翌日。フロンと信二は再び合流。フロンは最初から来る予定だったが、信二は昨日の件もあって呼びつけた。スレイプニルにはジョニーとかかおりさんもいるから何とかなるとは思うけど……一応、定時連絡には気を使っておこう。
「それで、今日は格闘部門なんだよな?」
「ああ。千冬がどこまで――手加減できるか」
「そこに着眼点がいくのかよ!?」
「信二、アイツは人の皮を被った鬼だ。生身でIS倒せる――のは僕もか」
「いやそうじゃないだろ……はぁ、織斑さんだって女の子なんだからもうちょっと気を使うとさぁ」
「――え」
「いやなんで驚くんだよ」
だって、アイツを女の子扱いする男なんて始めて見たぞ。むしろ男より男らしいと評判なのに? いや、時々魔法少女になるしある意味乙女だけど……
「フロンは気づいているのに、やっぱ気づいていないのか」
「どういうことだ!? いったい何が起きているんだ!?」
「英って自分のことは鋭いけど、他人のことは若干鈍いよな」
「なんか言われたくない一言!?」
だけど僕には何の話なのか全く理解できていなかった。
仕方がないのでとりあえず会場に向かおうか……なんかもうどうでもいいや。警備図には特に問題もないし、有事の時にだけ動けばいいか。
「さて、千冬はどうやって勝つつもりやら……まあトーナメント方式だから今日は長いぞ」
「だよなぁ……そういや、昨日の射撃戦って何やったんだ?」
「ああ、遠くの的撃ったり、色々と。惜しくも日本は敗れたけどね」
「そうか……ところでみんな遅いな」
「女の子の着替えは長いんだよ」
「一夏君は?」
「千冬応援グッズの準備というか、応援団と連絡とってる」
「なんだよその集団初耳だぞ」
千冬ファンクラブ。ちなみに一夏君は名誉会長。ファンナンバー1番は伊達ではないらしい……シスコンだよなぁ…………まあ、それだけにあの魔法少女はダメージがでかかったらしいけど。
しばらくして女性陣の準備も完了したので、さっそく向かうとするか。
◇◇◇◇◇
暮桜の感度は良好。とくにエラーもない。これならいける……
エネルギーも満タン。私がやるべきなのはダメージをどれだけ喰らわないようにできるか。
「さあ、いくぞ」
「先輩! 準備完了しました。初戦はイタリア代表のタイナーさんです! 機体は第二世代テンペスタ!」
「ほう、もう第二世代を投入してくる国があるとは――だが、機体の性能の差が決定的な戦力の差ではないことを教えてやろう」
「あのー先輩、第二世代ってことは稼働時間は圧倒的に少ないので三次移行した暮桜の方が性能は上だと思うんですけど――って聞いてくださいよ!?」
ふふふ、今宵の雪片は血に飢えておる。
「どうしちゃったんですか!? さっきから殺気でまくりですよ!?」
「……一夏にな、言われたんだ」
「何をです?」
「優勝しなければ魔法少女の衣装全部燃やすって」
「一夏君グッジョブだけど先輩が負けるとかありえないって(そんな!? いくらなんでもひどすぎます!!)」
「オイコラ、心の声と逆になっているぞ!?」
「……気のせいです。それでは、時間ですので行ってきてください」
「絶対に優勝して着飾ってやる!!」
ゲートが開き――準備は整った。
「織斑千冬、暮桜――いざ出陣!!」
空を翔け、フィールドに降り立つ。会場は大勢の観客が集っており――ハイパーセンサーによって弟の姿を見つける。そこにいたのは、大勢の大人たちを先導する応援団長だった。
思わずずっこけそうになるが、ISのおかげで精神を安定させることに成功する。ツッコミ防止機能は英が一晩で仕込みました。
「アイツ……まあいい、対戦相手は――ほう、なかなかな出来だな」
「おほめに預かって光栄――ですけど、あなたにまた勝たせるわけにはいかないんですよね!!」
「ならば――こい!!」
バトルスタート。その音声が流れた瞬間、二つの機体がぶつかり合った。
光る刃、雪片の内部から放たれたエネルギーは確実にテンペスタのエネルギーを削る――だが、そこに投げ込まれたのは、黒光りする物体。
「グレネード!?」
「猪突猛進。油断大敵よ!!」
黒煙がまき散らされ、千冬の姿は見えなくなる。そこでタイナーは距離を取り、砲撃の準備に入る。肩と足に展開され、手にも持った五門の砲身。
「貴女相手に、手加減はできないのよ!!」
赤く染まったエネルギー砲が千冬を襲う。しかし、彼女は一つミスを犯した。黒煙で一瞬の間ができてチャンスが生まれたことはさすが代表に選ばれただけのことはあるだろう。だが、二次移行を済ませていても単一能力がないことに彼女は焦っていたのだ。そのため、暮桜の単一能力を忘れた。
「ハァアアアア!!」
「しまっ――エネルギー無効化!?」
雪片から迸るエネルギーの渦。それが刃の形へと変わって砲撃を切り裂いた。
元々エネルギー放出可能な剣だった雪片。新たに手に入れた力により、その光は実体無き光さえ切り裂く。刃が通った場所が一瞬だけ黒い空間に見えたことがその証明。
「――ッ!!」
「あ――」
バトルエンド。無情にもその音声が彼女の敗北を告げた。
「当たらなければどうということはない――悪いが、出直してこい」
直後に爆発――歓声が巻き起こった。
◇◇◇◇◇
「ふぅ……少しダメージがあったかな」
「大丈夫です。ススが付いたぐらいで特に問題はないですよ」
「そうか……真耶、次の相手は?」
「えーっと、オーストラリア代表の……メケメケさんです」
「――は?」
「ですからメケメケさんです。機体名はリトルグレイ」
「どこからつっこめばいいんだ…………というか過密スケジュールすぎやしないか?」
「まあまだ競技として確立していませんからねぇ……むしろ5日も日数が取れた分儲けものですよ」
「5日? …………まて休養日はないのか!?」
開会式で1日、その次がレースで射撃と来て、格闘……すでに4日目だぞ!?
それまで一夏に会えないではないかと、ちょっとショックな千冬だった。
「ですから、それだけでも確保できただけ凄いんですよ……蜂矢先輩が方々に手を回したらしいですよ?」
「アイツか……いったいどんな方法をつかったのやら」
日数のばし過ぎると変な人がたくさん来てしまうからである。そのため、実は確保したのではなく日数を制限したのであるが、彼女たちにそれを知るすべはない。
実際はもう少し日数がある予定だった。もっとも、費用もバカにならないので各国は結構喜んでいる。モンドグロッソは参加国から費用が取られています。
「さて、ストレッチを済ませたら準備を始める。今度も勝つさ」
「それは信じていますが――気を付けてくださいね。対戦相手のメケメケさんは曲者ですよ」
「どんな奴が来ようと私の勝利は揺るがない――」
バトルスタートして、1分後。
「――そんなことを思っていた時代が私にもありました」
「…………」
なんというか覇気がないというか、ヘンテコ過ぎる対戦相手だった。リトルグレイの名に恥じぬ銀色の機体。さらに、なんか細長い手足。ふよふよ浮いているモヤモヤした感じのスラスター。
いけない、直視しているとやる気がなくなると視線を逸らした瞬間――彼女はニヘラと笑う。ちなみに笑うだけ。
「ああもう! イライラするんだよ!!」
「…………すでに、私の術中」
「ああん? このボールのことか?」
「なぜ!?」
「いやだって……」
ふよふよと近づいてきたボール? なんか剥いたサトイモみたいな感じの物体だが。とにかく、それを千冬は叩き切った。もやっとしたエネルギーが拡散するがちょっと離れればどうということはない。
「精神に干渉してやる気を失うのに……失敗」
「説明するのか……というかまた変なものを」
束もすっかり忘れていたが、ISは精神ダイブが可能だったりする。なので、精神に反応するような武器が使えたりするのだ。ちなみに、電脳ダイブも可能。
だが、処理に結構力を割いてしまうため――零落白夜を使うまでもなく、千冬は無傷で勝利した。
おそらく、こっそり忍ばせたボールで戦意を喪失させて勝っていたのだろうが、やる気が無くてもとりあえず勝てる千冬に効果はなかった。
見た目なども視覚効果に働きかけて戦意を喪失させるのが目的だったようだが、一体何がしたかったんだと千冬は小一時間問い詰めたい。
「あほらしい……」
ピットに戻れば真耶もどんな顔をすればいいのかわからず、戸惑っていた。
「あはは……えっと、お疲れさまです?」
「いい。なんかどうでも……次の試合は?」
「他のところはまだ終わっていませんので……ちょっと休憩してください。結果が分かり次第伝えるので…………あ、次の試合が終わったらお昼ですよ」
「そうか……一夏の作る料理が食べたい」
「我慢してくださいねー普通の幕の内で」
「なぜだ!?」
予算削減です。外国人には好評だが日本人である千冬にとっては食べ慣れているためちょっと気がめいった。
ストレッチしてしばらく休んでると、真耶が連絡を持ってきたので――千冬の笑みは獰猛。
「先輩顔怖い」
「そ、そうか?」
「……対戦相手はエジプト代表のクレイシアさんです。ISは…………ファイナルピラミッドエクストリームです」
「――――は?」
「ファイナルピラミッドエクストリームです」
「なんだそのふざけた名前は!?」
「仕方がないじゃないですかぁ!! そういう風に登録されているんですから!!」
「ああもう、なんでこうイロモノが続く!?」
「イロモノの方が強いってことなんですかね……単一能力持ちみたいですよ」
「……能力は?」
「えーっと、キラースマイルってありますね」
「なんだその変な名前は」
零落白夜も似たような……言わないでおこう。真耶はまた一つ賢くなった。
「仕方がない。早く食事にしたいし、速攻で終らせる」
「あんまり無茶しないでくださいね」
三度目の戦い。そこに待ち受けていたのは世界中を驚愕させた。
巨大な体、三角の物体、たくさんの砲台に触手のようなアーム……
「おかしい。私の知っているISじゃない」
『ふぁっふぁっふぁ! どうでーすかー! このISは防御力重視!!』
「だろうな。パイロットが見えないし」
しかしデカすぎるだろ……いったい何メートルあるんだ…………
バトルスタートの音声と共に、千冬は――真上にとんだ。
「危ないな!?」
『ふぁっふぁっふぁ! 火力! とにかく火力! 大艦巨砲主義は伊達ではないのですよ!!』
「っていうか観客席に被害が出たらどうする!?」
『蜂矢博士が頑張ってシールド作ってくれたおかげで無茶できまーす!!』
「絶対そういう目的で作って――くそ!? 近づけないな!!」
ちなみに、観客席から耐久力にも限界があるから早く決着つけてくれと叫び声が聞こえてきた。
おそらく最近胃に穴が開きそうな某仮面ライダーだろうが、千冬には関係ない。
「こうなったら――はぁ!!」
リボルバーイグニッションブースト! ほぼ直角に何度も軌道を変えて、肉薄する。そして、懐に潜り込めば千冬の必殺の一撃が決まる。
どんな堅牢なISであっても、その一撃からは逃れられない。
『――来ると思ってましたよ!! スピンスピン!!』
「なに――うぐあ!?」
回転を始めるピラミッド型IS。砂が巻き起こり、視界がふさがれてしまう。
さらに、砂が赤く輝き始めて――千冬の直感に危険信号が灯る。
「――――ダブル!!」
『かわされちゃいましたかー』
イグニッションブーストを二重使用し、加速能力に身を任せて攻撃を回避するが――先ほど待ていた場所は爆炎に包まれていた。
「なるほど……それがお前の能力か」
『ええ、私の笑顔で爆死する? みたいな?』
「どこに顔があるんだふざけているのか!?」
『そういえばそうですね!』
「――もういい、本気で――――――切り裂く」
『え、ちょ――――』
PICを解除。イグニッションブーストによる加速にエネルギーを回す。零落白夜一回分あればあとは全て持っていけとばかりに千冬はスラスターにエネルギーを注ぎ込む。
「覚悟はいいか? 私はフルスロットルだ!!」
『意味がわから――――キャァ!?」
その加速はハイパーセンサーをもってしても見ることはかなわず、零落白夜により機体は真っ二つにされて、中から可愛らしい女の子が飛び出て――観客は大歓声を上げた。
「っておい!?」
先ほどまで、千冬の顔は鬼よりも恐ろしかったという……そこに現れた清涼剤に歓声が巻き起こるのも無理はなかった。
千冬としては納得もできないのだが。
そして、幕の内弁当を3人前くらいやけ食いすることになるのだが、それはまた別の話である。
強者と書きますが、ツワモノと読みます。
なんか100話なのにこんな話ですいません。
頭痛がひどいんですわ。
百話突破したんで新作短編を時間があれば書きます。ええ、一日一話ぐらいしかかけていないんでかなり無茶ですが。タイピング速度は日に日に上がっているので一話だけでもかけるだけいいんだろうけど。