東方黒雲録〜Traveling Black Monster〜   作:文才の無い本の虫

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(プロット)は、良い奴だったよ。

だけど、暴走する運命についてこれなかったのさ・・・・・。

なんで、こうなったんだろう?(自業自得)


2「銀木犀の箱庭」

 

 

――此処は銀木犀のみが咲く常春の庭園

 

――『俯瞰する編集者』が創りし遊び場

 

――『化物』と『魔女』が暮らす理想郷

 

『魔女』は此処を【銀木犀の箱庭】と呼んだ

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

僕がここ――【銀木犀の箱庭】に来てから結構な時間が経った。

此処は常に春なので時間感覚が狂うから正確な時間はわからない。

 

僕はエディに能力の使い方や魔法、霊術、妖術、医学から数学まで様々なことを習っている。

 

エディは何でも知っている。

本人曰く「私は裏側の魔女(俯瞰する編集者)だからね」と言っていたがそれだと僕って魔女の弟子にならないかと聞いたら「それもいいかもね?」と笑っていた。

・・・・・余計なこと言ったかもなぁ。

 

エディは一日中講義や能力の練習をするときもあれば三日間程何もしない事もある。

彼女はとても気分屋で、酷いときは僕の背で一日中だらけていた時もあった。

 

そうやって過去のことを思い出していると誰かが階段を下ってくる音がする。

この家――世界には僕とエディしか居ないのでエディが起きてきたんだろう。

 

僕は何時もの様に朝食の準備を始める。

 

今日は普通にスープとサラダでいいかなと随分前に大量に作ったコンソメと謎肉と玉ねぎでスープを、野菜を適当に切ってサラダを作る。

僕達は小食だからあまり多くは作らない。

 

そうやって朝食の準備をしていると後ろから銀木犀の香りがする。

僕は後ろにいるであろうエディに声をかける。

 

 

「おはよう、エディ」

 

 

「くろ、おはよ〜」

 

 

「・・・・・エディ、服はちゃんと着なよ」

 

 

僕は開け捲りのエディのローブを直す。

最近はよくというか毎日こうやってエディの服を直している気がする。

 

そうして服を直し終わり朝食の準備に戻るとエディが背中に抱きついてきた。

 

 

「ふあぁ。寝る」

 

 

「エディ?」

 

 

「・・・・・すぅ」

 

 

「はぁ、ソファで寝ればいいのに。・・・・・『梅』」

 

 

「此処に」

 

 

「済まないけど料理を頼んでいいかな?」

 

 

「御意」

 

 

僕は朝食の準備を最近創り出した式神に代行させる。

彼女の名前は『梅』。

色の着いていない髪に梅のような赤い瞳をした少女の姿をしている。

自我を持っている訳では無く、僕が組んだ疑似人格で駆動している成長する式神だ。

 

無から創る式神は本来自我を持たない。

だが『梅』は僕が修行の合間に構築した特殊な術と核を持つため将来的には自我を持つ可能性がある。

核は僕の能力で僕の魂の形を模倣して創った宝石で、中にはエディに「キモッ」と言われる程度には綿密というかゴチャゴチャしている術が籠めてある。

もっと効率的に組むことは出来たんだけど、僕は効率的じゃない方がいい気がしたためそのままにしている。

感情って効率的じゃないと思うしね。

 

『梅』がスープの前に立ったのを見届けて、僕は僕の背中を支えに寝ているエディを起こさない様に抱き上げる。

要するにお姫様抱っこというやつだ。

 

僕はエディを抱きかかえたままリビングのソファに向かう。

抱きかかえているエディはすやすやと寝ている。

珍しいな、どうしたんだろう?

 

僕はエディをリビングのソファに寝かしたあと、台所に戻る。

 

台所に行くと『梅』がスープをよそっていた。

 

それを見た僕は『梅』に感謝を伝える。

自我の無い彼女に感謝を伝えるのは、そういう刺激や関わりが自我の確立には必要だと思うから。

 

 

「『梅』、ありがとう」

 

 

「・・・・・主様、私は当然のことをしたまでです」

 

 

「うん、それでもね。『梅』、戻って良いよ」

 

 

「はい、用があればお呼びください」

 

 

『梅』は見えなくなった。

普段彼女は霊体化しているか部屋で本を読んでいる。

きっと読書に戻ったのだろう。

前よりも受け答えがスムーズになっているので順調に成長している様だ。

 

さて、少し遅くなったけど朝食にしようか。

 

僕は『梅』がよそってくれたスープとサラダをテーブルに並べ、食事の準備をする。

 

ソファの方を見るとエディはまだねているようだ。

起こすか。

 

僕はエディに近寄り、エディの肩を揺する。

 

 

「エディ、少し遅くなったけど朝食の準備ができたよ」

 

 

「・・・・・あと三年」

 

 

「長いよ!!普通に朝食腐るよ!!」

 

 

「・・・・・むぅ。じゃあ起きる。黒、起こして」

 

 

「はいはい」

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

今僕はエディに回避の訓練?を受けていた。

 

 

「ほら、遅い遅い!」

 

 

エディは掌に展開した魔法陣から沢山の光弾をばら撒く。

威力や速度、範囲からしてまるで爆撃の様だ

 

僕は羽を展開し光弾の隙間を縫って飛ぶ。

 

 

「エディ?!手加減って知ってる?!」

 

 

「くふっ・・・・・黒、頑張ってね?」

 

 

エディは笑って指揮をする様に腕を掲げる。

すると先程まで掌に展開していた魔法陣と同じものを背後に多数展開された。

彼女が腕を振り下ろすと同時にその魔法陣群から数多の光弾が放たれた。

 

・・・・・これ、避けれるかなぁ。

 

 

「こうなると思ってたよちくしょう!」

 

 

能力を使って妖力を実体化して平べったい円錐を作り、盾にしながらエディに向かってかっ飛ぶ。

回避は考えない。

この密度じゃ下手に動くより真っ直ぐ突っ込んだ方が被弾が少ない。

 

 

「うん、うん。少し難易度を上げようか」

 

 

「エディ?!これ、訓練だよね?これ以上威力上げたら死ぬよ僕??」

 

 

「くふふっ大丈夫だよ?死にそうになったら止めるし、看病だってしてあげる。嬉しいでしょ?」

 

 

「少しは嬉しいけど、それって致命傷まで追い込むってことじゃ・・・・・」

 

 

「くふふっ」

 

 

エディが嗤う。

光弾の魔法陣が増える。

 

・・・・・あ、これ不味い。

 

光弾の威力に耐えきれず妖力で作った円錐にピシピシと罅が入っていく。

僕は咄嗟に円錐を前に投げ、自身の周りに結界を張る。

 

すると背中に銀木犀の匂いと感じ慣れた温もりが。

後ろから首に彼女の腕が回される。

 

 

「くふっ」

 

 

「空間は遮断したはず?!」

 

 

「甘いね、黒。はいおしまい(【光弾】)

 

 

「零距離はきついって・・・・・」

 

 

全身にズドンッという衝撃を感じて、僕は意識を手放した。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「・・・・・すぅ」

 

 

「・・・・・んん?」

 

 

銀木犀(彼女)の匂いと寝息で目が覚める。

どうやらベッドに寝かされていたみたいだ。

左腕に抱き着いているエディを除いておかしいところは無い。

僕は状況の把握が出来ず困惑する。

何でエディが僕の左腕に抱き着いて寝てるんだろう?

 

少し思い出してみよう。

確かエディに回避の訓練・・・・・というかリンチでは?

まぁうん、訓練を受けていて撃墜されたんだった。

確か「看病だってしてあげる。嬉しいでしょ?」とか言ってたからきっと看病?をしていて寝落ちしたんだろう。

・・・・・エディのことだし僕を驚かす為に待機していた可能性もあるが。

 

取り敢えずエディを起こそう。

塞がっていない右腕で軽くエディを揺する。

 

 

「エディ、起きて」

 

 

「イヤ」

 

 

「起きてるじゃん」

 

 

「・・・・・すぅ」

 

 

・・・・・エディは起きる気が無さそうだ。

僕は取り敢えず起きることにする。

 

どうにかエディに抱き着かれていた左腕を解くことが出来、僕はベッドから抜け出す。

 

すると目を開けていたエディが此方を向いていた。

僕は無意識に身構えてしまう。

 

するとエディが猫のように飛びついてきた。

僕はいきなり何をするのかと言いたかったのだが、エディは有無を言わさず僕と踊るようにくるんと半回転する。

あっという間にベッド押し倒され、彼女に伸し掛かられる。

エディは顔に笑みを浮かべていた。

 

・・・・・服、整えません?

 

 

「くふっ・・・・・黒、今日は一緒に寝ましょ?」

 

 

「はい?」

 

 

「約束通りつきっきりで看病(添い寝)してあげる。嬉しいでしょ?」

 

 

「まぁ少しは嬉しいけど看病の意味違くない?」

 

 

「だって看病とか面倒くさいし疲れてて眠いからヤダ」

 

 

「エディ?!」

 

 

「ということで黒、おやすみ♡」

 

 

「おい」

 

 

「・・・・・すぅ」

 

 

エディは僕を押し倒したまま寝てしまった。

何というか敷布団になっている気分だ。

 

添い寝って何だろうと考えながらエディの匂いや躰の感触から思考を逸らす。

・・・・・こいつ、絶対僕がこうやって悶々とするのわかってやってるよな。

はぁ。

 

まぁ、疲れてるのは本当みたいだし何時も世話になってるしな。

偶にはこういう日があってもいいだろう。

 

僕はエディの服を直し、彼女の頭を撫でる。

そうしていると僕も眠くなってきた。

 

僕も寝るかな。

 

 

「何時もありがとう。おやすみ、エディ」

 

 

そうして僕は銀木犀の香りに包まれながら深い眠りに落ちて行った。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「くふっ・・・・・どういたしましてかな?」

 

 

「まぁ私も君には感謝してるんだけどね?」と言いながら黒の頭を撫でながら彼女は微笑む。

 

ふと彼女は表情を曇らせる。

 

 

「・・・・・少し、寂しくなるね」

 

 

彼女が黒に能力の使い方以外の霊術や魔法、妖術を教えていたのは黒を引き止めるため。

彼女は惜しくなった、いや、気付いてしまった。

自身の感情に。

 

歪な黒を、自身の孤独を埋めてくれる黒を、愛しく思う黒を、何よりも優先する感情。

 

それ故に彼女は黒を止められない。

少し前の彼女が使った【全知】に因ってこの先の旅路が黒にとって大切なものに成ることを知っていたから。

そして、何時か何処かで黒が愛する神(・・・・・・・・・・・・・)の存在を知っていたから。

 

 

「黒・・・・・」

 

 

彼女は気付かない。

もう既に彼女に因って未来は変わっていることに。

 

彼女は気付かない。

黒が彼女を大切に思っていることに。

 

これは僅かなすれ違い。

 

だがこのすれ違いは運命を変える切欠。

 

彼女が自身の感情に正直になるキッカケ。

 

黒が彼女のことを強く意識するきっかけ。

 

――そうして運命(物語)元の筋書き(プロット)を外れて転がり出す。

 

 




『八雲 黒』
:エディとの修行の結果、過去未来の様々な技術を習得した。(この世界にはまだ魔術や魔法、霊術は体系化されていない)エディにより女性への耐性はついたが、エディへの耐性は下がり気味。エディを大切に思っている。そろそろ自分の気持ちに気付いたら?

『エディ・オスマンサス』
:自分の気持ちに気付いた銀木犀。昔に使った【全知】によりその時点での(彼女が干渉してない)未来を知っている。黒と一緒に居たいがために過去未来から技術を取り寄せ、黒に教えた。自分の感情に素直になれていない。

『梅』
:黒が創った成長する式神。何処かの常闇の妖怪の髪を白くしたような見た目。黒からの妖力、霊力、魔力の供給で動いている。周囲からエネルギー補給も可能。最近言葉のレパートリーが増えた。

『作者』
:思いの外エディを気に入って好きに動かした結果、大切な友(プロット)を失った。もうなるようになれ。運命(物語)は動き始めた!(キリッ)

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