最後におまけ的な話がありますが、過度な期待はしないでください。
それにしても今日は疲れたなぁ……寮で俺に割り当てられた部屋のベッドの上で横になってみたが、まだ眠くはない。夕食を食べようかとも思ったのだが……うん、めんどくさいな。
視線は受け続けるだけであんなにもダメージがあるものだとは……
ちなみに俺の自室は用具置き場だったものを改装して作ったものらしく、他の部屋とは違い一人部屋である。簡易キッチンなどはちゃんと搭載されているし、シャワーやトイレも完備。まあどちらも男一人の俺には必要なものだが……大浴場とか使いたい。しかし――IS学園には当然女湯しかないのである。
「なぜ、地下銭湯の案が通らなかったんだ……」
英さんが冗談半分に提案したらしい(IS学園の設計などに一枚かんでいるそうだ)のに、何故。本人もちょっと悔しがっていた。
……何か食べた方がいいだろうし、食材あったかななんて考えていると――ドアがノックされる。
「? 誰だろう……はーい、今開けます…………え」
「え、とは何よえ、とは」
そこに立っていたのは一年ぶりにも関わらず、大きな変化もない――しかし、少しばかり背が伸びているだろうか? そのツインテールは彼女によく似合っていて忘れようもない。
そういえば見かけた気もしたが――本当にいるとは思わなかった……
「り、鈴さん?」
「そうよ――っていうか挨拶ぐらいはしてよ」
若干不機嫌そうなのは俺の気のせい――ではないのだろう。まあなんにせよ廊下に立たせままなのはまずかろう。とりあえず部屋の中に招き入れると、鈴は背伸びをして体をほぐしている。
「ああぁ……流石に初日は疲れるわね」
「っていうかお前なんでここに?」
「そりゃ、頑張ったもの」
「頑張ったってお前な……」
そういえば行きたい学校がどうのとか言っていたが……まさかIS学園だったとは……
「いいのか? その……国にいなくて」
「いいのよ。親権とかの都合でついていったけどさ……正直、あたしにはあっちは合わなくて」
その表情には陰りがあって――どうにかしたいと思う反面、踏み込んではいけないとも思ってしまい、俺は言葉を出すことができなかった。その顔をみて鈴は――懐から取り出した白い宝刀をもって頭に一撃を――
「痛い!?」
「そりゃ痛いでしょうねー。ほら、ウサギ博士謹製のハリセンよー」
「なんで何度もたたくんだよ!」
「辛気臭い顔したのは悪かったけどさ――それより言うことがあるでしょ」
「あ…………」
そうだ――その一言をまだ言っていないのだから、俺が悪いんだろう。
「……おかえり」
「うん、ただいま!」
そうして――まるで花が咲くように笑顔になった彼女がいた。
積もる話もあるが――とは言うが、二人とも食事もまだだったので適当に作ってつまむことに。まあ、お互い料理はずっと続けていたからすぐに完成して近状を話すことになるんだけど。
「まあ、あたしはさ……IS学園に入学する手っ取り早い方法ってことで代表候補生になったわけよ」
「なぬ!? 一年足らずしか時間なかっただろ!?」
「そうだけどねー日本にも帰ってきたかったし、それに――後ろで見ているだけなんて嫌だから」
「うっ……」
なんだろう。このむず痒い気持ちは。こう、うまく言葉が出てこないが――鈴がまっすぐ見つめてくるものだからどうしたらいいのか悩む。こっちもみつづければいいのか――あ、そらした。
(うう……一年前よりかっこよくなりやがって…………いいことかもしんないけどさぁ……)
「ど、どうかしたか?」
「ななな、なんでもないわよ!!」
お、おう……
「それにしても――あんたこそ何よ。IS動かして……で、何が原因なわけ? どうせアホやらかしただけだと思うけどね」
「何を言うんだ……その通りだけど」
かいつまんで説明したら――爆笑された。うんわかってた。俺もわかっていたよ。
「……そんなに笑わなくてもいいだろうが!」
「だって――どうやったらそんな間違い……しかも不用意に触るとか……ああ、やっぱり一夏は一夏よね。うん」
「…………本当に勘弁してくれ……ハァ」
「ごめんごめんって。でも、元気そうで良かった」
「そっちもな」
「ところでさ――聞いたわよ、クラス代表の座をかけて決闘だって」
「別に決闘っていうほどのものでも……あるのか?」
「IS学園に通常の法律が適応されなくてよかったわね。最近は決闘罪だって適応されるんだから」
「だなぁ……何が原因なんだろうか」
前は聞かなかったんだが――なんかの番組とか? アニメって線もあるかもしれない。
「まあそれはどうでもいいのよ。それよりどうするの? 一応他の候補生のことは調べてきたけど――簪はあんたも知っているのよね?」
「ああ――俺の専用機と同じ開発元だし、一度戦ったこともある――ぼろ負けしたけど」
「……仕様は?」
「ふふふ――完全近接型。暮桜の後継機」
「……いや、あんただから言うけどさ……私も一応手に入る範囲で他の国のISを調べろとは言われているけど……正直それはデータとる必要あるのかしら」
「はっはっは! ないだろうな! なんかよくわかんねぇけど単一能力は使えるさ! でもな零落白夜なんだよ」
「…………たしかにデータを取る意味はないわね。形態以降の時に単一能力が発現するんだから、初期設定から一次移行するときにって感じなんだろうし――代償もあるのよね?」
「……バススロットがないです」
「武装は?」
「刀と盾一つづつ」
「バカじゃないの!?」
「言うなよ――俺も後悔している」
「……せ、世代は…………」
「第三世代。第四世代に搭載予定のシステムを一部入れたけどぶっちゃけ燃費が悪くなるから現状ならどこもつくらないんだよねーって束さんが」
「か、開発者自ら……第四世代ってのには驚くけど、学会で発表されてはいるらしいってのを聞いたことがあるわ……たしか、パッケージなしでもどんな状況にも対応する装備を積んであるISだったかなぁ……あたし座学は苦手だし、あんまり詳しくないんだけど……」
「たぶんそんな感じ」
束さんも定期的に情報公開しているらしいので、調べればある程度分かるかもしれないが。
「……うーん…………稼働時間!」
「二桁いっていてほしい」
「あきらめなさい」
「そんな見捨てないでくれ!」
「でもねぇ……そういえばさ、試験官倒したっていうのは本当?」
「ああ――でも相手が真耶さん、山田先生でさ……最後は壁に激突していた」
「なるほど――あの有名なドジっ子の」
「あれ? 昔会ったときはそんなこと言っていなかったじゃないか」
「そりゃ昔は入学する気なかったし。インベス相手に戦う可能性もあったしね……同級生を見るとそんなこと忘れるけど」
「そういえば、その方面の勉強もするんだった……」
IS学園はただISのことを中心に勉強するのではない。元々戦闘用ではないにしろ、様々な用途に応用できるためインベス相手の戦術とかも勉強しなくてはいけないのだ。基本は遠くから撃てであるが。
まあ災害救助とかがメインになっているし、直接インベスと戦うことにはならないんだろうが……ISはインベスを相手にするのには相性が悪いし。
「でも零落白夜があるのなら何とかなるんじゃない?」
「そうだといいなぁ……」
「遠目からみたけど、オルコットのISは遠距離型だったけどね」
「その事実は知りたくなかった……なあ、鈴――放課後とかちょっと練習に付き合ってくれないか?」
「あたしはいいんだけどさ……あたし二組のクラス代表になっちゃったのよ。専用機持ちだったし」
「なっ――お前まで……」
本当色々ないみですげえ奴だよ……
変わっていないとは思ったが――十分変わった。だけど、悪い方向にじゃなくいい方向に。闘志というか、強いまなざしになったと思う。
「……でも、一夏がどうしてもっていうのなら見てあげるけど――どうする? あたしとしては一夏が勝った方が後々有利だし付き合ってあげてもいいけど?」
「おいおい――そりゃこっちのセリフだぜ。お前だって専用機を使うんだからお相子だろ?」
「ふふ――ええ、じゃあ決まりね」
そうして――来るべき一週間後の戦いに向けて準備を始めることとなったのだ――ところで、鈴。
「おまえなんで俺の部屋を知っていたんだよ」
「千冬さんに聞いたのよ。酢豚あげたら普通に教えてくれたわよ?」
「千冬姉ェ……」
食い物につられるなよ……鈴だったから良かったけど、他の女子だったら色々とまずいぞ。
――当然、ハニートラップとかの危険性が無いと理解した上ではあるのだろうが、色々と不安である。
◇◇◇◇◇
「ふぃーむふぃーむ」
「……どんな寝言なのだ」
ここは箒と本音に割り当てられた部屋――箒は立場上入学するしかなかったのだが、精神面が不安定なためルームメイトに荒事に対処できて精神面に負担をかけないであろう本音が選ばれた――で、箒は寝巻に着替えてベッドで横になっていた。
思い出されるのは――過去の記憶。何故忘れていたんだろうと思う反面――思い出したくはないと思う自分がいる。姉のせいで一家が離散した。姉が悪いんだと言い聞かせて――何かを失ってしまうような感覚に陥る。
(……私は弱いな…………思い出せば、優勝したときもそうだ――怒りと暴力だけの剣。あんなもの剣道ですらない……ただの八つ当たり。憂さ晴らしだ)
自分でも不思議に思うが――箒は時折、感情の制御ができなくなってしまう。
そのための剣道なのに、その剣道が人を傷つけてしまう。自分を御するためのもので人を傷つけるなど本末転倒ではないか。
「…………でも、一夏に会えた」
そうだ――一夏に会えたではないか。あの頃のようにまた一緒に――そう思うと箒の心は満たされてゆく。
一夏はISを動かしただけでまともな戦闘はできないんだろうし――そうだ自分が教えよう。幸い、自分は何度も動かしているからどうにかなる。ISを借りてこれなくても剣道をすればいい。
箒は名案だとばかりにその考えのみにとらわれてしまう――一夏の練習相手が自分だけではないという可能性にはついぞ気づかずに。よく考えれば、隣りにいる本音も、4組にいる簪も一夏の練習相手になる可能性はあるというのに。むしろ簪は専用機を持っている分ISを借りてこなくてもいいというのに。
「私は一夏の幼馴染だからな。当然だ――」
薄っすらと――笑みを浮かべたその顔は穏やかで、歪さなどは無かった。
昼間に見せた歪な様子は完全になりを潜めており――その事実はなかったのではないかと言わんばかりである。
そしてゆっくりと眠りにおち――意識は沈む。
IS学園の夜は更けていく。初日は波乱万丈とまではいかなくても、それなりに変動が起こった一日だった。
◇◇◇◇◇
ちなみに、これはそんな一日が起こる前の出来事。
「ええい! 一夏の奴……クラス分けとか忙しいというのいあのバカは!!」
「ふぇええ!? 関係者各位から電話が殺到していますぅぅぅぅぅ!?」
「山田君! 私は手が離せん! ISを使ってもいいから対処してくれ!」
「そんなぁ!? さすがに厳しすぎます!! っていうか他の先生方は!?」
「全員倒れた!」
一夏がISを動かしたことで発生した修羅場である。
千冬自身、色々とやらなくてはいけないことが山ほどあるのでクラス分けだけに時間を取られているわけにはいかないのだが――正直、人手が足りない。
「くそっ――毎年毎年厄介な人物ばかり。大体は決めてくれたとはいえ――なんで私は問題児というか重要人物担当なのだ!」
緊急時には最強のセキュリティとして君臨するからです。
「一夏も含めて――数人。篠ノ之箒に、セシリア・オルコット。凰鈴音……アイツもかぁ…………これが恋する乙女の行動力なのか、侮れんな」
一夏のためというのは間違っていないのだが、もっといろいろな感情が渦巻いる。しかし、千冬にとっては甘酸っぱい青春にしか見えなかった。手にしているのは軍事力スレスレの力なのだが。
「……くそっ」
織斑千冬、もうすぐ24歳。いまだ彼氏ナシ。鈍感さえ治ればできていたのだろうが――本人はそれに気づかない。ただ胸の内に湧き起こるのは――今頃宇宙で暮らしているバカ夫婦。
「ふふふ、そういえばアイツら事実婚だったな……呼ばれるのか? 結婚式呼ばれてしまえば――私は自分を抑える自信がないぞ」
「先輩! トリップしていないで仕事仕事!」
「す、すまん! ――仕方がない。一夏が一組なのは当然として――残りをどうするかだ」
更識簪もいるし、布仏本音は箒とセットにしたほうがいい。
箒のことを考えた場合、アイツも一組に入れるべきであろう。
「この場合、更識を私のクラスである一組に入れるべきなのだが……」
セシリア・オルコットの思想に若干の問題があるため、自分が見たほうがいいだろうとも思う。
鈴? 知った仲だし、性格も理解しているため他のクラスでいいだろうと思う。他の先生にもできれば戦力は分散させろと言われているので、すぐに彼女のクラスは決まった。その決断を後に後悔するが。
「……オルコットは三組にしようと思ったが、やはり一組に入れて矯正を促したほうがいいか。となると、更識と布仏には悪いが、更識は4組だな」
こうして、上に案を出した結果――彼女らのクラスは決まったのである。
決闘罪で捕まったとかニュースで見たのはあの作品がアニメ化した前後だった気がする。
というわけでいらぬフラグも立てつつ次回へ。