あと数話で原作に入れるよ。やったねちーちゃん!
ついに12月に入っちまった……ああ、もうすぐ映画が始まってしまう。
専用機の開発自体はそこまで難しいことではなかったらしい。たまにデータを取りつつ最適な形に仕上げていくそうだが、切羽詰った様子はない。その間、俺は料理作ったりIS学園に入学させられるため参考書の内容を勉強していたのだが……ちなみに、講師はクロニクルさん。
「なかなか物覚えが悪いですね……」
「うう……すいません」
常に目を閉じているが――手に持った杖が彼女のISらしく、その補助もあって普通に見えているそうだ。詳しい理由は聞かない方がいいんだろうけど……やっぱ気になるよなぁ……
しかし、ISというのはこんなにも分かり難かっただろうか? 乗り込んだ時は普通に理解できていたけど。
「それはIS側からのアシストがあったからです。乗っている間だけの恩恵ですので、自力で知識を習得することも必要なのです」
「そうなのか……やっぱすごいんだな、ISって」
「束様も、機能の全てを把握しているわけではないとおっしゃっていましたが」
「自己進化だっけか? 最後コロニー化しそうなイメージがよぎるんだけど」
「自己修復もある程度可能ですが、自己増殖はしませんよ」
そうだよな……そこまでしたら色々と怖いよな。
「まあどちらも女性の方が最適という共通点はありますけど……本当になんであなたは動かせるんですか?」
「俺の方が知りたいよ……まったく」
「お二方なら正確なことがわかってなくても大まかな原因は心当たりありそうなんですが……よほどの機密でしょうね。スレイプニルでも動かせるということしか話題に出しませんでした」
「そっか……まあそれがわかって他にも動かせる人が出てくれば俺ももうちょっと自由にできるんだろうけど、無理だよな?」
「ええ、出来たとしてもしばらく先でしょう」
だよなぁ――ああ、こんなんだから鈴にも「バカ」の一言を貰うんだ。いや、やっぱ世界中でニュースになっていたらしく、すぐにメールが来た。うん、わかっているんだ。いくら俺でも傷つくからやめてほしい。
弾や数馬も最初は羨ましがっていたんだが――いきなり解剖させてくれって言われたことを伝えたら謝られた。
「あー……専門用語多すぎる…………」
結局のところ、覚えられないのはそこなんだよな。
色々と専門用語が多くて覚えにくい……っていうかどことなく中二くさいんだけど?
「……」
「クロニクルさん、なんで顔をそらすんだ」
「――聞きたいですか?」
「え」
「聞きたいと言いますか?」
「は、はい」
「…………束様は当時、中学二年生でした」
「そういえば――そうか、そうだった……」
ISが完成したとき――束さんは中二だったんだ。
知りたくなかったなぁ……そんな事実。
「たまに頭を悶える姿をお見かけします」
「そうだよな――千冬姉はそんなことしてないけど……いまだに魔法少女の格好することがあるし…………ハァ」
年を考えてほしい。もうすぐ24だぞ24。千冬姉が仕事で忙しいらしく、出かけていてよかった。近くにいたら頭叩かれてる。
それにしても、束さんがIS作ってから10年か……長かったような短かったような…………いや、完成した当初のことあまり覚えていないんだよな。なんでだろう?
というか、俺が束さんと出会ったのってその後だったような気もするし……うーん?
「まあ考えていても仕方がないか」
記憶がおぼろげでも困らないんだし。うん。
大切なのは未来だよな。
「では、その未来のために――勉強をしてください」
「あはは――ハァ」
結局、俺はドロドロになるんじゃないかってぐらいに辛い時間を過ごすこととなった。
ああ――もう嫌。
◇◇◇◇◇
そんなこんなで数日後。知識も詰め込まれまくったせいで――頭痛い。
まあ息抜きも必要だろうと、英さんに実験室に呼ばれた俺は……正直嫌な予感が止まらない。
なんかブルーシートをかぶせられた大きな塊があるんですけど……あと、ISスーツを着させられた時点でお察しなんですけど。
「ふっふっふ! いっくん、よく来たね」
「そりゃ呼ばれましたからね……束さん、なんか顔が怖いですよ」
「そりゃぁ! 徹夜、続き、だからさ!! 終わったら寝て起きて英を食べ――あべし!?」
「はい僕怪我人。自重しろ」
「うう……我慢よ束。我慢するのよ」
やべぇ……束さんのキャラがぶれてる。どんだけ寝てないんだ――あ、英さんに寝かせられた……チョップ?
クロニクルさんが運んで――しばらくして、戻ってきた。
「処置終わりました」
「ご苦労。束が暴走すると時間かかるし――それじゃあ一夏君、これをご覧あれ!」
ブルーシートが取り払われ――そこに現れたのは、白色の機体。まだ武骨な鉄の塊といった印象があるが――なぜだか、ひきつけられる。
「やっぱ、魅入られるか……それもそうなんだろうな」
「――あ、すいません……なんか言葉が出てこなくて」
「まあいいよ。わかってたことだから」
わかってた? なんだろう、何か理由とかあるんだろうけど――これからすることに集中した方が良いと、俺の直感がささやいている。
「分かっていると思うけど――これから一夏君にはISを動かしてもらう」
「やっぱり、ですか……」
「ああ――クロエ、準備を始めてくれ」
「わかりました――それでは、お乗り下さい」
「わかった――」
身体を預けるように、ISに乗り込む――そのなじみ方は、量産機の比ではない。
(スゲェ――ライダーシステムとはくらべものにならないほど、身体に合わさる。これがIS……)
正直、恐ろしくなるぐらいのフィット感。それに、パワーが何倍にも上がった感覚がする。五感も強化されてゆくのがわかるが――あまり気にし過ぎると危ない。
「……ふー」
「お、いい反応だな……僕は乗れないからわからないけど、やっぱり色々と変わるだろ」
「はい――これはたしかに、デカい気になっちまいますよね」
「乗っている間はメンタルの保護も働くから冷静でいられるけど、それも万能じゃないから意識してろよ。無自覚に自分そのものが強いって誤解する人も多いから」
たしかに、これは自分の力そのものが強くなったと錯覚してしまうほどだ。ライダーの場合は、上から強化していると自覚しやすかったけど、これはその感覚が挟まりにくい。
その後、英さんに言われたとおりに何歩か進み、宙に浮いたり武装を取り出したりしている。
「近接ブレードと……盾だけ?」
「一夏君ならそっちの方が使いやすいだろ」
「そりゃまぁ…………」
「あと、スイカと同じ要領で動かしてもいけるんじゃないか?」
「確かにここ数日のデータ取りはそんなイメージでしたね……飛ぶのに苦労しましたが」
「そこは大分勝手が違うからなぁ……体を動かすのは良いんだけどね」
そのまましばらく動かしつつ、データを打ち込まれる。どうも俺の体に合わせて最適化をしなければいけないらしい。
そして――ついに設定が完了した。
「お、おお!?」
光に包まれ、ISがその姿を変えてゆく。鉄の塊だった鎧は、洗練された形へ。より白を際立たせた外観。ブレードも重厚に。盾は中央にエネルギーラインが走っている。
「これが俺のIS……」
「第三世代型にして、一部に第四世代武装の試作品を搭載したIS、白式。暮桜の後継機だよ」
「……これ、千冬姉の……」
ブレードの名前は、雪片弐型。そっか……千冬姉のISの……ただ、最近はアレな使われ方しているのがな。
それでも――素直にうれしいと思う。尊敬する姉の刀の名前を受け継いだことに。
盾の方は……なんだこれ?
「白夜。エネルギー系武器だったら8割吸収、実弾とかでも衝撃を吸収してエネルギーに変えられるんだぞ」
「色々と性能高すぎませんか?」
「仕方がないじゃないか。こうでもしないと零落白夜の燃費が悪すぎるんだし」
え、零落白夜? それって千冬姉の単一能力じゃ……
「白式には最初から搭載されているよ」
「マジで!? ――うお!? マジだ!?」
「知っていると思うけど、使っている間ずっと消費し続けるISの中でも最も燃費の悪い能力だから」
「し、知りたくなかったなぁ……」
「だからメロンディフェンダーのデータを基に作ったその盾もつけたんじゃないか。後付武装がほとんどつめなかったところに何とかいけたんだぞ。まあそのおかげで他の武装はほとんどつけられないけど」
「うわぁ……見事に近接特化ですね」
「そうなんだよね。IS用の苦無ぐらいならつけれるけどいる?」
「……考えておきます」
銃よりはマシってぐらいだろうな……俺、やっぱ銃は苦手だし。
最近はそこそこ当たるようになってきたけど――まあ俺以上に才能のない人もいてびっくりしたけど。そういえば、今日は来ているのに見かけないな……のほほんさん。それにしてもなんで明後日の方向に弾が飛ぶんだ?
「なんか変なこと考えていないか?」
「いえまったく」
「……まあいいや。とりあえず、実戦で経験値つめ。明日には――お前の入試だから」
「え」
「対戦相手は――喜べ、現役の日本代表候補生だ」
「それって簪ですよね!? さすがに搭乗時間が違いすぎますよ!」
「大丈夫大丈夫。変身しているときと同じようにやれ。ただ、簪ちゃんのISはマルチロックオンでミサイルによるマップ攻撃もできるから――死ぬなよ」
「不安にさせるような一言!?」
「安心してください。絶対防御がありますから――精神の方は知りませんが」
「安心できるかぁああああ!?」
その後、簪と戦うことになったわけだが――うん、初乗りで勝てるわけもなく。油断とか妥協とか一切しなかった簪に負けるのであった。
いや、零落白夜とかも使ったよ? 盾で防いでエネルギー回復もしたよ? なんとか飛べるようになったよ? でもね――ミサイル相手って白式相性悪いんだ。近づけても薙刀を振り回して距離を離されるし……
何よりもつらかったのは、申し訳なさそうな顔をされたことである……
「いやぁ……やっぱり初戦はフルボッコに限るな。その方が得るものが多い」
「英さん、いつからそんなに黒くなったんですか……はぁ」
確かに得るものは多かった。
エネルギーの減り方がヤバかったので、零落白夜はここぞというとき以外は使わないようにすること。ミサイルや実弾相手なら雪片弐型を展開しない方が良いこと。あと、盾はやっぱ武器だな。うん。
唯一意表をつけたのがシールドバッシュだったからなぁ……
「それ、なんかおかしくね?」
「俺はこれで今まで戦ってこれました」
「……二次移行が楽しみだなぁ…………」
◇◇◇◇◇
そして、次の日。IS学園にて。
(勉強しておいてよかったが――入学したらこれ以上に大変なんだろうな)
一人ぼっちの受験。まあ結果はどうあっても合格なんだが、どうせなら本来の合格ラインに入りたい。
幸いにも覚えている部分が多いので何とかなっているが――問題はこの次である。
(実技があるんだよな…………筆記はIS関連のことも詰め込まれたし、受験勉強もちゃんとやっていたからいいとして――問題はやっぱ実技。ほとんど動かしていないんだっての……)
っていうか試験官と戦うらしいけど――いったい誰なんだろうか?
まさか千冬姉!? ……なわけないか。第一千冬姉が来るわけないだろ、IS学園に関係ないんだし……いや、まてよ……なんか一人心当たりがあるぞ。こういう場面で試験官とかやらされそうな人。
(……勝てる可能性があるなら、全力でぶつかろう)
俺の予想通りの人なら、勝てるかもしれない。
――1時間後、試験が終わってから休憩をはさみ、俺はISスーツを着てアリーナに来ていた。IS学園に現在生徒はおらず、みな里帰りか入学準備などをしているらしい。うん、観客がいなくて助かった。
「おまたせしましたー!」
「……やっぱりか」
現れたのは、濃い緑色の機体を纏った眼鏡をかけ、一部の発育が大変よろしい――海を挟んだ国で、ツインテールの少女が突然不機嫌になった――うん、考えないようにしよう。
まあ――現れたのは山田真耶さん。やっぱりIS学園の教師になっていたのね。
「あはは……お久しぶりです。一夏君……あ、私の教え子になるんですし、織斑君の方が良いですよね」
「そうですね――お久しぶりです。やっぱり真耶さんが試験官だったんですね……」
「私にとってもいい経験になるだろうと言われまして……それにしても、本当に織斑君が生徒になるなんて……」
「言わないでください。俺、もう二度と不用意に物を触りません」
いい加減にそのネタきついんです。
「一夏君のIS……なんだか白騎士みたいですね」
「暮桜の後継機らしいですけど。そうですね……刀ですけど、盾持ってますし騎士に見えますよね」
まあ、白騎士も千冬姉のISだけど……真耶さん、天然だし気づいていないんだろうなぁ……
「真耶さん――あ、俺も山田先生って呼んだ方がいいですよね――山田先生のISは?」
「これは、フランスはデュノア社の第二世代型IS、ラファール・リヴァイヴです。量産機では打鉄と並んで高い評価を得ているんですよ」
「へぇ……」
「それでは――始めますけど、準備はいいですか?」
「ええ、大丈夫です」
それじゃあ――どうせなら、勝つつもりで挑んでみますか!
ところで前回の感想、みなさんおにぎりトークばかり返してきましたね。
これが食にうるさい日本人か……すまねぇ、俺、半分日本人じゃないんだ。
でもあえて言おう――とり五目が好きだと!