仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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ようやくだよ……本当はここまで来るのにもっと早くて大丈夫かと思ってたよ。


EP109.侍ドイツに立つ

 ――畜生、気を付けていたっていうのにこうなるのかよッ!

 織斑一夏は逃げていた。何から? その答えは一つ――緑色の小さな怪物と、その指揮を執るかのように走ってくる二足歩行のカメレオンの様な姿をした怪物からだ。

 おそらくインベス。それに、小さな怪物は以前に見たことがある。たしか、ゴブリンインベス。ただ、頭にヘッドギアのような物をつけているのが気になるが――今はそんなことを考えている暇もなく、一夏はただひたすらに逃げていた。

 

「――クソッ!!」

 

 事の発端は、ここドイツにて行われている第二回モンドグロッソ。その決勝戦の観戦に来たことだ。数日間のスケジュール、襲われる可能性があると事前に英から聞かされていたおかげでトラブルを回避しようと努力しており、その成果なのかもめ事も起こさずに決勝戦の日まで無事でいられたのだ。

 会場に向かう道中、ちょっとした親切心を出したのがこの状況を生み出した。まあ、決勝戦ということもあって気が緩んでいたのだろう。重い荷物を抱えたおばあさんがいたので手伝ってあげたのだ。そしたら――おばあさんが怪物になったではありませんか。荷物を運ぶの大変だったんだぞとか一夏の性格上発想すらしない。ただ、俺って不幸なのかなぁなんて考えただけである。

 その後は、出るわ出るわ小さな怪物たち。どこに潜んでいたのだろうか……まあそんなこと考えている場合じゃない。ダッシュで逃げるべしと、彼は逃げ出したのである。

 

「ああもう、どこまで逃げれば――やべ行き止まりっていうか廃工場!?」

「――GAHAHAHA! コレハコレハ、誘導セイコウって奴カ」

「俺って本当、ちゃんと考えて行動しろよ……いや、日本人として助け合いの心を失っちゃいけない。うん、だから後悔はしない――反省はしよう」

 

 取り囲まれた。さて、どうする?

 1、おとなしくやられる。あばよ千冬姉、鈴、弾、蘭、数馬、みんなルート。

 2、その時不思議なことが起こった。

 3、助けを呼ぶ。

 

「できれば3だけど」

「イキナリなに言い出してやがる……あーあー、チャンネル接続できてきたか」

 

 カメレオンみたいなのが何か言っているが――そういえばアイツもヘッドギアっぽいのつけているな。どういうことだ? 一夏の記憶では、通常のインベスが人の意識を持っていることはおかしいのだが……あのヘッドギアの効果か? いやそれにしてはインベスたち自体が笑っているというよりそういうポーズをとっているだけ――

 

(もしかして、遠隔操作?)

 

 そこにたどり着いた。正しいかわからないが、インベスを操る技術はあるらしいし、ありえないことじゃない。

 

「しっかし、殺しちまった方が楽なのによぉ……なんでやらねぇんだか」

「そりゃおめぇ、人質にした方が有効的に使えるからだろ」

「交渉材料ってな。あとはこの装備のテストだ」

「あの織斑千冬の弟なんだろ? 連れ帰った方が色々と有効じゃない?」

「ああそうだな――だが、おとなしくしてもらおう」

 

 考えている暇は無いのか?

 ポケットに手を突っ込み、キーホルダー型のアイテムに触る。この感触――数日前に、これを渡されたときからもしかしたら使うことがあるかもしれないと思っていた。

 

(どうする? 使うのか? いや使わずに英さんたちに連絡を入れる方法をとった方がいいよな――俺が戦う必用なんて――――)

 

 それに使ったら後戻りはできなそうな気がする。

 ここが分岐点。ここを越えると、その瞬間自分の進む道は決まってしまう。尻込み、まだ中学二年生の自分にとっては重い決断。

 

「しかし、こいつの姉もおっかないが美人だよなぁ……ぜひともお相手してもらいたいものだ」

「だったらこいつを人質にすればいいんじゃないですか?」

「そうだなぁ……屈強な女を屈服させるか、イイじゃねぇか」

「あんたらサイテーね……まあ、面白そうではあるわね、写真ちょうだいよ」

 

 ――こいつらは、何を言っているんだ?

 

「こいつ、顔は良いし彼女の一人はいるんじゃね?」

「うぇ、ロリコンですか……でもまあ、たまにはいいかもしれませんね、いたらやっちまいます?」

「だな。へへへ楽しみだぜ」

「売れば高くなりそう」

 

 ――唐突に、背中を押してくれた少女が頭に浮かんだ。その次に、アイツが襲われている光景が浮かんで――

 

(…………男が覚悟決めるには、十分な理由だよな)

 

 別に付き合っているわけじゃないし、その子に恋愛感情を抱いているかと言われたらそれは違うと思う。

 だけども――迷っている自分の背中を蹴飛ばしてくれた大切な人であることには変わりない。

 自分のことはいい。だけど大切な家族や友達を狙う奴らがいるのなら――自分は覚悟を決められる。

 

(誰かを守るために強くなりたかった。鈴にいわれてから素振りぐらいはやり直していたけど……どこまでやれるだろうか? いや、やるんだ)

 

 その眼に闘志が宿る。その足で立ち上がる。その腕に力がこもる。

 今ここに来て、怪物の姿をした醜い心の持ち主たちは何が起こったのか知った。それは――少年の地雷を踏みぬいたことだ。いや、地雷原を駆け抜けたと言った方がいいだろう。なぜならば地雷は踏んだだけでは爆発しない。踏んで、離すと爆発するんだ。

 彼女の姉はものすごく強い、最初の一人だけなら冗談ですませた。しかし――もはや遅い。

 

「力、使わせてもらいます」

 

 その思いに応えるかのように――一夏の腰に戦極ドライバーが装着された。

 

「戦極ドライバーだと!?」

「ま、まさか!?」

 

 怪物たちは驚き、慌てる。その力はインベスに対して有効なもの。たとえISが来ようがインベスの方が優位であるというのが通説。だからこそ彼らは余裕をもっていた。しかも救出にくるであろうライダー、蜂矢英たちスレイプニルの面子は別働隊が相手をしており、この場所を感知できないようにジャミング――その対策のために一夏の持つキーホルダーで直通の信号を送れるのだが――している。

 一夏は戦うことを選んだ。後戻りはできない。

 

「それでも、誰かの後ろに隠れるなんて自分自身が許せねぇ!!」

「くそっ! やっちまえ!!」

「おおお――アガッ!?」

「なんだ!? これはバリアー!?」

 

 一夏のドライバー内部には、極小のISコアが仕込まれている。ISとして動かすことはできないが――シールドバリアーを短時間張るぐらいならできる。

 それが、一夏を守り変身のための隙を守るのだ。

 空中にホログラフが浮かび上がり、3・2・1の合図が流れる。

 

「変身!」

 

 カウントが0になったと同時に、カッティングブレードを下ろし――ドライバーにセットされていたロックシードを開く。その色は――緑。

 戦うことになるとは言ったが、一夏の身を守るために英が与えたロックシード――それはメロンロックシードだった。その力は防御に秀でている。空中に開いたクラックより降りてくる緑色の鎧。一夏の体には白色のライドウェアが装着され――今、変身が完了した。

 

【メロンアームズ! 天下御免!】

「――盾と、刀か……やっぱ守られてるってことなのかな…………それでも、俺は逃げない」

 

 立ち向かう。一歩前にあゆみ出し、ここに――仮面ライダー斬月が誕生した。

 

「おのれ……蜂矢英に篠ノ之束…………対策済みというわけか」

「だけど、初めての変身で戦えるわけがない! 全員で取り囲むわよ!」

 

 今更だが、彼らが口に出して作戦を伝え合うのにはわけがある。

 そのヘッドギアはインベスを遠隔操作するための物。しかしまだ完成とは言えず、意思の疎通などで苦労するのだ。細かな戦闘はある程度インベスに命令することでかのうだが、細かい手の動きなどは命令できない。

 それ故に声で伝え合うのだ。インベス操作中は離れた場所にある肉体は眠っている状態のため、そちらで連絡を取ることもできない。

 

「はぁああ!」

 

 もっとも、そんな事情は一夏には関係なく――作戦を知れてラッキーなものだが。暗号を使おうにも、一夏が変身するなど想定外もいいところでそこまで熟練した兵士を投入しているわけでもないので、このように――

 

「ぜりゃあ!」

「くそっ! 盾で殴るのか!?」

「シールドバッシュとでもいえばいいか……見た目以上に強力な攻撃だぞ」

 

 一夏にとっては相手の作戦から攻撃手段を思いつける。

 

「なんでよ、剣道から離れているって情報よ!? なんで私たち相手に戦えているのよ!!」

「知るか! 体が勝手に動いてんだから仕方がねぇだろ!!」

 

 とは言うものの、一夏は少しばかり頭がパンクしそうである。

 

(英さんも厄介なものを――なんでマスクの中に説明書が浮かぶんだよ!?)

 

 実のところこれもISの技術を応用したものだが。一夏の意識に合わせて必要な情報を表示するのだ。そのため、一夏はメロンディフェンダーが攻撃にも使えるものだと理解した。

 無双セイバーとメロンディフェンダーによる攻防一体の理論。さらに、メロンディフェンダーを攻撃に転用した使い方による戦い方、銃撃戦と自身の防御を両立した戦法、それらが一夏の頭に入りやすいように表示される。

 

(でも戦闘中! いや助かっているけど――ああもう! こいつら一定の距離保ちすぎ!)

 

 彼は気が付いていないが――情報を整理しながら戦うという離れ業をやってのけている。

 いくら練度が低い下っ端とはいえ、彼らも亡国機業の兵士。今日変身したばかりの奴に負けるわけがないのだ――それが、織斑一夏でなければ。

 

「アガ――ッ」

「なっ!? 一体やられた!?」

「お、ラッキー――デリャァ!」

 

 陣形が乱れ、一体が爆散した。無双セイバーで切り付けられた個体は――最初にシールドバッシュを受けた個体。ダメージが蓄積していたためにやられたのだろう――そして、続いて一夏は盾を突きつけて槍のように他の個体を貫く。

 

「――ツ!?」

「二体目!」

 

 残り、ゴブリンインベスが二体にカメレオンインベスが一体――いや、すでにカメレオンインベスはその姿を消していた。気配を殺し、景色に同化して暗殺者のように一夏の首を狩るため――されど、こんな短時間で二度も同じ手に引っかかるわけがない。

 後悔はしていないが反省はしているのだ。

 

【メロンオーレ!】

「――ハァアア!!」

 

 体を回転させ、無双セイバーとメロンディフェンダーを水平に構える。その姿はまるで、小さなサイクロン。

 風を巻き起こし、周囲を巻き込み、インベスたちを風で攻撃する。

 

「――――アガッ!?」

「ぐがっ!?」

「チッ――やむおえないか…………」

 

 耐久力の低いゴブリンインベスは爆散し――あとにはカメレオンインベスのみ。

 

「なぜだ、なぜ初めての戦いだというのに――こんな子供一人だというのに!」

「そりゃ、覚悟の違いってやつじゃね……まあ俺だってたいそうな覚悟があるわけじゃない――それでも、誰かを守りたい気持ちがお前らみたいな奴に負けるわけがない!」

 

 たしかにそれもあるだろう。だが、それだけで片づけられるほど怪物を操っている男は信じられない。

 あえて理由を上げるとするならば――そう、才能。

 

「流石は織斑千冬の弟ということか……」

 

 彼らは知らぬことだが、英は一夏の中に眠る才能を見抜いていた。

 それは平和な世なら必要ないであろう才能。こと戦いにおいては千冬をも上回るセンスを持っている。不器用なため一本に絞った一点特化タイプだが――極めれば英は自身が勝てないだろうとも思っている。

 もっともまだ開花はしていない。芽が出ただけ――それでも、この状況を覆した。

 

「はぁ……はぁ…………」

「いいだろう――仲間はフィードバックがあるから今頃はどうなっていることか…………敵は取らせてもらう」

「かってな、ことを……」

 

 覆した。確かに覆したが――まだ一歩及ばない。疲労が現れ始めた。ロックシードの力で身体能力が強化され、潜在能力が引き出されている一夏は、一気に体力が持っていかれている。

 4体ものインベスを立て続けに撃破しただけでもかなりのものだが……

 

「こいつがなんだかわかるか?」

「ロックシード?」

「ああ――ザクロロックシードっていう強力なロックシードだ……そして、こいつをインベスが食べると、驚異的な暴走を引き起こし――暴れだす」

「なっ!?」

「あばよ、織斑一夏ァ!!」

 

 せめて危険な芽は刈り取らなければいけない。その使命のため――カメレオンインベスに最後の命令を下す。

 バリボリと嫌な音を立ててインベスの口でロックシードが咀嚼される――すぐに変化は起こった。

 

「ウゴガァアアアアアアアア」

 

 男の物とは違い、獣のような咆哮。これこそ本来のインベスの咆哮なのだろう。

 皮膚は破れ、内側から緑色の光と共にその姿が変わってゆく。植物がその体を覆い――巨大化してゆく。

 

「――――アガ」

「こりゃまずいな……」

 

 どうしたものかと悩む……これはダメかなと。

 しかし、一夏はまだ気が付いてなかった。腰に装着されている、メロンロックシードよりもさらに深い緑色のロックシードに。

 




というわけで一夏は斬月に変身しました。
当然原作斬月より弱いですけど。ただ、原作一夏は初戦闘のセシリア相手に戦えていたところを見ると戦闘センスはかなり高いようなので、若干アシスト付きなのもあってこんな風になりました。

英が様々な戦法を切り替えるタイプなら、一夏はやはり一点特化。



E-3、大きな目盛りを一つづつ削るのなら何とかいけそうである。そんな平均レベル30艦隊。高い人たちは一次二次で使ってしもうたんや……
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