東方黒雲録〜Traveling Black Monster〜 作:文才の無い本の虫
銀木犀の花言葉(一部抜粋)
「初恋」
「あなたの気を引く」
1「遭遇」
さて、あの銀髪の少女と別れてから数カ月が経った。
今僕は荒野に来ている。
周りは不毛の大地といった様相だ。
最近は妖怪にあまり遭わない。
きっとここら辺は人があまり居ないのだろう。
まぁそのお陰でゆっくりと料理の練習が出来たんだけどね。
・・・・・もう残っている食材は無いが。
料理の腕は結構上達したとは思う。
使う機会はそんなに無いけれど。
そんなことを考えながら暫く歩いていると荒野のど真ん中に誰かが立っているのが見える。
少し遠いから確信が持てないが魔術師のローブ?のような服装の女性に見える。
瞬間、その女性が搔き消えた。
幻だったのだろうか?
そうやって考えていると後ろから銀木犀の香りがした。
「やあ、こんにちは。私に君の名前を教えて?」
背後から女性の声がきこえた。
僕は振り返る。
其処には長い銀髪に虹色の瞳をした人間離れした、人ならざる者特有の気配を纏った豊満な美少女が微笑んで居た。
先程遠くに見えた魔術師のローブ?を着ている。
・・・・・どうやって今の一瞬で僕の後ろまで来たんだろう?
すると本能や魂といった部分が警鐘を鳴らす。
――この女に目を付けられたら不味いと。
僕はニコリと微笑む美少女から感じる不気味さを押し殺し、彼女に向かい合う。
何となく自身の名前を言ってはならない気がする。
「こんにちは。僕は
口が勝手に動いた。
そうとしか言えない行動。
今僕は何故、彼女に名前を言った?
それを見た虹色の瞳の彼女は嗤った。
「くふっ。私はエディ、エディ・オスマンサス。八雲 黒、君を私の世界に招待するよ」
「世界?」
「そう。私が創った世界。あ、君に拒否権は無いよ?じゃあ、行こうか!」
周囲の空間が捻じ曲がる。
ぐるぐると風景が変わっていく。
そこで僕の意識は暗転した。
◇◇◇◇
「黒、起きなよ」
仄かな銀木犀の香りと誰かの声で目が覚める。
いつの間にか寝かされていたベッドに寝かされていたみたいだ。
僕は起き上がり、目を開けると目の前には先程の美少女、エディ・オスマンサスがベッドの縁に腰掛けていた。
「此処は?」
僕が聞くと彼女は楽しそうに微笑んで答えた。
「此処は私の創った世界。黒、君に力の使い方を教えるために連れて来たんだよ?」
「・・・・・何故?」
「それはね、君のことが気に入ったから。このままだと君、死んじゃうしね?それはもったいないって思ったんだ」
彼女は「それに」と付け加えて言った。
「此処は私の世界だし君に拒否権は無いよ?」
・・・・・はぁ。
時間は一杯あるし、鍛えてくれるというのなら甘んじて受け入れるべきかと自分を納得させる。
そうして僕と彼女の生活が始まった。
◇◇◇◇
そうして僕が彼女――エディと生活し始めてから数カ月が経った。
エディが創ったこの世界――エディ曰く理想郷の亜種らしい――は僕とエディが住んでいる家の外は一面の銀木犀といった不思議な世界だ。
常に春でちょうど良い気温だ。
昼と夜はあるのだがエディの気分で変わるので有って無いようなものだ。
エディと生活して色々とわかったことがある。
一つ目はエディが物凄く強いこと。
正直いって【全知全能】とかどうやって勝つのかわからないし、勝てる気がしない。
エディは「私、最強だから」と言っていたが全くもってその通りだと思う。
二つ目は僕の能力について。
エディに教えて貰ったのだが、僕には【識っている程度の能力】以外に【虚と実を操る程度の能力】という能力があるらしい。
この能力は実体が無いものに実体を持たせたり、逆に実体があるものの実体を無くしたり出来る。
僕が服を作ったり円錐を作ったり出来たのはこの能力で妖力等に実体を持たせたかららしい。
そのため僕の服は純粋な力なのだとか。
やろうと思えば感情や願い、概念などを実体化させることもできるらしい。
三つ目はエディがそんなに悪いやつじゃないということだ。
エディは家事が出来ないし、料理の腕も壊滅的だし、愉快犯で、ちょっとぶっ飛んでるけど、只の拗らせた寂しがり屋だ。
まぁ本人に言ったらすりおろされるけど。
エディはちゃんと僕のことも考えてくれるし、お礼も言う。
何というか本当に拗らせているだけで悪いやつじゃない。
まぁ最近は距離が近いし、だらしないので悶々とすることもあるが慣れてきた。
・・・・・毒されてるなぁ。
「黒〜今日のご飯は?」
リビングからエディの声が聞える。
僕は考えるのを止めて料理に戻る。
食材はエディが創り出した野菜や謎肉(何かは考え無い方がいい気がする)。
野菜炒めでいいかな?
「ああ、野菜炒めでも作ろうかな」
「黒の料理は美味しいから楽しみだね?」
何時もの様にエディが背中に抱きつくように現れる。
エディによると転移の下位互換の距離の誤魔化しだとか。
最近の彼女は僕の反応を愉しむために偶に空間の誤魔化しで抱きついて来たりする。
左肩から手元を覗き込んでいるエディの髪から銀木犀の匂いが香る。
・・・・・せめて料理終わってからがいいかな?
「エディ、料理中は急に抱きつかれると危ないよ」
「黒なら大丈夫でしょ?」
「まあね。ほら、そろそろできるから待ってて」
「うん」
エディは銀木犀の香りを残してリビングに戻っていく。
暫くして野菜炒めが出来たので皿によそい、リビングに向かう。
「エディ、出来たよ」
「うん。さあ、食べようか」
僕とエディは手を合わせる。
「「いただきます」」
――そうして今日もまた長い一日が始まる。
『八雲 黒』
:
『エディ・オスマンサス』
:イメージは銀木犀と魔術師。本質は寂しがり屋の構ってちゃん。生活力は壊滅的。初めの方はいきなり黒に後ろから抱きついて反応を愉しんでいたが最近は黒の「あーはいはい」といった反応を嬉しんでいる。自身の感情に少し気付き始めている?
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