東方黒雲録〜Traveling Black Monster〜 作:文才の無い本の虫
トウマ「何時ものこと・・・・・?!」
作者「自己満足EX」
さて、僕の目の前には地獄が広がっている。
昨日永琳の家の一室を借り、僕と『梅』は寝た。
話に置いて行かれて拗ねた『梅』の機嫌を直すために三時間は撫で続けたと思う。
そんなこんなで今朝は永琳が用意した「保存食」を食べ、永琳の研究所に向かった。
・・・・・はっきり言って永琳の研究所はゴミ屋敷の方がマシと思えるほどの状況だった。
床には足の踏み場が無く、永琳曰く常人が踏んだら3回死ねる類のものがごろごろとしている。
「・・・・・永琳、君って片付けが苦手?」
「・・・・・教えてくれる人が居なかったし、困らなかったもの」
沈黙が場を支配する。
その沈黙を破ったのは『梅』だった。
「主様、永琳様、取り敢えず片付けませんか?」
『梅』は僕達にそう提案する。
僕は頷いて言う。
「永琳、取り敢えず片付けをしよう。僕も手伝うから」
「ありがとう、黒」
そうして永琳の研究所の大掃除が始まった。
「永琳、これは?」
「ああ、それは研究用の毒薬ね」
「おい?!」
先ず、永琳に聞きながら物の仕分けをする。
毒薬劇薬薬品関連は割れて混ざったりしないように適当に用意した箱に入れ、その他は捨てるものと捨てないものに分ける。
「永琳様、これは此処で良かったですか?」
「ええ、合ってるわ」
毒薬劇薬薬品関連と捨てないものは仕舞っていく。
・・・・・『梅』がテキパキと作業をしてくれてとても助かった。
残ったゴミは後で処理するらしく一纏めにしておく。
床が見えるようになったところで埃や汚れを掃除する。
僕と『梅』と永琳で手分けして窓や棚、机を拭く。
早く自身の持ち場を終わらせた『梅』が半分位やってくれた。
・・・・・従者が万能すぎて僕がダメになりそう。
「・・・・・貴方も大概ね」
はて、なんのことだろう?
そんな会話を楽しみながら片付けをしていく。
片付けを始めてから半日ほどで(『梅』の大活躍があり)永琳の研究所は片付いた。
それを見て永琳が言う。
「見違えたわね。ありがとう黒、梅」
その感謝の言葉に僕は「どういたしまして」と言う。
横に居た『梅』は永琳に対し口を開いた。
「いえ、私は主様の手伝いをしただけなので感謝は不要ですが・・・・・まぁ、受け取っておきます」
少しぶっきらぼうに言う『梅』の頬は少し緩んでいた。
僕にはそれが照れ隠しにしか見えなかった。
・・・・・『梅』も固いなあ。
◇◇◇◇
永琳が奥から何かを持ってきた。
「永琳、それは?」
永琳の手にはフラスコが握られている。
「不老不死の薬よ」
「ゑ?・・・・・出来たの?」
「ええ・・・・・実験はしてないけどね」
永琳が持ってきたフラスコの中の液体を見る。
その液体は銀色で液体というより流体といった感じだ。
僕は永琳に聞く。
「これが不老不死の薬ねぇ。どういう原理なの?」
すると永琳は僕があげた短刀を取り出した。
「これ、覚えているかしら?」
「うん。僕が作って永琳にあげた短刀でしょ?」
・・・・・あれって『概念武装』だったはず。
あ。
僕は一つの可能性に辿り着く。
「・・・・・もしかして『概念』?」
「ええ、そうよ。この薬、『蓬莱の薬』は『概念』を利用して魂に作用するの」
「なるほど」
「わかるの?」
「うん。永琳に話した『裏側の魔女』の所で習ったんだ」
すると永琳が僕の少し後ろを見て目を見開く。
・・・・・後ろから懐かしい
そういえば、「偶に逢いに行くから」って言っていたなぁ。
「――
僕は喋ろうとするも、口の前に立てられた彼女の人差し指に無音の魔法を掛けられる。
・・・・・声が出ない。
すると耳元で彼女が喋るのを感じる。
「へえ、それが『蓬莱の薬』かな?」
彼女の聞き慣れた声に永琳が警戒しながら反応する。
「・・・・・ええ、そうよ。貴女は?」
「くふっ・・・・・私は『裏側の魔女』エディ・オスマンサス。黒はあげないよ?」
「・・・・・答えはわかってるでしょうに」
「うん、心を読ませて貰ったからね☆」
・・・・・僕の友人に何してんのエディ?!
「ああ、ごめんね?黒。――
エディの鍵言で無音の魔法が解除される。
僕も使うこの鍵言魔法はエディの魔法だ。
この魔法は多重発音という頭の可笑しい技術を要求するかわりに使いやすく、汎用性が高い。
多重発音は殆ど(無理に近い程)習得出来ない高等技術だが、それ故に秘匿性が高い。
僕も習得には数十年掛かった気がする。
今の
因みに極めると発音しなくても使えるようになるのだとか。
そうして喋ることが出来るようになった僕はエディに言う。
「エディ、人の心を読むって何してるの?!」
「黒が取られたらやだし?問答無用で殺さないだけ優しいと思わないかな?」
さも当然の様にエディは――いや、『裏側の魔女』は言う。
エディは僕に友好的・・・・・友好的?だが興味が無いものにはどこまでも非情だ。
そのことを僕は彼女との生活で嫌というほど理解した。
初めの頃のエディだったら殺す殺さない以前に僕は旅に出れず此処に居ないだろう。
・・・・・あの頃のエディなら絶対に
「・・・・・うん。永琳を殺さなかったのはありがとう。でもどうして今?」
「それはね、黒に逢いたくなったからだよ?」
・・・・・さいですか。
「あ、取り敢えず血を貰うね?これっくらい」
そう唐突に告げたエディは親指と人差し指を小さなコップぐらいの大きさに広げる。
・・・・・一つ言いたい。
「なんでさ?!」
「・・・・・(私は何を見せられているのかしら)」(小声)
◇◇◇◇
そうしてエディに噛み付かれ(何度も噛むのでめっちゃ痛かった)、たっぷりと血を啜られ(服の首元は真っ赤)・・・・・まぁ色々あった。
嬉しい贈り物も貰ったが。
その後、エディは「死なない様に頑張ってね?」と不穏な言葉を残して去って行った。
因みに永琳は心労で机に突っ伏している。
・・・・・裏側の魔女モードのエディ、怖いもんな。
少し心配になり、僕は突っ伏している永琳に声をかけた。
「・・・・・永琳、大丈夫?」
「・・・・・え、ええ。取り敢えず黒、首元の血をどうにかしたらどうかしら?」
永琳に言われて自身の首元を見る。
確かに首元が真っ赤だ。
何か丁度良い方法は・・・・・。
・・・・・あった、制御の魔法を使えばいいんだ。
僕は制御の魔法を使い、服に染み込んだ血液を除去する。
「――
右手の上に血液が集まり、球となる。
服の首元は綺麗になったので上手く行った様だ。
「――
続けて魔法を使い、右手に集めた血液をチリ一つ残さず滅却する。
・・・・・アカシックレコードが正しいのなら僕の血は危険過ぎる。
さて。
後始末も終わったし、約束通り永琳の研究も見せてもらった。
永琳にさそわれたし少し此処で過ごすのも悪くない気がする。
何か永琳にお礼がしたいな。
・・・・・そういえばエディからの贈り物があったな。
「永琳、キッチン借りていい?」
「いいわよ?でも、何をするのかしら?」
「少し永琳にお礼をね?あ、永琳は食べれない物とかある?」
「無いけど?」
「よし、じゃあちょっと待っててね」
僕は突っ伏している永琳を置いてキッチンに向う。
・・・・・このキッチン使った感じがしない。
朝も保存食だったし永琳って料理しないのかな?と、そんなことを考えながら能力で料理道具を作る。
何時も使っている簡素な鍋にお玉とへら。
エディからの贈り物は【銀木犀の箱庭】にある僕の畑から物を取り寄せられる袋だ。
エディによると僕の式神の『松』と『竹』はちゃんと畑の世話をしてくれているみたいだ。
とても助かる。
材料は何がいいだろう。
永琳は栄養失調になるタイプには見えないけど、身体に優しい方がいいかな?
「えーっと、スープ様にトマト、玉ねぎ、人参、・・・・・」
僕はエディ命名『畑袋』から野菜を取り出していく。
謎肉は・・・・・辞めとこう。(エディの創った?謎肉は畑から採れる)
代案として大豆を潰してこねて肉代わりにしよう。
■■■も大豆は畑のお肉って言ってたしね。
あとはハーブを少々。
取り出した野菜を使って料理を始める。
今日は数十年前に■■■の記憶をもとに野菜だけで試行錯誤して大作ったコンソメモドキ(【銀木犀の箱庭】に置いて来た)をエディが「今度は料理作ってね?」と持ってきてくれたのでそれを使う。
■■■、ありがとう。
そうして料理をすること30分。
「よし、できた」
僕の前には湯気を立て、美味しそうな匂いを漂わせるコンソメモドキスープパスタモドキが出来上がっていた。
因みにパスタモドキというのは小麦粉から作った丸めた餅みたいな食べ物だ。
パスタと材料はほぼ一緒なのでパスタモドキと呼んでいる。
さて、『梅』に手伝って貰おうかな?
僕は斜め後ろに居るであろう『梅』を呼ぶ。
「『梅』」
「此処に。主様、御飯の用意の手伝いですか?」
『梅』は【銀木犀の箱庭】に居るときから食事の用意の手伝いを頼んでいたので察してくれる。
「うん。少し手伝ってくれ」
「御意」
『梅』は偶にこの様に初めの頃の様な喋り方をする。
僕は少し気になったのでこの際彼女に聞いてみることにする。
「『梅』、少し気になったんだけどその一言喋り気に入ってるの?」
「・・・・・いえ、癖と言いますか。咄嗟に出てしまうのです」
へえ。
疑似人格の影響かな?
まぁ困ることは無いしいいかな。
話している内に料理(と言ってもコンソメモドキスープパスタモドキの一品だけだが)の盛り付けが終わったので『梅』に彼女の分の器と人数分のコップを持ってもらい、僕はお盆に自分と永琳の分の器と人数分の匙を載せる。
「さて、用意もできたし行こうか」
「はい、主様」
因みにコンソメモドキスープパスタモドキを食べた永琳は保存食との違いに号泣した。
その後、永琳は料理を黒に聞きながら練習する様になったとさ。
◇◇◇◇
ツクヨミという神に呼び出されたり(小物感が凄かった)、エディが遊びに来たり(とてもカオス)、永琳の案内で『都』を梅と一緒に観光したり(僕と永琳は友達です!)、永琳の弟子である綿月姉妹に稽古をつけたり(凄い才能の塊だった)、永琳の研究を手伝ったり(僕と自分を実験台にするなよ・・・・・)、永琳に料理を教えたり(今は絶品)エディが遊びに来たり(さらにカオス)、梅と『都』の外に散歩に行ったり(4時間近く撫でていた。散歩とは?)、月移住計画の手伝いをしたり(ロケットの燃料の開発、耐久試験)。
そうして永琳の家に世話になり始めてから数十年が経った。
今日は月に行くロケット(長ったらしい名前が付いている)の最後の一つが発射される日だ。
この『都』はもう殆ど人気は無く、殆どの人は発射場の宿舎に暮しており、此処に居るのは永琳と僕達だけだ。
永琳はこの最後のロケットで月に行くそうだ。
そうしてロケットの搭乗口の前に着く。
永琳が口を開く。
「黒、ここ数十年はとても楽しかったわ」
「うん。僕もだよ」
「・・・・・今からでも月に来ないかしら?」
永琳がそう言う。
・・・・・少し寂しいけど、僕は未だ答えを見つけていない。
「ごめん。魅力的な提案だけど僕は見つけなきゃ」
「そう・・・・・貴方が価値観を見つけるのを応援しているわ」
「ありがとう。それに、月だったら飛んで行けるから」
「・・・・・少し貴方がデタラメなのを忘れてたわ。黒、コレをあげるわ」
永琳は懐から二本の試験管を取り出す。
その中には見覚えのある銀色の流体が入っている。
「コレは!!」
「ええ、『蓬莱の薬』よ。貴方と梅の分で2本ね」
「これ、貴重でしょ?」
「ええ。でも何となく貴方達に必要だと思ったの。受け取ってくれるかしら?」
「・・・・・お守りとして貰っておく」
僕は永琳から二本の試験管を受け取り、片方を懐に、もう片方を『梅』に持たせる。
・・・・・永琳に貰ってばかりな気がする。
そうだ。
何かお返しでもしよう。
永琳は使わないかもしれないけどお守りとしてなら・・・・・。
僕は久し振りに意識して能力を使う。
持たせるカタチは『勾玉』、材料のオモイは『幸運』。
――永琳に、僕の大切な友人に少しばかりの幸運がありますように。
「永琳、お返しにコレをあげるよ」
「コレは勾玉かしら?」
「うん。まぁお守りみたいなもんだよ・・・・・そろそろ時間か」
「ええ」
永琳はロケットの搭乗口に向かって行く。
そして乗る前に振り向いて言った。
「黒、また何時か」
「うん、また何時か」
そうして最後のロケットは飛んでいった。
「さて、『梅』。行こうか」
「はい、主様」
・・・・・少し気になる。
何故エディは死なない様に頑張れと言った?
嫌な予感がする。
瞬間、視界が真っ白に染まる。
「――主さ・・・・・」
僕は意識を失った。
◇◇◇◇
「ツクヨミ様!どういうことですか?!」
永琳はツクヨミの前にに一枚の報告書を叩きつける。
その報告書には『英雄、八雲黒の死亡について』と書かれており、黒がロケットを守るために襲ってきた妖怪の大軍と戦い、名誉の戦死を遂げたと
そして最後のロケットに搭乗していた永琳は『都』が跡形もなくツクヨミの力で消し飛ばされたのを見ていた。
「何故、彼が居るのに『都』を攻撃したんですか?!」
永琳はツクヨミに詰め寄る。
それに対してツクヨミはこう言った。
「奴が邪魔だったからだ。奴は私を殺すことが出来る数少ない存在だ。だから奴には戦死してもらったのだ」
「・・・・・たったそれだけの理由で?」
「そうだ」
永琳は初めて黒が言った価値観のズレの危険性を理解した。
ああ、
これ以上言っても無駄なことを理解した永琳はツクヨミの座所を後にする。
自身の屋敷に帰った永琳は地球を見つめ、首に下げた黒から貰った勾玉を握りしめた。
「黒・・・・・必ず会いに行くわ」
彼女は自身の友の生存を信じ、暫しの間そうやって地球を見つめていた。
◇◇◇◇
「あるじ、さま・・・・・ご無事です、か?」
『梅』の途切れ途切れの声が聞こえる。
どうやら瓦礫?に背を預けて座らせられている様だ。
「・・・・・『梅』?」
前を見ると其処には躰がボロボロの『梅』がいた。
それは酷い有様で、瀕死の重傷といったところだ。
「あるじ、様。これを。わたしが持って・・・いても意味があり・・・ません」
『梅』は僕に蓬莱の薬が入った試験管を差し出す。
・・・・・きっとこのままだと『梅』は死ぬ。
「わたし、は・・・あるじさまに、つかえられて、しあわ、せでした・・・・・」
『梅』が僕の方に倒れ込む。
もう死んでしまったのかもしれない。
死ぬな。僕の手から零れ落ちないでくれ。僕以外のモノにならないでくれ。僕から離れて行かないでくれ。
自分の中から出て来るオモイに少し冷静になる。
・・・・・ああ、そうか。僕は歪んでる。
■■■、少しわかった気がするよ。
答えは出てないけど、僕は自分に嘘はつきたくない。
「『梅』、僕は君に死んでいいなんて命令していない」
彼女は応えない。
僕は手元にある蓬莱の薬が入った試験管の蓋を開ける。
この薬は魂があり、『飲み込む』という行為によって初めて効果を発揮する。
此処には未だ僕という『梅』との縁が有る。
まだ間に合う筈だ。
僕は彼女の躰を抱き上げ、試験管の中身を口に含む。
・・・・・僕は
◇◇◇◇
――主様主様主様主様主様主様主様主様主様主様主様主様主様主様主様主様主様主様主様主様・・・・・
――嗚呼、私は愚かだ
――式神ごときが自身の主にこんな思いを抱くなんて
――あまつさえ自身が死ぬ間際に自覚するなんて
――なんて滑稽
――なんて愚か
――きっとエディ様の「死なない様に頑張ってね?」という言葉は私に向けたものだったのだろう
――嗚呼、もう主様の言葉を聞き取れない
――主様の姿も見れない
――?
――主様、何を?!
――・・・・・口づけ?
――躰が、魂が熱い
――――『梅』、『梅』!!
――――僕から離れて行かないでくれ
――主様の声が聞こえる
――主様の温もりを感じる
――嗚呼、歯止めが効かなくなってしまいそうだ
――――『梅』、君は僕の
――御意
――私は主様のモノ
――もう、離しません!!
◇◇◇◇
「『梅』、君は僕の
彼女の躰から光が溢れた。
その光は『梅』に集まり、『梅』を包みこむ。
光はやがて形を変え、見覚えのある少女の姿に成った。
目を開いた彼女は言った。
「・・・・・主様、ただいま帰りました」
「うん、お帰り」
僕は戻ってきた彼女を強く抱き締めた。
『八雲 黒』
:自身の歪みを自覚。『梅』への独占欲を自覚し、蓬莱の薬を使う。独占欲があることには気付いたが、どういった欲なのかは気付いていない模様。
『梅』
:自身の主へのオモイを自覚。確固とした我を得た。彼女は止まらない。歯止めが効かなくなった忠誠心と主従愛は何処へ行くのか。何故か今章のヒロインになった。
『八意 永琳』
:彼女の何となくが『梅』を救った。それを彼女は知らないが、黒と梅の生存を信じて再会を待ち続ける。
バッドエンド見たいですか?
-
見たい!!(旧作の様にEX√として書く)
-
見たくない!!(旧作に載せるかも?)
-
メリーバッドエンド!!(諏訪子ルート)
-
ラブラブ天驚拳!!(超ハッピーエンド)
-
個別!!(コメント下さい。書きます)