四暗刻が、成った。
「提案だじぇ」
親番で役満を決めた片岡優希が手を挙げた。
「この親番、終わらないものとしよう」
何……?
一応、一応見てみれば、点数状況は以下の通りである。
井川ひろゆき:0
原村和:−1000
片岡優希:67000
赤木しげる:34000
獲得チップ:清澄軍:16枚(16万点)赤木軍:20枚(23万点)
言うまでも無く、原村和の点棒がマイナスになっているから、トビ扱いで持ち点はリセット。親番も流れて南入するはずである。
しかし、優希は今回例外的に、この親番を続けたいと主張する。
そんな言い分は普通通らない。競技の場でなら通らない。しかし、これは、勝負。競技ではなく勝負なのだ。
「いいだろう」
赤木が認めた。
「俺も、今のあんたと似たような事を、若い時分にやった覚えがあるよ。よし。続行だ。東四局一本場」
特殊ルールで勝負再開。東四局一本場である。
優希は「この親番を」と明言した。つまり、今回のことは例外的な取引であり、とどのつまり、優希以外の全員が飛ぶまで続くというように解釈できた。
東場では、この子はモンスターだから。一度できた四暗刻は、二度三度とまで例外を呼び寄せる。
「ツモ」
片岡優希
{123456789一二三三三}
「天和」
いともあっさりとその事実は出来上がり、そして。
井川ひろゆき:−16500
原村和:−17500
片岡優希:116500
赤木しげる:17500
獲得チップ:清澄軍:21枚(22万点)赤木軍:20枚(23万点)
「確認だが、これは続行でいいな?次は二本場でいいんだな?」
「もちろんだじぇ」
東四局二本場。片岡優希の親番、続行。
片岡優希、配牌。
{123456789二三三三西}
「ダブルリーーーチ!」
「ロン」
{裏裏南裏裏裏裏}
赤木しげる←片岡優希
{234②③④⑤⑤⑥⑦⑧西西} {西}
「人和ドラ3。三倍満だ」
……??
三倍満?
人和は八役の倍満扱いということか。
井川ひろゆき:−16500
原村和:−17500
片岡優希:89500
赤木しげる:44500
獲得チップ:清澄軍:21枚(22万点)赤木軍:24枚(27万点)
残りチップあと5枚っ……!
図らずも、優希の親番が終わってしまった。
「これは……どうなんだ?南入はするにしても、点棒は?リセットか?」
赤木が問う。
そして、井川ひろゆきが付け加えた。
「どうなんですか?原村さん」
原村、和?
「リセットです」
「……そうか」
南入。南一局、赤木の親番。
北家、片岡優希。
{東東東555西西西⑦⑧⑨⑨}
「ダブリーだじぇ!」
竹井久は感心していた。
「すごいわね、優希。南場になったのに全然衰えない。前の親番の流れを継いでいるんだわ」
「カン」
赤木しげる
{裏44裏}
{裏裏東南裏裏裏}
北家、片岡優希。
{東東東四四四西西西⑦⑧⑨⑨}
「しかも、敵のカンによる新ドラがもろ乗り。すごい。やっぱり流れが来てるわよ」
しかし、その後。
「カン」
赤木しげる。
{裏88裏}
「カン」
赤木しげる。
{白白白横白}
{裏裏東南33裏}
なんと赤木にドラ8っ……!確定の三槓子ドラ8っ……!
「……咲?」
竹井久は宮永咲に問いかける。
咲はゆっくりと言葉を発する。
「場が、沸騰している」
「え……?」
「天和や四暗刻。全てが異常事態。文字通りに場が沸騰している。異常。それが当たり前となったら、言うなら、ここでは異常こそが正常。赤木さんは三槓子を確定させた。白三槓子ドラ8は三倍満。そして……三暗刻が付けば数え役満」
「……!それってっ!」
「そう。赤木さんの手には四暗刻くらい確定していたはず。役満より難しい三槓子を作ったんだもの。だから、それを崩しての白の大明槓。これは……変」
「う……」
「ですから、部長……」
片岡優希
{東東東四四四西西西⑦⑧⑨⑨} {四}
カン……?
いや、嶺上でツモれなければ、四槓算了で流れてしまう。
あ……!
和が、合図を送っている。
手牌を二枚ずつ、少しずつ感覚を開けてみせるという簡単な通し。素人のイカサマ。つまり、自分の手は七対子であるという表明?
優希がリーチの後にツモった牌で悩んでいる。これはどう考えたって暗槓絡みだ。それを打てと言っているという事は。え?七対子じゃない?だって。
四枚抱えている牌が、単騎で待たれている訳が無い。
優希は、その牌をツモ切りした。
「ロンです」
原村和
{一二二三三11223377} {四}
二盃口の……安め一盃口……
ふう……
「ククク……」
赤木……?
「ああ、俺の暗刻は、あんたの手牌の中にある。ふふ、その{四}だ」
赤木しげる
{五六六六} {四} {白白白横白} {裏88裏} {裏44裏}
「三倍満の5枚だ。飛びで1枚」
あの、赤木さん。
「何だ?」
少し気分が悪いんですが、これはどうしたものでしょうか。
「ああ、そりゃそうだろうよ。異常に身を置き過ぎたんだ。お前はいわゆる、普通の神経をしているからな。まあ心配するな。じきに治る」
はあ……
「実を言うと、それが目的だったりもするんだ」
ああ、はい、それは思います。赤木さんは東四局で、片岡優希の暴論による連チャンを認めた。あの辺りからもうおかしい。デジタルな思考をする原村和は、ずいぶんまいっているように見えています。なんせ、俺がこれくらい疲れているんですから。
「そうさ。原村和はもう使い物にならんだろうよ。一件落着。これでよしってやつだ」
はい……
「それとな、ついでって訳じゃねえが、片岡優希も弱っているんだぞ?」
え?
「これはなかなか気付きにくいだろう。しかし、沸騰して熱量を増してゆく場に於いて、掟を破って親番を続行させ、そして役満の一本を取ったとて、それが何になるというのだ。役満一回は、満貫五回と意味が一緒なのだ。それなのに、気分がいいからって力を暴走、解放させちゃあ、すぐに底をついちまうよ。案の定南入してから片岡は顕著に弱体化。しかし、例えばだな……」
竹井久は感心していた。
「すごいわね、優希。南場になったのに全然衰えない。前の親番の流れを継いでいるんだわ」
「カン」
赤木しげる
{裏44裏}
{裏裏東南裏裏裏}
北家、片岡優希。
{東東東四四四西西西⑦⑧⑨⑨}
「しかも、敵のカンによる新ドラがもろ乗り。すごい。やっぱり流れが来てるわよ」
俺が、あのカンをしたおかげで、片岡の手は化けたように見えたのだ……事実は事実だとしても、誰の手によるものか、偶然か?違う。誰の作為か。そのあたりまで読める奴はいるのかな……?清澄軍に……!