仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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ヤエザクラタイフーンの力が、ついに明かされる。


EP105.フルーツパレード

 ヤエザクラタイフーン。サクラハリケーンをベースに改造した新ロックビークル。複数のモードで構成されており、バイク形態もノロシアームズにも耐えられるように設計した。

 そしてそのモードの一つ――砲撃形態。

 

「ロックシード、装填開始!」

 

 八つのロックシードを装填することで、内部にてミキシングされたエネルギーを放つためのモード。装填しなくても砲撃可能なのだが、機能をフルに使うことでたとえオーバーロードだろうと蒸発させることができる。あまりにも危険なうえに、準備に時間がかかる代物なのだが――今はこれしか手段がない。

 

【オレンジ!】

 

 しかも、装填するのに砲身の根元についているバレルを回さないといけないから結構時間がかかる……構造上これが一番強度が高かったからこうしたけど、やっぱもうちょっと開発時間が欲しかったかも。

 

【バナナ!】

 

 束と信二が時間を稼いでくれているとはいえ――もどかしい。

 

【ブドウ!】

 

 砲撃形態の形状としては、キャノン砲に足を取り付けたタイプと言えばいいのだろうか。タイヤは左右にそれぞれ移動して邪魔にならないようにしている。

 

【メロン!】

 

 ガシャドクロインベスの口から光があふれ始めて――マズイ!?

 

「邪魔すんなぁあああ!!」

「束!?」

 

 束が、ムーンソルトの要領で蹴り上げて顎を――口の中で砲撃が爆発して、ひるんだようだ。

 

「今のうちにちゃっちゃとやって!」

「分かった!」

 

【ドリアン!】

 

 エネルギーが充填されていくごとに、バチバチと嫌な音が鳴り響いていく――流石に無茶だろうか? いや、無茶でもなんでもやるしかない。

 

【スイカ!】

 

 バチリッと一際嫌な音が響く。その音にひきつられるかのように、空から何体もの骸骨の群れがやってくるが――炎の鳥がすべて食らいつくした。

 

「英! しっかり頼むぜ!」

「ああ――任せろ」

 

【レモンエナジー!】

 

 さあ、後は最後の仕上げだ。

 

【シルバー!】

 

 大きく瞬いて、エネルギーのチャージが完了した。

 桜台風、とくと味わうが良い――背部ブースター最大出力。

 

【ノロシスパーキング!】

 

 あまりの威力に、ノロシアームズの補助無くては使用できないが――今ならいける。

 

「発射準備完了! 二人とも下がれぇぇぇ!!」

「了解!」

「いっちゃってーーー!!」

 

 一瞬、光が消えたと思った――次の瞬間には、光の奔流が解放される。

 

【ミックス! ミックス! ミックスジュース!!】

 

 虹色に輝く光が巨大な骸骨を呑みこみ――跡形もなく消し去ってゆく。

 

『GAAAAAA!?』

 

 だけど、まだ耐えてやがる!?

 踏ん張っているのに、こっちは飛ばされそうなんだぞ!?

 体から嫌な音が響いてくる――そんな時だった。左右から、支えが来たのは。

 

「二人とも!?」

「防御のために、骸骨どもも大きいのと融合しているからね――最後の踏ん張りどころだよ!」

「あと少し、ここが正念場だぞ」

「――ああ!」

 

 エネルギーの奔流が収まるまで、そう長い時間はかからなかった。気が付いたときには収まっていたから……ただ、あまりの光の量で暗闇に目が慣れるまで時間がかかったから……

 そうして、謎の悪意との戦いは終わった――

 

 

 

 

 

 ――かに見えた。

 

 

 

 

 

「――――あ」

「え――」

「なに!?」

 

 背中から、束が刺されていた。一本の長い刀の様なもので。

 

「た、束ぇええええええええ!?」

 

 ケタケタと、黒色の骸骨が笑っていた。巨大な姿ではなく、人の大きさで。鎧をまとったそいつは、まさに骸骨の騎士。

 慌てて束を支えた瞬間――黒色の斬撃が飛んで――

 

「マズイ!?」

「信二――ッ」

 

 とっさに信二がかばってくれたから助かったが、彼の体から黒い煙が上がっている。これは、一体なんだ?

 

「うぐぅ!?」

「だ、大丈夫か!?」

「一応は……でも、身体が動かねぇ」

「ぐっ……なんだよ、アイツ」

 

 倒したと思った。いや、確実に倒せたはずだった。それでも、奴はそこにいる。一点に濃縮されたかのような存在感と共に。

 ケタケタと、笑いながら。

 

『――――♪』

「……悪い、二人とも…………僕ちょっと無茶するわ」

「だ、め……あれは……危ない」

「そうだぞ……見ているだけで、アレは危険だってわかる」

 

 たしかにな。オーバーロード並みにヤバい感じがする。でも、逃げるわけにはいかない。束のダメージを考えるとタイムリミットもあるだろうし……信二が動けないのもマズイ。

 だから――ちょっとの無茶は承知の上だ。

 

「むしろちょっとじゃすまないか――それでも、僕が勝つ」

『――!』

「何言っているかわかんねぇよ!!」

 

 拳と、剣がぶつかり合う。まだヤエザクラタイフーンにはモードが存在するが――この状況で使えるか? いや使って見せる! 作ったのは誰だ? 僕だろう。なら、僕が使いこなせなくてどうする!!

 

「ハアアア!!」

 

 斬馬刀形態! 組み変わっていく機体、タイヤは鍔のようになり、棒のようなものがスライドして柄になる。そして、上部に組みか上がっていく剣がその存在を主張していた。

 

「無茶させて悪いけど、もうちょっと付き合ってくれ!」

 

 誰かが答えるわけでもない。それでも、僕が作り上げたモノに対しての言葉を出さずにはいられなかった。

 骸骨騎士は、黒い剣を振り上げて迫ってくる。型もなにもあったものじゃない――だが、その速度がすさまじい。

 

「――それでもッ!」

『?!』

「この剣なら!!」

 

 各部に加速用ブースターが仕込まれているため、瞬時に防御行動に移れる。逆に言えば――

 

「攻撃行動にもだ!!」

『――ッ』

 

 焦り。骸骨騎士にあせりが見えた――そうだ。いくらなんでもあの砲撃で無傷なわけがない! この姿は、無事な部分をかき集めて圧縮した姿。あの圧倒的な防御力は失っているんだ!

 

「はあああ!!」

『――!!』

 

 嫌な音が何度も鳴り響く。巨大な剣と、普通の刀程度の大きさで打ち合う時点でとんでもない力だけど――それでも負けるわけにはいかない。

 

【ノロシスパーキング!】

 

 二度目のブースター最大出力! 背中から噴き出したエネルギーによって加速し、敵を押しつぶす。地面にひびが入り、骸骨騎士は押されこんでゆく。

 

「うおおおおおおおおおおお!!」

『――――!!』

 

 もっと、もっと早く。もっと強く! 力を、心を、今この一瞬に注ぎ込む。

 全ての気力をこの一撃に――

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

『――ッ! GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 されど、骸骨騎士も同等、いやそれ以上の気迫を見せる。とたんに、押されてしまい――負けじと踏ん張るものの、ブースターが弱まっていく。

 

【ノロシスパーキング!】

 

 まだだ! もっとエネルギーを! さらなる加速をと――それがいけなかったのか、いや、そもそもノロシロックシードを酷使し過ぎた。

 

「え――アガッ!?」

『――』

 

 赤い鮮血が、あたりに飛び散った。月明かりに輝いているのは――僕の血?

 

「す、英――い、嫌ぁあああああああ!?」

 

 あれ? 束が叫んで――僕はどうなった?

 からだが、思うように動かなくて――なんだかとっても――眠く――――

 

 ◇◇◇◇◇

 

 気が付けば、暗闇にいた。

 ああ、また来てしまった……

 

「……ハァ、魂が引っかかるってことは――ここはいわゆる三途の川とか、そういう場所ってことなんだろ――――なあ母さん」

「ピンポーン! だーいせいかーい!」

「ノリが軽いなぁ……息子が死にかけているって言うのに」

「うーん、まだ大丈夫じゃない? 英ってものすごく頑丈だから」

「否定はしないけど……ハァ」

「溜息つくと幸せが逃げるわよ」

「死にかけているんだから幸せも何もないっての!」

 

 っていうか本当ノリ軽いな!? そもそもこっちだと車イスじゃなかった?

 

「いやぁ、お父さんと手をつないでデートしたいじゃない?」

「じゃない? じゃねぇ!!」

 

 さっきまでのシリアスなノリを返してください。

 

「いいの?」

「いいの!」

「じゃあ返すわよ――はい」

「…………痛ったああああああああああああああああああああああ!?」

「麻酔の代わりにシリアスをぶっこ抜いたのにぃ」

「本当何でもあり――痛いですから何とかしてくださいお母様マジで痛いマジで死ぬ!!」

「息子に死なれたら困るわね……はい」

「――死ぬかと思った」

「現在進行形で死にかけているけどね」

「それは言うなよ……っていうか、なんでまたここに」

「そりゃあんたが死にそうだから。本当に気を付けてよ。束ちゃん泣かせて――説教したいところだけど、時間もないし、最後にプレゼントして帰ることにするわね。たぶん、もうこっちには来れないだろうし」

「それはまたなんで――って聞くのも野暮か」

「そうね……いつか、自分でたどり着きなさい。アイツ自身に戦う力は今のところないから。ただ、その骸骨は放っておくと色々マズイから、これでバッサリ斬りなさい」

「これって――フレッシュオレンジ?」

 

 ロックシード。フレッシュは二つ目――いや、亡国機業が使っていたか?

 

「元々これ、母さんが手伝ってあげたから作れたのよ」

「え――じゃああのパインも?」

「もう見てられなくてー……あんたって本当、お父さんに似てうっかりするんだから」

「……気が付かなかった」

「ハァ……まあいいわ。オーバーロードの力で作った側だけのものじゃない。本当のフレッシュロックシードよ」

「本当の?」

「ええ――理不尽なまでに強力。不条理なアームズ、それがフレッシュよ」

「なんか母さんそっくりだな」

「――――」

「いふぁいいふぁい、すいはへんへした」

「次は無いわよ」

「イエスアイマム!」

「それじゃあ――行ってらっしゃい」

「……うん、行ってきます」

 

 急いで戻らないと――血液足りるかな?

 

 ◇◇◇◇◇

 

「英ぅ……」

 

 目が覚めると、変身は解けていて――そもそも解除されてから斬られたんだから当たり前か――束が抱き着いて来ていた。応急手当をしているところを見ると、なんとか動けるようにはなっていたらしい。束も大分厳しいだろうに……

 信二は、空中から何度も牽制とストレイチアガジェットの補助で押しとどめていてくれているみたいだけど……正直、翼で動いているだけで、身体はほとんど動いていない。

 

「――ごめ、ん」

「英!? 大丈夫なの!?」

「なんとか――それより、早いところ……倒さないと」

「でもその怪我じゃ――」

「大丈夫――僕はこれでも頑丈なのが取り柄らしいから」

 

 そこまでは言われていないけど、そういうことにしておく。

 近くに落ちていた、斬馬刀形態のヤエザクラタイフーンから……黒くなっていたロックシードを抜き取る。そうこれは――オレンジ。

 光に包まれ、その姿を変えて――綺麗な色のロックシードへと。

 

「フレッシュ、ロックシード?」

「……母さんのプレゼントだそうだ…………心配かけすぎたな――そろそろ、親離れしないといけないか!!」

 

 今はありがたく使わせてもらおう――だから、今まで心配かけてごめん。

 でももう大丈夫――ここに大切な人がいるから。一緒に戦ってくれる仲間がいるから。

 

「へん、しんッ!!」

 

 呂律はうまく回らないけど。ちゃんと戦える。

 

【フレッシュ! オレンジアームズ! 花道オンステージ!!】

 

 光り輝く鎧と共に、両腕に展開される大橙丸。虹色の輝きを放ちながら、暗闇を照らす。

 

「うおおおおおおおおおおお!!」

「――なんだ!? この光は!?」

「ま、眩しい!?」

『――――!?』

 

 もっと、もっと光輝け。暗闇すらも吹き飛ばせ!!

 

『――――ッア』

「そうか――夜だからこそ、こいつは強かった。どうやっているのかは置いておいて、周囲の闇を吸って力を増幅していたってところか?」

『――――!!』

「今更、斬りかかって来ても――意味はない」

『――!?』

 

 その刃は、この鎧を斬ることはおろか……ぽっきり折れて、使い物にならなくなった。

 

「次は――こっちから!」

『ッ!?』

 

 幾重もの斬撃が、その骨を斬りきざむ。再生はしているようで、何度も回復するが――ボロボロと少しづつ砕けていく。再生スピードよりも斬撃の方が速いのだ。

 

「ハァ!!」

『――!?』

「胸に一輪刺しときな。さっきの束の分だ」

『――ッ!!』

「そして――」

 

 無双セイバーと接続。七色の光を一点に集中させる。

 

「信二の分!」

『!?――ッ』

 

 光の斬撃が、頭蓋を吹き飛ばす。体は砂となり消滅したが――まだ本体が残っている。

 

【フレッシュ! オレンジ! スカッシュ!!】

 

 飛び上がり、オーバーヘッドキックのような形で頭蓋を狙う。さあ、これで最後だ!

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!」

『――――A』

 

 最後に、奴が何を言ったのかは分からなかった。ただ、これでこの戦いに決着がついたということだけは確かだった。

 ……そして、気が付けば僕の意識は深い闇の底に沈んで――

 




実は裏でアシストしていた英の母アリサ。

そして英はいったいどうなるのか。

砲撃形態はリボルバーとミキサーを合わせた感じでイメージしていたんで、こんな風に。
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