仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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セシリア戦。そして一夏君の固有スキル発動。


EP128.三日月

 クラス代表を決めるため――俺とオルコットさんはこれからアリーナで戦うことなる。

 ピットにいるのは、千冬姉のみ。オルコットさんの方には山田先生がいて準備をしているらしい。

 

「一応公平にしなければいけないからな」

「ま、そりゃそうだ。エネルギーは問題なし、あとは――気合入れるだけ」

「織斑――勝てとは言わないが、全力でやれよ」

「わかっています。織斑先生もちゃんと見ておいてくださいよ」

「ああ…………行ってこい、一夏」

「行ってきます。千冬姉」

 

 白式のスラスターを作動させ、一気に飛び込む――光で一瞬目がくらむが、すぐに持ち直してあたりの光景が目に飛び込んできた。

 一クラスだけにしては多すぎる人が観客席に座っているが……一年生だけじゃなくて全校生徒がいるんじゃないかこれ? さすがに恥ずかしいな……見ると鈴もいるし…………にやりと笑ったあたり、俺が見ているのに気が付いているな……そうだよな、何度も動かしているんだからどのぐらい見えるのかわかっているよな。

 とりあえず空中に飛び、オルコットさんの前までやってくる。

 

「逃げずによく来ましたわね……今なら、あやまれば許してあげないこともなくてよ」

「よくいうぜ――ビットも展開して、ライフルも持っているくせに」

「いきなり斬りかかられたらたまりませんから――あなたこそ武器を出しているでなはいですか」

 

 結局のところ、これはただの舌戦。俺もオルコットさんも視線は相手を見続けている。

 不利か有利化で言えば――俺は不利なのだろう。遠距離攻撃は可能だが、俺にその技能はない。それに対してオルコットさんは離れて狙い撃ちができる。

 だから距離を詰めなければ俺に勝ち目はない。でもその距離を詰めるのが至難の業なんだが……

 

「ま――そういうのは気にしても仕方がないよな――いくぜ、白式!」

「やはり、ひきませんか――ならば、後悔しなさい! わたくしとブルーティアーズの奏でるワルツで!!」

 

 ――バトルスタート。その音と共に俺は、音を越えた。

 

「なっ!? いきなりですか!?」

「――生憎経験値が足りていないからな! 先制攻撃は貰ったッ!」

「ぐっ――なめないでください!!」

 

 オルコットさんのスラスターが光を放出し、俺の攻撃はかわされてしまう――しかも、円運動をするかのような立体的な軌道。瞬時加速を使わなかったのか使えないのかは知らないが、機体のバランスコントロールだけでかわしていやがる!?

 そのまま俺に向けられるのは――ライフル!

 

「クソッ――」

「瞬時加速を使えるのには驚きましたが――わたくしにも代表候補生としてのプライドがあります!」

「だからって――俺も負けられないんだよッ!!」

「そんな減らず口は――わたくしが叩き潰します!」

 

 ビットが多方向に配置され、その全てが俺を狙ってくる――思考は加速し、どうするべきなのか頭の中でいくつも考えが浮かぶが――その全てを一瞬で破棄する。

 今やるべきことは攻撃ではなく――防御。

 

「――おおおお!!」

「すべて、防いだ!?」

 

 シールドエネルギーが少量減るが、それ以上にチャージは完了した。

 白夜の機能でエネルギー系攻撃なら大部分が吸収可能なのは知っていた。故に俺が取った行動は、着弾するビームに向かってシールドバッシュを使うことで吸収することである。

 

「エネルギー吸収系武装――完成していたのですか」

「つっても、負担が大きいけど……」

 

 そう何度も使用できる機能ではない。すべて吸収できるわけではないのだから限界を超えるとかなり危険だが――まだまだいける。

 エネルギーをチャージ。スラスターから光があふれ――一気に加速する。

 

「くっ――ですが! ビットの雨からは逃げられません!」

「ああ――それは百も承知だ!」

 

 だから今度は全て防げないタイミングで攻撃が放たれてきた。ライフルからも光が飛んでくる。

 しかし、俺に取ってそれは――切ることの出来るモノだ!」

 

「――ゼリャアア!!」

「なっ――零落、白夜!?」

「ハアアア!!」

「ならば――!!」

 

 腰から何か黒い影が飛び出し――オルコットさんの付近に熱源が出現。

 

「――ミサイル!?」

 

 あれを喰らうとマズイ――盾をとっさに前に構えて防御するが――負担がかかり過ぎた。嫌な音が白夜から響きだしてしまう。

 ――こりゃ、ミスったか……

 

「わたくしだって、負けられないんですわよ!!」

「――うぐぅ!? け、蹴り!?」

 

 下からオルコットさんが飛び上がって来て、蹴りが俺の顎を狙ってきやがった――他のISよりも細身なブルーティアーズだからこそってわけか!!

 それでも、向こうから懐に飛び込んでくれるってのは大チャンスだよな!!

 

「ハアアアア!!」

「――ッ!!」

 

 爆音が響き、煙があたりを隠してしまう――クソッ! まだミサイルがあったのか――じっとしているわけにもいかない。一気に距離をはなして攻撃を防ぐ。吸収出来たエネルギーもあるからまだどうにか戦えるけど……ビットが厄介すぎるな。

 

(しかも、一定の距離を保ってやがる……瞬時加速を最初に見せたのは失敗だったか?)

 

 破壊しようにもこれはキツイな……対してオルコットさんは息を整えたのか――また再びライフルを俺に向けてきている。そして、ビットの攻撃よりも太い光が俺に――

 

「よっと!」

「このッ、ちょこまかと!」

「そりゃ避けないとな――アレ?」

 

 避けられている? いや、鈴との特訓で気配っていうか事前察知で避けれるようには鍛えたんだけど――なんでビットの攻撃が来ないんだ?

 てっきり避けたコースにビット攻撃を仕掛けてくるかと思ったのだが……なんていうか、マニュアル通りっていうか、教科書通りっていうか――応用力が低い攻撃しか来ていない気がする。

 

「……もしかして――なら」

 

 そうだ。射撃タイプの厄介さは簪との戦いで、山田先生との戦いで学んだことじゃないか。

 それなのに――彼女からはそれほどの脅威を感じない。

 

「これで――決める!」

 

 零落白夜は使わない――だが俺の想いをくみ取った雪片はその形をしっかりと作ってくれた。

 

「なっ――なんですかその長さは!?」

「白式のメイン武装は雪片。そして――第三世代の特徴は」

「イメージインターフェイスを利用した、特殊装備を積んでいること――ま、まさか……」

「ブルーティアーズの特殊装備がビット。鈴の甲龍は衝撃砲――とにかく操縦者のイメージで動くってのが特徴だった――なら俺の白式は?」

 

 それは――この光の刃。

 

「すべて――切り裂く!!」

 

 ビットは慌てて逃げるが――遅い!

 爆発が連続して起こり、俺自身が動くことも合わせてビットはかわしきることはできなかった――そして、オルコットさん自身も。

 

「なっ――!?」

「それに、ビットの動きに集中すると自分の動きが止まっているんだよ!!」

「う――それでもッ!!」

 

 距離を詰めるならば刃は短くしなければいけない。エネルギー消費も伸びるほどバカにならないし――本当白夜を積んでくれて助かった。吸収したエネルギーが無ければピーキー過ぎてエネルギー切れになっていただろう。

 だからこそ――支ええてくれた人たちのためにも俺は負けられないんだ!

 

「これで――!」

「インターセプター!!」

「――なっ!?」

 

 呼び出しのコール――!? 初心者用とも揶揄される武装の呼び出し方。どうやら近接武器はあまり使ったことはないらしく、ぎこちない動きだったが――それでもとどめの一撃は防がれてしまった。

 

「負けられない――負けたくない! わたくしは、こんなところで負けるわけにはいかないんですッ――」

 

 ライフルが付きつけられ――かわす? いや、かわしたところでまた後退することになる。瞬時加速ととどめの一撃。両立するにはどちらもあと一回が限度。

 普通にかわすには速すぎる。しかし、瞬時加速を使えば――

 いや、そんな弱気なことを考えるな。無理だというのなら俺の方こそ無茶を通せ。

 不可能なんてあきらめるんじゃねぇ……瞬時加速はまっすぐにしか進めない? だったらその固定概念をぶち壊してしまえ。

 

「――――ッ!!」

「なっ――消え――――キャアアア!?」

 

 会場はこの時、言葉を失った。

 俺の姿が一瞬ぶれたかと思ったら――オルコットさんの真後ろに出現していたのだから。

 その時に何が起きたのか理解できた者はこの時の技をこう呼んだ――繊月加速、クレッセントブースト――

 まるで三日月のように湾曲した動きで加速する、瞬時加速系の新たな技法。

 

「――俺の、勝ちだ」

「あ――――」

 

 バトルエンド。この一撃でブルーティアーズのシールドエネルギーは0になった――当然、最後に使った攻撃は零落白夜を使用したもの。

 こうして――俺はクラス代表になったのである。

 まあそんなことを考えている暇は無く――落ちていくオルコットさんが見えて、慌てて彼女の手を掴み――

 

 ◇◇◇◇◇

 

 最初の印象はぼんやりとした人。

 それがわたくしの父を連想させました。

 婿養子でオルコット家に婿入りした彼は母に対しても腰の低い方で、頼りない印象しかありませんでした。母も仕事で頼りにしているのを見たことがないのです。媚びへつらっていたわけではないですが……卑屈でした。

 何分幼い頃でしたから――わたくしにはまだ理解できないことも多かったでしょう。

 なぜ母はあの人と結婚したのか。常に疑問に思っていて――結局それを知る機会は永遠に失われてしまったのです。突然の事故死。何よりわからないのは――最後の瞬間、夫婦が一緒にいたこと。

 母は父が嫌いではなかったのですか? なぜ一緒にいたのですか?

 考えていても――答えは出ない。なぜなら答えを知る方法は無いのですから――

 

「本当にそうなのか?」

 

 ――誰かの声が聞こえた。しかしわたくしにはそれが誰だかわかりません。

 最後に両親と一緒に出掛けたのは――5歳のこと。三人で手をつないで、公園を歩いて……思えば、あの頃は二人とも仲が良くて…………その後はあまり一緒にいなくて……

 だんだんと笑顔が消えていきました。いったい何がいけなかったのでしょうか?

 3年前に二人がいなくなって、わたくしは遺産を守るために戦わなければいけなかった。だから代表候補生にもなった。負けたくない。負けられないんです。強くなくちゃ、守れないから。

 

「……オルコットさんがさ、守りたかったのって何なんだ?」

 

 それは、オルコット家の遺産を……

 

「そうだけどそうじゃないよ――遺産を守りたいのなら、なんで二人のことばかり思い出すんだ?」

 

 え――それは……

 

「寂しかったからだろ。会いたかったからだろ。大切な人だから、大切な思い出だから守りたかったんだろ」

 

 ああ――そうだ、わたくしは……母だけでなく、父も好きだった。いや、好きなんだ。

 浮かんできた光景は――三人で笑っているころの姿。そして、父の瞳――その瞳は、強く輝いていた。

 

「失うことって怖いことだよな――でもさ、それも受け入れないと……前に進めない」

 

 ええ……あなたの言う通りです。

 わたくしは、寂しかった。だから強くならなければ自分の心を保てなかった。

 両親のことを知る方法なんて、いくらでもあります――ましてや、家のメイドに聞けば済むことです。それなのにそれをしなかったのは――怖かったから。

 他人に対して、周りに対して攻撃的なのは――わたくしの寂しさが、周りをうらやむ原因だったから。単なる八つ当たり……子供ですね、これじゃあ……

 

「そんなことないって……俺なんて、信念って呼べるかわからない意地みたいなもんで戦っているし……」

 

 そんなことありません――戦っているあなたは、素敵な瞳をしていましたよ。

 

「うっ……そう言われると恥ずかしいんだが」

 

 ふふ、ちょっとした仕返しです。

 ですが――そうですね、なんだかスッキリしました。

 結局のところわたくしは父と母が好きなんです。案外、簡単なことですわね――言葉にすればはっきりと浮かびます。織斑さん――いいえ、一夏さん。次は負けませんわよ。

 

「ああ俺の方こそ……オルコットさん」

 

 もう、そこは名前で呼ぶところです。鈍感って言われません?

 

「よく言われるけど……なんで?」

 

 ……ハァ…………そこは違うでしょうに。

 

「あ……そうだな。次も負けねえぞ、セシリア」

 

 ふふ、楽しみにしています。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 時間にして一瞬。だけど確かにその邂逅はあったのだ。

 セシリアの顔は安らいだ表情となり、静かに眠っている。ISも解除されてしまって――いわゆるお姫様だっこになってしまっているが。

 

「どうするかなぁ……なんか知り合いがブチギレしている気もするし」

 

 ツインテールが怒髪天のようになっていないといいなぁ……無理だな。

 

『勝者! 織斑一夏!!』

 

 歓声が巻き起こっていて、拍手の音が響いている。

 最後にセシリアの心が見えたようなアレとかよくわからないこともあったが……

 

「まずは、一勝……クラス代表トーナメントに向けて頑張らないとな」

 

 鈴に、簪へのリベンジ……こりゃ気合入れて鍛えないと。

 ピットに戻った時に千冬姉が溜息をついていたのが印象に残っているが……またかってなんだよ…………




固有スキル:フラグメイカー

原作でラウラの時に発動したアレが来ました。
普通にフラグを立てても面白くないので。

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