東方黒雲録〜Traveling Black Monster〜   作:文才の無い本の虫

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第一章「妖精が化物に成るまで」
1「始まり」


 

 

「・・・・・此処は?」

 

 

僕は目を開ける。

目の前には見渡す限りの透き通った海原。

此処は何処だろうか。

 

・・・・・いや、自分は誰だ(・・・・・)

 

僕は自分に問いかけるが答えは返ってくる筈もない。

 

何となくわかるのは自分が人では無い事。

 

海面を鏡替わりに自分の躰を見てみると僕は黒髪の少年の姿をしていて、妖精の様な羽がついている(・・・・・・・・・・・・)ことがわかる。

 

先程から有った違和感の正体はこれか。

 

僕は、何だ?

そう思考を巡らせるが答えは出ない。

 

 

「まぁ、困ることでもないし取り敢えず進もう」

 

 

答えの出ない思考を切り上げ、感覚で海上を滑るように飛ぶ。

せめて陸地か海原以外のものを探そうと慣れてきた羽で飛ぶ速度を上げる。

 

そうして飛び始めてから日が昇る回数的に一月程が過ぎた。

未だに陸地は見えて来ず、見渡す限りの海原だ。

 

まぁ、自分の事も合わせて気長に行こう。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「暇だ・・・・・」

 

 

あれからどれぐらいが経っただろうか?

 

日が昇った回数は万を超えたところで数えるのを止めた。

 

ずいぶん前に飛ぶのに慣れたので出せる最大速度で飛んでいる。

ソニックブームが起きてる様なので軽く音速は出ている筈だ。

ということは地球?の円周が約4万kmで音速が秒速340mだから・・・今僕が音速で飛んでいるとすると約32時間程で一周出来る筈。

 

あれっ?

 

 

「何で僕は音速とか地球の円周を知ってる?」

 

 

うーん。

思い出せない。

 

・・・・・まぁいいか。

 

そう考えるともうすでに僕は地球を何千周もしている事になる。

此処が地球?じゃないとしてもずっと海というのもおかしい気がする。

 

・・・・・一旦考えるのはやめておこう。

 

最近・・・・・というかずいぶん前に気付いた事がある。

それは今着ている服や靴に関してだ。

この服や靴は僕の力?みたいなので構成されている様で新しく作ったり、力に戻したり出来る。

 

最近はこの能力で物を作って崩してを繰り返して時間を潰していたのだがネタ切れと言うやつだ。

 

というか今気付いたが僕って一切寝て無いな。

生物として大丈夫か?

 

あーでもこの能力が使えたり音速で飛んで躰に何も無い事を考えると生物ではなく妖怪や妖精などの類なのかもしれない。

 

使う機会は無いと思うが暇潰しにコブラやインメルマンターン、バレルロールやシザーズ等の航空機の空戦機動をマスターしたりもした。

 

カッ飛ぶのは気持ち良いが慣れると暇だ。

 

一度海に潜ってみたが何も無かった。

どういうことだ?

底がない海って物理法則大丈夫か?

 

・・・・・そういえば音速で飛んでる僕が言えることじゃ無かった。

 

そうして今日もまた空戦機動で遊びながら飛んでいると周りから僕が暇潰しに使っていた能力と似たようなものを感じた。

 

 

「何だ?!」

 

 

海面が浮上する、いや海から陸地が迫り上がってくる。

僕は変化を観るために上空に向けて進路を取る。

 

最近、感覚的には音速の3倍位は出せるようになったからすぐにつくだろうと上空に向かって飛ぶ。

周りの色が変わった位に下を見ると確かに海から陸地が迫り上がってきていた。

 

何故か知っている大陸の形状。

そうか、これは地球だ。

 

 

「地球は青かったってやつだな」

 

 

っていうかここ宇宙じゃ?

 

飛ぶのを止めて周りを見渡すとキラキラと輝く星や太陽が見える。

おーっと、どうやら僕は宇宙でも活動出来るのみたいだ。

空気が無いのにどうやって飛んでいるんだろうか?と思ったがこの妖精の様な羽で空気を使って飛んでるとは思えないので考えるのは止めた。

 

さて、状況を鑑みるに僕の何故か知っている知識で行くと今は地球誕生とかそこらへんなのだろうか?

でも大陸がいきなり迫り上がってきたことや僕が物理法則を無視していることといい此処はファンタジーとかそこらへんなのだろうかと考える。

 

取り敢えず、人間が誕生するまで待とう。

 

 

「それはいいんだけど、それまで何していようか・・・・・」

 

 

あ、そういえば僕って寝て無いな。

寝るか。

うまい感じに寝れば行ける気がする!

 

と言うわけで僕は近くに有った隕石――小惑星かな?に自分の躰を固定し目を閉じた。

 

直ぐに眠気は襲ってきた。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「うん?・・・・・何かな?まだこの世界には宇宙で活動できる存在は居ない筈」

 

 

世界の狭間で産まれたばかりの世界(・・・・・・・・・・)を観測していた観測者――『俯瞰する編集者』は一つの異常を見つけた。

 

彼女は空白故にハッピーエンド(喜劇)が、バッドエンド(悲劇)が、面白い事(愉悦)が大好きだ。

だから面白い方に(愉悦を求めて)世界(物語)俯瞰し編集する(読み、手を加える)

 

そんな彼女からしたら『異常』というのは不確定要素だ。

 

――だが、『異常』は暇を持て余していた彼女の暇潰しになり得る稀有な存在だった。

そして『妖精(異常)』は彼女の興味を引いた。

 

 

「少し読んでみようか・・・・・」

 

 

彼女は彼女を『俯瞰する編集者』足らしめる能力を使う。

その能力の名は【全知全能】。

神といっても差し支えない能力だ。

 

彼女は『妖精(異常)』の未来を除く来歴や本質に対象を絞り能力で知る。

 

途端、彼女は笑い出した。

 

 

「くふっ・・・・・あははは!!何だこの『妖精』は!!矛盾してて歪だ!!『終わり』なのに『始まり』を求めるなんて!!面白い、面白い!!異界の人間の魂を核にしながら何処か壊れている!!ああ、嗚呼!!何と美しい!!」

 

 

彼女は気付かない。

その興味の中に一目惚れが入っていることを。

彼女自身も『妖精』と同じものを求めていることを。

 

彼女は『妖精』を見守ることにした。

 

 

「くふっ・・・・・『妖精』、私に君を魅せてくれよ?」

 

 

何故なら『妖精』を見ているだけで彼女の空白は消えてたのだから。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「ううん・・・・・よく寝た」

 

 

僕は躰の固定を外し、大きく伸びる。

躰に不調は感じられないどころか絶好調だ。

感覚的に身体能力が上昇している。

 

・・・・・寝る子は育つってやつだな。

 

地球に目を向けてみると剥き出しだった大陸が緑色に見える。

どうやらうまい感じに起きれた様だ。

 

 

「さて」

 

 

僕は羽を広げると違和感を感じ取り、能力で大きな姿見を作り自分の姿を見る。

 

 

「ん?・・・・・何か羽が増えてる?!っていうかこれって羽か?!」

 

 

身長の変化は無かったが、僕の羽は一対の細長いひし形と円に変化?していた。

背中に生えているというより背後に浮遊しているので後光とか大きな光輪に見える。

仕舞おうと思えば仕舞うことが出来たので邪魔にはならないことが救いだろうか?

少し触ってみると感覚はなく何というか質量のある光?みたいな感じだ。

 

・・・・・ところで質量のある光って何だろう?

 

 

「まぁ、考えても理解らないことを考えるのはやめておこう。そろそろ行こうか」

 

 

僕は変化した羽?を展開し地球に向かって飛翔した。

 

・・・・・おお、凄い。

 

この羽?は凄まじいスピードが出るみたいだ。

さっきいた小惑星の方を見るともう豆粒位にしか見えない。

この調子で行けばあと数分後には大気圏に突入しているだろう。

 

今更だけど大気圏突入に僕の躰は耐えれるのだろうか?

 

多分大丈夫だが保険として自身の能力で円錐のようなものを目の前に作り出す。

昔やった耐久試験みたいなのでは音速でぶつかっても僕の躰も含めて無傷だったし、宇宙に来る迄に能力で出来ている服が燃え尽きてないから大丈夫だろう。

 

暫くして少し熱く感じるようになった。

多分大気圏突入時の空力加熱というやつだろう。

・・・・・空力加熱が何だかは知らんが確か1万度に届くこともあったはず。

それが少し熱いで済むって凄いな。

今更か。

 

そうして円錐を盾にして飛んでいると温度が下がってきた。

周りを見渡すと月と星が煌めく夜空が広がっている。

 

 

「綺麗だ・・・・・」

 

 

他の人が居るかはさておき、何時か他の人と見てみたいなと思った。

 

そうして僕は盾にしていた円錐を力に戻し、夜空の中を地上に向かって飛翔した。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「すっかり様変わりしたなぁ」

 

 

無事に地上に着いた僕は今羽を収納して大自然の中を歩いていた。

 

僕の知識が旅は歩くものだといっていたし、歩きたくなったのでこうして歩いている。

 

僕の何故か知っている知識は僕とは別のものとして考えることにした。

名前を付けるなら【識っている程度の能力】ってとこだろうか?

識っているとは言っても物理法則?や世界のこと等はわかるのだが僕自身のことやリアルタイムのことはわからない。

何故知っているのかもわからないので「識っている程度」とは我ながらいいネーミングセンスだと思う。

 

だから人間が発生したかとか今は何時かだとかはわからない。

 

まぁ、時間はあるし気長に行こう。

 

この大自然を感じながら僕は歩く。

 

 




『妖精』
:感覚が人とはずれているというか感覚が欠落している。躰のスペックはとても高い。『終わり』の力は使えない。

『俯瞰する編集者』
:久し振りに面白そうな玩具を見つけてはしゃいでいる。空白故に客観視しないと自身の感情に気付けない。

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