仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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一つの節目の終わりと、再び始まる。
これにて第一部終了。


EP11.ダ・カーポ

 その日の僕は酷い顔をしていたと思う。目は腫れたようになっていて、顔は涙でべたべた。隈はできているし、吐き気が止まらない。

 でも、立ち止まっているのは違うだろう……彼女が置いていったローズアタッカーをドライバーにセットして、実際に使用できるか試さなくてはならない。

 庭に出て、ドライバーを装着しセットする。

 

【ロックオン!】

「ここまではいつも通り……いくぞ」

 

 リュックサックを背負って、色々と装備品の準備もできている。元々、夏休み中は日本を回ってクラックが開いている場所はあるかとか、色々調べようと思ったから準備はしておいたのだが……まさかこんなに早くクラックの向こう側……ヘルヘイムの森に行けるとは思わなかった。

 そして、意を決してドライバーを動かす。すると、いつものソイヤッ! という音声が…………音声が?

 

「あれ? 流れないし? どういうこと? 確かにブレードは動かせるけど……」

【エラー】

「……なぜに!?」

 

 何度試してみても失敗して、その日はそのまま家に戻り、花蓮さんが置いていったパソコンや機材をセットしただけだに終わってしまった。結局のところ、進展はあまりしていない。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 進展のしないまま一週間が過ぎた。ブラッドオレンジアームズを使用したことによる疲労感がようやく抜けて、体の調子も戻ってきた。できることならあまり使いたくはないが、巨大インベスなどに有効なスイカアームズがない状態では頼るしかないか……

 ちょっと気分を入れ替えようと、公園のベンチでペットボトルの紅茶でまったりしていると、見慣れた顔がやってきた。

 

「久しいな、元気だったか?」

「織斑、お前こそ……なんかやつれた?」

「……ちょっと束の勉強に付き合ってな。アイツ、作者の心情を語れとかその手の問題がとことん苦手で、教えるのに苦労した。もう全部の文学作品を暗記して回答をあらかじめ用意した方が早いレベルだ」

「ああ……そういえばそんな話もあったな」

 

 本気で高校にいくつもりなのかよ……ちょっとしたジョーク、じゃすまないか。

 まあ僕も高校はいくつもりだけど、そのあとはどうするか…………いや、高校すらいっている時間は惜しいなぁ……

 

「それと、束から伝言だ。『高校じゃあ三年間学年トップとってやるから逃げるな』だそうだぞ?」

「なんだよ逃げるなって」

「案外、アイツもお前のことを認めているってことだろ」

「ええ!? 僕は特に才能とか気概とか無い一般人なんだけど、何がアイツの琴線に?」

 

 正直、最近の僕が一般人とか無理あるけど。

 

「まあ、最初は変なもの持っている邪魔な奴ぐらいの認識だったんだろうが……今や、アイツに向かって罵詈雑言を浴びせられるのはお前だけだ」

「褒められてねえし、しかも織斑も言えるだろ」

「親友じゃ、言えないこともあるんだよ」

「そんなもんかねぇ……僕にはわかんないや」

 

 考えたら、ハッキリ友達って言える人いただろうか? うん、いない……寂しいね。

 というよりは友達というのがどのあたりの距離感なのかよくわからない。

 

「しかし、酷い顔だな……何かあったのか? しばらく家にもいなかったようだし」

「うーん……ちょっとな。それに帰ってきたのは一週間前だけど、家を空けていた間に来たのか?」

「ああ……大した用事ではない。束にISの発展を促すにはどうしたらいいか相談されて、お前ならなにかいい意見があるんじゃないかと思っただけだ」

「んー、まずISを作ることで副次的に生まれるものも視野に入れた研究体制。たとえば、飛行機やモニターとか多岐にわたる、そもそも宇宙開発が元々の目的だし今の方向性だと兵器一辺倒だから色々出費の方が多くなるからね。女性軍人を育てなくちゃならなくなるし、総数から考えても色々と損失のほうが多いとたとえ性能が良くても捨てられるね」

「バッサリというな……それに、表向きは兵器としての運用はできないからな。先日、アラスカ条約が可決された」

「……なにそれ?」

「ニュース見ていないのか?」

「色々忙しくてね……なんかISの条約っていうのは分かるけど」

「簡単に言うと、ISの情報開示と研究機関を国家で設立、軍事利用の禁止などだ」

「それ、どうせ守らないだろ」

「だろうな……だが、明文化しないといけないんだろう」

「めんどくさいなぁ……なんかもう、設計図でもなんでもいいから持ってない?」

「どうするのだ?」

「んー、こういうのは資金を手に入れるのが第一。医療でも航空でも、家電メーカーでもいいんだ。何か、他の分野でうまみがあれば、なんとかなるもんだ」

 

 そのまま、僕は織斑に連れられて篠ノ之神社へと向かった……何気に初めて来たな。

 なんか、裏手に大きい木があったり、妙な雰囲気を感じる場所である……どこかで感じた気もするんだけど、思い出せない……

 

「……千冬か、今日は朝稽古だけではなかったのか?」

「柳韻さん……いえ、今日はちょっと束に用事で」

「そうか……後ろの子は?」

 

 なんか、武芸者とか侍とか、そんな感じ言葉の似合う筋肉の男がいた……剣道場もしているらしいし、師範の人なのだろうか?

 

「蜂矢、紹介する。束の父の篠ノ之柳韻さんだ」

「どうも、学友の蜂矢英です」

「うむ、よろしく」

 

 ……篠ノ之に似てねぇ…………つーかどうやったらあのエキセントリックがこんな侍みたいな人から生まれるんだろう? 世界は謎だ。

 というか、篠ノ之がインドア系なのに生身でも強いのは家系なんだろうか? もしかしたら剣道をかじっているかもしれないけど。

 

「ところで、何か武術をしているのか?」

「いえ、別にこれといっては……」

「……不思議と、戦いを経験しているような雰囲気があるのだが……それにしては筋肉は平均か、すまない私も歳かな」

 

 ……何もんだよこの人。

 

「それで、うちの束とはどういう関係で?」

「…………喧嘩友達?」

 

 なんか、言葉にするとそのぐらいしか思いつかない。

 おいこら織斑、笑うな。なんだよ自覚あったのかって……

 

「そうか……そんな友人がいたのか」

「いえ、そこまでの者じゃないんですが」

 

 なんだろう、何かおかしいような気がする。

 そういえば親ともあまりかかわろうとしないって話も聞いたことあるような……マジなんだろうか。

 とりあえず僕と織斑はそのまま篠ノ之の部屋に行くことになった。まあ、アイツの行動パターンからして何をするのか予測はついてきたが。

 

「どうしたのだ? 一歩下がって」

「ああ、気にしなくていいよ」

 

 そして、織斑がドアを開けた瞬間に飛び出してくる謎のウサミミ女。まあ、誰だか言わなくてもわかるが、度重なるインベスとの戦闘で鍛えられた僕には通用しなかった。

 そのまま体をひねり、腰を両手でハグ。もっとも、そんな甘いものではないが……そして、エビぞりのように相手を頭から叩き落とした。

 いわゆる一つの――

 

「じゃ、ジャーマンスープレックス!?」

 

 ――実況ありがとうよ織斑。

 

「いったぁあああああ!? うら若き乙女にジャーマンスープレックスって鬼畜過ぎるよ!」

「平気だろ。お前細胞レベルで人間やめてるって言ってたし」

「だからってここまでしないよ青色!」

「青色ヤメロ。そして今みたいにいきなりとびかかってくるのはどうなんだ?」

「話が平行線になるから、いったん落ち着け」

 

 すまない織斑、自衛はしなければいけないのだよ。

 

 ◇◇◇◇◇

 

「で、なんでこいつがここにいるの?」

「織斑に呼ばれた」

「ちーちゃん、なんで呼んだのさ」

「お前だって伸び悩んでいるんだろ……苦手を克服するいいチャンスだ。対人スキルを身につけろ。高校入試にも面接はあるんだからな」

「うー……」

「それで、今回呼んだのはお前が学業に力を入れている間にISを発展させる方法という話だ。元々コアはある程度の数を作ってあるから、今のペースで作り続ければ高校卒業の頃には500個近くの配分だ……もっとも、お前が理想とする発展スピードで、お前の介入の必要のない場合だけどな」

「なんだよ、コアって全然数ないのか?」

「各国に分配する分はできているのだが、おそらく束にしか作れん」

「……結局、こいつは世界一の重要人物のポジションなわけね。今はまだコアの製造ができないか模索しているから良いけど数年後には家族まで大変なことになるぞ」

「ふん、それぐらいお前に言われなくてもわかっている。いいから、ここまで来たってことは技術レベルが付いてこれない奴らでも何とかなる方法を思いついたってことなんだよね?」

「まぁな……まずは何でもいいからISの設計図を見せろ。そもそもどういうものなのかよくわかっていないんだよ。だから、方法は分かっても攻め口が分からない」

「……束さんは虚偽に踊らされるような人には見せたくないんだけど?」

「さすがに、僕も白騎士事件については伏せておきたい。まあ気が付いている人は結構いるだろうけどね」

「へぇ……まあ最低ラインは合格だよ。でも、君の性格なら殴りこんできそうなものだけど?」

「んー、まあ白騎士事件のおかげで僕にも一つ良いことがあった、ってところかな。それに確証というか証拠はないから薄々感づいている、ってところだよ」

「よく言うよ……」

 

 なんか、腹の探り合いみたいで嫌だなぁ……織斑なんて嫌な汗かいて部屋の隅にいるし。そこまで怖いのだろうか? ちょっと気になる。

 

「まあ、そこまで見たいっていうのなら見せてあげるよ。このIS、第一世代試作機……名称は未定だけどね」

 

 なんか、第一世代ってあたりどこまで先を見据えているのかわからない発言だなぁ……さすがに工学系はしっかりしているのか設計図は結構見やすい。機能も、ドライバーの調整やら自分でやるようになってからは分かるようになっている。

 いくつかの項目と、設計図を見ていって持っていたメモ帳にメモを取る。それにしても、駆動系には目を見張る。もしかしたら、スイカアームズの完成の参考にできるかもしれない。

 

「うん、大体わかった」

「……ふぁ!?」

 

 篠ノ之は何を驚いているのだろうか?

 

「おまっ!? この設計図が理解できるの!?」

「いや、わかりやすく書いてあるし……ちょっと工学かじっていたら普通に理解できるだろ」

「そんなわけないだろ!」

「またまたぁ……織斑まで大げさだなぁ」

 

 とりあえずメモを見せて量子化技術は現行のコンピューターを凌駕したものを作れるからそもそもIT業界を数年で塗り替えることが可能だということ、ナノマシン技術に転用できるもの、身体面だけでなく精神面でのケアにつかえるものも多いため、医療にも転用可能。

 あとは電気エネルギーの有効活用とか、シールド技術を流用して防衛専用の機械を作って売るだけでも一生遊んで暮らせることを言った。

 というか転用できる技術多すぎる。一気に文明レベルを上げられるぞこれ。空中投影ディスプレイとかSFだけかと思っていたら実現してたよおい。

 

「なんだ二人とも唖然として」

「唖然もする。この数か月で何があった?」

「いやぁ特に何も」

「そんなわけないだろ!」

 

 なんだか、ものすごい剣幕の織斑。というか、さすがにインベスとか、色々というわけにはいかないし……

 

「束さんも知りたいな、君はいったい、何者なの?」

「んー、知らない」

「「え?」」

「自分でもよくわからないよ。それも知りたくて、やりたいことやっていただけだよ」

 

 そういえば、そもそもゲインクロイム家からして謎なのだ。自分の祖先だけど、なんだかまだ調べなければいけないことが多い。というかそもそもこの腕輪は何なんだとか。父さんは使えなかったのだろうか? もしかしたら、ゲインクロイムの血をひくものだけにしか使えないとか……ありえそうで困る。

 

「とにかく、そういった関連企業に打診するだけで資金や人脈は手に入るだろうから、あとはがんばれよ」

 

 そう言って、僕は家へと歩き出した。

 ISの駆動系とか色々と参考になった。スイカアームズを自分で作れるかもしれない……まあ、完成するのに一年以上はかかりそうだけど。一応、半年あれば試作品はできるかなぁ?

 

 ◇◇◇◇◇

 

「なあ、束……あの設計図…………高名な学者でも理解できなかったものだよな?」

「うん……私も嫌がらせみたいな感じで渡したんだけど……わかりやすいとか言われちゃった」

「……いったい、何があったんだろうか」

「さぁ? どうせ教えるつもりはないだろうし、無理に聞くことでもないよ。借りもできちゃったしね」

 

 だが、束は内心複雑であった。まさか、あの男が自分と肩を並べるかもしれないということに。もしかしたら、自分の知らないだけで、自分と同じ場所に建てるかもしれない者がいるということに何だかモヤモヤとした感情を抱いたのだった。

 

「凡人にはオーバーテクノロジーにしか見えないと思っていたんだけど、どうなっているのかなぁ」

 

 ただ、親友に頼まれた以上彼に対して無茶はできない。千冬が無理にでも聞き出すつもりだったのなら協力したが、彼女がそうしない以上……前に約束した通り、彼女は手を出さない。

 

 

 

 そして、一年の月日が流れた。

 

 




いきなり一年後ですが、少し位は次の話で状況説明を入れます。
というか10話以上やってもヒロインがヒロインしていない気がしてヤバス。

仕方がないね、束さんだもの。

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