仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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実はアレを出していたのはここで使いたいがためだったから。


EP148.海上の決戦

 海上に現れたIS――その数、5機。どれも特徴的なシルエットをしており、まるでグリフォンの様な姿をしている……あれは一体?

 旅館の中に作戦本部をすぐさま設置し、俺たちもとりあえず参加しているが……正直事態についていくのがやっとだ。

 

「グリフォノイド……しかも最新型かよ…………」

「うーん、束さんたち空中戦闘するための装備なんて持ってきていないし――ここからだと距離が遠すぎて…………グラニを呼び戻そうにもあれってISじゃないと対処が難しんだよ……」

 

 英さん曰く、ライダーシステムに対する防御対策をかなり施している機体で、ロックシードのエネルギーを弾くのだそうだ。

 その分、通常のISならば攻撃も通るのだが、装甲も硬いし色々と厄介な存在ではあるというが……

 

「でも、あれって人が動かしているんですか?」

「鈴の言う通り、人が動かしているようには見えないんですけど……」

 

 完全に人とは違う動きだしな……ある程度は可能だそうだが、四足をしっかり動かした上に翼まで動かすなんて人間の脳にはできない。

 しかし――ラウラだけが、何か思い当たったかのように顔を上げた。

 

「まさか――アドヴァンスドですか」

「その通り……と言いたいところなんだけどね、千冬……これは極秘事項なんてレベルの話じゃない。できれば言いたくないけど……大丈夫かな?」

「かまわん。話せ」

「いや、かなりグロイよ?」

「それでも……こいつらもいずれは知る話だ。今この状況で聞かせた方が良いかもしれん……後々、聞かせるよりかはな」

「そうか――なら言うけど、ラウラちゃんの言う通りアレを動かすのに使われているのはアドヴァンスド――ただし、脳みそだけね」

 

 ――――一瞬、頭が理解するのを拒否した。

 脳みそ、だけ?

 

「アレを動かすためだけに培養された脳みそを入れている――アレはそんな兵器だよ」

「そんな……ISを、命を何だと思っているんですか!」

「本当、あれには束さんもはらわたが煮えくり返るよ……大切なISをそんな風に使うだけじゃなく、そこに乗せているのが…………今すぐにでも叩き潰したい」

 

 俺たちは皆言葉が出なかった。千冬姉も、唇が少し青くなっている……だがすぐにモニターのデータとにらみ合ったと思ったら――考えを纏めたのか、その口を開いたのである。

 

「これから作戦を伝える――生憎、教師たちは専用機がないため動けない。訓練機もパーツを外していたり、作業途中の物ばかりのためここを守るために使うもの以外は動かせない状況だ――そこで、お前たち専用機持ち達をアレの対処に当てることとなる」

「なっ――千冬姉!?」

「状況と戦力を考えた結果、そうするしかない……私だってそんな作戦は取りたくはないがな。少なくとも、先日のテロの時に対処して見せたお前たちと、元々こういう事態に対処するための訓練を受けているラウラならば可能と思ったまでだ……もちろん拒否権はあるがな」

「ちーちゃん、でもアレはかなり危険な機体だよ――それに、インベスが現れたら……」

「ならばこそ……一夏が行った方が良いだろう」

「……そうだね、束さんのISは下手に動かすことができないから持ってきていないし……」

 

 確かに、現状で両方に対処できるのは俺しかいないだろう……正直、不安だけど――グリフォノイドとかいう機体はこっちに飛んできている。もしかしたら、みんなが怪我をするかもしれない……なら、行くしかないだろ。

 

「大丈夫です――覚悟、出来ましたから……それに相手がISなら零落白夜もあります」

「ま、一夏一人じゃ心配だしあたしも行くわよ」

「乗り掛かった舟です――それに高速戦闘用パッケージも届いていますわ」

「うむ、私も軍人として動かないわけにはいかないからな……大船に乗ったつもりでいろ」

「……わかった。無理だと思ったらすぐに撤退しろよ」

「私はこれから近隣の海域に避難勧告を出す。束、四人の機体を見てくれ。デュノアと更識のISじゃ最高速度が低い。教師たちとともに防衛に回ってくれ」

「了解しました!」

「は、はい!」

「オッケー、それじゃあパッケージのインストールもちゃっちゃっと――」

 

 束さんが言い切る前に、この場にいてただ一人、何も言われなかった人物がいる。

 専用機を持ちながら何も言われなった存在――そう、箒だ。

 

「先生! 私は何をすれば――」

「お前は他の生徒たちと一緒に待機だ」

「――え、な、何故ですか!? 私だって専用機は……」

「今は時間がないからハッキリ言うぞ――手に入れて間もない力で役に立つと思うな。敵が一機で、誰かを運搬するだけならともかく今回はチームプレイが必要な場面だ。お前が出ても足を引っ張るだけだ」

「――――ッ」

「それにお前に専用機が与えられたのはあくまで自衛のため。使いこなせているならともかく、現状のお前ではダメだ……さっさと行け」

「……はい」

 

 束さんが何か言うかと思ったが――何も言わず、セシリアのパッケージインストールを手伝っていた。その速さならば、すぐに終わるだろうが……頭は目先のことに切り替わっているせいか、箒の方は一度も見ない。

 そして、箒が部屋を出ていくと今度は白式の方に……

 

「いっくん、束さんが箒ちゃんに一言も話しかけなかったのが不思議?」

「それは……はい」

「うん、当然だよね。いっくんが不思議に思うのも無理はない――でもね、箒ちゃんのためにもここはおとなしくしていてほしいんだ。アレは気合とかでどうこうなるISじゃない。最初から兵器として作られたISってのは、とても厄介だから」

「……わかりました…………でもフォローはしてくださいよ。今日は……」

「うん。わかってる。ちゃんと持ってきているから――ISとは別にね」

「そうですか。ならいいんです……それで、どのくらいで調整終わりますか?」

「うーん、スラスターを二パターンに切り替えられるようにしているから――よし、出来た。最初は長距離移動用の設定。ついたらすぐに戦闘用の設定に切り替えてね。最高速型と加速型の切り替えだから」

「わかりました」

 

 その後、鈴とラウラのISの調整も済ませて――すぐに俺たちは目的地へと飛び立つ準備を完了させた。

 通常のISスーツの上にさらに防弾、防刃などの機能を持つ保護スーツを着させられたけど……こんなものあったんですか。

 

「それも試作品の一つだよ。万が一の時のことも考えてね」

「ま、ありがたく貰っておきましょ――それじゃあ、みんな準備はいい?」

「ああ、問題はないさ」

「こちらも準備は完了です。いつでも行けますわ!」

「本部のモニターとのリンクはできている。奴らの位置情報も大丈夫だ」

「私たちが動くことがないようにしてよ、みんな」

「……無事に帰って来てね」

 

 ああ――任せろ!

 

「行くぞみんな――織斑一夏、白式・雪羅、行きます!」

「凰鈴音! 甲龍・夢幻、出るわ!」

「ブルーティアーズ・シンダー、セシリア・オルコット……参ります!」

「ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐……シュヴァルツェアレーゲン、出撃!」

 

 飛び立ちと同時に一気に加速――ぐっ!? Gの軽減はかなりされているハズなのに、結構きついぞ!?

 

「確実に一夏さんの攻撃をヒットさせましょう――一機ずつ確実に撃破するのですわ!」

「分かっている――私と鈴で攪乱。セシリアが援護。一夏が隙をついて確実に撃破してくれ!」

「了解……あと5分ぐらいで目的地だ…………覚悟はいいよな?」

「当然――あんたこそしっかり頼むわよ!」

「わたくしも、ここまで来て怖気づいたりしませんわ――見えました!」

「散開!」

 

 俺が急ブレーキからの上空へと上がる動きにて敵の射程から外れ、鈴とラウラが突っ込むことでまずは敵を二つに分断。そこをセシリアがビットからの攻撃により相手の動きを止める――

 

「そこだぁああ!!」

 

 ――まずは、一機!

 

 ◇◇◇◇◇

 

 私は何も期待されていないのだろうか……

 自ら戦いに志願しても相手にされない。私は弱いというのか? 私じゃ、一夏の力になれないというのか……

 

「なぜだ、何故認めてくれない……力を手に入れても何も変わらないじゃないか」

 

 姉さんもなんでリミッターを……一家離散したのは姉さんのせいじゃないか。

 それなのに悪いとさえ思っていないというのか? 枷をつけた力など意味がないじゃないか……

 そもそも私が苦労していたというのに――なぜ姉さんは幸せそうにしているんだ。

 

「昔はもっと他人を人とも思わないような……そんな人だったのに、何故だ…………なんで貴女は他人に優しくできるようになったんだ」

 

 思い出すのは、中学で剣道の大会に出場したときのこと――決勝戦、私はただ憂さ晴らしのためだけに剣を振るった。そこにあったのは暴力だけ。勝ち負け以前に――人としてしてはいけないことをした。

 

「私は他人に優しくできなくなったのに――なぜ、姉さんは……なんで、なんで……」

 

 頭の中に黒い感情が湧きでてくる。自分の心を律するための剣を自分の憂さ晴らしだけに使ったのは自分が悪いというのに、それさえも忘れていくように。

 頭の中を恨みが支配してゆく。

 

「私は一夏と離れ離れになったのに――自分は好きな相手と一緒にいるなんて――ユルセナイ」

 

 ユルセナイ。ユルセナイ。ユルセナイ!

 呪詛のように繰り返す。頭のどこかで、それは違うと叫ぶ声さえ無視して繰り返す。

 体の奥底で黒いナニカが蠢いている。体が震える――恐怖にも似た感情が体を駆け巡り、いつもの声が聞こえてきた。より鮮明に、よりはっきりと。

 

『だったら自分から行動しなきゃ変わらないわよぉ……世界を変えるのはいつだって、自分自身なんだから』

 

 変える……そうだ。変えるのだ。

 私を痛めつける世界を変えないと――怖い。

 世界を変えるためには――自分から行動しないといけない。

 

『そうよ。いつだって自分が何もしなければ変わらないのだから――さあ、そのための力はそこにあるわ』

 

 そうだ。ココにある。力ならここに――だが、どうやって?

 

『あなたならできる。幸い、ここにはそのための道具がたくさんあるじゃない――ほら』

 

 指を指したのは……他の生徒たちが使っていたと思われる、整備用の機材。コンソールなどもそろっている――ああ、これなら大丈夫だ。

 

「――紅椿――――なぜだろうな、こいつを纏うと懐かしい気分になるのは」

『当たり前じゃない――それは貴女のISなんだから』

 

 そうだ私のISなら――私がその枷を外してやらねばな。何か外が騒がしくなってきたが……頭の中の声が、好都合だと言っている。ならばいいだろう……準備を進めなくては…………

 一瞬、ISコアが悲しいような色をしたのには気づくことはなかった。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 零落白夜により、一機撃破。シールドビットを突っ込ませてISコアも抜き取っておいたし、これで再起動はしない!

 

「次行くぞ!」

「分かっていますわ!! 3時の方角、行けますわよ!」

 

 セシリアがライフルで撃ち抜いたその機体は一瞬動きを止めるが――俺にとっちゃそれで十分! 鈴とラウラがそれぞれ一機ずつ足止めしてくれているし、セシリアもすぐにもう一機を止めてくれている。

 その隙に動きの止まった一機を切り裂く。シールド形成によるAICのモドキの使いかた、ぶっつけ本番にしちゃうまくいって良かった……このコアもしっかり抜き取り完了。

 

「よし、いけるぞ……」

「でも次はそう簡単にうまくいかないみたいよ。アイツら、しっかり連携取ってきているわね」

 

 セシリアが打ち抜こうとすれば、超音波の様な攻撃でビームを弾かれる。衝撃砲も、どうやっているのかかわしているし……ラウラも相手が反撃の隙を作らないようにするので手いっぱいか。

 

「ラウラ、AICは?」

「ダメだ。アイツらの場合PICが搭載されておらず、常に自身で力場を発生させている――つまり、アイツらはAICで飛んでいるようなものだ。相殺される」

「そうか――なら、鈴……あれやるぞ」

「あれって……でも一発撃ったらエネルギーが…………」

「確かにきついが――ジリ貧よりかはいいだろ」

「そうね――セシリア、ラウラ……撃ち漏らしたらよろしくね!」

「何をするつもりなのかは知りませんが――わかりましたわ」

「うむ、存分にやれ!」

 

 俺と鈴が一気に後退する。俺は左腕の雪羅にエネルギーを供給し、鈴も重力レンズの展開に入る。

 

「結構、形成が難しい――一夏、チャージは?」

「すぐに終わる――何度も練習しただろ。いけるって」

「そうね――よし、形成できた! とどめるのはきついから――」

「もう撃てる! 二人ともさがれ!」

 

 足止めをしてくれていた二人に下がれと頼み、俺たちよりも後方に下がってもらう。その際にすでに射撃可能な体勢に動いているのはさすがだな。

 

「よし――発射!」

 

 発射された荷電粒子砲は――ターゲットサイトの存在もあって狙い通りの場所に発射された。そこにあるのは鈴の作った重力レンズ。荷電粒子砲の光がそこにぶつかった瞬間、弾けた。

 

「重力レンズによる荷電粒子砲の散弾よ! 避けられるものなら避けてみなさい!」

 

 直後、残り三機すべてのグリフォノイドに光が当たった。

 




元々グリフォノイドは、福音が登場しないために考えた存在だったりします。
だけど一発ネタにするのはあれだし、いろいろ考えた結果何度も登場しておりました。

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