亡国機業仕事し過ぎシリーズはまだ続いています。
ドイツでは一夏が斬月に変身し、窮地を切り抜けていた。宇宙では英たちが亡国機業の宇宙船を撃破していた。
それと時を同じくして――彼らの故郷である、この町で異常事態が起こいるとは、だれが予想しただろうか。
「しかし、俺らも地味な役だよなぁ……」
「言うなよ……これも大事な仕事さ」
亡国機業の構成員、彼らはドイツと宇宙という二つの場所で事件を起こすことで、このトラックを隠ぺいしていたのだ。あえて警戒されているこの町を使ったのは――この時期だけは警戒が緩むことと、他の場所で起こした事件により注意をよりそらすためである。
「あー、帰りにいっぱいひっかけたいな」
「だなぁ……安全運転で頼むぞ」
「はっはっは! そうそう事故なんか起こしてたまるかよ」
彼らはただ運ぶだけの任務。それ故に末端の中のさらに端に位置するような人物なのだが――亡国機業はそこで最大のミスを犯した。
いくらなんでも末端過ぎたのだ。組織は大きくなり、命令系統は増え、空中分解は起こさなくともほころびが生まれている。
「――やばっ!?」
「ぐほ――!? なんだ!?」
「横に、ぶつけられた…………」
「なっ!? いったん荷物を運び出すぞ! 警察に見つかるとヤバい!!」
飛び出してきた車が、彼らのトラックに激突する。油断してたが故の事故。されど彼らもこういう状況でパニックにならないぐらいの人物――ではなかった。
迅速な対応、すぐさま荷物を運び出し雲隠れする。だが……
「荷物は全部持ったよな!?」
「ああ、ちゃんと運び出した!」
大きなミスを犯した。
事故の衝撃で、飛び出したトランクを見逃していたのだ……そして、それはどんな運命のいたずらが働いたのか……ぐるぐると宙を舞い、とある家の一室に飛び込んだ。偶然にも窓が開いており、ベッドに当たることでくしょんとして機能して、その部屋に到着した。
その人物はこの時間帯、友人とモンドグロッソの観戦のため、大画面のテレビがある家に行っていたのでいなかったことでけが人は出なかった――そして、友人の姉が決勝戦で不戦敗という暴挙を見て、何事かと思い電話を掛けるものの、出なかったことにより一度家に帰ってくるまでそのトランクは鎮座し続けた――その部屋の主、五反田弾が帰ってくるまで。
◇◇◇◇◇
「おい、トランクが一つ足んねぇぞ!!」
「嘘だろ――アレが無いと帰れねえぞ!?」
「最新バージョンのドライバーなんだぞ!? 隊長用に配布されている量産型とは比べられない貴重品……やばい、ゴリさんに殺されちまう」
「俺だって嫌だぞ!? い、いそいで探しに行くぞ」
「でもよ、どうやって探す?」
「……だよなぁ」
「交番にでも届けられていたら――いやむしろその場合は強行突破か?」
「そうなるかねぇ」
時刻は進み、星が見え始めた。
亡国機業末端の彼らにとって、この状況は速く打破しなければいけない。とりあえず、日中で歩いても怪しまれない格好を考えるところから始めたのだった……
そして、部屋の主はというと――
「これ、一体なんだ?」
戦極ドライバーを手に取っていた。
なんか見知らぬトランクが入っており、父親のお土産かと思ったら……そこにあったのは、変身ヒーローが使うようなアイテムっぽいものと、巷で噂になっているロックシード。
「……まさかマジもん? いやそんなわけないか…………」
弾にとって、そういうのは一夏の役目だという持論がある。なんというか、そういう体質なのだ。
まあ巻き込まれて欲しいわけではないのだが……
「うーん……交番に届けるか?」
「お兄、夕ご飯できたよー」
「ああ今行く」
まあ明日行けばいいかとその時はそれで終わらせた。
……されど、すでに運命は回り始めた少年は選択を迫られるが――取れる選択肢がいくつもあるとは限らない。
朝日が昇り、交番に行こうと弾が起きると……妹様がついてきた。
「なあ蘭、なんでついてくるんだよ」
「だってお兄だとネコババしそうなんだもん」
「いやしないからな!?」
まったく、何を考えているんだか……と思わなくもないが、一人でいると嫌なことを考えるのだろう。
鈴も同じように悩んでいたために心配だが、そこは彼女の友人がついている。同じように蘭も――一夏の安否が気になるのだ。
(……あんなことがあったっていうのに、連絡の一つもよこさないで)
連絡が取れないのかもしれない。だが、だとしたらどういう理由で? 最悪の考えも浮かんでしまう。
だからこそ妹も心配なんだと思い、彼は妹がついてくることを止めたりはしない。
「……でもそのトランク一体なんなの?」
「さあ……たぶん、かめ――」
最後まで言い切ることはできなかった。轟音と共に、怪物が破壊活動を始めたからだ。
「キャァ――!?」
「ら、蘭ッ!!」
手を伸ばす――されど届かない。突如としてパニックに陥った人々は逃げまどい、その人の波は彼らを押しのけてゆく。交番に在中していた警官が躍り出て――対インベス弾を放つ。しかし――
「ガアアアア!!」
「なっ――二体目!?」
「バリケード! マニュアル通りに行動しろ!!」
彼らはなんとかバリケードを作り上げるが――新たに現れたインベスに苦戦している。
その二体――ビャッコインベスは吠える。その連携は警官たちの攻撃をものともせず、徐々に迫って――
「まずい……蘭は――!?」
人の波にのまれ、弾の妹――五反田蘭は気絶していた。慌てて駆け寄ると、息はあるし無事だが……この状況で気絶するのは非常にマズイ。
どうする? どうすればいい?
「物陰に……ダメだ、色々崩れてやがる」
インベスが暴れ出したのと、逃げまどう人の影響であたりの物が崩れていた。元々商店街であることもあり、道も狭い……
人気は無くなり、誰も自分たちに気づいていない――警官たちはバリケードを保つことで精いっぱい。
「くそっ! いったいどうしたら――」
その時、弾の目に入ったのは……トランクケース。その中に入っているのは、まるで変身ヒーローみたいなアイテム。バカな考えだ。妄想もいいところだ……だけど、試さずにはいられなかった。
トランクから取り出し――腰にそれを当てると、ベルトが飛び出してきて装着される。
「――いけるのか?」
そして、手に持ったロックシードを開錠すると――空中に穴が開き、そこから巨大な果実が顔を出す。
【マツボックリ!】
果物ですらないのか……とは思ったが、無いよりはましだ。
ドライバーにロックシードを装着し――その言葉を叫ぶ。いまだ眠る妹を守るために、その決断をする。
「変身!」
カッティングブレードをおろし、ポーズをとる。正直、現実味が湧かない――でも、そうすることでスイッチを入れる。ヒーローにはなれないかもしれないけど……妹を守るのが兄の役目だ!
【マツボックリアームズ! 一撃インザシャドウ!】
ライドウェアの色は黒く、他のライダーよりは頼りなく見えるだろう――それでも、彼の足取りは力強さがあった。重要な決断をすぐにくだせる者は――強い。
「わりぃな……俺にも何が何だかわかんねぇし、こういうのは俺より似合っている奴がいるんだけど――今日のところは俺で我慢してくれ!」
その手に長槍――影松を持ち、眼前の二体のインベスに迫る。警官たちは、バリケードを突破されかけ切り裂かれる――その直前だった。
「うぐぅ!?」
「――ひ」
「とりあえず、後ろの女の子を頼む!」
「あ、ああ!」
命の危機にパニックを起こしたようだが、なんとか言うことを聞いてもらえた。警官たちは蘭を抱きかかえ、安全な場所に運んでくれるだろう……しかし、他の警官は――
「気絶してやがる……ああもうッ!」
盾らしきものに乗せて、地面を滑らせるように離れたところに投げる。気分はカーリングだ。
「ガアア!!」
「おおっと!? い、意外とこれ硬いんだな」
「ジャアア!!」
「あと、長いから二体同時ならなんとか!!」
後ろから迫ってきたビャッコインベスにも対応できる。ぐさりと、一撃いれて投げ飛ばす。突き刺さったままの状態で、そんなことされれば――地面に叩きつけられて、くぐもった声を上げるしかない。
「グゥ!?」
「――ガアア!!」
「ハアア!!」
もう一体のインベスには、腰をかがめて下から突き上げる。空中に浮かんだその様子を見て――マスク内部にガイドが現れた。
「――これか!」
カッティングブレードを三つ叩き、やり投げの格好へと。
【マツボックリスパーキング!】
そのまま、空中のインベスに投げつける!!
「りゃああああああ!!」
回転が加わり――その一撃は一瞬でインベスの命を刈り取った。
その断末魔も上げる暇なく。
「――――アアアアア!!」
「怒ってんのかわかんねぇけど――一直線すぎて怖くねえぞ!!」
「ガッ!?」
背負い投げ。単純に、とびかかってきたインベスの腕を取り地面に投げつける。インベス自身の加速すらも利用して叩き込まれた一撃はその動きを止めた。
さあ、いまだ――
【マツボックリスカッシュ!】
――飛び上がり、光り輝くかかと落としをインベスめがけて、振り下ろす!
「オラぁああああ!!」
「イ――!?」
腹から真っ二つに分かれたインベスの体は――爆発して、風に消えた。
それを見届けて……弾は変身を解除――同時に、少し胃液が込み上げてしまう。
「うぐぅ……気落ちわりぃ…………そうだ! 蘭は!?」
弾はすぐに駆け出す。妹の無事を足すかめるために。
その場に、静寂が戻り……民家の上からその様子を眺めるものが現れた。
人のようであり、纏う雰囲気は人とは全く違う。
筋骨隆々といった出で立ち、その顔は――なんども英とぶつかった男のもの。
「任務失敗の落とし前つけさせろとは言われたが……やはりあんな奴らじゃザコインベスになるのが関の山か」
もっとも、選択肢はいくつか用意した中で欲に目がくらんだのは彼らなのだが。
任務失敗の責任をとるために、提示した案のなかで――トランクを探していた二人は、オーバーロードになれるかもしれないという可能性に手を出してしまった。
失敗の帳消しどころか、幹部昇格という欲に呑まれた――結果は推して知るべし。
インベスとなり、撃破され――この世を去った。
「……しかし、あたらしい仮面ライダーか…………余計な奴が増えたが――ここで殺すか?」
『――残念だが、そんな暇はない』
「……ミランダか、なにかあったのか?」
『ああ……織斑千冬がもうすぐそちらに到着する』
「…………厄介だな、予想以上に速いぞ」
『わっちも想定外だ……どうやら入手できたスケジュールはデマだったらしい』
「チッ――仕方ねぇ……この町は手に入れられるなら取っておきたいぐらいの場所だしな…………今回はおとなしく帰ることにする」
『その方が良いだろう……それじゃあ、待っているでありんすよ』
「相変わらず変なしゃべり方……」
すぐに、その影は消えた――そして静寂は消え、人々が戻り始める。
インベスや仮面ライダーがいなかった為に、捜索されたのが……その姿を発見することは叶わなかったという。
「お兄のバカ!」
「す、すまん……人ごみに呑まれて慌てて迎えに行ったんだが」
「もう! 知らない!!」
一方、窮地を切り抜けた男はというと――せっかく守ったのになんか怒られてしまった。
まあ言い出せないから当然なのだが。
(そりゃ、蘭から見たら俺は勝手に逃げた男だよなぁ……とほほ)
そうではなく、心配だったからだというのが理由だったりするわけだが……この男自身、友人と同じく若干鈍感だったりする。
と、そんな時――プルルルと、電話が鳴った。
「――ええっと、一夏!?」
「え、一夏さん!?」
慌てて電話に出ると――それは弾の親友の織斑一夏からの通話。
「もしもし!」
『あ、弾?』
「どうしたんだよ連絡取れなくてびっくりしたんだぞ!!」
『すまん……ちょっと監視されていて』
「か、監視?」
『いやこっちの話……いやトラブルがあってさ…………詳しいことは今度言うよ』
「そうか……いや、わかった…………とにかく、無事なんだな?」
『あ、ああいろいろあったけど無事だぞ――それより、そっちこそ大丈夫なのか? インベスが出たって聞いたぞ』
「――あー、うん。俺も蘭も無事だしけが人はいないみたい……まあ兄の心は傷を負ったが」
「お兄何言ってんの!!」
脛を蹴られた。イタイ。
「ッ!?」
『大丈夫か!?』
「いやなんでもない……」
『そうか……ちゃんと兄妹仲良くするんだぞ…………』
「それは分かっているが……なんか声が沈んでいるが、大丈夫か本当に」
『いや……ちょっとな、千冬姉と喧嘩した』
「――は!?」
「どうしたのお兄」
「いや……一夏が千冬さんと喧嘩したって」
「――――ふぁ!?」
弾は妹の面白い顔を初めて見た。
ってことで、弾が黒影です。
流石にこれを予想した人はいないんじゃないかなぁ……
一夏が斬月で、弾が黒影は最初期の段階から決めていました。
E-3、ボスのゲージ残り三分の二。