倍満の5枚だ。飛びで1枚」

 

 

 

 

 

 

 あの、赤木さん。

 

「何だ?」

 

 少し気分が悪いんですが、これはどうしたものでしょうか。

 

「ああ、そりゃそうだろうよ。異常に身を置き過ぎたんだ。お前はいわゆる、普通の神経をしているからな。まあ心配するな。じきに治る」

 

 はあ……

 

「実を言うと、それが目的だったりもするんだ」

 

 ああ、はい、それは思います。赤木さんは東四局で、片岡優希の暴論による連チャンを認めた。あの辺りからもうおかしい。デジタルな思考をする原村和は、ずいぶんまいっているように見えています。なんせ、俺がこれくらい疲れているんですから。

 

「そうさ。原村和はもう使い物にならんだろうよ。一件落着。これでよしってやつだ」

 

 はい……

 

「それとな、ついでって訳じゃねえが、片岡優希も弱っているんだぞ?」

 

 え?

 

「これはなかなか気付きにくいだろう。しかし、沸騰して熱量を増してゆく場に於いて、掟を破って親番を続行させ、そして役満の一本を取ったとて、それが何になるというのだ。役満一回は、満貫五回と意味が一緒なのだ。それなのに、気分がいいからって力を暴走、解放させちゃあ、すぐに底をついちまうよ。案の定南入してから片岡は顕著に弱体化。しかし、例えばだな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 竹井久は感心していた。

 

「すごいわね、優希。南場になったのに全然衰えない。前の親番の流れを継いでいるんだわ」

 

 

「カン」

 

 赤木しげる

 {裏44裏}

 

 {裏裏東南裏裏裏}

 

 北家、片岡優希。

 {東東東四四四西西西⑦⑧⑨⑨}

 

「しかも、敵のカンによる新ドラがもろ乗り。すごい。やっぱり流れが来てるわよ」

 

 

 

 

 

 俺が、あのカンをしたおかげで、片岡の手は化けたように見えたのだ……事実は事実だとしても、誰の手によるものか、偶然か?違う。誰の作為か。そのあたりまで読める奴はいるのかな……?清澄軍に……!

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