町中を爆走しているのはいいが、問題が一つ起きた。
「そこのバイク! 止まりなさーい!!」
ただいま、パトカーに追われています。
よく考えたら、インベスの出現で警戒態勢に入ってしまったのでこうなっているのは当たり前なのだ。今までは何とかなっていたが、ニュースになっているような場所に突っ込むのは初めてのことだった。
なにか、方法はないか考えるがいいアイデアが出てこない……
「いやまてよ、このサクラハリケーンはロックシードのエネルギーで性能を変化させている……ってことはロックシードとつながっている、いわばアームズウェポンとかと同じようなもの。なら……カッティングブレードを使えば!」
ブレードを一回、はじいて動かしたとき、いつものスカッシュという音が流れる……そして、一気にスピードが上がった。
予想通り、スカッシュやオーレにも対応しているっぽい。とりあえず、このまま振り切る。
◇◇◇◇◇
現場に近づくと、インベスを包囲するためにパトカーやら自衛隊らしき装甲車やらで中に入るは困難に見える。どうするか悩んだが、インベスが包囲をいつ突破するかわからないため、このまま突っ切ることにした。
「そこのバイク止まりなさッ!?」
「あ、まてぇえ!!」
すいません、待っている時間はないんです。今度は二回ブレードを動かしてオーレを発動する。
すると、僕の姿がだんだんと薄っすらとしてきた……どうやら、ステルス機能が働いたようだ。なんだかスパーキングの能力もなんとなく察しがついた。イチゴアームズではまさに忍者の様な能力を発揮させるのだ。スカッシュなら速度強化、オーレならステルス……忍者、ならばスパーキングならあれしかないだろう。
【イチゴスパーキング!】
一瞬、僕の手がぶれたように見えた……すぐに横を見ると、分身が出現していた。そして左右の分身はそれぞれ別々の方向へ走り出した。
やはり分身を作るのか……実体はないようだけど、結構すごい機能だ……これ、今後役に立つ。いままで人に見られないように戦っていたし、かなり助かるな……逃げる時とか。
「いた、さてと……初めての敵だし、ここは一番使い慣れているのでいかせてもらおうか」
サクラハリケーンから降りて収納し、銀のリンゴロックシードを取り出す。そして、イチゴを外して入れ替える。
「アームズチェンジ!」
【シルバーアームズ! 白銀ニューステージ!】
僕が最も使い慣れているアームズ、シルバーアームズ。
手に持っているのは蒼銀杖、果実の力に対して高い効力を発揮する武器。
僕はこの一年で確実に強くなってきた。それでも、まだ先は見えない……目的地は見えないのは不安だったけど、背中を押してくれたあの人のためにも進むだけだ。
「……いた」
映像で見た通り、赤い体にヤギの様な姿。映像だと角が伸びていたから、距離をとってもダメージは免れない。炎を吐いたりするわけじゃないから、純粋な物理攻撃を主体としたタイプ。
なら、こっちもインファイトで一気に決める。
「――ヤアッ!」
「ッ!?」
ヤギインベスは僕の振るった杖を右手で、受け止め、腰を落とす。どうやらかなり格闘戦に特化した個体のようだ……衝撃を受け流された。このままではまずいと、腰をひねって杖を横なぎに振るう。さすがに、ヤバいと思ったのかインベスは飛び上がってかわした。
僕も一度離れて杖を片手に持ち、様子をうかがう。一度のジャンプで、僕以上の距離を……格闘戦に特化している以上、身体能力は他のインベスを上回っていると思ったけど、ここまでとは……
再び接近する。両者ともに拳と足、己の武器である杖と角、それらを何度もぶつけあう。
力が拮抗している。このインベス……今までの奴とは格が違う。
「これは、アームズチェンジした方がいいかな」
「……ガァ!」
「ガハッ?!」
しまった、そう思ったときには遅かった。頭部に生えている角がドリルのように回転したかと思ったら、僕の体を貫くかのように伸びてきたのだ。飛行できるISもこの角に貫かれたのだろう……予想以上に速い。
「……ブラッド、それとも…………」
ロックシードをどれと交換するか、考えているその時だった。何か大きな音を立てながらこちらへ接近してくる影……いや、光があった。
すでに空は黒くなっている。この光源であたりがどうなっているかわかった。芝生のようだが、どうやら大学か何かの開けた場所らしい。そういえば、ISの展示というか一般公開……なら、当然ISがあったはずだ。一台は壊されたとしても、護衛か予備でもう一台あると考えるべきだった。
「そこの不審者! ここからは私がやるわ! 男は黙って下がりなさい!」
しかも、最近増えているという女尊男卑信者っぽい……これは厄介だ。
女尊男卑とは、ISが女性にしか動かせないことで女性優遇社会に切り替わることで生まれた考え方である。というより、元々レディーファーストとか、女性に配慮されていた面で勘違いした人がさらに助長した結果、なんだか変な考えを持つ人が増えたのである。
……実際には、IS操縦者を確保するための政府の考えであり、言葉にしない徴兵令みたいなものなのだ。ただし、女性限定。このままいくと、女性は必ず軍事訓練を受けるとかエスカレートする可能性も孕んでいるため、女性の中にも当然問題視する人はいるのだが……昔からバカな考えを持つ人ほど発言力が大きいものだ。
「こんな怪物、とっととやっつけてやる!」
「って、待て! ISじゃインベスには勝てない!」
「うるさい! もう男の時代は終わったのよ!」
たった一年でここまで……日本はIS誕生の国だからか、それとも元々潜在的に眠っていた思想が目覚めたのか、なんだかぶっ飛んだ考えの人が増えてしまった。
ちなみに、海外ではそこまででもないとか。
「って現実逃避している場合じゃないな。この状況で有効なのは……二刀流かな」
攻撃と防御のバランスが良くて、手数が多いもの……速度は考慮しなくてもいい。ならば、一つ。
前を見ると、インベス相手にISはそれなりに善戦しているが焦りが見える。どうやら、攻撃を防御しきれていないらしい。時折、バリアみたいのが溶かされるように消えて攻撃が届いている。どうやら果実のエネルギーととことん相性が悪いらしい……世界最強のパワードスーツの弱点が増えた瞬間だった。
女性を死なせるわけにもいかず、僕はすぐにロックシードを取り換えた。
【ドリアンアームズ! ミスターデンジャラス!】
最初に見たときはビビったが、ドリアンなんてものもあるなんて思わなかった。
空から降りてくるトゲトゲの果実。 いつものように展開したそれは、防御のための装甲というよりはタックルでもしかけろと言わんばかりのアーマー。
「……行くぜ」
再び攻撃を食らいそうになっているISの前に躍り出て、両手に持ったドリノコで角をはじく。ちょうど、相手の角の間にドリノコをツッコんで外側へとはじいた形だ。
さすがにひるんだのか、少しのけぞったインベスに追撃を与える。右手で頭にドリノコを振り下ろしたら、左手のドリノコで地獄突き。右肩に切り付けたら、足を狙う。そうやって、反撃の隙を与えずに何度も切り付ける。
と、ここで思わぬ事態……いや、ちょっと考えればわかったことだが、いくつもの銃弾が襲ってきた。
とっさにかわすものの、少し被弾してしまい……なんか、あばらが痛い。骨は折れていないと思うが、思ったよりも威力があるのか……正直、ISの戦闘力を舐めていた。
そう、ISはなぜか銃弾を乱射している。どうやら、僕もろともインベスを倒すつもりのようだ。
「ハァハァ……そうよ、ISが負けるわけないのよ…………さっきのは何かの、まちが――ッ」
だけど、話はそう簡単にうまくいかない。元々ISではインベスに効果の薄かった攻撃だが、僕には通用したことで僕は攻撃の手を緩めてしまった。どうやら同じ果実のエネルギーでも仮面ライダーではISの攻撃に対処しきれないらしい。
しかし、インベスは違う。結果的に、彼女は自分の首を絞めてしまった。
幸い、実体シールドで防御したことで助かっていたが、ふっとばされていた。空中に浮けるISが地に落ちるとは……だが、僕にとってもこれはチャンスだ。今なら、邪魔されずに止めをさせる。
【ドリアンオーレ!】
僕はドリノコ同士を接続させて、エネルギーを収束させる。
そして、インベスに向けて放った。
「ゼヤァアアアアアアア!」
「――ッ!? ガ、アアアアアアア!?」
エネルギーで出来たドリアンが射出され、インベスに衝突した。そして数秒の間ののち、爆散した。
あたりには静けさが戻った……のも、つかの間。今回はとことん面倒事に巻き込まれるらしい。
「……逃がさないわよ、あなたはここで捕まえる」
「助けてやったのにこの仕打ち……今日は厄日か」
「ふざけるなッ! 何なのよ、ISは世界最強の兵器なのに、これは……こんなのは認められない。また、逆戻りよ! 今までのふざけた男が威張り腐る社会に!」
この人にも何か事情はあるのかもしれない……だけど、正直な話、世の中に対する不満なんて誰もが持っているものなのだ。改革とか、頑張るのはいいけど、それで別の誰かを不幸にするのはいかがなものかと思う。
結局のところ、この人の言動は矛盾していた。ふざけた男が威張り腐るのが嫌と言いながら、自分の危険も理解せずに、死地へと来てしまった……今もそれに気が付かず、どこかおびえているようだった。
「……仕方がねぇ、まだ未完成だけど…………特別サービスだ、僕に勝てたらおとなしくつかまってやるよ。だから、全力でこい」
「…………ふざけるなよ、男のくせにッ!」
この先、無茶な特攻をする人は増え続けるだろう。ISによる女性優遇社会は止まることはない。だけど、行き過ぎれば多くの女性が命を散らすことになってしまう。
だから、可哀想だとは思う。それでもこの人をここで完膚なきまでに叩きのめさないと大変なことになってしまう。インベスに対してISが無力である可能性が出た以上、ここは心を鬼にしなくてはいけない。
【スイカ! ロックオン!】
「じゃあ、覚悟してくださいね」
「でかい口を――え、なに? 空に……スイカ?
【ソイヤッ! スイカアームズ! 大玉ビッグバン!】
大きさはISと同等だろう。まだ調整が必要な未完成品だが、十分戦闘に耐えられる代物である。元々、基礎の部分は父さんたちが作っていてくれたおかげで、ここまで僕一人でもこぎつけた。
さすがに驚いたのか女性は唖然としていたが、すぐに距離を取り、狙いを定めてくる。
「男がISを使うなんて、聞いてないわよッ」
「いやこれISじゃないから……まあ少し参考にはしたけど、ね!」
スイカアームズ・ヨロイモード、武器はスイカ双刃刀。巨大なナギナタであるそれを、横なぎにISへたたきつける。銃弾をその間に少しくらったが、予想以上の防御力でISの攻撃をはじいてくれた。
そして、双刃刀が届く。
「キャアアアアア!?」
「まだまだ!」
「――ッ」
「もういっちょ!」
何度も切り付けて、最後には拳で殴り飛ばした。途中から声が上がらなくなったけど……正直、やり過ぎただろうか? なんだかピクリともしない……しかし、どうやらエネルギーが切れたのか戦意がなくなったのか……女性はISを解除してその場に倒れこんでしまった。
「んー、やり過ぎた。誰かに見られているかもしれないし……いや、見られた方が都合いいのかね、今回は」
そうすれば、インベス相手に無茶はしないかも……あ、やべっ――
「――このまま逃げたら、間違いなく捕まる。どうしよう……」
そうだ、包囲網はあるだろうし、空から逃げる? ジャイロモードはまだ未完成。ヨロイモードだけ使うつもりだったから今回は使えたけど、さすがに無茶させすぎるのは良くない。
ならどうする? またイチゴアームズで分身とステルス……いや対策を取られているかも。他のアームズをダメもとで使うか…………ん?
「そういえば、花蓮さんはドライバーを使えばバラでクラックを開けるって……まさか、サクラハリケーンとの連動ってこと!?」
さすがに気が付かなかった。どうやら、最後に思わぬ収穫があったらしい。
すぐにドライバーからスイカを外し、銀のリンゴを装着してサクラハリケーンを取り出す。
発進後、すぐに銀のリンゴとバラを入れ替えて、スカッシュを発動させる。
「思った、とおり!」
目の前にクラックが、花弁のように開いていく……僕はこのまま突っ込んだ。
その後、自衛隊や警察が来たわけだが……間一髪のところで僕は逃げることができたのである。
今回のサブタイトルは色々なものを指しています。
英は一年経ったことでジンバーレベルの強さを身に着けています。ただし、軍事訓練とか受けておらず我流なので、メロン兄さんやシャルモンのオッサンよりは弱い感じ。
ちなみにISはまだ第一世代。実弾兵器や単発式のビームライフルぐらいしか使えない。それでも、今までの兵器の性能を凌駕している。
性能って言っても火力が上とかそういう意味じゃないんですけどね。
ついに、ヘルヘイムへ突入。