そして――
ついにやってきたクラス代表トーナメント。どんな運命のいたずらなのか、俺と鈴は――第一試合でぶつかることとなってしまった。
観客は既に満員。特訓に付き合ってくれたということで、セシリアのみが千冬姉たちもいるピットにいる。
『一夏さん、準備はよろしいですか?』
「ああ……織斑先生、そろそろゲートを開いてください」
『わかった――とりあえず、頑張れよ』
「はい!」
ゲートが開き、少しの間をおいてから明るい――日光に照らされたアリーナに降り立つ。ほぼ同時に、鈴も降り立って戦闘準備は完了という風体だ。
その瞳には勝つこと以外考えていないぞって闘志が宿っていて……こりゃ、強敵だな。
「一夏、最後に聞くけど……約束の意味は分かったんでしょうね?」
「……すまん、まだわかってねぇんだ…………」
「ハァ……ま、あんたのことだから仕方がないとは思うけど――正直、加減できないわよ」
「それこそしてもらう必要はない。全力で来てくれ……あと、一つ良いか?」
「なによ」
「賭けを一つしようぜ――俺が勝ったら約束の意味を教えてもらう……鈴が勝ったらなんでも言うことを一つ聞く。それでどうだ?」
「……上等!」
鈴のモチベーションがかなり向上するため――できれば使わない方がいいんだろう。それでも、俺たちにはその約束の方が重要なんだ――クラス代表としては勝つことを目指すべき。しかし、今日ばかりは私情を優先させたい。
「知らないまま、わからないままにしておくことなんか――できないもんな!」
「だったら、その行動で示しなさい――それがあんたっていう男でしょ!」
「分かってんなら――覚悟しろよ! 本気の俺の力を!」
「そっちこそ――この一年で磨いたあたしの力、括目しなさい!」
――バトルスタート。その音声と同時に、俺たちは激突した。
雪片と青龍刀、火花を散らせながら互いの力は――拮抗。それもそのはず。筋力そのものでパワーが決まるわけではないのだ。しかし、俺にだって負けられない理由はある。
「――おおおお!!」
「生憎だけど――その動きは分かってんのよ!!」
青龍刀が二つ。連結されて――後ろに突き付けてきた。鈴は前を向いたままだが俺の行動を予測してのこと。俺も繊月加速で鈴の背後に回ったが……それも分かっているんだよ!
ガキンッ――という音と共に、青龍刀はなにか硬いものに捕まってしまい、動かなくなる。さすがの鈴も慌てたのか後ろを向いたが――
「なっ――!? 盾で防御して、挟んだ――(しまった、展開装甲である程度形を変えられるってことは、それではさんで変わり身みたいに使って――)――キャア!?」
「繊月加速が連続で使えないわけじゃないんだ! 零落白夜なら一気に削れる! あと数撃で俺の勝ちだぞ!」
「ぐっ――それでもあんただって油断し過ぎよ!」
「え――――おぐぅ!?」
しま――衝撃砲!? 不可視の弾丸は、事前に弾道を予測していればかわせるのだが、こんな至近距離じゃ避けようがない……いったん距離をとって、呼吸を整え――なに!?
「砲弾加速! 瞬時加速の応用を考えているのはあんただけじゃないのよ!」
「なるほど、衝撃砲を利用した加速――だけど直線過ぎる!」
「当たり前――これはあたし自身が、砲弾なんだから!!」
最初の激突よりも大きな音が鳴り響いた。砂煙が巻き上がり、アリーナは見えづらくなっていることだろう――俺と鈴のシールドエネルギーは共に残り少なく、あと一撃でも食らえば危険。
正直、鈴を相手にするとお互いの手の内が読め過ぎていて――短期決戦にしかならない。
「――うおおおお!!」
「このぉおおお!!」
拳と刀が互いに迫る。たしか、甲龍の拳には小型の衝撃砲がついていたはずだ――かわさなければ負ける。しかし、どうやって? ISの補助により思考が加速していくが……案が思いつかない。
繊月加速では再び斬られるか、開いている方の手で衝撃砲を喰らう。もしくは、背中のスラスターを使われるか? 何にせよ、一歩足りない。
真っ向からのぶつかり合い。接近戦型がゆえの捨身の戦い。それゆえに、お互いが行えるアクションはあと一つぐらいだ。
(――――今やらないで、いつやるんだよ!)
身体を回転させて、瞬時加速を行う――螺旋を描く形でエネルギーを取り込み――体を揺らして一気に不安定な放出を行う。
「――なっ!?」
「――――朧月加速」
身体がぶれるように、霧に紛れるように見えなくなる。俺自身うまく動けなくて攻撃に転じるのは難しいが――鈴の攻撃をかわすことには成功した。
そして、最後の一撃を――決める、その一瞬前であった。空から赤い光が降ってきたと思ったら、何かが割れる音が鳴り響いたのは。
「キャア!?」
「鈴!!」
思わず鈴を抱き留めて、飛び退いてしまった――しかし、その判断は正しかったのだろう。
客席の上にシャッターの様な障壁が展開されて、通信も阻害されているのかノイズが走り始める。ライトが瞬いたかと思ったら、全て電源が切れるし――先ほどまでたっていた場所に、爆発も起きた。
「いったい、何が起きてんだよ……」
「い、一夏!? ちょ、いつまで抱きしめてんのよ!」
「あ――わりい!」
「……も、もうちょっとやってもらえば…………」
「鈴?」
「なんでもない! ――そうよ、今はそうじゃなくて、さっきの爆発……」
煙が晴れると――そこには……白色の巨体と、普通の人間のサイズの人影。だけど――その姿は前に英さんに見せてもらったことのある、要注意人物。
「……仮面、ライダー?」
「久々にその名前を聞いたよ――ああ、妬ましい名前だ」
ドングリアームズを纏った男がそこにいた。
傍らには巨大なインベス――イエティインベスを従えて。
「どうも、テロリストです。君らに恨みがあるかないかで言ったら少しあるけど――とりあえず死んでくれ」
◇◇◇◇◇
どうして私は見ていることしかできないのか――一夏が連れ去らわれたときもそうだ。結局一夏を助けたのは英たちで、私には何もできなかった。
今もテロリストがそこにいるというのに、私には何もできない。
「くそっ――山田先生! 防壁の突破はどこまで進んでいる!?」
「ダメです! 情報戦特化のISを複数台使われているみたいで、時間がかかります」
「世代外のISか……」
一般的に知られているISとは設計思想が違うため、世代外のISと呼ばれているIS群。スレイプニルやグラニ、アメリカなどが所有してる潜水艦ISや、土木作業用ISなどの特殊なISの総称。今回使われてしまった情報戦特化もその類。
「三年の精鋭たちは?」
「いま対処していますが――無理です」
「更識は?」
「一般生徒の避難誘導で手いっぱいみたいですね……パニックを起こした子も多いみたいですし」
「……どうするべきか…………」
「織斑先生、わたくしだけでも突入はできないのですか?」
「無理だ。防壁のレベルが最大まで設定されている上に、閉じ込められてしまった――せめて通信だけでも回復できれば……」
「でしたら、わたくしのブルーティアーズを使います。通信と映像だけなら、なんとかなるかもしれません」
「……わかった。山田先生、アシストを頼みます」
「は、はい!」
ほどなくして、映像が表示されて――――一夏が、ISもつけずに巨大な怪物の目前にいた。
「――い、一夏!?」
だが、一夏は――私の想像を超えて成長していた。もう、私が守る側ではなく守られる側に近くなっていることを、この時初めて知った。
◇◇◇◇◇
「一夏はどうしたのだろうか――一瞬見えた、あの怪物……」
叱咤激励でもしてやろう。そうだ、そうすれば一夏も私を見てくれる。そんな馬鹿な考えが浮かぶほどには、箒もパニックになっていた。
されど、それを止めたのは――いつもの冷静な声。
『ここで動くのは得策ではないわぁ……ここで変なアクションをしたら、もらえる専用機ももらえなくなる』
「ああ、そうだった――それに一夏を信じなくてどうするのだ」
『まあそれでもいいわけなんだけどねぇ……とりあえず、周りのみんなを止めないと怪我人が出るわよー』
「……怪我人が出るのはまずいな。それに、みんなを落ち着かせれば一夏に褒められるかもしれん」
そうだ。それがいい。
結局のところ――箒の歪みに気が付く者は誰もいなかった。その歪みは結果的に、バカな行動を抑えたのだから。
◇◇◇◇◇
「テロリストが、何の用だよ――って言っても聞こえないか」
「一夏、どうするって――言っても聞かないか」
「ああ……それより、鈴…………残りのエネルギーは?」
「ほとんどない……なんで、足手まといになっちゃうかな…………強くなるために、鍛えたのに」
……鈴が落ち込んでいると、調子が出ない。やっぱ、隣りで笑っていた方がこいつらしいし、俺も元気が出る。
だからこそ俺は――エネルギーバイパスを甲龍と白式の間に構築し、全ての残量エネルギーを鈴に譲渡した。
「い、一夏!?」
「援護は任せたぞ――鈴」
「……うん!」
その瞳に決意が戻ってくる――それでこそ、俺のもう一人の相棒だぜ。隣で戦うって言ったのは鈴なんだからな、自分で言ったことはちゃんと守れよ――まあ、俺が言えたことじゃないんだろうけど。
しかし簪に教わっていて良かったぜ……この裏技。
「おやおやおやぁ? 作戦会議は終了かな? ま、それでもこのイエティインベスに勝てるわけはないんだけどさ!」
「ガアアアア!!」
「それでも念には念を入れさせてもらうよ――!」
【カキアームズ! 幻影ボマー!】
オレンジ色の鎧――それは、忍者を彷彿とさせるものだった。
カキのヘタのような手裏剣と、カキの実の形をした――音声からして、爆弾か?
「ランクはドングリよりも上――亡国機業としても、以前殺し損ねた君をいい加減始末したかったんだよね……Mには怒られるだろうけど、色々と厄介な君は放っておけない。危険分子は即刻排除だよ」
「勝手な言い分だな――俺は、あの時みたいなことはもうたくさんだ! それでも俺だけならいい。でもなぁ……俺の大切なものに手を出すって言うのなら、容赦はしない!」
その時の俺は気が付いていなかったが――千冬姉のいるピットからのアクセスで、一台のカメラが復帰した。そして、この光景を見られたことを――まあ、知っていても止まらなかっただろうけどな。
「変身!」
空に開かれるクラック。緑色の塊が俺に装着され――久々になる俺の変身がここに完了した。
【メロンアームズ! 天下御免!】
右手には無双セイバーを。左手にはメロンディフェンダーを。
巷じゃ仮面ライダー斬月なんて言われているけど――俺はそこまでカッコつけるつもりはない。
「ただ、全力で叩き潰す! 英さんに引き渡して、一網打尽にしてやるよ!」
「出来るモノなら――やってみやがれぇええ!!」
「ガアアア!」
「――あたしがいること、忘れないでよね!!」
衝撃砲。空気の塊を放つということは――インベスにもそれは有効。
「ゴガ!?」
「最近のISのインベス対策なめんな! あたしの甲龍なら、足止めぐらいわけないのよ! 一夏、さっさと決めるわよ!」
「ああ!!」
爆弾が投げつけられるが――俺はその全てを盾ではじき、カキの鎧をまとった男に迫る。
「――なに!? 年季が違うはずなのに、どうしてこうもあっさりと――」
「悪いが――逃げ腰のお前が勝てるわけがないんだよ!」
「――アガッ!?」
シールドバッシュ。一撃だけでアリーナの壁に激突した男は――あっさりと意識を失った。
鈴がひきつけてくれている間に――イエティインベスとやらを何とかしないと……
「ガアア!」
「こ――の!」
「鈴! 下がって援護!」
「わかったわ! 一夏こそしくじらないでよ!」
ああ――と返事しようとしたが、冷気が俺を襲ってしまう。
驚くのもつかの間――体中に、痛みが走る。
「ぐ――――だけど、負けられるか!」
ブレードを3回たたき、上に飛び上る。冷気が俺を襲おうと口を開いて――そこに無双セイバーを投げ込んだ。
「ギアアアア!?」
「鈴――撃て!!」
「いっけぇえええええ!!」
放たれた衝撃砲を――俺はメロンディフェンダーで受け止める。この盾だって――エネルギー吸収の力がある。
【メロンスパーキング!】
遅れて聞こえてきた音声と共に、盾にエネルギーが充填され――一気に増幅。
電撃がほとばしり、光り輝き始めたそれは――巨大な剣にも見えた。
「うおおおおおお!!」
身体をひねりながら、縦に一閃。真っ二つに分断されたイエティインベスは――爆発共にこの世を去った。
そうして、俺はこの戦いに勝利したわけだが――そう話はうまくいくはずもない。
「――――あ、がああ!?」
「一夏!?」
空から降ってきた光の槍。それが俺を貫いて――変身が解除されてしまう。
薄っすらと残る意識で見たのは――黒に近い紫色の、巨大な蝶であった。
そんなわけでグリドン久々の登場。オリジナルアームズを引っ提げて。
じつのところ、原作入ってからの展開は少しプロットを書き直しています。まあ、大幅な変更というわけでもないので、更新に苦労するほどではないのですが。