一月後のクラス代表トーナメントまでそれはもう地獄の様な特訓を重ねること相成った。
セシリアは基本遠距離から撃ちまくり。それを俺は避けていくわけだが――だんだんと俺の行動パターンを分析していったのか、被弾数が上がってしまっていく。
「どうしたのですか! 避けてみせなさい!」
「それにしたってきつすぎるだろ!? 零落白夜無しは辛い!!」
「今回の課題は、いかにエネルギー無効化を使用せずに戦えるかです。白式のスペックなら軽く避けられるはずですわよ」
「そりゃそうかもしれないが……やっぱ無茶にもほどがあると思うぞ?」
っていうかセシリアだってまだ近接武器をコール無しで出せないだろうが。
「……わかりましたわ。そこまで言うのならば――わたくしも本気を出しましょう。以前の敗北から学びました。フレキシブルが使えるようになればビームを曲げられるのですが――今はまだ無理です。ならば、半自動で動かして隙の無い攻撃にするまでですわ!!」
「うおわああああ!?」
よ、余計なことを言ってしまった。いや、言っていないハズなんだけどなんで俺の周りの女子は心を読めるんだ!? 俺の顔に出やすいだけなの?
しかしこのビームの雨をよけないことには――
「うぎゃぁあ!?」
「まだまだですわー!!」
――くそっ――――だんだんと読めてきたが、まだ足りない。
この特訓の目的は――対遠距離武装に対する戦術――を身に着ける前に、対したときに動けるようにするため。
簪相手に戦ったときに、ミサイルの雨を喰らったからなぁ……どうにかして避けないといけないんだけど……
「ほらほらほらほら! まだまだ行きますわよ!」
「ああもう! こうなったら破れかぶれだ! 新しい瞬時加速を編み出して――びぶるち!?」
「そううまくいくわけないですわよ!」
「せ、セシリアの時は上手くいったのに……」
今やろうとしたのは繊月加速とは別で、新たに思いついたものだったのだが……失敗して逆にダメージが倍化してしまった……無理があったかなぁ…………
「錐もみ回転をわざわざ瞬時加速を使用してまでやるおバカがどこにいるんですか……」
「ここ」
「――――」
「やめてくれ、そんな怖い顔しないでくれ……」
「ハァ……いいですわ。役得もありましたし。しかし、そろそろ気が付いているんですか?」
「何がだ?」
「――――は」
「いや、何の話なんだよ……」
「ですから、鈴さんとのことですわよ」
「えっと、それってこの前の約束がどうとかって話か? やっぱ鈴が忘れているだけなんだと思うんだけどさ、そこんところビームがゴン太で襲ってくるぅぅぅっ!?」
「おほほほほほ! 一夏さん、乙女心をクラッシュするとは――いっぺん死んでください」
「なんで――い、嫌ぁああああ!?」
ああ、空はどうして青いのかな? ――それはね、真っ赤な血を洗い流すためなのさ――なんて馬鹿な考えが思い浮かぶほどに、光が俺を襲ってきた。
しかし――絶対防御があるから傷一つないんだぜ。あはは、精神だけ痛めつけられちゃった――がくッ
結局のところ、そのまま何日もこんな日常が続いていったのである。
◇◇◇◇◇
私は、弱い。
力はあの女に及ばず――精神なんてこの学校で一番弱いんだろう――それこそ、一夏にも負けている。心のどこかで私は一夏を見下していた。
いや、一夏に勝てていたことはなかったが――一夏の名前が全国大会になかったことで、予選敗退でもしたんだろうと思っていたのだ。一夏が剣道を続けていると信じてやまずに。そんなわけないのに。
力に溺れて、自らのうっ憤を晴らすためだけの剣で優勝してしまった私は――ひどい罪悪感を覚えた。対戦相手のないた顔が頭にこびりついて、離れてくれない。
『でもぉ、そんな顔を見るのが快感だったりして!』
そんなわけあるか……そんなこと、あるはずがない――なのに、私は優越感を覚えてしまった。
そして、いつの間にか天狗になっていた私は――ぽっきり折れてしまった。今のままでは一夏の隣に立てない。一夏と一緒にはいられない――そう思うと、酷く自分がみじめになる。
『うーん――流石にこのままってのもねぇ……ふふ、力が足りないのなら――――よそから持ってくればいいわよね』
だがよそから持ってこようにも……いやそんな方法で強くなっていいのか?
『――IS、欲しくないの? 彼女の自信は専用機という武器から来ているのよ――それがどういうわけかわかるかしら?』
――ああ、そうだ……専用機だ。
だがそのままでは姉さんも渡してはくれないだろう。
『だからね――貴女の本気を見せればいいのよ。まずは訓練機から始めること。そうね、しばらく先の全校生徒参加のトーナメントまでに鍛え上げるのよ。そして、その力を認めさせたうえで姉に頼みましょう。大丈夫、力はちゃんと残っているのよ――コアとつながることができれば、後は分かっているハズ』
そうだ――私は、あの篠ノ之束の妹なんだぞ――姉には劣るだろうが――――
「機械を扱うのは――得意だったんだ」
――記憶が、再び開いていく。しかしそれが良いことなのか悪いことなのかはもう判断がつかなくなってしまっていた。私にとって一番大事なのは――一体なんだったのだろうか?
しかし今の一番の目的は分かる。それは――ただ、さらなる力を手に入れるのだ。
「ISを動かし、身体を慣らしていくしかないか……しかしそれもまた一興。予定を詰めていかなくては――さらに先を見据えて、そうすれば――一夏だって私を見てくれる。そうすればもう寂しくなんかない」
ずっと、ずっと一緒に――死ぬまで、離さない。
◇◇◇◇◇
――ふと、悪寒を感じた。ゾクッとするというよりは――もっとおどろおどろしいナニカ。
「うう、セシリアのせいだな」
「何をおっしゃいますか! 一か月で立派に戦えるようにして見せますわよ!」
「それが厳しすぎるというとるんや! っていうかあのサンドイッチはなんだ! 疲れていたから思わず食べちまったじゃないか――一料理人としてゆるせん!」
「あ、その……あれは謝りますけど――それとこれとは話が違いますわ!」
「問答、無用!!」
「わああ!? いきなり加速してどうしたのですか!?」
ちなみに、この時の俺は今までで一番素晴らしい動きをしていたという。
「ええい、ミサイル――切り裂いた!?」
「ははっは!」
「おのれ!!」
――まあ頭に血が上っていたから、すぐに落とされましたがね。
しかし、一番いい線だったのは間違いない。
「次こそは……ん?」
「ええ、次は行けるかもしれませんわね――エネルギー回復後、もう一度やりますわよ」
「わかった……」
ふと、あることが気になった。最後斬りかかったんだけど――とくに何も注意されなかったのだ。
いままでだったら、攻撃しようとしたら怒られたのに……あと、防御に頼り過ぎるなと白夜も使用すると渋い顔される。しかし、いまは怒られなかった? ――そうだ、零落白夜だ。
「さっきは使わないで斬りかかったから――なら、この特訓の目的は」
――そうして、すぐに始まった訓練では――――セシリアの望み通りの答えで一撃を決めることに成功。
話は簡単。いかに零落白夜を使わずにセシリアに勝つかということなのだ。
ビームを受け流し、時には突っ込んで最小のダメージにとどめて接近する。つまり、本来あるべき近接特化の戦い方。いままで便利な盾や加速技能でごり押ししていたからな――こういう純粋な見切りこそ、一番重要なんだ。
「では、第二ラウンド開始ですわ!」
「――た、助けてー」
そこからはさらなる熾烈を極めた訓練というなの地獄のフルコース料理だった。
「いいですか、光より早く動くのです!」
「それおかしいから!」
時には変な知識をしいれてしまったセシリアの暴走があったり。
「ええい、邪魔ですわ! 鎧が邪魔ですわ!」
「待つんだセシリア! ISを脱ぎ去るとかおかしすぎる!」
なんか別の境地にたどり着いたセシリアが生身で戦いだそうとしたり……本当どうしちまったんだよ。
「いきます――ファイヤー!!」
「ビームを束ねて――どういうことだぁあ!?」
ビットとライフルのレーザーを混ぜ合わせることで、極大のビームを放って来たり。あ、これは前にやったか。
「うええええん!? 許してですわー!?」
「まだだ! 料理というのはもっと血反吐吐くまで研鑽するものなのだ!」
「色々おかしいですわよ!!」
俺が暴走したりなどといろいろあったわけである。
そんな日々の中だけど――鈴とは会話もできていなかった。向こうが避けているっていうのもあるが、あの約束の真実がまだわからないからこそ、あいに行けないんだ……
たぶん、次に間違えたらアイツを泣かせてしまう。それだけは、なんとなくわかっている。だからこそ――俺は約束の答えを知りたい。だが、気が付いているらしきセシリアに聞いても、怒られるだけだし……やっぱり自分で気が付かないとだけっていうことんだろう。自問自答だけじゃ解決しないけど。
「はぁ……どうするべきかなぁ…………」
クラス代表トーナメントまで、残り1週間。俺はいまだに悩んでいるのだった。
◇◇◇◇◇
結局のところ、あたしは一夏の隣に立ちたくて強くなった。
力なんて結局のところ手段なわけだし、目的さえはっきりしていればいい。一夏を支えられるようになりたい。そんな女を目指して努力した。実ったかはわからないけど、自信はあったんだ。
まあ、そんなときに――失敗したけどね。
「ハァ……」
「もう鈴ったら、今日何度目の溜息よ」
「だって、一夏が……」
「自分から話しかければ?」
「うう……どういう顔したらいいのかわかんないよ」
「ほんと、強い感じに見えてそういうところよわいわよね……一か月ぐらいの付き合いでもすぐに分かるわよ」
「ティナのいじわる……」
「……やべ、これやべ」
「?」
「ううん、こっちの話……それにしても、なんで織斑君のことが好きなの? そりゃ顔はいいし、代表候補生相手に勝つぐらいなんだからわからなくもないけど……」
「……最初はさ、険悪だったんだ」
「うそだー……え、ホントなの?」
「うん。あたしが悪かったんだけどね……いきなり殴っちゃったのよ」
「うわぁ……で?」
「まあ、そこら辺は恥ずかしい話だから言いたくないんだけど――そこから、いじめられていたあたしを一夏が助けてくれたの」
「ヒーローね。憧れるわ……ああ、私にもそんな人がいればな……」
「……まあ、そん時は淡い思いみたいなもんだったんだけど――一緒にいるようになって、あいつのいいところも悪いところも、全部ひっくるめて好きになっていたのよ。だって、それが人を好きになるってことでしょ」
「お、おお……」
「そんなときにさ、あたしの作った酢豚を食べてもらったんだけど――惨敗」
「あ、あはは……」
「味も見た目もダメ。でもね――全部食べてくれたんだ。それがすごくうれしくて、思わず言っちゃったのよ。恥ずかしいから、そのままの使い方じゃなくて――アレンジしてだけど」
「それで、毎日酢豚なのね……」
「まあ、あいつ以外なんて考えられないって、全てをかけてもいいと思ったのは、この後なんだけどね」
「あと?」
「流石にいろいろ事情があって言えないんだけど……あいつだって、一人の人間だっていうこと。弱い部分もあるし、脆いところだってある。あたしはさ、あいつを支えてあげられるようになりたいんだ」
「……織斑君にはもったいないわね。もう私が貰うから家に嫁に来てよ!」
「いきなり何を言っているのよ!? ティナは!?」
「っていうか一番の障害の織斑先生はどうするのよ?」
「大丈夫よ――昔の千冬さんのことは色々と知っているし、面白い話なんてそれほど山のようにあるのよ」
「うわあ、悪い顔」
「ま、それだけじゃなくて――千冬さんに勝てたら、認めざるを得ないわよね」
「―なん、だと」
「それをやるのは、もっと先なんだけど――ね」
だから――待っていなさいよ。一夏。あんたは必ず、このあたしのものにするんだから――覚悟しなさい!
◇◇◇◇◇
――また、ゾクッと……きた?
「ふーむ……これはどうしたことやら?」
「どうかされたのですか一夏さん」
「いや、なんでもないよ――しかし、繊月加速はかなり使えるな」
「初見殺しの技ですし、接近しなければ意味はありませんけど」
「そうなんだよなぁ……課題は、いかにして接近するかと、零落白夜に頼り過ぎない戦術か……」
「あ、そういえば一夏さん――わたくし、サンドイッチを作ってきたのですが――あら?」
――は、ははは……ぞくぞくして震えが止まらないぜ……
ヒロインの対比。似たようなセリフでありながら、決定的に違う。