二巻もそろそろ終わるし、いよいよ水着回も近いデスネ!
個人トーナメントがタッグマッチに変更になる。この知らせを彼――否、彼女が聞いたのは偶然によるところが大きい。
セシリア・オルコットとラウラ・ボーデヴィッヒが私闘を始める十数分前、機体調整をしている生徒が無茶していないか見回りに来た教師に聞いたのだ。
「タッグマッチ、ですか?」
「テロのこともあって、突発的な実戦でうまく動けるかとかの訓練も兼ねているのよ。だからギリギリまで伝えないで置くことにしていたんだけど、この前の篠ノ之さんの怪我みたいに何かあるといけないからね。一応代表候補生には先に伝えることになっていてね。本当は寮に帰ってから伝える予定だったんだけど、デュノア君はテロについて詳しいことは知らないでしょ?」
「ええ、一夏たちが二次移行して退けたぐらいなら知っていますけど」
「ま、教師も詳しいことを知っている人は少ないんだけどねー」
「……ところで、専用機持ち同士も組んでいいということなんですか?」
「まあその方が実戦形式の訓練にはなるから。デュノア君もパートナー考えておいてよ」
「わかりました……」
その教師と別れ、シャルル――シャルロット・デュノアはアリーナの様子でも見ておこうと歩き出す。頭の中には、誰とパートナーを組むべきかと考えながらではあるが。自分の正体を考えても事情を知る人でなければ色々とマズイであろうというのは分かる。
(一夏と組めればいいんだけど……鈴かセシリアと組みそうだよね…………あと僕の事情を知っているのはその三人と、布仏さんに更識さんぐらい……いつもの三人の中で組めなかった人と組むのが得策かなぁ……それとも、一夏にそれとなく――いや、そこまで甘えるのは……)
考えはあまりまとまらない。彼女自身一夏に向ける感情はよくわかっていない。恋なのか、それとも別の何かなのか。自分に対して親身に考えてくれてありがたいとはおもうのだが……何か一線があるようにも思う。
だからだろうか、素直にパートナーになってと言えないのは。
(あ、そういえばもう一人僕の正体に気が付いている人がいたっけ……)
アリーナの観客席にくると――その一人と、セシリアが戦っているところが見えた。
パートナーになるかもしれないわけだし、彼女の戦い方を外側から見るのもいいかなと――そこで、もう一人の少女に目がいく。仮にも軍人ならばもっと心に振り回されずに戦えないのか。
「……なんていうか、子供みたい」
駄々をこねる子供。うん、自分で考えておいてあれだがしっくりくる。親のしつけがされていない。そんな――そこで、とある都市伝説を思い出した。
曰く、人造人間は既に完成している。試験官から生まれる子供。そんな噂だ。
「まさか、ね……でも」
火のない所に煙は立たぬとも言う。日本語について勉強しているため、そんな言葉も知っているわけだが、なんとなく頭にすんなりと浮かんできてしまった。
いつの間にか、見事な動きをするセシリアの方ではなく力のみを振るうラウラの方に目が向いていたのだ。そんな自分に気が付いたとき、シャルロットの心は決まったのである。
「――織斑先生が止めた、か」
捨てられた子犬のような――悲しさと、渇望と、恨みを混ぜ合わせたかのような瞳。その瞳に既視感を感じ、シャルロットはラウラが行くであろう更衣室のドアまで向かう。
ほどなくして彼女――ラウラ・ボーデヴィッヒが出てきてシャルロットを一瞥するが、すぐに無視して去ろうと――するのをシャルロットが腕をつかむことで止めてしまう。ラウラも睨みつけるのだが、シャルロットは意にも解さない。
「貴様、何をするつもりだ」
「怖い怖い、ドイツの人はビールだけじゃなくて対応もホットなんだね」
「――我が祖国を侮辱するつもりか?」
「ごめんね、挑発でもしないと僕の言葉を聞きやしないと思ったからさ」
「当たり前だ。貴様のようにそのような格好をしてまで浅ましい真似をする輩など……」
「うん、それについては僕もわかっているよ――でもさ、君だって同じでしょ。織斑先生を勧誘なんかして、一歩間違えば国際問題で色々とアウトだよ」
「――私闘を禁じられているとはいえ、貴様を黙らせる方法が無いわけではないのだぞ」
「うーん、それはこまるかな――だってまだ一泡食わせていないんだもの」
「……何が言いたい」
「そうだねぇ……こんなことを押し付けてきた実家を見返したいってところかな。自分はいらない子じゃない、必要のない子じゃない。居場所はちゃんとあるんだって――君にも覚えがあると思うけど」
「……」
そう、その瞳は――母が死んでデュノアに引き取られたばかりの自分と同じなのだ。
だからシャルロットは彼女に声をかけた。
「今度のトーナメントはタッグマッチに変更――僕が何を言いたいのか、わかったかな?」
「……なるほど、だが私はお前を勝たせるために働くつもりは毛頭ないぞ」
「分かってるよ――僕だって君を勝たせるためだけに戦うつもりなんてないから」
「そこまで言うだけの実力がお前にあるのか?」
「二次移行はしていない。機体だって第二世代だ――だけど、一年生の中でも僕は随一の稼働時間を誇るはずだよ……四桁はとっくに越しているからね」
「――なるほど、面白い…………だが、それだけでは実力が高いかは分からない」
「ああ――これから別のアリーナで見せてあげるよ。禁止されているのは私闘で、模擬戦は可能でしょ」
「ふふ、いいだろう……そこまで豪語するのなら、見せてもらうぞ――お前の実力を」
「期待に沿ってみせるよ――」
後ろ向きの努力でも、前に進めるんだから。そんなことを呟き、シャルロットは前に進む。その後、二人はコンビを組むこととなった。二次移行している一夏たちも確かに強いが、彼女たちはまた違った強さを持つ。二つの歯車は面白いぐらいにかみ合ったのだ。
◇◇◇◇◇
「タッグマッチに変更かぁ……どうするかなぁ」
昨夜、一夏たち専用機持ちはタッグマッチについて知らされどうするか悩んでいた。まあ、残った一年専用機持ちはちょうど4人。
シャルルがラウラと組んだのには驚きだったのだが――その瞳に決意が現れていたことを見て全員が口をつぐんだ。本気なら、正面から受け止めるしかない。
「あーもう、色々言いすぎたかな……あの二人、間違いなく強力なコンビよ」
「ですわねぇ……ところで更識さん、かき揚げとはそのように沈めるものでしたでしょうか?」
「私は、たっぷり全身浴派」
「そ、そうなんですの……」
昼食を食べながらどうするか悩んでいる4人。考えうる組み合わせを色々と思い浮かべるものの――鈴とセシリアが一夏と組みたいので平行線をたどる。
だったら簪と組めばいいではないかとも思うのだが……今はまだ建っていない旗が建てられそうで怖いのだ。
「あーもう、こうなったらじゃんけんよ!」
「のぞむところですわ!」
「好きにしてくれ。どっちでもいいや……」
「じゃあ残った方が私と――と言いたいところだけど」
ガシッ――そんな音と共にセシリアが簪に捕まってしまう。え、と思うのもつかの間。簪が妙にキラキラした瞳でセシリアを見つめているのだ。
「セシリアとなら、きれいな花火を打ち上げられそうな気がする」
「え、え、え?」
「私のミサイルと、セシリアのビットを使って面制圧の弾幕攻撃。きっと派手な花火が打ちあがるよ」
「あの簪さん、最近どんなアニメ見ました?」
「ロボットアニメマラソン」
「予想以上の回答!? あ、ちょ――一夏さん助けてください!」
「じゃあ鈴、俺と組もうぜ!」
「うん!」
「そんな見捨てないで!?」
「そうなった簪は止まらない――頑張ってくれ」
「骨ぐらいは拾ってあげるわ」
「いや、ひっぱら――あーっ」
セシリア、簪のコンビ結成(強制)。どちらも多数相手に向いた機体であり、高い火力をもつ。後方支援の方が真価を発揮できるが……たしかにマルチロックオンミサイルとフレキシブルの組み合わせは脅威であろう。
しかもセシリアは最近近接戦闘を高いレベルで習得している。これは強敵になるなと――一夏と鈴は思っていたわけだが、彼らも高い連携能力がある。
「足引っ張らないでよ」
「そっちこそ――隣に立つって言ったからには、がっかりさせるんじゃねぇぞ」
「そんなの――言われなくてもわかっているわ!」
二人は互いの顔を見ることなく同時ににやりと笑う。知識や実際の稼働時間などは他のコンビニ劣る部分が多いが――それ以上に二人は互いのことを知っている。連携だけはどのコンビも上回っている自信があるのだ。
それがこのトーナメントにおいて最大の武器になる。
「勝ちにいくわよ一夏!」
「おう! 目指すは優勝だぜ!」
一夏、鈴のコンビがここに結成された。
この後も生徒たちは色々なコンビが結成されてゆく。勝ちいくもの、自分の力を試してみたいもの、消極的ながらどうすればいいのか考える者たち。
そして――彼らもそんなコンビのうちの一つ。
「あー……どうしようかな」
「だねぇ~」
布仏本音とティナ・ハミルトンの……マイペースコンビ。二人とも直接戦闘にはあまり向いていないのだが……ダークホースとなるのか否か。
コンビが結成されていく中、なかなか決まらない者もいるわけで、その様な人たちは当日抽選で決まることになった。変わり者は当日の運命の女神がなんとかしてくれると言っている。
そんなこんなですぐにトーナメントの日がやってくる――先にコンビを組んでいたものたちは特訓を重ねて、新たな技能の習得に努め、機体を動かせなかった者たちは戦術を考える。
「なんていうか、あっという間だったわけだが……鈴、準備はいいか?」
「ええ――問題ないわよ……あんたこそ、大丈夫なんでしょうね」
「マニュアル操縦は流石に時間がかかったが――問題ねぇよ……絶対に勝つぞ!」
「その意気よ――それで、こそ…………」
「ん? 何か言ったか?」
「な、なんでもない!」
顔を赤くし、鈴は適当にごまかすが――一夏の顔が少し赤かったことには気が付かない。
しかしそんな余裕ももうなくなってきた。すぐに、試合が始まる――第一試合、一番最初の戦いに自分たちが赴かなければいけないのだ。
「まさかいきなりぶつかるとは思わなかったわね……」
「ああ、ある意味因縁の相手だからな…………ボーデヴィッヒさんとは」
「セシリアと戦いたかったかもとは思うけど……そりゃないわね。今日までずっと敵視していたし、セシリアのことは二の次だったわ」
「だなぁ……鈴の方こそ大丈夫か?」
「ええ、問題ない――とは言い切れないか。シャルルには言い過ぎたわね…………敵意があるわけじゃないみたいだけど、あたしのほうもある意味因縁の相手よね」
「そうだな……でも、俺たちなら勝てるさ」
「そうね……一夏、信じてるわよ」
「ああ――俺もだ」
ゆっくりと、ハッチまで歩いていく。すでにISは身にまとっていて戦闘準備は完了していた。
白式も甲龍もコンディションは完璧。今日のために調整も済ませてある。あとは――自分たちの心。
「いくぞ!」
「ええ!」
反対側のピット、そこでシャルルとラウラは一言もかわさずに支度を進めていた。
「……」
「…………」
ただあるのは、勝つという目標。
瞳はどこか暗い色を宿していながら――まっすぐに正面を見ている。
「とりあえず、事前の打ち合わせどおりに」
「わかっているさ――しかし織斑一夏は私に討たせてもらう」
「いいよ――鈴は僕がやる。彼女に打ち勝たないと、僕は進めないから」
「ならば……ゆくぞ」
「うん」
内に秘めるのは勝利よりも強い願い。ただ己を証明するために。
それが間違ったことではあると理解しているシャルロット。間違っていないと信じてやまないラウラ。両者を分け隔てるものがあるとすればその一点だろう。
しかし、彼女らは根本的に似通った部分があったのだ。
ラウラはその瞳に宿したものの影響で失敗作の烙印を押された。それを救ってくれたのが織斑千冬だった。されど彼女が見せた弱い顔――それを認められない。裏切られた。初めて得た安らぎを否定された。そんな子供の様な感情が彼女の動力源となっている。
シャルロットは妾の子だった。母を失い、自分の味方はいなくなっていた。どうすればいいのかわからずに気が付けばこんなところにいる始末。母の死を引きずっている。父とは会話もない。本妻には殴られて、IS適性が高かったためにテストパイロットとしてここまでやってきている――あきらめにも似た感情が、彼女を動かしているものだ。
そして――どちらも真に見るべきものを見ていない。いや、気が付かない。
「勝つよ」
「当然だ……必ず、勝利する」
両者がアリーナに降り立つ。方や力強く純粋な瞳。方や暗くもまっすぐな瞳。
もうここから先は言葉で語る意味はない――ただ己の力を示せ。
――バトルスタート。
手の皮がボロボロ崩れてゆく……地味に痛い。
というわけで、原作通りのコンビだと誰が言った――いや箒さんが怪我した時点でわかっていたことなんですけどね。
3巻、3巻になればライダー要素を入れられる……あと少しの辛抱…………12月中に行けるか不安だけど。
禁断のリンゴロックシードはどうするか……