仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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箒さんについてですが、原作を読んでみると最初から一夏に恋心を抱いていたかというとそうでもなさそうです。
再会してかっこよくなっていたり、同室で過ごすうちにやはり好きだと認識したっぽい。まあ、あくまで私の考察と、普通はこうだろうなという感覚ですが。
ですので――わが作品みたいに最初から執着するのは本当はおかしいことであるはず、ということを頭に入れておいてください。


EP126.女の戦い

 素晴らしい朝だ。篠ノ之箒にとってはそうであるだろう。何せ――初恋の少年との再会、再び彼と一緒の時を過ごせるのだから。

 

「ふふふ――いや、だが……5年以上前に会ったきりだぞ?」

 

 なのに、いまだ初恋が続いている? いやそれ自体はおかしなことではないが――子供のころの想いを今も抱いているのか? そのことを疑問に思った瞬間――激しい頭痛に見舞われる。

 

「あ――ガッ」

 

 頭を抱えて蹲り――自問自答が終わってしまった。

 何もおかしいことはない。あんなにもかっこよくなっていた一夏に再会して、改めて恋をしただけなのだ。

 だからおかしなことはない――そう、思う。

 

「そうだ――朝食を共にしよう」

 

 積もる話もあるだろうし――一夏の近状も知りたい。

 それに剣の腕が落ちていないか確かめねば。同門としての義務。善は急げと食堂に駆け込んでいくのは一夏の部屋がどこにあるのか知らないため。疑問を感じるべきところはあるはずなのに――彼女はそれに気が付かない。

 そしてやってきたのは食堂――であったが……その事実に気が付けなかったのは彼女が浅はかであったからなのか、それとも――

 

「――い、一夏…………誰なのだ、その女は」

 

 ――動き出した歯車はもう止まらない。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 時は少し戻り、一夏が食堂に入ったところから始まる。

 待ち合わせしているわけでもなかったが、一夏と鈴の生活リズムは似通っている。お互いの趣味嗜好をある程度知っている上に、鈴の方が合わせている部分があるからでもあるが。

 

「あんた、相変わらずバランス重視で食べるわよね……」

「そりゃ体が資本だからな。そういう鈴は……肉まん…………」

「放課後に練習するんでしょうが。今のうちにある程度食べて消化した方が良いわよ」

「それもそうだけどな。リズムはあまり崩したくないから俺は普段通りに行く」

「ま、その方が良いだろうけどね――」

 

 と、そんな会話をしていると数人の女子が集まってきた。物珍しさもあるだろうが、鈴という存在が仲良く談笑しているのを見て自分も負けじと動き出したのである。

 一夏は外見はかなり美形。姉に似た顔立ちなのもあって、IS学園での受けはかなりいい。この時の彼女たちは知らない、ギャグセンスで引かれることも多かったりするのを。

 

「織斑君、えっと、隣りいい?」

「俺は別にいいけど……」

「ま、いいんじゃない」

 

 鈴としては二人きりの方が良いのだが――あんまり独占欲を見せても一夏が困るだけだろうと快諾する。

 席に座ってきたのは相川さんと谷川さん。クラス内でもそこまで目立たない風体の人物だが、IS学園の狭き門をくぐっただけあって成績はいいのだろうと一夏はなんとなく頷いていた。

 

「えと、そっちの人は……」

「二組の凰鈴音よ。よろしくね」

「うん――もしかして、中国代表候補生の?」

「そうだけど――げ」

 

 谷川が取り出したのは――とある雑誌。中国国内だけでなく、様々な国で販売されているIS情報誌の一冊だ。

 その一ページに……鈴の写真が載っていた。グラビア風に。

 

「うわぁ……黒歴史だ」

「鈴、お前……」

「ち、違うんだからね!? これは代表候補生の仕事であって――そういうんじゃないんだから!」

「…………」

「うう、違うのに……」

 

 鈴はいじけてしまった。心にいくらかばかりのダメージを負ったのだろう。

 まあ放っておいても治るかと、一夏は食事に向き合う――この味、できる。

 

「……なんか、料理人の顔つきに…………」

「か、カッコいいんだけどなんか違うような?」

「私としては鈴たんが織斑君と仲好さげな理由を知りたいです!」

 

 突如として現れたのは――ショートカットに赤いカチューシャ。そしてメガネをかけたごく普通の容姿の少女――なのだが纏っているオーラがなんとなくウザい。

 彼女の名は谷本理子。またの名を……

 

「どーも! みんなのウザキャラ! リコリンです☆」

「「「うわぁ……」」」

「腹立たしいわね」

 

 滅多に女性に対して引かない一夏でさえ引いた。谷川と相川も当然引いた。そして直接話しかけられた鈴は正直イラッとした。しかしそれでもひかないかえりみない。

 

「ねえ、なんでなんでなんで――みょえ!?」

「朝っぱらからうるさいわよ…………小学校途中から中学途中まで一緒だった。はい答えたわよ――で、どうする?」

「あ、アイ〇ルー」

「懐かしいネタ使ってんじゃないわよッ!」

「待つんだ鈴! それ以上は危険すぎる!!」

「わぁああ!? リコリン!? リコリーン!!」

 

 哀れにも、谷本理子はその短い生涯に幕を――下ろすわけはなかったが、色々とお見せできない状態になった。しかし、彼女の顔は一仕事してやったぜという満足げな物だった。

 とりあえずパンをひっつかんで口に入れ、相川と谷川の二人で担架に乗せた谷本を運んでいく――教室まで。

 

「……保健室じゃないんだな」

「あの程度どうってことないわよ。一組って千冬さん――織斑先生のクラスなんでしょ。だったら、そのまま放置した方が良い薬になるんじゃない?」

「……うわぁ」

 

 どうやらあの二人もイラッとしたらしい。☆か、☆がダメだったのか……

 まあそんなやり取りもそこそこに、そのままでいると――彼女が現れた。

 

「あら? そこにいらっしゃいますのは代表候補生の凰さんではありませんか」

「……あんたがイギリスの…………」

 

 セシリア・オルコット。彼女はつかつかと歩いて――一夏を一瞥し、鈴にのみ話しかける。

 その様子を鈴は冷めた目で見るが――彼女はそれに気が付かない。

 

「…………」

「今度のクラス代表トーナメント、楽しみにしておりますわ」

「なんで?」

「なんでって――二組の代表は貴女なのでしょう? だったら当然のことではないですか」

「だからなんでって聞いているじゃないの――あたしは一夏と戦うつもりだし」

「――――なんですって」

 

 聞き捨てならないとばかりに、セシリアは鈴を睨みつける。まるで自分が眼中にないとばかりではないか。

 

「一夏が勝つって言ってんのよ。今分かったわ。あんたじゃ一夏には勝てない」

「訂正しなさい――そのような素人がわたくしに勝つと? 冗談にもなりませんわ」

「たしかにISの操縦技術は劣るでしょうね――でも、もっと大事なところであんたは負けている」

「ッ――いいでしょう。その様な戯言、6日後の戦いで言えぬようにして差し上げます」

 

 それだけ言い残すと――彼女はサンドイッチだけを受け取って食堂から出ていく。一瞥して以後は、一夏のことを一度も見ずに。

 

「鈴、言いすぎじゃないのか?」

「そんなことないわよ――それに、あいつは一夏を一度だけ見て――眼中にもないって感じだったのわかっているでしょ?」

「そりゃぁな……」

「代表候補生はインベス相手の戦術とか色々叩き込まれているから、天狗になる気持ちもわかるんだけど――やっぱりさ、あの光景を見ているとあたしにはそんな気分になれないわよ」

 

 鈴が言うのは、あのクリスマスイブの光景。

 一夏に助けられたあの日。本当の戦い。命のかかった戦場。

 代表候補生など所詮、講習を受けた程度のものだ。実際の戦いを経験したものなどほとんどいない。

 もっとも元来ISは戦闘用のものではないので当然といえば当然なのだが、精神面を増長させてしまう場合があるのだ。

 

「だからさ――必ず勝ってね」

「まったく。そんな当たり前のことを聞くなよ――正直クラス代表とかやる気にはなれなかったけど――そこまで言われたら何が何でも勝つしかないじゃないか」

「ふふ――期待してるわよ」

 

 ちなみに――この時にあまりにも二人だけの空間を作ってしまったものだから血の涙を流すものが数名いた。他にも、操縦を教えようと近づいていた上級生もいたが――見えないバリアみたいなのに遮られたと後にコメントをしている。

 と、そんな空気をぶち破るかの如く――彼女が出没。

 

「――誰なのだ、その女は……」

 

 底冷えするかのような声。幽鬼ともつかない眼光。

 一本の刀が鞘に収まっていないまま飛び跳ねている。そんな印象。

 

「そうかそうか――お前はまたやらかしたのだな」

「えっと――箒さん?」

「箒って――――この子が束さんの妹?」

 

 鈴は話には聞いていたし、写真も見たことがある。確かに面影はあるが――なんだか暗くなっている。あと、やはり旗は立っていたのかと頭を抱えたくなる。どうも厄介すぎるだろう。

 

(でも――長い間あっていない上に連絡も取っていなかったのよね? 改めて好きになるにしても速すぎる――いままで好きだった? それは流石に執着心が強いんじゃ……まあ気にしていても仕方がないか)

 

 いや、束の妹なのだし一途なのかとも思うが。

 一夏にしてみてもなぜ不機嫌なのかわからない。鈍感である彼だが――流石にここまでのヤバ気な感情を向けられるのはなんかおかしいとも思う。

 

「それで――その女は誰なのだ?」

「いや、幼馴染み?」

「――私以外の幼馴染み――――だと」

 

 とりあえず鈴について簡潔な説明をする。箒とは入れ替わりに入学し、中学の途中まで一緒にいたことなど。

 その話をするたびに不機嫌になっていく箒だったが――自分と彼女の違いを思い出して優位に立てると――思い込む。そもそも前提条件から間違っていることを知らずに。

 

「そうだ一夏――放課後は開いているな。久々に剣の腕を確かめてやる。剣道場にこい」

「いや、悪いんだけど――鈴のISの操縦を見てもらう約束しちまったし。オルコットさんとの試合が終わった後なら時間もあるしいいんだけど」

「――――なに?」

「それに、剣道自体お前が転校してからはあまりやってなかったぞ。教えてくれる人もいなかったし、独学でやろうにも色々あったしさ」

 

 トレーニングの一環で竹刀を振ってはいるのだが、元の篠ノ之流とは異なって我流になってしまっている。インベスとの戦いの中で自分に合った戦い方を模索してしまった結果だ。箒は千冬が篠ノ之流を使っていることもあって一夏もそうだと早合点したのである。

 一夏と千冬の違いで――千冬は型を踏襲しつつも極限まで高めていった。対して一夏は自分に適した形に変化させていっている。

 

「貴様――剣を捨てたというのか!?」

「いやそういうわけじゃ――」

「ええい黙れ! 見損なったぞ!! それにそんなこと私は認めない!!」

「だから箒に認めてもらうとかって話でもないだろうに――」

 

 一夏の話を聞かず――箒は鈴を指さし、言葉を叩きつける。瞳はまるで別人の様な光が宿っており、鈴もすこしたじろいでしまった。

 

「一夏に教えると豪語するからには強いんだろうな?」

「……そうだと思っているわよ」

「ならば――どちらが一夏に教える役目に相応しいか、勝負を挑む!」

「おい箒!」

「……あたしは構わないわ」

「鈴まで……いいのかよ」

「ええ――むしろイギリス代表候補生の彼女よりもやりやすいわよ。あっちはまだ覚悟とか一応はあるんでしょうし、努力とかはみとめてんのよこれでも――でも、あなたは違う」

「なに? 私の努力を否定するのか?」

「ええ――だって、子供の癇癪じゃない。そりゃあたしだって気持ちは分かるし、逆の立場だったら同じようなことをしたかもね――昔のあたしなら」

 

 だが、あの頃のままではいけないのだ。自分の想い人は前に進んだ。だったら、自分も進まなくてはいけない。彼に追いつくために。彼の隣で戦うために。

 

「昼休み――剣道場であいましょう。そこで決着をつけてやるわ」

「……随分となめた口を…………この私に剣道で挑むというのか?」

「いいえ――あなたなんか、この拳で十分よ」

 

 その瞳に迷いはない。

 ただ己の信じた道を貫くため。己の積み重ねたこの一年を信じるのみ。

 

「絶対に、負けないから」

「……怪我をしても知らんぞ」

 

 ここに、女のぶつかり合いが始まったのである。

 その光景を一夏は……

 

「…………なんでこうなったし」

 

 どうすればいいのかなんてどころではない。鈍感とかそれ以前に、この構図は嫌だなとしか思えない。

 だって――私のために争わないで! ――みたな感じなのだから。

 

「ああ――やっぱあの時ISを触ったのがいけなかったんだよな……神様、俺ってそこまで悪いことしたのかな?」

 

 勝手に人の物を触ったのはいけなかっただろうが――それ以上に無自覚に女泣かせなのがいけないんだろう。彼の友人ならそう言ったはずである。

 そしてその光景を見ていた少女たちは――修羅場にドキドキワクワクしていた。良くも悪くも彼女たちは思春期。自分が修羅場にいるのは勘弁だが、傍から見る分には面白いのだ。

 この空気が壊れるのは千冬が授業に遅れるなと乗り込んでくるまでだった――ちなみに、箒は朝食がまだだったので急いで食べたという。

 

 

 

 

「うわあああん!? 遅刻するぅうう!?」

「本音が――寝坊するのが、悪い」

「かんちゃんだって徹夜でアニメ見ていたくせに!!」

「……じゃ、私四組だから…………織斑先生の授業頑張って」

「裏切り者ぉぉぉぉ!! しののんもなんで起こしてくれなかったのー!?」

 

 そんな遅刻者二名がいたことは完全なる余談である。

 




気が付いている人もいるだろうから言いますが、この物語においてのテーマは「変わること」です。
それがいい方向なのか悪い方向なのかはともかく、人というのは出会いや経験で変わっていきます。

とまあ色々言いたいこともあるのですが、そういうのは本編で物語として語っていきましょう。
というわけで作者のコメントでした。


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