駆け足ですが、お付き合いください。
今回出てないけど、千冬さんのキャラ崩壊をいい加減タグに追加するべきか悩む。
久しぶりの五反田食堂でも食事は、やはり満足のいく旨さだった。
ああ、いつか俺もこのぐらいの境地にたどり着きたいものだ。
「……一夏ってさぁ、将来料理人にでもなれば良かったんじゃないか? イケメンシェフのレストランとか繁盛するぞ」
「? 別にイケメンじゃないし、主夫でもないって。よく言われるけど」
「おいこら鏡みてから言え。そして主夫じゃなくてシェフ!」
ああ、そっちか……いかんいかん。言われ過ぎて主夫かと思っていた。しかしシェフか……いや、別に料理を職業にするつもりはあんまりないんだよなぁ……得意とは言わないけど、それなりに腕は確かだと自負しているけど。
「お前、普通に店を持てるレベルだって自覚ないのかよ」
「そうか? 千冬姉の舌が肥えてきたから頑張ったけどそこまでかなぁ……」
「千冬さんって、国家代表だからいいレストランとか行きまくってんだろうが……それに合わせるってお前」
なんだろう? 弾が絶句しているけど……そこまでおかしんだろうか?
しかし、もうこんな風に普通の日常を謳歌できるのも――あれ? 何だろう、そもそも普通の日常を数年前から送っている気がしない。
「……んー?」
「しかし、お前も元気そうで良かったよ……一時期は酷かったからな」
「うっ……弾、そのことはやめてくれよ」
「いーや、いじるね! だってお前があんな風に無気力になっていたのって後にも先にもあの時ぐらいだろ。そんなに鈴がいなくなって寂しかったのか?」
「そりゃ、友達が引っ越したら寂しいだろうが」
「……お前、いつか刺されるぞ」
「なぜに!?」
「はぁ……まあ、それも鈴から電話がかかってきたとたんに治ったけどな」
「もうその話は止そうぜ」
なんだか恥ずかしいし。
「いやぁ、俺としては一夏も成長したんだなぁって思うぜ。そういう風に恥ずかしがるなんて」
「まったく……そういえば、今日は蘭を見ないけどなんかあったのか?」
「ああ、生徒会の仕事だと思うぜ。アレでも有名私立女子高の生徒会長だからな」
「そういえばそうだったな。定食屋の娘とは思えないが……あそこごきげんようとか言っているし」
「それについては俺も同感だが、なぜお前が知っている」
「いや、先月ぐらいに近くを通った時になんか話しかけられて」
「これか、これがモテスリムなのか!? スリムだけは嫌なんだよ! モテを寄越せ!」
そんなこと言われても……なんか要領を得なかったし、目が血走っていたから逃げちゃったけど。
「…………血走ってた?」
「ああ、ものすごく怖かったぞ……撒いたけど、次見つかったらヤバいな」
「……お前がそこまで言うとは、なんかかわいそうに思えてきたわ」
「オイ」
親友ならもっと心配してほしい。
しかし、弾は携帯を確認してなんかそわそわしている……
「弾、心配なら迎えに行くか?」
「ううぇい!? HEY一夏! 一体なんの話なんだよBOY」
「素直に心配なら心配と言えよ……いくらなんでも、遅いの心配してんだろ」
「……ハァ、そうだよ。まったく無駄に勘が良いんだよお前は」
「いや、誰がみてもわかるって」
時計をちらちらみて、蘭の帰りが遅いのを心配しているのなんてお前とそこそこの突き合いがあればすぐに分かる。だから、行くぞ。
「って一夏も行くのか?」
「乗り掛かった舟だし、家に帰っても暇だしな。マスコミがまたいたら洒落にならないし」
「夜の方が危なくないか?」
「流石に夜に乗り込むことはしないだろ。近所迷惑になるから逆に批判受けるだろ」
住宅街は夜の方が人が多い。
「まあそうなのか?」
「ISを使う相手ならこれも使っていいって言われた」
「……おい、ISかそれ?」
「ああ」
「一般人にそんなモノ見せるな!!」
怒られた。いや、大丈夫だって。普通のアクセサリーに……見えるか?
「見えねぇよ。なんでガントレットなんだよ」
「だよなぁ……」
◇◇◇◇◇
「え、もう帰った?」
「はい。五反田さんはもう既におかえりになられましたよ?」
弾が下校中の蘭のクラスメイト――前に会ったことがあるらしい――に話を聞いたところ、蘭は既に帰っているとの話だった。
しかし、俺たちは蘭の下校ルートを通ってきたし、蘭は寄り道する性格じゃない。
「いったいどうしたんだよ……」
「なんだか嫌な予感がする…………一夏、悪いけど手分けして探して――」
その時、弾の携帯に着信が入った。蘭か、と思ったけど――なぜだ、この重苦しい嫌な予感は。
まるで――鈴がさらわれたときの様な?
「――ッ」
「もしもし――」
弾が周囲にも聞こえるように設定をいじって電話に出れば――そこから聞こえたのは、知らない誰かの声。
『フフフ、だーれだ』
「――オイ、テメェ……」
弾は誰なのか心当たりがあったのか、酷く焦った顔になる。一体どうしたんだ――だけど、この感覚が確かならば蘭の身は……
『安心しろ。妹にはまだ手を出していない……まだ、ダケどな』
「……まだ懲りてなかったのかよ」
『苦労したんだぜ――お前がどこのだれか調べるのかはな……斬月もいたから特定は難しかったが――五反田弾君よぉ……町はずれの廃工場。警察に言ったらどうなるかわかってんだろうな?』
「ぐっ――いいだろう、行ってやるよ」
『そうだ――待ってるぜ』
それだけで通話は切れて――あたりに静寂が戻る。
「すまねぇ一夏……俺はこれから蘭を助けに行ってくる」
「何があったのかとか詳しくは聞かない――でも、俺も行く」
「なっ!? 危険だぞ!!」
「分かってる。でも、蘭が危ないんだろ? だったら一人でも戦力は多い方が良い」
「だけど――お前を巻き込んだら千冬さんに申し訳がないし……」
「気にすんなよ。友達だろ。それに――俺だって戦えるよ」
「……ISは使えるのか?」
「あー……IS相手なら使用してもいいんだろうけど、不良相手だとなぁ……まあ、なんとかなるだろ。銃弾ぐらいなら避けられると思う」
「お前はどんな訓練を……はぁ、でも俺一人で行かないといけないんだが」
「言ってなかったぞ?」
「は?」
「いや、警察には言うなって言っていたけど……一人でこいとは言っていなかった」
「……そういえば…………」
「だから、俺も行く。それにあそこは一度喧嘩したことある場所だから慣れてるぞ」
実際はガチの戦闘だけど。
「……お前が喧嘩とか――いや、むしろらしいのか。なんかあっただろ」
「まあそれなりに――で、どうする?」
「仕方がねぇ――後悔すんなよ!」
「上等!!」
待ってろよ――蘭!
一度行ったことがある上に、体力もかなり上がった俺たちはすぐに廃工場にたどり着いた。しかし、弾も凄い体力だな……なぜだ?
でもそれを言及するのは後回し。今は……
「オイオイ、一人でこいって言っただろうが……」
「言ってねえよ、警察に言うなって言っただけだろ」
「……そうだっけか? サブ、どうだっけか――手下の男が耳打ちする――ああ、そうかそりゃ俺が悪かった……だが、二人だけで良いのかよ」
……目の前の下種野郎を殴り飛ばすだけだ。
蘭は猿轡をかまされ、目に涙を浮かべて男の後方にいる。どうやら鉄骨か何かに縛られてるようだ。
男の周囲には似たような下種な表情を浮かべたやつが数人。
「へへ、やっちまっていいんですよね?」
「まあまて――アレを使おう。この人数でアイツに勝てないのは先刻承知だからな――さあ、出て来い!」
男たちの手には――ロックシード!? しかも、前に写真だけ見せてもらったドライフルーツ系!?
ヤバい――っていうか町の不良がなんでロックシードをッ!?
クラックが次々と開き――そこから出てくるのは、おどろおどろしい色をしたインベスたち。形はコウモリインベスとかシカインベスとか上級インベスだけど……おそらく変異種。
「そういや、密売人が麻薬みたいな感じで売っているって英さん言ってたっけ」
「……そっか、一夏は詳しいんだったな」
「ああ――こりゃマズイぞ」
仕方がねぇ――ばれちまうけど、ドライバーを装着して――装着音が二重に聞こえた。
「「ん?」」
みると、弾の腰にも戦極ドライバーが――ええ!?
「なんで弾が戦極ドライバー持ってんだよ!?」
「いやお前こそなんで――っていうかこれ、そんな名前なんだ」
「知らないで使っていたのか!?」
「ごちゃごちゃうるせえ! やっちまいな!!」
やべっ――考えるのはあと! まずは――こいつらを片付ける!
「「変身!」」
【メロンアームズ! 天下御免!】
【マツボックリアームズ! 一撃インザシャドウ!】
向かってきたインベスの集団を弾き――背中の奴らは弾に任せる。
俺たちは何も言わず、互いの死角の攻撃を防ぎ合い間合いを取って見せた。
「な――斬月!? 黒影だけじゃなかったんすか!?」
「まさか、仮面ライダーが二人も!?」
あれ? 斬月って俺のこと? いや、最近そういう都市伝説を聞くけど……それに黒影ってのも話には聞いていたけど……弾だったの?
しかし、今はそれどころじゃないな。
「弾、まあ積もる話とかあるかもしれないけど――とりあえず背中は任せるぞ」
「そりゃ、こっちのセリフだ――妹を守るのが兄の務めってな!!」
「そっか――じゃあ露払いはしてやるから、しっかり決めろよ!」
「おう!!」
互いに飛び出し、インベスたちを蹴散らしていく。変異種は通常の上級インベスより厄介なのだが――
(操っている奴らがロクな支持を出せていない! こりゃ普通より楽だな!!)
しかも、こっちは死角を気にせずに戦える。
弾の使っているマツボックリアームズは槍によるリーチの長さこそあるものの、軽装なので防御に難があるが――俺の盾ならそれもカバーできるし、俺の場合背中を狙われると対処しにくい。それも弾がカバーしてくれる。
「こりゃ――いい感じに戦いやすいな!」
「そうだな――一夏! デッカイの行くぞ!」
「ああ!」
盾を構え、弾がそこにめがけて跳躍し――
【メロンオーレ!】
【マツボックリスカッシュ!】
――弾がそこを踏み台にして高く飛び上がる。足に充填された二つの力が混ざり合い、輝きを増して空中にいたインベスを撃破した。
「れ、連携だと!?」
「よそ見は禁物――お前らが操ってんだからなぁ!!」
「なっ!?」
その隙に俺は地上にいたインベスを一体撃破。
奴らが唖然としている間に――弾は蘭を救出し、抱えて戻ってきていた。
「――テメェラ……」
「不良の癖に、ロックシードなんて危ないもんに手を出していたんだから当然だと思うぜ」
「アイツら、前にも手を出していてな……銀行強盗しようとしていたらか止めたんだよ」
「あー……あったなそんな事件」
知らぬ間に解決していたからてっきりスレイプニルの人かと思っていたんだが……世間は狭い。
「っていうかお兄、下ろして……自分で歩けるから」
「あ、すまん」
「……お兄も気を利かせてくれればよかったのに」
「妹よ……流石にその発言は困る」
「でも、ありがと」
「――一夏、俺どこまでも頑張れる気がする」
「ああ、よかったな……でもアイツらどうする?」
インベスはあと一体。切羽詰っているだろう不良たちは――暴挙に出た。
「ハハ――お前らが悪いんだからな、オメェら――――食わせろ」
インベスに向かって投げられるロックシード――それは、もっとも危険な手段であり、凶悪な方法。
リーダーの男はまだロックシードを持っているが、制御できるなどと思っているのだろうか?
「クソッ――弾、蘭を連れて逃げろ!」
「え――おい一夏!?」
暴走が始まる前に倒せば――しかし、ドライフルーツ系のロックシードによる影響なのか、急速に成長してしまい……俺は吹き飛ばされてしまう。
「――アガッ!?」
「い、一夏さん!?」
マズイ――これはヤバいぞ……
「ははははは! そうだ、アイツらを――殺、せ?」
……暴走した以上、ロックシードによる制御は受け付けない。不良たちは次々と吹き飛ばされ、身体に傷を負い……呻いている。その体からはツタが生えて――クソッ!
俺もすぐに立ち上がろうとするが――上から鉄骨!?
「――――ッ」
よけられない。盾でガードはできるだろうが――仕方がない。ここは、賭ける!
「弾――受け取れッ!!」
俺が投げたのは緑色のロックシード。弾はちゃんとキャッチしてくれて、そのロックシードをすぐさま装填してくれた。さすが、俺の親友だぜ……後は、任せたぞ。
【スイカアームズ! 大玉ビッグバン!】
その後のことは、詳しく語る必要はないだろう。巨大化したと言っても理性なんてない相手だ。防御を取る前にその一撃でけりがついた。ただ、不良たちは今後回復するかはわからない――今は病院にも設備や薬品がそろっているが、だからと言って五体満足で生きていられるとは限らない。
俺たちは見つかったらマズイと、彼らのことを伝えるだけ伝えて逃げるように帰ったんだが、公園で少し休憩することにした。弾の家にはちょっとトラブルがあって遅れたとだけ言っており、無事であることも伝えてある。
ちなみに、鉄骨だが白式を腕だけ展開してどかした。変身中でも纏えるんだ……束さんか英さんあたりが調整したのか?
「……それで、お兄…………詳しく説明してくれるよね?」
「そのぉ……まずは一夏だろ!」
「お前なぁ……俺は普通に知り合いに貰ったんだぞ。っていうかちょっと考えればわかるだろ」
「そうだった……」
「で、お兄?」
「……なんか、アタッシュケースが部屋に飛び込んでいて、拾った的な?」
「「なんじゃそりゃ」」
いや、マジなの? 話を聞く限り本当らしいが……どんな偶然だよ。
俺についても、もう少し詳しい説明をしたが――ちょっとあきれられた。
「ハァ……結局、守られてたってことなの…………なんか、むかつく」
「兄に対してもうちょっと優しさとか――無理?」
「心配かけたからダメ」
「うう……」
今回心配かけたのは蘭だけど――って言うのは野暮か。
「でも一夏さん――なんで一夏さんは、戦うことを選んだんですか? 別に、他の方法もあったんですよね?」
「それは――」
「いえ、やっぱりいいです……たぶん、私じゃ届かないから」
なんだか、それ以上の言葉をかけることができずに蘭はちょっと離れたところに行ってしまった……どういうことだろうか?
弾はその答えを知っているらしく、言葉を選びながら説明してくれたけど――どうも要領を得ない。
「あー……俺が言っていいことじゃないから言わないけどさ、アイツも鈴と連絡を取り合ってたんだよ」
「仲悪そうな感じがしたけど……そうなのか?」
「ああ、いつも仲悪いわけじゃないからな。ただ――鈴が今頑張っていることの理由を察しってああなったんだろ」
「頑張っていることって――そういえば、前に何か言っていたけど」
「……それは、すぐに分かるよ。俺としては蘭が危ないことをしなくて良かったって感じだが、内心複雑だろうな……ハァ、本当どうするか……」
「よくわかんないけど……俺が直接口出したらまずいよな」
「それだけわかれば十分だよ。お前に関係ないわけじゃないけど、蘭が自分で答えを出さないといけないことだ」
「そっか――そうだ、話は変わるけど……スイカロックシードはお前が持っていてくれ」
「俺が?」
「ああ――俺はIS学園に行っちまうからな、その間この町のことを任せられるのはお前しかいないんだよ」
「……わかった。ありがたく使わせてもらう」
「一度使用すると、チャージに時間がかかるから気をつけろよ」
「了解。お前も頑張れよ――あと、たまには顔出せよ」
「わかった。お前こそ元気でな」
その後は忙しくて弾たちに会う時間もなかった。
荷物の準備とか、寮の部屋の都合とかがあったらしいが――なんとか終わらせて俺はIS学園の前にいた。
ここで、俺の新しい生活が始まる。正直不安だらけだけど――なんとかなるさ。
入学式に参加すると色々面倒らしいので直接教室に行くことになったのは正直助かったと思ってる。
それじゃあ、気合入れて頑張りますか!
ついに原作前の話が終了。マジ長かった。4カ月以上かかっているとは……いや、他のキャラ視点で一話やりたいけどそれも蛇足になりそうだし悩んでいます。
そのころの千冬さんとか、鈴とか、その他のキャラとか。
というわけで、始まる前からすでに色々変化しているIS学園ですが、始まる前からどのあたりが変わっているかを考えるのも面白いのかも。