仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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難産ってわけでもないけど、よくわからない話かもしれません。


EP112.三者三様の空模様

 喧嘩の原因は些細なこと――ではなかった。すでに色々と姉の趣味について諦めていた一夏が今更些細なことで怒るわけがない。原因はそう、千冬がモンドグロッソで不戦敗になったことである。

 

「結局無事だったんだからいいだろ!!」

「なんだと!? 自分が何を言っているのかわかっているのか!?」

「だとしても、千冬姉が自分で来る必用があったのか? それこそ英さんに連絡するとか、楯無さんとかいるだろ!」

 

 そこからは売り言葉買い言葉。溜まっていた鬱憤などもあったのか色々と口から出てきてしまう。そして――

 

「魔法少女フィンガー!!」

「もう既にそんな年じゃ――アガアアアアア!? 頭が割れるゥゥゥゥ!?」

 

 先日、22歳(彼氏いない歴=年齢)になった乙女の必殺技はかなり強力だった。

 こんなんじゃ嫁の貰い手なんかあるわけがねぇと、一夏が余計なことを考えたその時――

 

「ふんっ!」

「――ぱ」

 

 天国が、見えたという――

 

 ◇◇◇◇◇

 

「ってのが喧嘩の様子かな」

「一夏……お前って奴は」

「うわぁ……」

 

 帰国して初めての学校。一夏は鈴と弾にドイツでの事件を(ライダーに変身したこととかは伏せて)説明し、どうして喧嘩になったのか、その光景を語ったのだが……思いっきり引かれている。

 

「そりゃ千冬さんも怒るでしょ、大切な家族なんだから」

「そんなことわかってるよ……でもさ、俺が原因で負けちまって…………」

「あー……そっか」

 

 一夏は自分が許せないのだ。自分が油断したから、あの時もっと気を付けていれば……そんな風に考えていた矢先――千冬が言ってしまった。

 

「千冬姉、『モンドグロッソになんか出るんじゃなかった』とか言い出したんだぜ」

「たしかに言いたくもなるだろうけど……もしかして千冬さんってメンタル弱いのか?」

「……否定できないわねぇ…………昔もなんかあった気がするし」

「そういや、鈴は知っていたか……」

 

 千冬は強く見えるが、精神面ではかなり女性的である。いくら規格外のスペックを持っていようと、根本的な部分は変わらない。

 友人たちのおかげで緩和されているとはいえ――若干一夏に依存しているのだ。

 

「どうにかした方が良いのかなぁ……」

「中学生の考えることじゃないけどね…………しかし、事件ばっかで嫌ね……弾は大丈夫だったの?」

「あ、ああ――ミッションコンプリートだ」

「いやなんだそれ」

 

 テンパって変な言葉が出てきたが――弾としては自分が仮面ライダーになったなんて言えないのである。

 割と最近隠す理由もないからと、前に遊びに来た科学者夫婦(未入籍)が仮面ライダーだというのを初めて聞かされてびっくりしていたために、切り出しにくくなったのもあるが。

 

(言えるわけないよなぁ……色々な意味で)

 

 家族と友人に心配かけるわけにもいかず、そもそも忙しい人たちを自分のために煩わせたくない。

 そのすれ違いが――今後どのように影響するのかは誰も知らない。

 

「――あ、俺今日用事があるの忘れてたわ……悪いけど早退するから先生に言っておいてくれ!」

「そりゃいいけど……何かあったのか?」

「この前の事件のことで事情聴取。あと、蘭の検査に付き合うことになってんだ!」

 

 気絶していたため、一応検査することになったのだ。まあ異常はないので念のため。しかし家族は忙しいので自分が付き添いでいくことになった。弾は自称妹思いの兄なのである。届いているかは別として。

 

「じゃあな!」

「ああ、またな……」

「また明日ねー…………行ったわね」

「お、おう?」

「……あのさ、一夏――なんか隠してない?」

(ふぁっ!?)

 

 織斑一夏、最近頑張ってポーカーフェイスを習得しようとしているものの、うまくいっていない男。

 

「なんだか……他にも思い悩んでいるっていうか…………」

「ああ、そのことか」

 

 なんてことは無い。新たに手に入れてしまったモノについてだ。

 戦極ドライバーを使ってしまい――その後どうすればいいのか悩んでいる。ただそれだけ。

 

「なんだけどなあ……ホント、どうしよう」

「大丈夫? 水でも持ってこようか?」

「いやいい……あのさ、鈴…………前にISをもらえたらって話をしただろ?」

「うん……それがどうしたのよ」

「……もしも鈴がISをもらえたら、どうしたい?」

「どうしたいって……」

 

 鈴はふざけた質問なのか、とも考えたが――一夏がそんなことするわけないかと思い、ではなぜそんな質問をしたんだろうかと考える。

 冗談? 例え話なのか、それとも――

 

(マジなのか……千冬さんの弟で、開発者とも顔見知り……いや私も知り合いだけどさ)

 

 昔は人を認識しない人だったらしいが――自分の印象は色ボケ博士。巷で噂のドレスを纏った仮面ライダーと同一人物だとは夢にも思わなかったが……よく見れば、服のセンスとか同じである。

 と、関係ないことはカット。

 

(もしかして本当にISを貰ったんじゃないだろうか……一夏なら動かしても不思議じゃない気がする)

 

 間違っているんだが間違っていない。

 

(だとしたらちゃんと答えてあげた方が良いのかな……悩んでいる顔はしてほしくないし……うーん…………)

 

 いい考えは浮かばないが――自分の正直な気持ち。それを言葉にしよう。

 たぶん、それが答えだから。

 

「とりあえず――世界最強を目指す」

「なんで!?」

「だって――」

 

 ちょっと恥ずかしくて言えない。

 この人の姉に勝てれば――告白できるかもなんて……

 

(そりゃ、無理かなぁ……)

 

 でも、と前置きして――言葉をつけたす。

 

「結局何がしたいかなんて自分で決めることでしょ? あたしはさ、自分が思ったように――自分がやりたいようにやると思う。何かに縛られたりするのは嫌だし、強制されるなんてごめんよ。もちろん何をしてもいいってわけじゃないんだろうけど――それでも、自分が嫌なことするなんて違うでしょ?」

「そう、だよな……」

 

 嫌なことはしない――確かにそうである。

 では一夏にとってやりたいこととは?

 

「焦らなくてもいいんじゃない? それって今すぐに答えを出さなきゃいけないこと?」

「……そうだな、もう少しゆっくり考えてみる。焦って答えを出すよりかはよさそうだ」

「うん、よろしい」

 

 そう言ってにこりと笑った鈴の笑顔に一夏は――

 

「――――」

「どうしたの? あたしの顔に何かついてる?」

「あ、いや!? なんでもない!!」

「そう……ふふっ変な一夏」

 

 ――絶対言えない。思わず見惚れてしまったなんて……

 

(俺、疲れてんのかなぁ……)

 

 結局一夏はどこまで行っても鈍感であった。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 一方、弾はというと――

 

「本当に蘭は大丈夫なんですね?」

「だから大丈夫だって言っているじゃないかちみー」

「お兄、恥ずかしいからもうやめて」

 

 ――医者に何度も妹は無事なのか確認していた。

 

「ああもう! いいから帰るよ!」

「そりゃないぜマイシスター! 兄が妹の心配して何が悪い!!」

「限度があるわ限度が!! ……まあ、心配してくれてありがと」

「――ふぁっ!?」

「驚くことか!?」

 

 なんだかんだで仲のいい二人であった。

 とまあ、そんなこんなで帰宅するわけだが――

 

(しかい……アレがインベスか)

 

 思い出すのは、一夏の話に聞かされた怪物の名称。

 そして、その発生条件。

 

(……嫌な感触が残っちまった)

 

 もしかしたらアレは人だったのかもしれないなんて――そんな嫌な想像が頭をよぎる。

 違っていてほしいが……もしもあんなのがまた現れたとき、自分はどうするんだろうか?

 

(周りのみんなが危なかった時、俺はどうするんだ?)

 

 一度、その道を選んでしまえば――もう後戻りはできない。

 今ならまだ間に合う――そう考えても、逃げ出すなんて性に合わない。

 

「はぁ……俺も大概だなぁ」

「どうしたのお兄……なんか変だよ」

「いや、なんでもない」

 

 自分にとって何が大切なのか再確認しただけである。

 誰かに相談したいが――そうもいかない。

 

「よし! お参りにいくぞ!」

「なんで!?」

「不運なことがあった時は厄を落すもんなんだ!」

「いやそれは分かるけど今から!?」

「もちろんさ!!」

 

 そう言って、弾は走り出す。蘭も追いかけて――その神社、篠ノ之神社へと駆け出した。

 距離はそれほど離れていないが、小学校の学区が違うため、新年ぐらいにしか来たことが無い。

 

「しかし、ここも寂れたなぁ……いや、名前からしてなんとなく理由は分かるんだが」

「もう、いきなりすぎ……でも、やっぱりこの名前からしてそうなんだよね」

「だよなぁ……」

 

 空を見上げる。なんとなく、色ボケ博士の姿が浮かんだ気がした。二人にとって彼女の印象はカップルで食べに来ていた客である。

 と、そこで弾が余計なことも思い出した。

 

「そういえば、妹さんが一夏に旗立てられているって言ってたなぁ……」

「――お兄様、その話詳しく聞かせてもらえますか?」

「――――」

 

 口調が、お嬢様学校のものに変化した。兄に対してこの口調の時は――かなり不機嫌である。

 

「まさか、他にも幼馴染がいたなんて……うふふ」

「す、すまん一夏……」

 

 俺もわが身が可愛いんだ。だから、あとで追及させてくれ。どうせ妹は自分で聞けないから俺が聞く羽目になる。そんな未来を思い浮かべて、厄は俺の方なんじゃないかと思わなくもない弾であった。

 蘭の厄祓いに来たのに、なぜ自分なのだ。

 

「とりあえず、参拝でも――ッ」

「どうしたのお兄?」

 

 御神木の方から、嫌な気配がした。

 その感覚が――嫌でも自分の体に非日常的な要素が存在してしまっていることを認めさせてしまう。

 

(なんだよこの感覚――重いなんてもんじゃない、あそこに立っているのは、本当に人間なのか?)

「お兄? 人をじろじろ見るのは悪いよ」

「――あ、ああ……そうだな」

 

 すぐに、その男は去って行った――ただ、こちらを一瞥して。

 

「――――ああ、お前が昨日の――まあいい、俺も暇じゃないんでな」

 

 蘭には聞こえない声で、男は弾に向けてだけ何かを呟いた。意味は分からなかったが――心臓をわしづかみにされたような重苦しい感覚が弾を襲う。

 

「――ッ!?」

「お兄? お兄!? しっかりして!」

「ハッ――いったい、なにが……」

「それはこっちのセリフだよ……もう心配させないでよね」

「あ、ああ……」

 

 やっぱお祓いしてもらった方がいいのかなぁと、改めて強く思う弾であった。

 

 

 

 そして、すれ違った男……須郷猛は普通に町を歩いている。

 

「織斑千冬はすぐに動けないということで、ソッコーで戻ってきたってのに、収穫なしか」

 

 篠ノ之神社の御神木を調べてみたが、亜種の木だとしても静かすぎる。内臓エネルギーもほとんどないし……これははずれだったと、猛は少しばかりイラついていた。

 

「ハァ……なんか面白いことねぇかなぁ――お」

 

 下校中の、男女が見える……カップルかとも思ったが――あれは……

 

「織斑、一夏……」

 

 新たな仮面ライダーの一人。ニタリと、笑みを浮かべて――接触を試みる。

 ミランダ曰く、研究してみたい存在……もしかしたら、この平穏ともいえないが大きな変化が起きない世界を動かす一手になるかもしれない。

 

「――ッ!」

「だけどそうは問屋が卸さないってね」

「なっ!? お前は――!?」

 

 がしり、そんな風に腕を掴まれた。力が少しばかり抜けていく感覚がすることから――対インベス対策もかなり強化されているらしい。

 

「蜂矢、英……」

「久しぶりだね、須郷猛…………何年ぶりかな」

「それはこっちのセリフだぜ……決着つけるか?」

「望むところって言いたけど、流石にここじゃ厳しい」

 

 人ごみのなか。色々な意味で面倒な場所である。

 英にとっても、猛にとっても。

 

「たしかにな、俺が勝ったとしてもその後が面倒すぎる――で、どうする?」

「うーん……どうしたい?」

「――そうだなぁ……何か穏便な形で勝負と行くか?」

「そうだね……こっちとしても、それは望むところだ――ならアレで行こう」

「……面白れぇ! 受けて立つぜ!」

 

 英が指さしたのは――大食い料理の店。巨大なボリュームを食べきれるか、というタイプのやつである。そして、どちらが先に食べきれるのかで勝負を決めるというのだ。

 

「オーバーロード相手に、ただの人間が勝てるわけがねぇ」

「だとしても――僕は負けないよ」

「減らず口を……勝つのは、俺だ!!

 

 ――30分後――

 

「うぷ、もう無理」

「あれだけ豪語しておいて……ほとんど食べてないじゃないか」

「オーバーロードは……人間の食べ物食べれる身体じゃねぇんだよ……人間の食べ物なんて味がしないんだ…………食いたいとも思わねぇし…………味が無いのを食べ続けるのは正直拷問だぞ」

「ああうん、だったらなんで乗ったんだよ」

 

 ……コイツ、根本的にダメなんじゃないかと…………英は、なんでオーバーロードになれたんだろうと疑問に思ったが……きっと一生分からないんだろう。

 さて――この後どうするかなんて考えるものの……

 

「本当にどうしよっかねぇ」

 




再びであった英と猛。しかし――いまいちシリアスにならない。

色々と、この作品の着地点が見えていないような気もしますが……今のところ大丈夫です。



ゲージ……ようやく、半分…………ぐはっ
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