仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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最初に言っておきます。シャルルさんファンと箒ちゃんファンの方はすみません。


EP138.それぞれの役目

 シャルルの事情を知った翌日。俺はそれとなくセシリアに「なあシャルルって……」と聞いてみたところ、オルコット家の情報網からデュノア社に社長の息子などいないということを突き止めていることを知った。おまけに、本妻との間に子供はいないそうだ。

 そんな会話を、人目につかないロッカールームでしているわけだが……

 

「そっか……」

「それにしても一夏さんが気づいているとは思いませんでしたわ」

「それどういう意味だよ……」

「な、なんでもありません。しかしどうしましょうか……難しい問題ですわよ」

「だよなぁ……一年生で見抜いているのも少ないし――っていうかセシリアだって見ただけじゃわからなかったんだな。正直バレバレだと思うんだけど」

「普段は貴公子という感じでしたし、紳士を忠実に守っていましたから。どこかの誰かさんと違って」

「うっ……どうせ俺は紳士じゃねぇよ」

「ふふ、別に悪いことじゃありませんわよ。むしろ一夏さんは気障な方より今の方が好感が持てますわ」

「そりゃどうも……じゃあセシリアが違和感を感じたのは……」

「前に財界のパーティーでデュノア社長とはお会いしたことがありますの。それほど悪い人にも見えませんでしたが……奥様も旦那様のことを愛しておられるようでしたし、旦那さんの一方的な浮気とは思えないんですのよね……」

「うーん……特記事項があるって言っても、そこまで使えるものじゃないし…………このことはセシリアに頼んでもいいか?」

「いいですけど、なんでそこまでするのですか? シャルルさんは一夏さんの白式のデータを盗みに来たのですわよ。それなのにそこまで気にかけるようなことをして」

「あー……そうだな、セシリアなら言ってもいいかな…………俺にさ、両親がいないってのは知っているか?」

「ええ。織斑先生が女で一つで弟を育てたというのは、IS業界ではそれなりに有名な話ですから」

「そっか……俺たちの親は蒸発したらしいってのは聞いているんだけど、正直俺の記憶にはない。でもさ……親がいなくて苦労したって気持ちはずっとあったから」

「……なるほど、それがシャルルさんを気にかけた理由ですか」

「まあな……形は違えど、親のことで苦労している顔――自分が辛い思いをしてどうしたらいいのかわからないって顔。それを見るとなぁ……」

「ですけど、それは自分で乗り越えなくてはいけないものですわよ」

「わかってるよ。俺だって自分にできることを見つけて乗り越えてきたんだから……でも、背中を押すぐらいのことはしてもいいんじゃないかなって」

「……まあ、わたくしにも理解できることですし――シャルルさんと同じ経験はしましたから。親を失って、すがるものがない彼女の方が追い詰められていることでしょう……たとえ、真実が残酷なことだとしても」

「…………」

「一夏さんは、人の気持ちには鈍感なところがありますけど――こういう物事の真偽に関しては鋭いですわよね」

「やっぱ、気が付いているか」

 

 そう。結局のところシャルルの家庭環境は――同情する要素もあるが、同時に彼女自身が甘えている部分が存在している。その二つが絡み合っているだけに面倒なことになっているわけだが……

 

「シャルルがどう受け止めるかなんだよなぁ……」

「一応調査はしますけど、予想通りだと思いますわよ……3年間は時間があるわけですし、その間に事実を受け止められるようになるでしょう」

「だといいな」

「女性は、男性が思っているよりも強いですわよ」

「そっか」

 

 だったら、後はまずは目先の問題を片付けないとなぁ……

 全校生徒対抗のトーナメントとか、色々大変そうだし。

 

「彼女が正体を明かすとすれば、トーナメントの後がよろしいですわね。今の皆さんの精神状態はいっぱいいっぱいですし、あまりショッキングなことを立て続けに起こさない方がよろしいかと」

「だなぁ……とりあえず、アリーナで特訓するか」

 

 互いに、更衣室に赴き着替える。

 さて――今日も頑張りますか!

 

 ◇◇◇◇◇

 

 と思っていたのに、嫌なことというかトラブルは立て続けに起こるわけである。

 

「なんでこっち睨んでいるんだよ」

「そりゃ、ドイツのアレでしょ」

「まあその話もIS業界じゃ調べればわかる話ですわよ」

「一夏って、無自覚に敵を作るタイプ?」

 

 ああ、三人の言葉が耳に痛い。

 しかし無視できないのも事実なのだ。だって、アリーナにいま降り立ったその人物は――

 

「貴様も専用機持ちなのだろう。私と戦え」

「嫌だよ理由がないし……それに今日はもう十分動いたっての」

 

 ――ラウラ・ボーデヴィッヒその人なのだから。黒いISを身にまとい、今まさに攻撃してこようとしている。

 っていうかマジで訓練続きでそろそろ白式を休ませないといけないんだけど。今日は既にかなりの時間を動かしたんだが……模擬戦を申し込むならもっと早くしてほしい。

 のちに知ったことなんだが、彼女はまず肉体トレーニングをしてからこっちに来たのだそうだ。

 

「貴様になくとも、私にはあるのだ!」

「だろうけどな……」

 

 第二回モンドグロッソで俺が誘拐された後、千冬姉はドイツでIS教官をしていたらしいが……その時の教え子だよな絶対。なあ、誰かアイツの相手変わってくんない?

 

「無理。あたしもエネルギー残ってないわよ」

「右に同じくですわ」

「ごめん、弾薬切れてる」

「そっか。すまん! 無理だわ!」

「ふん。この腰抜けめ――貴様さえいなければ教官は大会二連覇という偉業を達成できたのだ!」

「まだ二回しか大会やっていないから偉業も何もあったもんじゃないと思うのは俺だけか?」

「どうなのかしら」

「凄いことだとは思うのですけど、比較対象がいませんからね……」

「あーたしかに」

「…………どこまでもコケにッ――いいだろう、戦わざるを得なくしてやる!」

 

 そして、ボーデヴィッヒはその肩に取り付けた巨大な大砲を俺たちの方に向けて――放とうとした。まあ、俺にはシールドビットがあるし、シャルルも物理シールドを備え付けてあるから正直なんとかなるんだけど……おまけに鈴は重力レンズで防げる。セシリアも最近防御技を使えるようになったし。

 というわけで、どう見ても電気かエネルギー系の攻撃っぽいし、万が一物理系だとしても防げそうなので俺たちは誰が言い出すわけでもなく防御行動に移っていく。シャルルはIS操縦歴がとても長いようで、第二世代ISなのに普通に俺たちについてこれているあたりとんでもないな。

 

「喰らえ」

「だから防げるって――」

 

 と、そこでプライベートチャンネルが入ってくることに気が付いた。それは最近自分を鍛えている奴だった。ひたむきで頑張っているなぁとも思っていたんだが――正直、今回の行動は予測ができなかった。

 急に一夏は私が守ると叫んで彼女――篠ノ之箒は、思いっきり自らを盾にしてボーデヴィッヒの放った砲撃――どうやらレールガンだったらしく、実弾が飛んできた――を喰らってしまう。

 

「あがあああああ!?」

「ほ、箒ィ!?」

「あのバカなにやってんのよ!?」

「い、いけません! 自ら突っ込んだことで威力が倍になっています! しかもこの土壇場で瞬時加速を習得していましたわよ!?」

「大丈夫なの? 絶対防御があるはずなのに白目向いて泡拭いているよ!?」

「いくら絶対防御があろうとも死なないレベルのダメージはあるのよ! 急いで医務室に運ぶわよ! もしも箒に何かあれば……世界一の天才が暴走するわ」

「「「が、がってん!」」」

 

 なんかもう顔色が青くなっていって、色々とマズイ状況の箒を俺たちは急いで運ぶのであった――その場に、事態の深刻さを理解できても呑みこめないため唖然としているボーデヴィッヒさんを残して。

 誰が悪いとか、そういうことを論ずる意味はないだろう。そのままなら防げたというのは言い訳になるし、俺たちも事態を甘く見過ぎていたということなのだろう。だからこれは不幸な行き違いなんだ。だから、だから――

 

「こんなしょうもない理由で倒れるなぁあああ!!」

「ブクブクブクブク」

 

 ちなみにこの後、ボーデヴィッヒは駆けつけてきた職員によって一か月の間のトイレ掃除を言い渡されたそうである。まあ、問答無用で撃ってきたのは悪いことなんだし仕方がないよな。

 

 ◇◇◇◇◇

 

「一時はどうなることかと思いましたが……命に別状がなくてよかったですわね」

「本当よ。まったく……ただまあ、残念なことにはなったけど」

「だよなぁ……あんなに頑張っていたのに」

 

 結局のところ、箒の命に別状はなかった。それは良かったんだが……無理な動きによるGと、レールガンの衝撃により骨にひびが入ったらしく……トーナメントは参加できないことに。

 ショックを受けていたが……励ましたところで何にもならないだろう。しかも、箒が体を張る必要なんてなかったという事実を知ったら……うん、そっとしておいてやろう。

 

「箒さんにはわるいですが、その方が良いですわね」

「一夏の口からその事実を知ったら――あたしなら死ねるわ」

「あ、あはは……否定できない」

「? どうしたんだみんな青い顔して……とりあえずとっとと晩飯食べようぜ」

「それもそうですわね」

「そうよね……」

 

 さて、今日は焼き魚定食である。相変わらず旨そうだが……まだこの味を再現できていない。おのれ、やりおる。3年あるのだ。絶対に勝ってみせるぞ。

 

「素直に料理系の学校にいけばよかったものを……」

「なにか言ったか?」

「なーんにも、それよりもさ……そろそろどうするか決めたの?」

「それって、僕のことだよね」

「当たり前でしょうが」

 

 周りにも人はいるが、それほど注目してこない。男子が二人ということで視線は向いているのだが……ある種の近寄りがたい雰囲気がここに存在しているのが原因か。

 あとは箒の一件もあったから浮かれた空気を自重しているんだろう。

 

「みんなの言う通り、トーナメントが終わったら先生たちに説明して本来の性別で通い直すよ。幸い、筆記も実技もA評定以上だしね」

「そこまで言うのね……じゃああたしからは一つ――悲劇のヒロインぶるのはいいけど、自分から変わらなきゃなにも解決しないわよ」

「――ッ」

「おい鈴!」

「鈴さん、あまり不穏当な発言はやめた方が良いですわよ」

「分かっているわよ――でもね、否定の努力はやめた方がいいって言っているの。ISは強力な力よ。あんたには才能があるんでしょうね。人以上に努力もしたんだと思うわよ……でもね、今日の訓練を見ていて…………どこか諦めから来ているように見えるのよ」

「……それは」

「自覚は、あるんでしょう」

「…………」

 

 沈黙は是なり。シャルルは、何も答えずにだまって鈴の話を聞いていた。

 

「正直あんたに何があったのかなんてあたしには関係のないことよ。たしかに、普通なら経験しないような出来事なんでしょう。それでも、ここに残っている女の子たちは理由はどうであれ――自分からこの学校に来た子なのよ」

「――――」

 

 その一言は、シャルルにとってどんな意味を持つのか。ただ一つ言えるのは……その瞳に後ろめたさが見えたことだろうか。

 

「なあ鈴……それって、箒もか?」

「ええ……この前それとなく聞いたわよ。他にも選択肢があったのは間違いないみたいね。詳しいことはあたしの口からは直接言わないけど」

「いや、それだけでも教えてくれたのならいいよ……」

 

 そうだな理由はどうであれ、みんな自分からこの学園に来たんだ。鈴も、セシリアも、箒も、簪やのほほんさんだって……みんな想いは違えど、自分からやってきた。

 

「……ごめん」

「謝るな。行動に移しなさい――時間はあるんだから」

「そうだね……自分の部屋で、少し考えてみるよ」

 

 そう言い残すと――シャルルはすこしうつむきながら自室へと戻っていった。

 鈴の言ったことは厳しいのかもしれない――が、事実でもある。

 

「……はぁ、言いすぎたかなぁ…………」

「鈴さん、憎まれ役ご苦労様ですわ」

「あんがと」

「そうだな……ありがとう鈴。俺じゃあ、励ますことはできてもそういう風に言えないからさ」

「だと思ったわよ。昔から、あんたが励まして、弾が聴き手で、あたしがこういう風に言う役目だったでしょうが。なんかあった時はさ」

「だな」

「むぅ……なんか疎外感を感じますわ」

「わ、悪かったって。それに、セシリアだって頼りにしているんだからな」

「――と、当然ですわね! なんたってオルコット家を背負っているこのセシリア・オルコットなのですから!」

「あんたも調子いいわね……」

 

 どういう風になるかはまだわからなけど……そう悲観することもないと思う。

 考える時間も、受け止める時間もあるのだから。

 




よく考えたら、ここの一夏たちが今更ラウラの攻撃どころじゃビビりもしない件について……だからって、箒さんが出てくるとは誰が予想しただろうか。

IS学園編ではなるべく全員ギャグの餌食にするというささやかな目標があります。

ちなみに、ラウラはまだ魔法少女のことを知りません。
クラリッサは知ってます。むしろ逆に腐海に……いつか、そこらへんの話もできるといいなぁ……
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