「うぷ……まだだ、まだ負けちゃいねぇ」
「ああうん、わかったから……(帰りたいなぁ)」
結局、コイツ食べきれなくてアウトだったわけだけど……どうしたものか。
猛はグロッキーだし、放っておくわけにもいかないけど帰りたいし……
僕としては……うーん――捕獲?
(いや、それはそれでめんどい…………本当にどうするべきでしょうか、教えて教えて束さん)
メール送信。受信。
『知るか。いいから人目につかないところでフルボッコしろよ…………あと昨日のことでお話があります』
(やべぇ……まだ怒ってる……人目につかないところでフルボッコとか。うん、言うと思った…………じゃあ信二)
実は昨夜、興奮した束をなだめるためにやり過ぎてしまい……帰るに帰れないため地上に降りてきただけだったり。とりあえず信二にメールを書こう。
送信――ちょっと時間たってから受信。その間猛は胃袋を活性化させようとしていた。
『何でもいいから早く帰ってきてくれ! 一人じゃ抑えきれないんだ!!』
(ほかのクルーなにしてんだ……いや、僕が帰ればいいんだろうけど)
一抹の不安を覚えつつ……次にジョニーにメールを送る。
猛は胃液が逆流を初めて――苦しみだした。
ほどなくして、返信が来た。
『HAHAHA! スマン…………今ミシェルが――しまっみつか――ぼすけて』
(何があった!?)
本当に何があったんだ!? かなり不安だが……今すぐ帰るわけにはいかない。いや、そのオーバーロードが腹抱えて苦しんでいるけど……
「に、煮卵はダメなんだ…………おぐっ」
「へーそーなんだー」
至極どうでもいい。
ええい、次は……ミシェルにダメもとで送信――受信。
「はやっ!?」
「?」
「いや、こっちの話……」
メールを開くと……
『ごめん、取り込み中――うふ』
(やばい、なんか怖い)
いったい何があったんだ…………
次に相談するべきは……かおりさんかな?
メールを書いていると――猛が口から緑色の液体を垂らし始めているのが見えた。とりあえず、一般人にグロシーンをお見せするわけにはいかない。口から卵を産むとか怖いわ。
「俺は……宇宙人、か」
「似たようなもんだろ、人間やめてんだから」
「だとしても……卵なんて産むわけないわッうぷ」
「はいはい、向こうにいこうねー」
なんかその液体怖いんだけど。どうして地面溶けてんだよ……
あ、受信。
『被害が出ないところで戦ってください』
「ですよねー」
とりあえず、いつもの海岸でいいか?
その方に誘導すると……受信。あれ? 送ってないんだけど……って、百花さん? なんだろう嫌な予感しかしないんだけど。
『英さん、なんでわたくしには送ってくれないんですか!? かおりには送ったくせにわたくし、わたくしには――ええい、帰ってきたらひん剥いてラッピングして――メイド服で……あら、鼻血が…………まあいいですわ! こちらの用意は既にできています! メイドが女主人を調教するというプレイでどうでしょうか?』
「――うわぁ」
案の定。色々な意味で終っているなぁ……っていうかいい加減諦めてください。
『ならせめて、跡継ぎ産むのだけ手伝ってください』
「宇宙空間から心を読んだ!?」
生々しくて怖いし……お見合いでもセッティングして――いや、やめておこう。暴走でもされたらかなわない。
「ぐぬぬ……おぶえ」
「きたねぇ……っていうかなんで地面が溶けてんだよ」
「俺の胃袋を、舐めるな」
「しゃべるなまき散らすなシャキッとしろ」
あー……面倒くさすぎる。
とりあえず、いつもの海岸――そこで決着をつけるとしよう。
すでにあたりは暗くなっており、僕らのほかには誰もいない……片方は、グロッキー。それに対する者は……気だるげ。
「お前――やる気あるのか」
「ねえよ……っていうか君に言われたくない…………こっちはどうやって束の機嫌なおすかとか、変態をどう処理するのかとかで頭いっぱいなんだけど」
「……苦労してるんだな」
「君も苦労する原因の一つだけどね……仕方がない、ちゃっちゃっと終わらせよう」
「流石に――作業ゲームみたいな言い方はむかつくんだよッ!!」
猛は吠え――その姿を変化させる。以前とは違い、騎士の様な鎧をまとったオーバーロードに。黒がベースだったのは同じだが……体の各部にラインが存在し、紫色に淡い光を放っている。
【シルバーアームズ! 白銀ニューステージ!】
対する僕は……まあ普段通りシルバーアームズ。
っていうか、ノロシ使いすぎると負担が大きいし……一応、ヤエザクラタイフーンは持ってきているからなんとかなるかなぁ……なんて。
「舐めた真似を――オラぁ!!」
「吐いてたわりには――いい攻撃だね!」
ガキンッ――拳と、杖がぶつかり合い激しい金属音があたりに響く。お互い、驚愕するけど――以前より技のキレが上がってる。拳も大ぶりじゃなくて、狙いが正確だな……
「よっ!」
「チッ――通常アームズのくせになんてパワーだ……」
「そりゃどうも!」
「――ハア!!」
3年前のモンドグロッソの時以来、シルバーアームズはその力を増した。
おそらくは僕が成長したことで、シルバーアームズもより大きな力を引き出せるようになったんだろう……元々、強力な力を有していたのは分かっていたし。
「でも――流石に君相手は厳しいか」
「これでも――喰らえ!!」
「なっ」
口らしき場所から――紫色の炎が吹きあげてッ!?
「ホント化け物染みてるよ!!」
「そりゃ化け物だからなッ」
「なら――我に秘策あり!」
シルバーアームズがその力を増したことで新たに使えるようになったアームズ、初お披露目と行こうじゃないか!!
【エナジーフルーツ!】
取り出したのは、四種のエナジーロックシードの果実が紋所のように描かれた印籠型のロックシード。レモン、チェリー、ピーチ、メロン、それぞれの力を抽出し構築の力で整えたジンバーアームズ用アップグレードロックシード。
スイッチを押すことで、接続用端子がスライドして出現――それをフェイスプレートの位置に取り付ける。前々から考えてはいたのだ。直接戦極ドライバーに接続するアップグレードアイテムを。
ブレードを下ろすと――シルバーアームズは飛び上がり、空中に開かれた四つのクラックから飛び出した鎧と混ざり合い、虹色に輝きながら再び装着された。
【ミックス! ジンバァア! エナジィイ!! ヒカエオロー!!】
手に持っているのは変わらずに蒼銀杖。しかし、その腰に装着されているのは無双セイバーとソニックアロー。その二つ。
ジンバーラングは四枚それぞれが違う模様をしており――レモン、チェリー、ピーチ、メロンの力を宿している。
「エナジーアームズを……4つも合成しただと!?」
「生憎と……僕も強くなるために前に進んでるんだ…………さあ、いくぜ」
「――いいだろう、こちらも本気で行かせてもらう!!」
加速――ジンバーチェリーの加速力で、敵の背後に――しかし、その後の攻撃を防ぐかのように黒い霧が発生する。
「ぐっ!?」
「俺だってなぁ……負けっぱなしじゃねえ!!」
「ならッ!!」
知覚能力の解放。ISのハイパーセンサーをも上回る知覚能力――距離では負けるが、拾う情報量の多さで上回っている――で猛の体の動きから次の攻撃を予測。周囲のエネルギー濃度の感知、グラフ化、さらに加速能力で処理能力を高速化。ジンバーメロンと同様、筋力の超強化、防御力の超強化を解放。
制御のためにオールマイティなジンバーレモンを組み込めなければまともに動けなかっただろう――だが、成功した。だからこそ――
「はああ!!」
「何ッ!?」
――届く!
猛は、僕を殴り飛ばそうとその拳を突きつけていたが――当たったのは蒼銀杖だけ。
僕自身はまるで、変わり身の術のように――猛の首筋に無双セイバーを当てていた。
「――フィニッ――――あがっ!?」
「俺はお前に何度もやられた――だからこそ」
ガキンッ――そんな音が響いたが、とても嫌な感触が腕を伝わる。横目で見ると――無双セイバーはぽきりと、折れて――拳が、迫る。
「硬くなることだけに、全力を注いだのだ!!」
「――アガッ!?」
地面を何度も転がり、砂が巻き上がる――くそっ! 想定以上のパワーアップ……いや、スピードは上がっていないことを見ると……本当に硬くなるために全力を注いだのか…………厄介だな……僕が万能を目指したのなら、アイツは一点特化……どうにかして弱点を見つけないと勝てないかも。
「ハアアア……フン!」
「――――はば!?」
空間が、割れて――体が弾き飛ばされる。猛の腕からも血が噴き出ていたが……なんだあの技は!?
「お前を倒すためなら腕の一本や二本、軽いものだ」
「ぐぅ……ならッ!!」
ソニックアローを構えて――猛が足を振り上げて自分の身を隠す。砂埃――
「俺の勝ちだ――あぐあ!?」
「だから知覚強化してんだって……お前バカだろ」
いや、ジンバーチェリーの能力は知らないんだっけか? うーん……まあいいや。姿を隠したところで、あらゆる情報から位置はすぐに割り出せる。
まあ常に解放していると頭に負担がかかり過ぎるんだけど……
「くそ……ならばこれなら!」
猛が取り出したのは――青色の薔薇を模したロックシード。いや、ビークルか?
「ブルーローズブレイカー……」
開錠――そして巨大化。ロックビークルになったかと思えば、すぐに変形してハンマーに変化。
「これが、俺の作った新たな力……どうだ、声も出まい」
「…………ああうん、そうだね」
とりあえずヤエザクラタイフーンを開錠……斬馬刀形態で手に持つ。
あちゃ……ビークルを武器に変形させるって発想、被ったのね。
「――なんだと」
「まあエネルギー内臓量とか、回路の効率化とか、かさばらないようにするためとか、色々な面で考えたらこうなるんだよなぁ……」
「……?」
「理解しないで作ったのかい」
どうしよう……なんかいたたまれない。っていうか、なんでこんな変な空気になるんだ。
「――いいだろう……お互いの技をぶつけあうとしようか」
「そうなるんかねぇ……じゃあ、遠慮なく――」
ヤエザクラタイフーンに、スイカロックシードを取り付けて……エネルギーをチャージさせる。
【スイカチャージ!】
対する猛も、同様に……ザクロロックシードを取り付けて、準備を完了させた。
【ザクロチャージ!】
お互い、エネルギー容量の大きいロックシード……その力を、この一撃に――
「はあああああ!!」
「があああああ!!」
――放つ!
二人が動き出した瞬間だった。二つのエネルギーはぶつかり合い、爆音と共に――二人の体を吹き飛ばした。
そして、あたりが凍り、僕の体は空中でキャッチされ、猛も水中から出てきた何かに捕えられる。
「「――え」」
なんか、水中から潜水艦――その上に、氷の鎧を着こんだオーバーロードが立っており、おそらく奴があたりを凍らせた――が浮上した。前に見たクラーケンインベスもいるな……アイツが猛を捕まえたのか。
そして、中からなんか小さい女の人が現れて……あ、猛をしばいた。それで、中に連れ去り…………すぐに水の中に消える。驚異のステルス性能だな……感覚強化してもジャミングされて追えないぞ…………たぶん、亡国機業の仲間なんだろうけど……そうか、アイツら水中を移動しているのか……たぶんヘルヘイムの森も使っているな。
さて……現実逃避はやめよう。
「束さん、お久しぶりです」
「うん、久しぶりー」
ああすでに変身完了してるのね……しかもIS同時使用とか始めて見たよ……完成したんだ、同時使用のためのプログラム。
「色々手間取ったけどね……で、何か言うことはない?」
「……鳴くのも可愛いですよ」
「そっかぁ……うん束さんは可愛いのは当然だよ――でもね、英も可愛くなれるよ」
「――――やめて女装は、女装は嫌だぁああああ!!」
「ええいおとなしくしろ。すでにホテルは取ってある!」
「いきなり何いって――そうだ! フロン! フロン! 通信に応答してくれ! 助けて――」
『――ごめん、あと私は弟が欲しい』
「嫌アアアア!? 今そんな状況じゃないってわかってますよね!」
「安心して、流石に作らないから――でも、ももちゃんは作る気満々だったけどね」
「それこそ勘弁して! っていうか浮気はするつもりないです!」
「うん、したら殺すから」
やべえ……声がマジだ。
「だから――今回は英のファッションショーで手打ちにする。さすがに皆の前だとかわいそうだから……観客は束さんとももちゃんだけだよ」
「だとしても恐ろしすぎます――あ、まって連れて行かないで――――うぼわああああ!?」
その後のことは語るのもはばかれる……ただ、大事なものをまた一つ、失ったんだ――
こんなオチでいいんだろうか。
数年経ったので人間関係が若干変化しとる。
しかし……色々とアウトじゃないんだろうか。
ジンバーラングを見て思っていたことをついにできて良かったかな……
印籠型なのはもちろんモチーフはアレ。
残りのゲージ……あとはトドメだけや…………E-3攻略に、旗艦であるアイツを倒すだけなんや…………だから、お願いだから……奴に集中砲火してくれ……頼むから…………