仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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よし、次回で2巻は終わる――と思う。


EP141.力を合わせて

 先に動いたのはどちらだったのか。ただ一つ分かることは――大体の予想通り、一夏とラウラがぶつかり、鈴とシャルルがぶつかったことだ。

 一夏の雪片がラウラのAICに止められ、鈴の青龍刀もシャルルの展開した大型シールドに阻まれる。

 

(AIC――事前に調べてきたけど、集中した範囲の空間を押し固めるような機能……一見強力な能力に見えるけど弱点も当然存在する!)

 

 その左腕に装着された武装、雪羅。そこに備え付けられているのは――

 

「荷電粒子砲だと!?」

「この至近距離なら当たるよなぁ!!」

「――ッ!?」

 

 ラウラはこの期に及んで一夏をなめていた。彼女の中での織斑一夏とは敬愛する織斑千冬に汚点をつけた存在。出来損ない。姉の顔に泥をぬる愚か者――しかしそれは間違いだった。

 

(なんだこの瞳は――まっすぐにとらえて離さない、獅子の様な気迫は!?)

 

 荷電粒子砲をかわそうとすることで――雪片が自由になる。その隙を逃さぬわけもなく、シュヴァルツェアレーゲンのシールドエネルギーは削れていく。

 これは何かの間違いだ。あってはならないことなのだ。

 

「だが――至近距離が危険なのはお前も同じだッ!」

「ああ――撃てたらな」

 

 直後、ラウラの背後から衝撃が襲ってきた。

 

「――ッ」

「あたしもいるってこと忘れんじゃないわよ――一夏!」

「おう!」

 

 入れ替わるように一夏がシャルルへと、鈴がラウラへととびかかる。

 最初から二人は一対一の構図を作るのではなく、タッグとしての行動をとっていた。お互いがフォローできるような位置取り。互いの相手を誘導して鈴がラウラを狙えるように行動している。

 そして、一夏自身もその鎧につけているプレートをシャルルに対して使っていたのだ。

 

「このッ――わかっていたけど、厄介だよね!」

「当然、セシリアにみっちりしごかれたからな……シールドビット、こんな使い方だってできるんだぜ!」

 

 シャルルの周りを飛び回っていたシールドビットは空中に制止すると、次の攻撃を今かと待ち構えているではないか。シャルル自身そんな挑発には乗ろうともせず――それが間違いだと思い知らされる。

 

「ファイヤ!」

「え――しまった!?」

 

 待ち構えていたのは、一夏の攻撃。細く発射された荷電粒子砲が一枚のプレートに当たるとどうじに跳ね返り――空中のプレートを何度も跳ね回ってシャルルを狙う。

 しかしシャルルも弱いわけではない。攻撃の穴をすぐさま見極め次の攻撃に移る。ラピッドスイッチと呼ばれる高速戦闘技能。瞬時に武装を取り換えるその技能があるからこそ彼女は代表候補生に選ばれたのだ。

 

「――ボーデヴィッヒさんは連携するつもりはないだろうけど、フォローぐらいは――――鈴が、いない!?」

 

 ラウラの方を見ると、一夏にめがけてとびかかっている。荷電粒子砲の光を追っていて気が取られてしまった。すぐに鈴を見つけるが――今度は荷電粒子砲の光を見ていればよかったと感じる。なぜならば――彼女は荷電粒子砲の光のすぐ先にいるのだから。

 

(え――どういうこと!? そのままだと鈴にぶつかって――)

 

 その時シャルルは見ていなかったが――一夏が朧月加速によりラウラの攻撃をかわし、逆にラウラを蹴り飛ばしてアリーナの中央に飛ばされてしまった。さらに、ビットがすべて一夏の下へと戻っていった。

 そして、驚異的な光景があたりを覆い尽くす。

 

「――食らいなさい!」

 

 衝撃砲により展開された重力レンズ。荷電粒子砲がぶつかったその時――光がすべて地面へと跳ね返ってゆく。一夏は既に鈴よりも上に退避済み。その光にのまれるのは――

 

(全反射!? 重力レンズでそんなことをするなんて無茶もいいところ――二人の息が合うなんてレベルじゃない……タッグマッチ形式なら、この二人はバルキリークラスに化けるとでもいうの!?)

 

 一夏も鈴も一歩間違えただけで失敗するような攻撃だ。それをいとも簡単にやって見せたのは驚愕するしかない。されど、シャルルも負けるわけにはいかないのだ――シールドをすべて使い攻撃を防ぎきって見せる。

 

「やっぱシャルルは全部防ぐか」

「ラピッドスイッチが面倒なのよね――それに、あっちもまだ健在よ!」

「――アアアアアアア!!」

 

 爆風の中、ラウラが飛び出してきたのだ――満身創痍。苛立ち、その瞳はただ憎き相手しか映っていない。その瞳をみた一夏は――彼女の動力源がなんなのか思い当たることができた。

 考えてみれば簡単なことなのだ。どういう事情があるかは知らないが――知り合いに似ていることといい、IS学園の授業で学んだことの中からなんとなく彼女の事情に思い至ったのだ。

 

「嫉妬か――本当、もっとまっすぐぶつかれよなッ!」

 

 本当ならもっと強いのだろう。軍人でるのならば理想的な戦い方など自分よりも詳しいはずなのだ。なのに圧倒できているのはそれだけ彼女の心が乱れているから。

 だからこそ――決めなくてはいけない。

 

「うおおおおお!!」

 

 明暗を分けたのは――真剣に戦っていたかどうか。一夏は繊月加速により一瞬でラウラの背後に回り――

 

「悪いけど、一度頭冷やせ」

「――あ」

 

 ――零落白夜の一太刀を浴びせた、

 

 

 

 対して鈴はというと――

 

「ハァ!」

「グッ――リャアア!!」

「よっ!」

「ああもう、猫みたいにちょこまかと――なんでISで曲芸みたいに動けるの!?」

「そりゃ練習しまくったから……」

 

 ――シャルルの言う通り、シャルルが虎の子のパイルバンカーで突き飛ばそうとしても、側面を器用に掌底をぶつけることでそらしたり、ぶつけた掌底を支点にくるりと回転してかわしたりなど、まさに曲芸である。

 そのおかげでシャルルはイライラが積もっていくばかり。

 

「これなら――って銃弾も止めてる!?」

「衝撃砲って案外応用効くのよねー……それじゃあ、今度はこっちの番――見えないパイルバンカーってね」

「え――あぐ!?」

 

 急に鈴の姿がぶれたかと思った瞬間――その掌底が、シャルルの腹に決まっていた。その直後にシャルルの体はアリーナの壁まで吹き飛ばされてしまう。

 瞬間加速と衝撃砲の組み合わせにより完成した体全体を使って打ち込む空気の槍。まさに、見えないパイルバンカーのような一撃。

 

「だ、ダメージレベルが……シールドエネルギーはまだ残っているけど…………もう、動けないや……」

「ふぅ、疲れるからやりたくはなかったんだけど……成功してよかったわ」

「ははは……勝てないなぁ…………」

「当たり前よ。目標はもっと高く持ちなさい。強くなりたい理由は向こうのバカだけどさ、目標は織斑先生を倒すことなのよ、あたし」

「……それ、無謀じゃない?」

「そう? あの人も人の子よ。勝てない理由なんてない」

「――――ああもう、完敗」

 

 負けたけど、シャルルにとっては清々しかった。全力を出したうえで圧倒された――それならば言うことはないのだ。だから――その直後に起こったことについては理解が及ばなかったのだろう。

 

「あ、アアアアアアアア!!」

「――なにこの声!?」

「あれは――ボーデヴィッヒ?」

 

 ラウラの体――いや、シュヴァルツェアレーゲンが放電現象を起こしているのだ。一夏はシールドビットを防ぐことで受け止めていたが……何が起きたのかは理解できていない。いや、それも当然なのだ。ラウラのシールドエネルギーがなくなる直前でこうなったのだから。

 

「一夏、いったいどうしたっていうのよ!?」

「俺にもわかんねぇ……いきなりラウラの様子が変わったかと思ったら、ああなって――は」

「ISの形がかわっていく……でもこれって、形態移行じゃないわよね」

 

 ラウラの纏うISはまるで水あめのように溶けだしていき、形を変化させていく。形態移行ならばもっと違う。光に包まれてデータに分解したうえで再構築していくのだ。人によってはその光景を綺麗だと言うだろう。だがこれは違う。会場も気味が悪くなるかのようにうろたえた声がいくつも。

 その形は今までの遠距離主体のISから近接型へ――形状も機械的で戦車の様なイメージのものから和風の鎧へと変化していく。近いものでは、打鉄であろう。

 

「あれって……暮桜?」

「似ているわよね……千冬さんのISに」

 

 二人にはそのISに見覚えがある。千冬が纏っていた暮桜にそっくりなのだ。武器も、本来の雪片にそっくりだ。女性型になっているが、のっぺらぼうで気味が悪い。

 

「それに動きも千冬姉そっくりで……ッ」

「落ち着きなさい、出来の悪い偽物で怒るもんじゃないわよ」

「分かってる――でもあれって何なんだよ」

「……VTシステム」

 

 シャルルの一言に、一夏と鈴が反応する。二人はその単語に覚えがないが――シャルル、いやシャルロットは一応は社長令嬢なのだ。ISについては二人よりも詳しい。

 

「禁止されたシステムなんだけどね、ヴァルキリーの動きをデータ化して機体に入力することで操縦者自身を動かすっていう悪魔のシステム……人をISのパーツみたいに扱う、そんなものだよ」

「なんだよそれ……そんなのがあっていいのかよ」

「よくはないよ。だから禁止されているし、開発者の篠ノ之束博士直々にやったら作った研究所ぶっ潰すとか言っていたしね。まあ一般には公開されていないことだから二人が知らなくても無理はないけど」

「で、アイツのISにそれがつまれていたと……本当、軍人のくせに何やってんだか」

 

 あるいはだからこそかとも思ったが――あの千冬信者に限ってそれもないかと考え直す。たぶん知らないで使ったなとわかるぐらいには性格もわかりやすいのだ。

 

「……なあシャルル、エネルギーはまだ残っているか?」

「あるけど――まさか、一夏……自分で倒すつもり? 下手に手を出さなければ動かないみたいだし、教師が来るまで待っていた方が良いと思うけど」

「でも絶対じゃない――それに、色々とむかつくし…………ガツンと説教の一つもいれないと分かってもらえないみたいだしな。千冬姉が口下手じゃなければこんなことにはならなかったんだろうけどなぁ……」

「まあ千冬さんだし仕方がないわよ」

「なんか二人のなかで織斑先生って結構評価低い?」

 

 プライベートを知っているが故である。外面と内面のギャップが激しすぎて色々と残念なのだ。

 とりあえずエネルギーバイパスでエネルギーを補充して一夏はラウラに向き直る。

 

「それじゃあ、ちょっといってくるわ」

「すぐに戻ってくるのよー」

「そんなコンビニいってくるみたいな言い方……なんだろう、なんでそこまで自然体なの」

「そりゃ――負けるどころか一撃喰らうなんてみじんも思っちゃいないからよ」

 

 鈴の宣言通り、偽千冬の一撃は――届くことすらなく切り払われてしまった。一夏の放った光刃が、その胴体を切り裂くことで。まるで蛹から蝶が出てくるかのようにラウラの体が放り出され――一夏がそれを受け止める。

 

「あ――――」

「まったく、そんな泣きそうな顔してたんじゃ説教する気も起きないじゃないか……」

 

 ◇◇◇◇◇

 

 一夏が見たのはラウラという少女の一生。それは語るほどのものでもない――いや、語るべき内容がほとんどないというものだった。

 試験官から生まれ、ずっと軍人として育てられた。いや、最初からそのように生まれてきたのがラウラという少女。しかし彼女自身はそれを不満に思ったことはない。やりがいもあって、目標もあった。

 だけどそれを覆したのは――ISの登場。そこから派生した人体に埋めこむハイパーセンサー。境界の瞳。それがラウラに埋め込まれてから世界は一変した。

 IS適性は上がらず、視界がぶれるせいで今まで好成績だった軍人としての評価もなくなっていく。

 そんな中出会ったのが、織斑千冬。強く、美しく、あの人に憧れた。あの人のおかげで自分は強くなれた。

 だがそんな彼女が一度だけ弱い顔を見せた――弟の話になると、まるで少女の様な顔になるのだ。

 

「だから、私はお前が許せなかった」

 

 本当の強さとは、弟の方が知っていると言い出した。自分は弱いと、結局弟を助けに行ったのは無駄で、自分は何もできなかったのだと。

 

「貴様は恥ずかしくないのか……教官の顔に泥を塗り、のうのうと生きている自分が!」

「……」

 

 一夏は何も言わず、ラウラに歩み寄り、その指をラウラの額に押し当てて――

 

「えい」

「――ぴゃ!?」

 

 いわゆるでこピン。結構痛い。

 

「な、何をする!?」

「まったくお前はバカなのか……家族がお互いに迷惑をかけてかけられてなんて当たり前なんだよ……家族じゃなくても、仲間とかにもさ――お前にだっていただろうに、目をそらしてんじゃねぇよ」

「何の話だ――え」

 

 一夏が指さした方向――そこには、黒兎隊のみんなが……

 

「な、なんで……」

「ここは、お前の心の中みたいなもんなんだろ。だったらお前の心にいる人がいてもおかしくはない。アレが答えってことだ……初めて甘えることの出来る人が出来たってのに、その人が弱みを見せたのが悔しいってのはわかるけどさ――それってつまり、お前に弱みを見せてくれたってことでもあるんだぞ」

「――――」

 

 ラウラにとって、その考えはなかった。自分に弱みを見せてくれた? それではまるで……

 

「千冬姉はお前のことを認めてくれたんだよ。なのにこんな駄々こねて……ハァ」

「では、私は……私は」

「まあ別にいいんじゃないか? 迷惑かけて、かけられて――今度は素直にぶつかればさ」

 

 もう一度、今度は優しくでこを弾く。するとラウラの頭のなかに浮かび上がってきたのは……とんでもない光景。なんか、ピンクのフリフリが見えた。

 

「え……」

「いっつも気を張ってると、疲れるもんなんだよ・・・・・絶対にどこかで息抜きしてんだから。クラリッサって人に聞いてみな」

「…………お前は、なんでそこまで強いんだ」

「別に俺が強いってわけじゃないさ――ただ目標とする人がいる。守りたい人がいる――それが俺を強くしてくれるんだ。一人で戦っていても、それは孤独になるだけなんだから」

「……ははは、ああ――完敗だよ」

 

 その笑いは、年相応の少女のもので――この時、ラウラの心にあった憑き物は晴れた。

 時間にしてそれほど長くなかっただろう。心の対話は、すぐに終わり教師たちが駆けつけてくる。

 気を失った少女は、安らかな表情をしていた。

 




トーナメント終了。
一夏と鈴のタッグが強すぎる……初見殺しを使いまくれば全盛期千冬さんに勝てるかもというレベルに…………

なんか千冬さんがコメディ担当なのがなぁ……
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