東方黒雲録〜Traveling Black Monster〜   作:文才の無い本の虫

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作者「ウチの永琳は少しダメな匂いがします」

トウマ「・・・・・おい」

作者「テヘッ☆」


8「八意 永琳」

 

 

永琳の案内で歩くこと数時間。

僕達はようやく『都』に着いた。

 

その『都』には城壁の様なもので囲まれており、門の前には門番が居た。

その門番が永琳に敬礼し、声をかける。

 

 

「八意様、お帰りなさいませ!・・・・・そちらの方は?」

 

 

「私の古い知り合いよ。通しても良いかしら?」

 

 

「はっ!どうぞお通りください!」

 

 

「ええ、ありがとう」

 

 

僕は永琳の後ろを歩く。

 

・・・・・永琳って偉かったんだ。

 

 

「・・・・・黒、声に出てるわよ」

 

 

「おお、ごめん。失礼だったかな?」

 

 

「いえ、怖れられるよりマシよ」

 

 

「・・・・・そっか苦労してるんだね」

 

 

「・・・・・ええ」

 

 

永琳と話しながら『都』の中を進んでいく。

 

よく観察すると永琳に向けられている目は友好的なものもあるが畏怖のものが多い。

・・・・・僕には好奇心2割、警戒心8割ってとこか。

 

『都』の中は外観が和風の建物が多いが■■■の記憶から判断するに技術水準はとても高い様だ。

こういうのを未来的って言うのかな?

 

どうやら霊体化して僕の斜め後ろをついて来ている『梅』の存在はばれてないみたいだ。

 

霊体化がばれてないってことはそういうことに関する技術は低いのかな?

後で永琳に聞いてみよう。

 

そうして歩くこと数分。

『都』の中心付近に永琳の家?はあった。

 

永琳曰く研究所に家が付属している形なんだとか。

・・・・・研究所がメインなのか。

 

 

「さあ、入って。歓迎するわ」

 

 

「うん。お邪魔します」

 

 

そうして永琳の家の居間に通される。

 

其処には四人がけの机と余り使われてなさそうな台所があり、彼女一人の家にしては少し広く生活感が少なく感じた。

 

永琳は「少し座って待ってて」と言いお茶を用意してくれた。

湯呑は3つあり、どうやら『梅』の分も淹れてくれたみたいだ。

 

僕は『梅』を呼び出して隣の席に座らせ、二人で彼女が淹れてくれたお茶を飲む。

・・・・・美味しい。

 

暫くして永琳が口を開いた。

 

 

「改めて黒、久し振りね」

 

 

「うん、久し振り。あの時の少女がこんなに大きくなってるとはね」

 

 

「・・・・・もう三百は経ってるわ」

 

 

「え?てっきり百年位だと思ってたよ」

 

 

「ズレてるわね・・・・・まぁ私も大概だけどもね」

 

 

「まぁそれが原因で旅をしてるんだけどね」

 

 

「へぇ・・・・・そろそろ約束通り貴方の話を聞かせて貰おうかしら?」

 

 

「いいと・・・・・あ」

 

 

話と言っても『化物』としての話と『旅の道士』としての話の何方を話せばいいものか。

彼女は人より長く生きているようだし話しても大丈夫だろうし、僕が交わした数少ない約束は破りたくない。

・・・・・この際永琳に聞くか。

 

 

「どうしたのかしら?」

 

 

「うん、少しね。永琳、君は『旅の道士』の話と『化物』の話、何方が聞きたい?」

 

 

「・・・・・」

 

 

僕の唐突な質問に少し永琳は悩むような動作をする。

 

暫くして永琳は僕に問うた。

 

 

「今の貴方は?」

 

 

「『旅の道士』だよ」

 

 

「じゃあ、私に短刀をくれたのは?」

 

 

「気紛れな『化物』だよ」

 

 

「・・・・・じゃあ私は気紛れな『化物(貴方)』の話が聞きたいわ」

 

 

「うん。じゃあ約束通り話そうか、『化物()』の話を」

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

――『こんにちは』

 

 

――『君はこんなところで何をしているの?』

 

 

――『いっそ不老不死の研究でもして他の人を見返してみれば?』

 

 

今になっても覚えている薬師である『八意永琳()』の原点。

 

あの旅人と会ってから長い時間が経った。

 

あれから薬師になった私は『穢れ』が老化の原因であることを突き止め、『穢れ』を体内から除去して老化が起き無くなる薬を作った。

その功績で私は当時里で祀られていたツクヨミ様に権力と研究所を貰った。

その権力は里――今は『都』と呼ばれている――の政に口を挟めるほど。

国の人々は私を怖れた。

・・・・・今では私の名前を呼ぶものは居ない。

 

私はツクヨミ様から貰った研究所で様々な研究とあの旅人の言った不老不死の研究をしていた。

 

百年程前のことだった。

実験に失敗してガラス片が飛び散った時に短刀が結界の様なものを展開した。

そうしてあの旅人が私にくれた護身用の短刀に不思議な力があることが判った。

それを調べたところ私が研究していた不老不死に足りなかった魂への干渉の方法が手に入った。

短刀には『概念』を主軸に置くさしずめ『概念武装』というものだった。

ツクヨミ様には隠匿したがこの短刀は理論上はツクヨミ様の一撃すら凌ぐことができる。

 

あの旅人は何故私にこんな貴重なものをくれたのだろうか?

今でも不思議だ。

 

・・・・・もうあの旅人は死んでしまったのだろう。

 

 

「約束、果たせなかったわね・・・・・」

 

 

窓から見える空を見上げる私の手には百年掛けて完成した不老不死の薬が握られていた。

 

 

ある日、私は久し振りにあの旅人と出会った森に行くことにした。

この『都』の周囲はあの森も含めてツクヨミ様によって浄化された。

その為妖怪等は存在しない。

 

遠出に関してはあの短刀もある為、護衛も断った。

・・・・・偶には感傷に浸るのもいいだろうから。

 

そうして森を歩いていたらハグレ妖怪に遭遇した。

 

 

「なんて間が悪いのかしら!」

 

 

逃げようとするがハグレ妖怪は鬼の妖怪だったようで逃げることは叶わなかった。

 

すると常に目立たないように腰に下げていた短刀が震えた。

あの時の様に私の周りに青白い球体状の防御の『概念』が展開される。

 

展開された『概念』をハグレ妖怪は突破出来ないようだ。

 

ふと、視界の端にあの旅人が見えた気がした。

 

 

「Ga?!」

 

 

瞬間、目の前のハグレ妖怪が吹っ飛んでいった。

 

いや、蹴り飛ばされた。

 

ハグレ妖怪を蹴り飛ばした人影はおかしなことに自身で蹴り飛ばしたハグレ妖怪に追い付き(・・・・)、消滅させた。

蹴り上げた姿勢をしているので蹴ったのだろう。

 

彼からは霊力を感じるので人間に類するものだろう。

・・・・・霊力を使ったとしてもどんな脚力をしているのだろうか?

 

すると彼は此方に近づいて来て言った。

 

 

「大丈夫?」

 

 

その顔と声にはとても覚えがある。

 

動揺していたのか私は有り得ないことを口に出してしまう。

 

 

「・・・・・貴方、あの時の旅人?」

 

 

「え?・・・・・もしかしてあの時の少女?!」

 

 

 

人間が三百年も生きる筈が無いのに。

でも、彼は間違い無くあの旅人だった。

 

私は彼に言う。

 

 

「ええ、そうよ。久し振り、と言ったらいいのかしらね。・・・・・見た目が変わっていない貴方は一体何者?」

 

 

「そういえば自己紹介はまだだったね。僕の名前は八雲 黒。しがない旅の道士だよ。君の名前は?」

 

 

道士・・・・・仙人のことか。

そういえばツクヨミ様から聞いたことがある。

霊術を極め、死神を追い払い長い時を生きる人間だと。

 

 

「私は八意 ××。発音出来ないと思うから永琳で良いわ。・・・・・まさか貴方が道士だったとはね。それなら納得だわ」

 

 

今は再会を喜ぼう。

 

その後、少しの会話を挟んで私は黒を『都』へ招待した。

・・・・・私、いい仕事よ。

 

私の家のテーブルに黒を座らせる。

黒の従者にもお茶を淹れてあげましょうか。

・・・・・でも自我を持つ式神(プログラム)って何を創ってるのよ。

 

私は三人分のお茶を用意し、テーブルの黒の対面の席に座る。

 

さて、改めて話しましょうか。

 

 

「改めて黒、久し振りね」

 

 

「うん、久し振り。あの時の少女がこんなに大きくなってるとはね」

 

 

・・・・・時間感覚おかしくないかしら?

 

 

「・・・・・もう三百は経ってるわ」

 

 

「え?てっきり百年位だと思ってたよ」

 

 

長命に成ると時間感覚はズレるわね。

まぁ私も不老ではあるから適当だしね。

 

 

「ズレてるわね・・・・・まぁ私も大概だけどもね」

 

 

「まぁそれが原因で旅をしてるんだけどね」

 

 

「へぇ・・・・・そろそろ約束通り貴方の話を聞かせて貰おうかしら?」

 

 

「いいと・・・・・あ」

 

 

黒が固まる。

 

 

「どうしたのかしら?」

 

 

「うん、少しね。永琳、君は『旅の道士』の話と『化物』の話、何方が聞きたい?」

 

 

・・・・・ふむ、側面、視点かしら?

要するに彼の話は二つの側面があるということね。

 

私は何方が聞きたいのかしら?

・・・・・私が聞きたいのは私の愚痴を聞いた黒の話ね。

 

今の彼は何方なんだろうかと思い、私は彼に問いかける。

 

 

「今の貴方は?」

 

 

「『旅の道士』だよ」

 

 

「じゃあ、私に短刀をくれたのは?」

 

 

「気紛れな『化物』だよ」

 

 

なら、私が聞きたいのは決まっている。

 

 

「・・・・・じゃあ私は気紛れな『化物(貴方)』の話が聞きたいわ」

 

 

「うん。じゃあ約束通り話そうか、『化物()』の話を」

 

 

そうして黒は話し始めた。

 

――遠い遠い、遥か太古の、化物の話を。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

僕は永琳にこれまでのことを省くとこは省いて、かいつまんで話す。

 

長い間海を飛び回っていたこと、海の広さ。

 

宇宙で眠ったこと、満天の星の輝き。

 

旅をしていたこと、様々な自然や風景。

 

永琳に会ったこと、出会いの素晴らしさ。

 

エディに会ったこと、銀木犀の箱庭。

 

今思えば拉致監禁されたこと、穏やかな日常。

 

エディに様々なことを習ったこと、彼女のデタラメさ。

 

『梅』を創ったこと、成長を願って。

 

旅立ったこと、道士と名乗る。

 

諏訪子を助けたこと、鬼の妖怪。

 

諏訪子と暫く暮らしたこと、居心地が良い生活。

 

旅を再開したこと、寂しさ。

 

『都』を目指して進んだこと、期待。

 

永琳に再会したこと。

 

 

永琳はそれを黙って聞いていた。

話し終わると彼女は呆れた様に言った。

 

 

「貴方、デタラメね」

 

 

「ひどいね?!」

 

 

「黒が妖怪でも人間でも神でも無い『ナニカ』なのは理解したけど、普通宇宙っていう極限空間で寝るかしら?」

 

 

「いやぁ、思い付きで?」

 

 

「はぁ・・・・・でも」

 

 

「でも?」

 

 

僕が聞き返すと永琳はふっと笑って言った。

 

 

「面白かったわ」

 

 

「それは良かった」

 

 

つられて僕も笑顔になって笑い合った。

 

ひとしきり笑い合った後でちらりと窓を見てから永琳が口を開いた。

 

 

「約束通り黒の話を聞いたから、今度は私の研究を見せたいところなんだけど・・・・・」

 

 

「ど?」

 

 

「もう夜だし明日にしましょう」

 

 

窓を見ると外はとっくに日が沈んでいる。

どうやら結構な時間話し込んでいた様だ。

 

 

「部屋は余ってるし、好きな部屋を使っていいわよ。数少ない友人(・・)を外に放り出す程薄情じゃないわ」

 

 

友人、友人かぁ・・・・・。

嬉しいこと言ってくれるね。

 

僕の口から笑いが溢れた。

 

 

「・・・・・ははっ。じゃあ僕も数少ない友人の言葉に甘えるとするかな?」

 

 

「ええ、よろしく」

 

 

「こちらこそ」

 

 

こうして僕は友達の永琳の家に世話になることになった。

 

・・・・・だが僕はまだ知らなかった。

この先に地獄が待っていることを。

 

 




『八雲 黒』
:気紛れな『化物』。永琳という友人が出来た。何故か永琳への信用度はMAX。研究を見るのが楽しみ。永琳の家に居候することになった。この先には地獄が待っている。

『八意 永琳』
:実は黒の話をとても楽しく聞いていた。数少ない友人と言ったが実は友人と言える人物は黒以外居なかったりする。彼女を永琳と名前で呼べるのは一人だけ。

『梅』
:後半は空気だった黒の従者。この先に待ち構えている地獄で大活躍する予定。少し拗ねた。

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