他の作品のアイデアが思いつかないのでリハビリも兼ねた作品です。
完結までの道筋はできているので、全50話前後くらいの予定。
EP01.始まりはいつも?
どこか、遠い場所で雨が降っていた。
あたり一面は火の海で、その中に二人の人がいる……片方は、白衣にボサボサの髪。徹夜続きの科学者とか、そんな感じだ。そして、もう一人は…………金。そう、金色だ。黄金の鎧に白く輝く剣、巨大な盾も持っているその姿は、黄金の騎士だ。だけど、ひどく恐ろしいナニカ、そんな印象を受ける。
そしてありえないことだが、燃え盛る炎の中でも気味の悪い植物が生えている――いや、育っている。急激に成長しているそれは、地球のどこをさがしたって見つからないような、どこかこの世のものとは思えないものだ。
「――――ッ」
『――――――――』
「――!?」
白衣の男と、黄金の騎士が何かを話している。だが、それもすぐに終わった。白衣の男めがけて騎士は剣を振り落した……いや、振り落そうとした。
『ッ――』
「…………」
白衣の男の左手が光っていた……いや、左手にある腕輪が光っているのだ。どこかで見たことあるそれは、そう僕も持っている。僕の左手にも同じ腕輪がまかれているのだ。ならあの白衣の男は僕なんだろうか……それにしては年も大分上だろう。まだ中学生の僕よりも二回り以上は上に見える。
「ガッ……」
『ヤ……ロ』
声が聞き取れるようになってきた、しかし僕の意識は遠くなっていっている……腕輪を付けた彼の体がまるで木のような質感へと変わり、朽ち果て始めている。それと同じペースで僕の意識は遠くなっていっている。ならば、やはり彼は僕の未来の姿なんだろうか……いや、それにしてはおかしい。僕の瞳は母譲りの青色。彼のは茶色だ。
「――――」
◇◇◇◇◇
……最悪の目覚めだった。
「なんというか、変な夢をみたよな……そういや、父さんが最後に帰ってきたのはいつだったっけ」
僕の名前は
「一応、無事だけでも確かめた方がいいのかな……いや、でもどんな特撮だよって感じの夢を見て連絡するってもの違うよな」
第一、この腕輪が光り輝いたってのも夢見がちな子供じゃあるまいし。僕も中二病ってやつなのだろうか? まぁ学年的にマジ中二だから問題はない、そういうことにしておこう。僕の精神衛生上。
前に父が帰ってきたときに渡されたものが心配を助長させる、考え過ぎというぐらい考えてるだけなのだろう。そう自己完結したいが謎のバックルらしき物体と銀色のリンゴの意匠をしている南京錠のような物体を父に渡された僕としては、研究成果を息子に預けるなどといった暴挙はどこかおかしいものにしか思えないのだ。
しかし、一緒に渡された小さな木は大切にしようと思う。毎日の水やりは欠かしていない。
「……バカらし、学校いこっと」
朝食を食べる気にはならず、冷蔵庫に入れておいたゼリー飲料を取り出す。さすがに何も口にしないで授業を乗り切る自信はなく、すぐに朝食を済ませて制服に着替えた。最近は珍しくもなくなったブレザー、まあ中学でブレザーってのは少ないのかな?
戸締りを確認して、学校への一歩を踏み出した。夢とは違って真っ青な空だった。
桜も散って、夏が近づいている。もうすぐ梅雨時だというのに、日差しがキツイ。今年も異常気象なのだろうか……おかしな気候も長く続けば異常とは言えない気もする。どこかでおかしなことが起こるのが普通というのも矛盾しているが。
「なんか憂鬱だなぁ」
今日も変わり映えしない学校。いや、だからと言ってぶっ飛んだことが起こってほしいわけでもない。しかし、もう少し面白い出来事が起きてもいいのではないかと思う。一般的な男子中学生ならだれもが一度は思うことであろう。そんな普通なことを考えている僕であったが……
「ちーちゃーん!」
「ああ、もう鬱陶しい!」
後ろから聞こえてきた騒々しい声に、そんな馬鹿な考えを放棄した。何事も平穏が一番だと思い出させてくれる
篠ノ之はダヴィンチやダーウィン、アインシュタインの再来ではとも噂されるほどの天才ではあるのだが、その性格が最底辺である。才色兼備のスーパーガールではあるが、自分の妹と親友である織斑、その弟君以外の人間をほとんど認識していないのだ。いくら天才でも彼女はコミュニケーション能力が一般人をはるかに下回っているのである。あと、エキセントリックな言動が多く、文系は壊滅的とも聞いた。
織斑は不愛想ではあるが、感性は一般人であり常識もある。しかし、その剣道の腕は達人レベルとも目されていて、剣道部の若きエースである。両親がおらず、弟の面倒を見たり、苦労人エピソードが数多い。一人暮らしのようなことをしている自分に料理や家事の相談をしてくることが多いためそれなりに親交もある。しかし、それが原因で厄介なことになってもいるのだが。
「む、蜂矢おはよう」
「織斑、今日も頑張れよー」
「毎度のことだが私のことをどう思っているのだ貴様は」
「……
「オイ」
仕方がないではないか、その紙一重の相手をできるのはお前しかいないのだお前しか。
「またバカって言ったな……」
「この前の国語のテスト点見たらなぁ」
「うっさい! この…………青色!」
「人の目の色で判断するな名前ぐらい覚えろよ」
「うっさいんだよ! ちーちゃんは渡さないからな青色!」
「じゃあ授業を受けろよ、ずる休みする奴には織斑もノートを写させないんだから休んで織斑と二人きりの勉強会大作戦とか無駄だって」
「おい束、お前そんなこと考えていたのか?」
「……テヘペロ」
「――」
「まって、まってちーちゃんさすがの束さんもそのアイアンクローはいかがなものかとおも――ッピ」
変な奇声を上げて、稀代の天才は堕ちた。
「織斑、仕事が増えるからやめてくれ」
「すまないな、保険委員……むしろ学級委員の方が向いているのではないか?」
「ほっとけ」
そしたら束が勝手に保健室を占領するのだから仕方がない。僕が保健室を守らないで誰が守るのか……わりと、損な性格だとは自覚しているのだが。保健室を何かの設計図で埋め尽くすもんだから織斑以外で一応認識されている僕が保健の先生に頼まれたのだ。もっとも、織斑を渡さんとする奴に目の敵にされているだけなのだが。
◇◇◇◇◇
「んー、今日も快晴……本当、空が青くて嫌になるねー」
昼休み、屋上に寝そべって空を見上げる。平穏ではあるが、個人的にはこの日差しは苦手である。少し位曇っている方が過ごしやすい。
「だったらお空の彼方へ行っちゃえば真っ暗だよ」
「そりゃあんた、宇宙やがな」
とまぁ、かけられた声に半分ふざけて返事をするが……珍しいこともあったものだ。篠ノ之が一人で声をかけてきた。基本的に僕一人ならこいつは無視をする。保健室を占領したり、他にも数式を廊下に書き殴っていたり、公共のルールを破った時に僕が
だからこそ、こいつが自分から話しかけるなどありえないことなのだ。明日は隕石でも落ちてくるのだろうか?
「珍しいな、お前が自分から人に話しかけるなんて」
「……」
「おいこら、さすがの僕も話しかけてきておいて無視はつらいですことよ」
「…………」
「……」
いったい、何がしたかったのだろうか?
◇◇◇◇◇
放課後、すでに家の近く。
結局、篠ノ之はその後なにも話しかけてこなかった。ただ単に、独り言を言っただけとも思えるが、明らかに僕の独り言に対してのコメントだった。他に人はいなかったし。
まさか、お前を宇宙へ飛ばすぞ的な殺害予告だったとか……ないわな。さすがにそんなことをすれば織斑に縁を切られることは彼女も理解している。
「……ん? 宅配便?」
家に帰ってきて郵便受けを見ると何か、小さな荷物が入っている。よくわからないが国際便のようだが……父からだった。
「父さん……なんというか、タイムリーな」
家に入り、さっそく開けてみる。なぜかバイクの教本が入っていた……どうやら父の手作りらしい。
「盗んだバイクで走り出せとでも言いたいのかな……? なんか変な機能の説明が…………SFチックでよくわかんないけど」
他に何か入っていないか確かめると、南京錠のようなものが入っていた。前の銀のリンゴと同じような感じだが、今度のは気味の悪い赤色の柑橘系のものと、サクラの意匠のものの二つだ。
そして、小さな冊子も入っていた。
「えっと、ロックシード……ロックシードっていうのか? なんか英語ばっかりで読めないな。一応、使用法は日本語でも書かれているけど大半は研究データじゃないのかこれ」
なんで父さんはこんな大事なものを……どうやら前に渡されたバックルとセットで使う道具らしい。あまりうかつに使うなと言われていたから保管しているだけだったけど、使い方まで送ってきたということは使えってことか?
「バックル……戦極ドライバー? なんで日本語と英語がごっちゃやねん。あ、開発者の名前から取ったのか」
そういえば、一緒に研究している博士がそんな名前だったような……
説明書を読むと、サクラのものは単体でも使えるが、以前のリンゴとこの柑橘系のものは戦極ドライバーを必要とするらしい。ロックシードをはめる部分があるからそこにはめるのだろう。そういや、ゲネシスコアとか呼んでいた部品も預かっていたな。研究時間がないし、預かってほしいと言われていたけど……あれにもはめる部分があったはずだ。まあ、単体じゃ意味ないし、父さんが帰ってきてから聞くか。
「まあ、すぐに使えそうだし、サクラから……えっと、まずは開錠することでバイクに変形……」
あれほど、うかつに使うなと言われていたのにやってしまった。
小さな物体があれよあれよという間に巨大化、変形しバイクになってしまった。
「……ロックビークル01、サクラハリケーン…………え、マジでSF?」
拝啓、父さん……あなたはなんてものを作ってくれたのですか。
これは全部確かめておかないと自分の精神衛生もヤバい。
「じゃあ、こっちは…………」
取り出してきたドライバーと銀のリンゴを持つ。改めてみると、中央の穴にロックシードをはめるのはわかるのだが、横の刀みたいなものと、プレートは何なんだろうか? そして、ドライバーを腰に当てると、ベルトが飛び出して腰に巻き付いた。この時点で、現行の技術をはるかに上回っているというのにいったい何が起きるというのか。よくみると、プレートには鎧武者の顔のようなものが浮かび上がっていた。
僕は震える手で、銀のリンゴを開錠した。
【シルバー!】
「……ッ」
思わず、のどを鳴らす。音声がなった瞬間、得体のしれない何かが起きた、そんな気がした。
僕はそのままロックシードをセットし、ロックを閉じる。
【ロックオン!】
音声がなった後、ドライバーからはほら貝のような音で、軽快な音楽な流れ出す。…………流れてる。めっちゃ流れてる。
「えっと、どうすれば……ああ、横のブレード」
横のブレードを倒すと、リンゴを切るかのようにリンゴ部分の蓋が開く――ッ
頭の上に、謎の空間が開いていた。森のような、そんな光景だが……宙に何か浮いているのが見えて僕の目はそちらにくぎ付けになった。
そして、そのリンゴは僕の頭に落ちてきた。
「って、うわぁああああああああああ!?」
【シルバーアームズ! 白銀ニューステージ!】
「ああああああ……ああ?」
別に、平気だったが謎の音声が流れてそれで静かになっただけだった。しかし、明らかに何かかが変わっていた。
右手に何かを持っている感触がある。杖のような、謎の物体。よく見ると、僕の腕輪と似たデザインだ。
左手には何もないが、いつもの腕輪が付いている。腰には、刀のようなものもある。
しかし、なにより……なにかボディスーツのようなものを着ていることこそ一番、目につくだろう。
急いで姿鏡の前に行くと……夢で見た鎧武者のような姿の僕がいた。リンゴをモデルにしたと思しき鎧は色が違えど同じものだが、あの騎士よりかは和風に見える。ベースは銀色。青い部分も多い。
しかし何よりも言いたいことがある。
「な、なんじゃこりゃぁ!?」
何とも情けない話だが、これが僕の初めての変身だった。
まだ白騎士事件は起きていません。