仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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異なる話題に見せかけて、命題は同じである。


EP108.背中を押して

 何気ない日常、何気ない登校風景、何気ない授業、そんな風に俺の日常は何気ないものばかりだった。

 何度か非日常を垣間見たこともある。その中で戦う人たちの覚悟を見たこともある。

 だけど、自分がその当事者になるかもしれない力をいきなり渡されても、戸惑うばかりだ。

 

「――――本当、どうしよう」

 

 この手にあるキーホルダーが……仮面ライダーに変身するためのアイテムなんて今でも信じられない。

 そりゃ、危険なこともあるだろうし……使いたくないなら使わなくてもいいんだが。

 

「そういうわけにもいかないんだよなぁ……」

 

 持て余しているし、誰か有効に使える人が持っているべきだとも思うけど……俺は決めあぐねていた。

 最初に仮面ライダーを見たのは……そうだ、あの商店街だ。

 イノシシの怪物が現れて、それをブッ飛ばしている光景だっけ。

 

「今思うと、英さんって昔から無茶しているよなぁ」

 

 束さんが心配するわけである。千冬姉はバカップルとかいい加減結婚しろとか言っているけど、そういう言葉にしなくてもわかりあっている関係だと俺は思う。

 お互いどういう無茶をするのかわかっている。だからこそ、心配するんだから。

 両親のいない俺に取って、そういう関係の見本があの人たちだった……ちょっと一般的じゃないけど。

 しかし、英さんもなんで無茶するんだろうか? 具体的な理由は聞いたことないが……

 

「そういや英さんも戦い始めたのって俺と同じころって言っていたっけ……」

 

 ほぼ成行きだったけどとも言っていたけど。

 強い人だと思う。力とかそういう部分じゃなくて、いざというときにためらいもなく決断できる。そういう意味で。

 人が怪物になっても、躊躇を見せずに戦えるんだから……ただ、俺はあの時一つ気になって聞いたことがあるんだ。モンドグロッソの会場で……

 

『なんで英さんは、あの子供が怪物になったのに……すぐに攻撃できたんですか?』

『まあ、ためらわなかったわけじゃないけど……元には戻すことはできないから」

『でも英さんも頭いいし、束さんだっているのに?』

『ああ。だからこそ断言するよ。一度インベスになった人間はもう二度と元には戻れない。僕と束は片足突っ込んでいるけど、重要な一線を越えていないからこそ、人間なんだよ』

『そこまで断言しちゃうんですか?』

『ああ……いくつか実験もしたし、吐きたくなったぞ』

『……顔、青いですよ』

『思い出しただけでヤバい……まあ、そういうわけだ。インベスになったら――介錯するしかない』

『――ッ』

『そう怖い顔するなよ……納得はできないだろうし、まだ小学生の一夏君には難しい話だと思うけど……時にはそういう手段をとった方が救いになることもあるんだ。まあオーバーロードなら人の自我は残っているんだろうけど、それでも人間じゃないわな……あった奴は軒並み力に呑まれていたし、どうにかしないとなぁ……』

 

 ……やっぱ強い人だと思う。そういうこともちゃんと背負えるんだから。その顔は悲痛だったけど、だからこそ強いと思った。人の心を失わずに剣を振るえる。それが、どれだけ難しくて大変なことなのか。

 だからこそ、俺がいきなりこんな力手にして……

 

「悩むよなぁ……」

「何黄昏てるのよ」

「おわっ!? り、鈴!? いつからいたんだ!?」

「いや、今さっきだけど……っていうか驚き過ぎ」

「そ、そんなことないよぅ」

「……新しいパターンね」

 

 え、何が?

 

「何でもないわよ……で、どうしたの?」

「あー……」

 

 どうしたものだろうか。鈴に話すわけにもいかないし、男として相談に乗ってもらうのも……

 

「言っておくけど、いまどきじゃなくても男として相談に乗ってもらうのは~ってのはおかしいと思うわよ」

「……」

 

 隠し事は俺には無理です。

 

「何悩んでいるのか知らないけどさ――私にも相談できないの?」

 

 そう言った鈴は、少し悲しそうな顔をしていて……ハァ、俺の負けだ。

 相談した方が悩みも解決するかな、なんて思いながら言えない部分をぼかして説明することにした。

 

「なんていうかな、いきなりすごい力貰って……手にもてあましているって感じかな」

「何の話よ……ゲームとかそういうことじゃないんだろうし…………」

「あーたとえばさ、鈴がいきなりISを貰ったらどう思う?」

「どう思うって……そりゃ困るわね」

「まあそんな感じだ」

「……」

 

 鈴はうつむいて、何かを考えている。まあいきなりこういうこと言っても迷惑なだけだよな。

 悪かったと謝ろうと、口を開こうとしたその時――鈴は俺にこう告げた。

 

「一夏、何悩んでいるのかあたしにはわからないし、必要以上に踏み込むつもりもない……でもあんたがそんなに悩んでいるのに力になれないなんてあたしが許さないわ」

「なんか時々鈴って男前になるよな――痛ッ!?」

「一言余計なのよ……まああたしの意見って言うか、考え方なんだけどさ…………困ることは困るだろうし、持てあますだろうけど……とりあえず、使えるように努力はするんじゃない?」

「努力?」

「そう。だって、持っているだけじゃ危ないだけじゃない」

 

 たしかにそうだ。必要な訓練だってあるだろうし――いや、よく考えたら英さんはぶっつけで使ったとか言ってたわ。あの人がおかしいのか? たぶんおかしいんだろう。

 

「そんなラッキーで手に入れただけの力に意味なんてないわよ。ただラッキーなだけじゃね。だから努力するんでしょ、人間ってさ」

「……そうだよな」

「がむしゃらに進んで、挫折とか、失敗とかあるんだろうけどさ……それでも貰った力に恥じない自分になればいいのよ。使うのは自分の自由なんだし、自分が後悔しなければいいのよ。結局、人間ってそういうものでしょ」

 

 そうだ。そんな簡単なことだった。

 結局、持っているだけじゃ意味はない。意味を持たせたいのなら自分が努力するしかない。

 

「それでも悩むようなら……あたしが背中蹴飛ばしてやるから」

「鈴……」

「だから、そう悩むことないわよ」

「……ありがとう」

「な、なによ……調子狂うわね」

「ははは、俺、鈴のそういうところ――結構好きだぞ」

「ぴゃぁっ!?」

「り、鈴?」

「え、え、? 好き? 一夏が、私のこと――ふぇぅ」

「鈴!? いきなり気絶してどうした!?」

「え、えへへ……」

「あかん……こりゃ起きないぞ…………って言うか、そろそろ昼休み終わるな…………どうしよう」

 

 そんな昼休みの一幕の出来事だった。

 ちなみに、遅れて教室に戻ったら担任に「同伴出勤はほどほどにしろよ」とからかわれた。

 まったく、俺と鈴はそういう関係じゃないってのに……俺はからかわれてもいいけど、鈴が困るだろう。しかし、そう言ったら鈴に殴られたんだが……なぜだ。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 そんなころ、スレイプニルでは。

 

「すぐりゅ……だっこ」

「はーい……リリー」

「英、だらしない顔すんなよ」

「束さんも同じ顔してますわよ」

「百花お嬢様もですけどねそしてわたしもさー」

 

 以前、グリフォノイドから助け出した赤子は成長し、3歳。ISを動かすためのパーツに使用されていたことからもわかる通り女の子であった。

 そして、すっかり成長してスレイプニルで育てられている彼女――リリーに乗組員たちは割とメロメロだったりする。

 

「ええい! デレて何が悪い。僕は可愛いものが好きなのだ! 可愛いものが好きなのだ!」

「英って時々おかしくなるよね」

「どこぞのマッド博士に影響されて……かわいそうに」

「ああん? やんのか万年発情エム女」

「ほう……いいでしょう、久々にカチンと来ましたわ」

「二人ともほどほどにしてくださいね……しかし、問題なく成長して良かったですね」

「だなぁ……色々心配だったが、身体に異常もないし」

 

 ISを動かすために調整されていたようだし、そこは束がいれば大体何とかなる。ヘルヘイムの力に汚染されているかとも思ったのだが、そこも大丈夫だった。

 というより、もしかしたらオーバーロードでもなければISは動かせないのだろうか。普通のインベスがIS使っているところ見たことないし……女性としての因子とか失うのか?

 

「うーん……気になることだけど、リリーがちゃんと成長すればいいか」

「いかー」

「すっかりパパの顔ですね……これで嫁に行った日には…………大丈夫ですか?」

「あーどうなんだろ」

「あれ? もっとうろたえるかと思ったんですけど」

「いや、そりゃ――行き遅れ筆頭の行動見ていたから」

 

 佐々木とか佐々木とか佐々木とか。今は我毛だけど。

 

「なんか、重みがありますね……人ごとじゃないけど」

「かおりさん、たとえばうちのクルーならどうです?」

「え……」

「なんで本気で嫌そうな顔してんですか。リリーの教育に悪いでしょう」

「あんたに言われなくないわ。フロンが勇者なIS使っているの見ましたよ。どんな悪ノリしたんですか」

「いや、フロンがIS組み立てたいって言うから……つい」

「ついじゃないですよ!? っていうかフロン作ったの!?」

 

 いろいろ紙一重が多いが、天才たちのことを近くで見続けていたフロンは最近洒落にならないレベルに達してきていた。彼女はいったいどこへ向かっているのか。

 

「リリーには変なこと教えないでくださいね」

「大丈夫。ココには感染源が多いから最新の注意を払っている」

「リリー、好きなものは?」

「……大艦巨砲主義」

「ほらすでに手遅れじゃないですか!? 三歳児が大艦巨砲主義ってどういうことですか!? メチャ流暢な日本語でしたよ!?」

「えらいなーリリーは。もうそんな難しい言葉しゃべれるんだな」

「えっへん」

「いやいやそこじゃないそこじゃない」

「で、なんでうちのクルーダメなの?」

「畜生、いつからこの人はボケキャラに……はぁ、まあいいです。それでうちのクルーですね? 艦長は言わずもがなですけど」

「そりゃ、束一筋だし」

「はいごちそうさま……で、中沢さんも好きな人いますし、色々頑張っていますからね……いい人だと思いますし、失恋したら狙っちゃおっかなぐらいには考えますが、特別狙うほどでもないかな」

「ちょっと黒いな」

「くろー」

「……で、ジョニーですが…………ほら、ジョニーですし」

 

 ああーと、英は何となく理解した。色々と深淵をのぞいたらアウトな気がするんだ。アイツ。

 まあミシェルもいるし遠慮するか。と思い直す。

 

「で、瀬田さんはなんだかさえませんから」

「辛辣」

「率直な感想です。谷川さんがいますから手を出そうとは思いませんけど――ってうちのクルーお相手いる、もしくは好きな人いるじゃないですかどういうことだ」

「そういえばそうだね……ところで、かおりん」

「かおりん言うなし。なんですか?」

「…………信二って結局、誰が好きなんだ?」

「あんた知らなかったのかよ!?」

 

 もう一生悩めと、かおりは英に教えなかった。

 こうして一人の男の片思いはいまだ知られていない。想い人と、その友人二人に。

 結局、ボロボロになった束と百花が戻って来て――お仕置きするために二人を連れ去ってかおりが消えたので、英はリリーを部屋に戻しに行く。

 

「ううー」

「どうした?」

「おなー」

「おなかすいた?」

「うい」

 

 基本は舌足らずなリリーであるため、普段は簡単な受け答えしかしない。

 まあ、時々流暢になるのだが。これも一人の男が英才教育を施した結果である。英は間違いなく母親の血を受け継いでいた。

 

「……英お兄ちゃん、ご飯出来た」

「おー、ちょうどよかった。リリーもおなかすいたって」

「ねーちゃ、ごはー」

「わかった。用意してある……はーいリリー、ご飯だよー」

 

 フロンにリリーを託し、英はその光景を眺める――ああ、ちゃんと育ってくれてよかった。

 リリーだけではなく、フロンも……

 

「不安も多かったけど、やっぱ行動しなきゃわかんないよな」

 

 何もしなければ失敗しかしない。少なくとも行動を起こす分には可能性は様々だ。

 どのような結末を迎えるかなんて、その時にならないと分からない……望みをかなえたいのならば、努力しろ。

 どうだ、あの光景は……まあ色々教えすぎたかもしれないが……いい子に育った。リリーはまだこれからだろうけど……それでも、案外何とかなる気はする。

 仲間たちがいる。もしも間違ったら、誰かが殴り飛ばしてでも戻してくれる。

 

「背中を蹴飛ばすくらいが、ちょうどいいのかなぁ」

「ご飯さめるよー」

「ああ、今行くよ」

 

 あれこれ悩むのも時には必要だ。だが、英にとってそこはすでに通過した場所。

 こうして一つずつ積み重ねていくことで、大人になっていく。

 だったら自分は、胸を張って前に進めばいい。

 




ちょっとした対比のつもりです。

一夏はまだ子供で、悩んでなんぼ。そうやって成長するんですから。
それに対して英はもう大人になりました。悩むより、その先へ。



E-3突破するにはレベルが、レベルががががが
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