EP135.恋の花
6月に入り、梅雨の季節がやってきた――と思ったのだが、今年はそれほどでもないので不思議に思う。まあ、じめじめしたのは苦手だし、洗濯物が乾かないのは嫌だからいいんだが……
二次移行を果たした白式のデータなどをとる日々もようやく終わり、今日は弾の家に遊びに来ている。ちなみに、鈴やセシリアたちもこの前の打ち上げというわけではないが、ひと段落したということで一緒だ。箒も誘ったんだが……訓練機の予約がちょうどかぶってしまったのでそっちを優先しろと言ったら涙を流して喜んでいた。うん、箒は熱心だなぁ。
「一夏、お前に一発本気の拳を入れないといけない気がするんだが……」
「なんでリアルファイト? ゲームで勝っているからいいじゃないか」
IS/VSという、第二次モンドグロッソの機体を使ったISのゲームだが。内部数値いじるだけで各国版が作れるというぼろい商売だなぁとも思ったりするのだが、いざ世界大会をしようとしたらもめにもめたという経緯がある――どこぞの青りんご博士が協力しているため、世界大会向けの全機体がシビア設定バージョンが販売されることになって解決したけど。あの人は忙しいのか暇なのか……
ちなみに、隠しコマンドを教えてもらったりしているんだが……使ってもいいんだろうか?
「イロモノは使いこなすと強いが……暮桜が入っていないのが悔やまれる」
「それ、盛大な自虐か?」
「弾、世の中にはいってはいけないこともあるんだと思うぞ……すまん、俺のせいだよなぁ…………ハァ」
「千冬さんが暴走したせいともいえるがな……なんで蘭に感染してんだよ。しかもサークル仲間って」
「言うな……俺も最近知ったんだよ。っていうか、なんで雪片を魔法のステッキみたいにして持ち歩いてんだ……流石に俺も怒ったけど」
「うわぁ…………っていうかISに入れなくていいのか?」
「昔、対IS用装備を作った時の技術の流用だとか言ってたけど……たぶん英さんがつけている右手の腕輪関連だな。あれ使って生身で千冬姉に勝っているみたいだし」
「お前の周りにまともな人はいないのか……いや、俺も同種だったわ」
「だなぁ……よし、もう一戦するぞ」
「ならば――俺はテンペスタで行くぜ」
「シビア版でも大分チートなあれか…………なら、こいつで」
「――え、なにそれ」
「スイカアームズ。隠しコマンドを入力すると使えるんだぜ。ちなみに英さんが持ち込んだとか……」
「何やってんだよヒーロー!?」
本当なにやってんだろうなぁ……ちなみに勝負は俺が負けた。実はかなり玄人向けの仕様なのである。IS相手には強いはずなのだが……ゲーム上だとエネルギー数値が最低値。
「当たれば、当たれば勝てるのに……」
「はっはっは! まあ当然の結果だな――で、いい加減何があったのか話せよ。女性陣が蘭の部屋で恋バナやっている今がチャンスだぞ」
「そ、そうか――恋バナとはタイムリーな話題でやんすね」
「マジで何があった!? 動揺するにもほどがあるぞ!?」
そ、そんそ、そんなことこと、ね、ね、ねーYO!
「本当に何があったのか話せ。簡潔にだ」
「…………り、鈴が俺のこと好きだって……」
「うん知ってる」
「――え!?」
「いや、知らないのお前だけだったから――え、なに? 鈴の奴告白したの」
「そ、その……俺が寝ていると思ったのか…………」
「あぁ……なるほど」
「……いきなりキスされ――ぶほ!?」
「この男の敵め! っていうか女泣かせになってるだろお前! いつか絶対に背中刺されるぞ!」
「…………」
「反論ぐらいしろよ……」
「すまん……」
「ハァ、マジで重症だな。で、それだけなら悩まないだろ……鈴の気持ちにこたえていないあたり、なんかあるのか?」
「……俺なんかが鈴に好かれていてもいいのかなって…………」
「…………一夏、お前って本当にバカ」
「言うな。わかってる……こういうことで悩むこと自体ダメなんだってことぐらいはな」
「だったらどうして悩んでんだよ」
「俺はさ、守るために強くなりたかった――でも、鈴は俺の隣に立ちたいって言うんだ……俺にとってのいてほしい位置と、鈴がいたい位置が違うって言うか……」
「……そうだなぁ…………俺にも何とも言えないし、口を出すようなことじゃないんだが――はっきり言うぞ。お前にとって鈴はどういう奴なんだ?」
「どういう奴ってそりゃぁ――」
大切な人。背中を押してくれた恩人。幼馴染。言葉にすれば、色々と出てくるが――よくわからない。
「なんていうか、親がいないからよくわかんねぇんだよ……男女の仲とか」
「……一夏、それは甘えだ。それを理由にしちゃいけない――それに、親じゃなくても参考って言うか、お前にとって恋人とか夫婦とかがどういう感じか示してくれる人はいるんじゃないか?」
――そうだな……俺の見てきた背中。無茶ばかりするヒーローと、その隣に立っている女の人。そういえば、あの人たちもお互いに支え合って隣で……
言葉にすれば簡単だよな。でも――
「やっぱりさ、すぐには答えを出しちゃいけないような気がするんだ……自分と向き合って、それから改めて言葉にするべきだと思う」
「そっか……ちゃんと自分でそういう答えをだしたのなら、それでもいいんじゃないか? でも、必ずその先の答えも出すんだぞ。どちらにせよな」
「わかってる――まずは、今までしっかり会話できなかった分鈴と話してくるよ――」
ドアを開けて、蘭の部屋に入る。鈴、俺はもう逃げ――げふ!?
「いいい、一夏のケダモノ!!」
「一夏さん、女性の部屋に入る時はノックをしてくださいな」
「なんで鈴さんが着替えているときにジャストミート……妹属性ではやはり不利なんですか……」
「らんらん、そういう問題じゃないとおもうよー」
「一夏……さすがラッキースケベの申し子」
「織斑君め……鈴の下着姿を見おって…………追撃しようかな」
薄れゆく意識のなかで見たのは――IS学園の制服ではなく普通の服に着替え中だった鈴と、すでに着替えていたセシリア、のほほんさん、簪、ハミルトンさん……あと、部屋の主の蘭の姿であった。
「し、下着姿をみて――忘れてもらうから」
「まって、マウントポジションは――ギャァアアアアアア!?」
俺の悲鳴をBGMに五反田食堂で昼食を食べていた人たちは――ああ、懐かしいな――と、思っていたという。
◇◇◇◇◇
「いい加減にしないと衝撃砲で吹っ飛ばすわよ」
「はい、本当に申し訳ありませんでした」
「IS学園の外に出たので、普通の服に着替えたいと言い出さなければ良かったのでしょうか……」
「いいんじゃないかなー……おりむーだったら普通にしていてもやらかしたとおもうしー」
「それが一夏。あのスキルは参考になる……」
「まあわかりますけどね……夏の新刊の締め切りが近くてもネタが近くにありますから」
「今年はついに壁。ふふ、ふふふ」
「あなたたち、なんか暗いわよ…………」
「暗いんじゃなくて腐っているんです」
「ごめん、私はそっちじゃないから」
「何の話よ……っていうか腐っているってなに?」
「ハミルトンさんだっけか? あまり気にしない方が良い……取り込まれたら抜け出せないぞ」
「う、うん……そうするわ」
俺の回復を待ってから昼飯を食べているんだが……俺はずっと鈴に謝っている次第である。五体投地もするべきかと思ったんだが……流石に止められた。
しかし大所帯だなぁ……
「ところで簪、さっきからあそこで新聞紙に穴あけてみてくる長コートの女の人がいるんだけど知り合い?」
「知らない人」
「いや、顔似ているんだけど……髪色もそっくりだし、サングラスかけているけど眼も似たような……」
「知らない人。気にしないであんな不審者」
「お、おう」
「たしかあれって生徒か――ごめん、知らない人だわ」
鈴が何か言いかけたが、簪の眼光が鋭くなったので口をつぐんでしまった……なんとなく関係性は分かったのだが……一体ここまで変にこじれた理由はなんなんだろうか? 不審者の前にいるのほほんさんに似ている女の人が頭抱えているし……
のほほんさんは何か知っているだろうけど……我関せずで食べてるよオイ。
「おい弾! そっちのお客さんに料理もっていってくれ」
「俺かよ……あんまり関わり合いになりたくないけどなぁ…………」
「敵情視察よろしく」
「敵情視察!?」
「か、かんちゃん!? そこまで言うの!?」
のほほんさんまで驚いちゃったじゃないか……とりあえず弾、頑張れ。
「仕方がねぇな……」
結局料理を運んで少し会話しているらしい。聞き耳を立てれば聞こえる距離なので、俺たち全員耳が大きくなっているかのような錯覚を覚えた。
なんか会話が弾んでいるようだが……
「IS学園の生徒会の人なんですか」
「え、ええ……あなたは、織斑君の友達?」
「はい! 五反田弾って言います!」
「私は、布仏虚。そこにいる本音の姉で、三年生です」
ってそっちと会話が弾んでいるのかよ!?
なんか楽しそうだし…………もう一人の方に注目してくれないか!? なんでアドレス交換してるのどういうことだ!? のほほんさんが「お、お姉ちゃんが逆ナン? え、どういうこと?」って放心しているじゃないか……
と、そこで不審者のほうがおもむろに立ち上がると――
「虚、なんだか風が騒がしいわ――いくわよ、風がやむ前に」
「ちょ、お嬢様!? すみません、代金です――待ってくださいお嬢様!!」
……え、ええェェ…………
「何、アレ……」
「中二病?」
「なんとも言えないわね……学園は大丈夫なのかしら」
「あ、あはは…………私、IS学園の受験やめようかな…………」
「やめた方が良いわよ。あんなのはいるし、それに危ないことも多いし――一週間ぐらいで、かなりの人がやめたしね…………それぐらい、ショックを受けるわよ」
「急に真面目な話をいれないでくださいな……まあ、あんなことがありましたし、笑い飛ばしたいのも無理はありませんね」
そう、この前の騒動でIS学園をやめた人はかなりの人数になる。さすがに上級生の中にはそんなにいなかったらしいのだが……一年生は、テロという出来事を受け止めることができずにいた人が多かったのだ。
ここに遊びに来た俺たちは比較的精神的に余裕のあったメンバー。箒も動じていなかったのは凄いと思ったが――むしろあんなことがあって訓練に励もうとするあたり凄いと思う。アイツがISの予約をとったのも事件後。強くなるのはいいことだと思うが……無茶してないか見ておけばよかったか?
まあ、そんなわけで――俺や鈴は元々相手がどういう奴らか知っていたし、セシリアや簪、のほほんさんにしても情報は持っていた。ハミルトンさんは留学生だから事前に覚悟してきているらしい。どうも留学生は講習とかを受けているらしく、結構狭き門なんだとか。
「私もニュースで見ましたけど……あんなテロが今後もあるんですか?」
「まあ、あたしたちは覚悟の上なんだけどね…………一夏、英さんがモンドグロッソが終わったあとに戦った場所って……」
「IS学園。アリーナだ……あそこはモンドグロッソの会場を改装して作ったからな…………話には聞いているよ」
ガシャドクロインベス。負の情念が集まって誕生したイレギュラーな個体。そして、この前のダイダラボッチインベス。巨大インベスが同じ場所に現れた。しかも、どちらも人型の巨大インベス。
これは偶然か?
「……考えていても仕方がないか…………それよりもまずは、全生徒ぶつかるトーナメントの方だよな……」
「先生たちも組み合わせ考えるのが大変だろうけどね」
「ですわねぇ……まあ二次移行を果たしましたし、フレキシブルも使えるようになったわたくしの敵ではございませんが!」
「あたしなら重力レンズでビーム防げるわよ」
「俺もシールドビットがあるから防げるな。あれも零落白夜使えるし」
「私も……荷電粒子砲でビームの軌道を捻じ曲げられる」
「せ、世知辛い世の中ですわ……大体、なんでインベスがいるのにビームを搭載しているのですか…………普通に考えて不利ではありませんか」
「いいじゃんセッシー……私なんて、明後日の方向に弾が飛ぶんだよ」
「「「「「…………」」」」」
珍しく、のほほんさんが暗い声を出したことで俺たちの話は終了することとなった。
そういえばあなた、まっすぐ撃てないどころの話じゃありませんでしたね…………
本当になんで変な方向に飛ぶのだろうか? 束さんにでも聞いて――だめだ、あの人でもわからないことはあるんだった。
「とりあえず俺たちは帰るけど――弾はまだ上の空なのか?」
「お兄……ダメですうんともすんともいいません」
「こりゃ本気みたいね……」
「うーん……私としては、お姉ちゃんが幸せならそれでいいかなぁ」
その話はまた今度にするとして――俺たちはIS学園に戻ることに。ちなみに、自室に戻ってから鈴になにも伝えてないことに気が付いて悶えることとなってしまう。
ああ、マジでどうしよう……
本当、あと何話で終るんだろう……IS二巻はそれほどかからない予定ですが…………
次の映画までには終わらせたいってもう一度言ってみたりします。
デジアドの続報が来ていたけど……キャラデザェ…………
個人的には02は無かったことにされないみたいなのでいいんですが、なんかこう言い知れぬ不安感が……