仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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久々にアレをやります。


EP149.涙

 光は確かに直撃した――しかし、一つの影が上空へと飛び上がる。

 

「なっ――確実に当たったはずだぞ!?」

 

 煙が晴れて、そこにいたのは……海へと落ちてゆく二機のグリフォノイド。首元を食いちぎられたような痕が見える――つまり、今空中にいる一体は……

 

『GAAAAAA!!』

 

 ボコボコと嫌な音があたりに響き渡る。機械の体の内側から肉があふれる。機械で出来た目は内側から盛り上がってきた眼球にのまれ、口に咥えていた二つのISコアを呑みこむ。

 今までの姿からより凶悪なものへ――翼はコウモリの羽のようなものへと変貌し、尾はサソリのような形状へ。顔の周囲には鬣の様な毛がまとわりつき……その顔はまるで人のようだ。しかし、表情というものが一切なくそれが恐怖を抱かせる。

 

『GUGAAA』

「な、何よアレ……インベス?」

「だとは思うが――それにしても、あんなの見たことないぞ」

 

 何度もインベスと戦った一夏だからこそわかる。アレは危険なんてレベルじゃない。そこにいるだけで凶悪な圧力が発生している。体が動かない――しかし、やるしかない。

 

「……とりあえず、英さんたちに聞いた方が――え」

 

 本部と通信を取ろうとして、異変に気が付いた。誰も応答しないのだ――それどころか、ノイズが走っている。何かが向こうで起きたのだ。

 

「な――くそっ! とりあえず、相手の出方をうかがうぞ!」

「分かったわ――セシリアは援護射撃、ラウラはレールガンを使って! インベス相手なら実弾系の方が有効よ!」

「分かっていますわ! ラウラさん、合わせますわよ!」

 

 セシリアがビットで威嚇し、相手の動きを阻害するものの――意にも解さずインベスは突撃してくる。鈴が衝撃砲で挑むがまるで手ごたえがない。

 俺も雪羅を放つが……やっぱエネルギー系じゃダメか!

 

(だからと言って、零落白夜を使おうにも残りのエネルギーじゃ倒しきれないぞ!? ドライバーを使おうにも空中じゃ……どうすれば――)

 

 そこで、セシリアがフレキシブルを使ってリングの様な光を生み出しているのが見えた。一体、何をするつもりだ? そのリングを狙うかのようにラウラはレールガンを構えているが……

 

「準備完了です。パワーゲート展開完了しました!」

「ぶっつけ本番もいいところだが――仕方がない! 行くぞ――!」

 

 放たれたレールガンの弾丸は、そのゲートを通った瞬間、さらに加速した。

 

(――そうか、アレは威力を増幅させるためのエネルギーゲート! ビットの応用、もう思いついたのか!?)

 

 流石としか言いようがない。その弾丸はインベスに――届かなかった。何かに気を取られたかのように、セシリアたちが予測した動きとは違う動きをしたのだ。

 

「なっ――なんで!?」

「一夏、あれ見て!」

 

 鈴に言われて指さされた方向を見ると――そこにいたのは、紅。嫌な汗が全身に伝わる……あれは――箒!?

 その鎧は先ほど見たものとはだいぶ異なっていた。より鋭角に、光り輝いているが――何かとてつもなく悪い夢を見ているような気分だ。

 白式もまるで恐怖の様な感情を抱いている。それが、俺に伝わるほどに。

 

「…………そんな怪物、私一人でも倒せる」

 

 無謀にも――箒は一人突っ込んでいった。それはマズイ。一般の生徒はインベスというものの脅威を教わっていないから知らないのかもしれないが――ISでは分が悪いのだ!

 

「待て箒!」

「距離を取ってばかりで怖気づいたりか! やはり私がいないとダメなんだ――!」

 

 くそっ! 熱に浮かされたように箒は話を聞いてくれない。そのまま箒はインベスに突っ込んで――

 

 ◇◇◇◇◇

 

 一夏君たちが出撃してすぐ後のことだ。

 旅館近くにクラックの出現反応があったのは。

 

「英!」

「ああ……行くぞ!」

「どうしたのだ、二人とも……」

「クラック、インベスか亡国の連中なのか……奴ら完全にここを狙ってきているぞ!」

 

 千冬は驚いたが――すぐにこれからするべきことを考え、行動を開始する。

 

「山田君、至急先生方に連絡を。生徒たちやここの従業員たちを守る。防御に重点を置いた陣形をとるぞ!」

「はい! 企業の方たちも協力してくれて、いくつかのISは使用可能です……どうしますか?」

「それは山田君が使ってくれたまえ。私は適当にブレードでも使うさ――インベスと言えど、物理的に切り裂けるのは実証済みだ」

「……まったく、冗談みたいなことを実際にするんですから――蜂矢先輩、篠ノ之先輩、お二人は?」

「これから反応のあったところに行って対処してくる。アイツらの目的が何かは知らないけど、そのままにできないし――それに、異常ならこれも使えるからな」

「そうだね……文句もいろいろあったし、最初から飛ばしていくよ!」

 

 反応のあったポイントまで走り出す――この感覚、結構いるな……束の方を見ると、ひとつ頷いてくれた。よし、久々にアレが使える。

 束もロックシードを取り出して……そういや、怪我してからはリハビリの時間も多かったから、色々と久々だよな。それじゃあ復帰ということで派手にやりますか!

 

【ノロシ!】

【パンプキンエナジー!】

 

 ドライバーをセットし、身体に装着する――それじゃあインベス諸君、覚悟はいいかな?

 

「「変身!」」

 

 空中に現れるのは蒼とオレンジの塊。それが体に装着されることで僕たちの姿は戦うためのものへと変貌してゆく。強固な鎧をまとった僕と、まるで魔法使いの様な姿の束。

 

【ノロシアームズ! 反撃開始! アンコール! アンコール!!】

【リキッド! パンプキンエナジーアームズ!】

 

 本当――二人そろっては久々かな?

 

「それじゃあ――リハビリの時間だ。久々だから手加減はできないけど……する必要もないよね!」

「束さんもストレス溜まってるから――ちょっとバイオレンスだよ」

 

 二人飛び出し、まずは一発殴りつける! インベスごとの特徴はあるのだろうが……そんなもの関係ないとばかりに、殴り、斬り、弾き飛ばす。

 

「初級なんて準備体操にもならない! シャープに行くぞ!」

 

 ハーモニクスカノンのツマミをシャープに合わせて、引き金を引き続ける――放たれるのは連射弾。一発一発は小さいが、絶え間なく続く攻撃は全てのインベスを蹴散らしていく。

 背中のブースターを使いながら移動することで一か所に集め、後方に引く――すでに束は準備完了していた。

 

【ペアーエナジー!】

 

 チャージされたエネルギーが強烈な光となり――インベスたちを消滅させる。対インベスにはやっぱ強力だよな……さてと、こいつらだけとも限らないし……

 

「束、二手に分かれるぞ! 僕は右回りに索敵する」

「なら束さんは左回りだね――無茶しないでよ!」

「そっちこそな!」

 

 ブースターを吹かせて進むけど――今回は本当に何が目的なんだよ……一夏相手なら学園から出たところを狙うとかだし、ここまで大がかりにはならないはずだ。

 誘拐目的とは思えない……一体、何が目的なんだ?

 

 ◇◇◇◇◇

 

 海のそば――そこで、シャルロットは謎の敵と交戦していた。簪と共に銃弾を撃ち込んでいくが――一発も当たらない。まるで実体のない幻影――いや、実際そうなのだろう。

 

「インベスって割には……色々と規格外すぎるよ!」

「これが、オーバーロード……」

「うふふぅ……更識のお嬢さんは知っているでしょうねぇ。そうよ。私が人の自我を失わずにインベスの力を手に入れた存在。オーバーロード。その一人がアンバー……まあよろしくとは言いたくはないけど、もしかしたらよろしくって言うことになるのかもしれないわねぇ」

 

 彼女は何度も英たちと交戦したオーバーロード。自身の戦闘能力こそ低いが、高い幻影能力を持つ存在だ。

 それ故に、銃弾は全てかわしているし、マルチロックオンすらごまかしている――ISまでも騙すほどに進化した彼女は、ただ二人に話しかけているだけだ――ただ、周りに教師たちが倒れ伏していなければある程度は穏便に見えたかもしれないが。

 

「……織斑先生たちはインベスの対処に追われていてこっちに来れない」

「なら私たちがやるしかないんだろうけど……正直つらいところだよね」

「それはこっちも同じよぉ……私、戦闘タイプじゃないからこういう任務嫌なんだけど…………失敗とも成功ともつかない結果だからこまっちゃぅ」

「いまどき、そういう猫なで声は流行らないよ」

「……キャラ作り過ぎ。年いくつ?」

「――――オイガキども、女性に年齢聞くなんて将来自分たちが困るんだぞ」

「でもあなたは凄いですよね――見た目怪物だから年齢がわからないよ」

「究極のアンチエイジング」

「――――ヤバい。これは……殺すしかない」

 

 煽るだけ煽って冷静な判断力を失わせる――簪とシャルロットはお互いに背中合わせになり、全方位からの攻撃に対処しようとする。相手が見えないのならば、当てられるように位置取りするまで。

 適当に攻撃しただけじゃ攻撃を当てられない。肝心なのは――相手の動きを完璧に近い形で予測すること。

 

(隙を作るだけじゃ相手は動かない。確実にここにくるというポイントをうまく作らないといけないんだ――)

 

 ダミーのミサイルが簪から発射されるが――当然意味もなく漂っているだけ。アンバーというオーバーロードがどう動いてくるか――

 そこで、簪が目を閉じて拳を前に突き出した。

 

「か、簪!?」

「――グゥ!? な、なんで当たった!?」

「…………やっぱり、いける」

 

 まだ簪は目を瞑っている。しかし、再び彼女の攻撃はあったった。

 一体何をしているだ? センサーもごまかされるというのに……なぜ彼女の攻撃は当たるのだ?

 

「電脳ダイブ……このあたり一帯をスキャンして作った仮想空間の中で私は動いている。ISもその動きに合わせているだけ……貴女は自分の姿も隠せるみたいだけど……地面を踏んだ時の砂の動きや、草の動きの違和感を消しきることはできない。音から判別される空気の流れも――電脳戦なら、生徒会長にも負けない自信はついたから」

「聞いてないわよ……ただの代表候補生にできるレベルを超えているじゃない!」

「す、すごい……」

 

 そして――最後の一撃が相手を捕えようと――――

 

「でもね……ちょっと経験が足りなかったかな」

 

 ――直前で、何か巨大な壁のようなものにぶつかった。

 

「うぐ!?」

「ここら辺は初めからトラップを設置しておいたのよ……最初から入力していた情報だからね。そんな手を使っても違和感は出ていないわ……まあ、よくやった方だけど……残念ね」

「それは――お互い様!」

 

 ガキンッ――そんな音と共に、アンバーの体が掴まれる。

 

「なっ――しまった、コイツこの女の行動から私の位置を!?」

「ちょっとこすれたケド――捕まえたからにはもう逃げられない!」

「ぐっ――――うふふふふ」

「なにがおかしいの?」

「こっちのお嬢ちゃんは無理でも、貴女は別ね……自分の人生に納得がいかない。いいえ、やり直したいのよね」

「――――ッ!?」

 

 それは誰にも言っていない、彼女の根幹部分。

 

「シャルロット・デュノア。いいえ……シャルロット―――――――――と呼ぶべきかしらね」

 

 その名前は、過去に失ったもののハズ。母が死んで、父に引き取られたことで失った名前だ――なぜこの女が知っている!?

 

「お前……何で」

「調べればすぐに分かることよぉ……それにしても、母親が死んでその後はあれよあれよという間に自分でもわけのわからない人生を歩まされる。嫌なことばかりで、泣き言も言えずに一人ぼっち」

「黙れ――お前に私の何がわかる!」

「ええわからないわね――悲劇のヒロイン気取ってる女の考えることなんて」

「……ッ」

「ハッキリ言ってあげるわよ――普通に考えれば、貴女を引き取ることこそスキャンダルになるだろうに…………なんでそんなリスクを負ってまであなたをデュノア社長は引き取ったのかしらね?」

「――――え」

 

 それは、シャルロットが目を背け続けていた真実であった。

 聞いてしまえば――体から力は抜けて、戦う気力は無くなって――――

 

 ◇◇◇◇◇

 

 箒はインベスに突っ込んでいった。鈴が衝撃砲を使ってでも止めようとしたが、機体からあふれた光が常識外の加速を見せる。

 セシリアが攻めて注意をひきつけようとするが、インベスは意にもかえさない。

 ラウラがワイヤーで縛り上げようとするが、弾かれてしまう。

 

「やああああ!!!」

『GAAAAAAAA!!』

 

 箒が刀を振るい、光の雨をぶつけるがインベスには全く効果がない。そして、インベスの方はただ吠えたのみ。

 その咆哮は、一瞬だけISの動きを阻害させる。おそらくはISのエネルギーを霧散させる性質でもあったのだろう。俺たちは一瞬ブレーカーが落ちたような感覚に陥るが――距離が離れているため何とかなる。

 しかし、箒は?

 

「――――え」

『GAAAAAAA!!』

 

 ――――瞬時加速でも間に合わない距離。だけど、行かなければ箒はどうなる?

 

(そういえば、こういう時に使える技を昔見たことが――アレは、そう千冬姉が使っていた)

 

 スラスターを個別に加速させ、連続で加速する。その名も――リボルバーイグニッションブースト!

 

「うおおおおおおお!!」

「――――なっ!? 一夏!?」

 

 

 ああ、間に合ってよかった――意識が遠のいて目の前に海面が――――

 最後に聞こえたのは……悲痛な鈴の叫び声だった。

 …………また泣かせるなんて……やっぱ俺、バカ過ぎるよなぁ……

 




なんかめちゃくちゃ久々の変身。
そして、色々と大変なことになり始めるみんな。

今回は複数の戦闘が同時に起こっておりますので時系列が分かり難いかもしれませんが、地の文などで判別してくださると助かります。


たぶん箒さんに色々と苦しいコメントくるんだろうなぁ……やり過ぎただろうか……
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