さて、森に入ったはいいけど……やっぱり、なんだかグロテスクな雰囲気だ。腕輪があるからドライバーを外しても食欲に襲われることはないが、インベスもいるだろうしドライバーは装着しっぱなしである。ただ、体力を消耗するので変身はしていない。
「一応、ヒマワリロックシードはつけておくか……抵抗力もあがるし」
万一、触るだけでアウトな毒でもあったら大変である。とりあえず栄養補給もかねてつけておいた。目的地は特にないが、とりあえず前に進む。
人の気配は当然ないし、鳥や虫の気配すらない。水の流れる音は聞こえるが……生き物の気配がほとんどしない。一応、植物が風に揺れる音がするのがせめてもの救いだろうか? この場にいるだけで精神的にきつい。虫の鳴き声などはストレスの元になることも多いのだが、何もないというのも逆にキツイ。
「あーしかもどこ目指せばいいのかわかんねぇし……というか、何を調べっかなぁ…………果実のデータは一応父さんたちのレポートはあるから、僕が調べられる範囲は超えちゃったんだよねぇ……人が住んでいる形跡とか、インベスの巣を見つけて叩くとか? いや、地球の生き物がここの果実を食べて変異するってことは迷い込んだやつぐらいしかいないし、巣はなさそうだけど……」
とりあえず、持ってきていたナイフで近くの木の表面を削り取る。持って帰って調べてみないことにはわからないだろうし。一応、密封しておくのも忘れない。
あとは、水とか、採取できるものは持ち帰った方がいいよな……
その後は葉っぱや水、土など調べられそうなものを持って帰ることにした。父さんたちも、ここら辺は調べてあるみたいだけど……
――ふと、変な臭いがした。焦げ臭い、そんな臭いが。
「……向こうのほうか」
臭いのする方へ歩き出すと、煙が上っているのが見える。ちょっと小走りに進むと、変な音も聞こえてきた。と、そこで何かが飛び出してきた。白い影、初級インベス――
「ハァッ!」
「グギィッ!?」
ブレードを倒し、無双セイバーだけ展開してインベスをはじき飛ばした。見ると、通常のインベスとは違い体が開いて……なんかものすごくグロい。
資料だけでみた、凶暴体だろうか? とりあえず銀のリンゴを装着し、ブレードを倒す。
「変身!」
【シルバーアームズ! 白銀ニューステージ!】
手に持っていた無双セイバーをインベスに突き刺し、ブレードを倒す。シルバースカッシュの音声と共に、足にエネルギーが充填された。そして僕は足を上に蹴り上げて、バク転のように体を動かす――いわゆるサマーソルトを繰り出した。
「グギィ!?」
「……いや、こいつじゃない」
インベスはすぐに爆散したが、奥の方から何か嫌な気配がする。どうやら、このインベスはその嫌な気配の手下……もしくは、嫌な気配から逃げてきた、か。
何が出るかわからないが、とりあえず進むしかない。そうして……そこにあったのは――
「なんだか、広々とした場所だな、オイ……でもって、炎の球?」
まるで広場だ……だけど、炎を中心に地面が焼け焦げている。ここにも木が生えていたとして、この変な炎の球が燃やし尽くしたってことか?
そして、嫌な気配もこの炎から出ている……そこで、左手が熱くなっているのに気が付いた。
しばらくぶりだから気が付かなかったけど、この炎の球に反応しているようだ。
……すぐに、変化は起きた。腕輪の光がひときわ大きくなった瞬間、炎の球は大きく変化した。まるで、腕や足のようなものが生え、体が作られていく……頭は、騎士の兜のようだ。そして、鎧をまとっている……リンゴのような、そう、形は僕と同じ。
手には剣と、盾――――間違いない、僕が夢で見た黄金の騎士だった。
「……」
『…………オオ』
「とりあえず、あなたは誰か、聞いてもいいのかな?』
『オオ、オオオ、オオオオオオオオオオオ!!』
「理性は、なしッかよ!」
とっさに受け止めなければ危なかった。予想以上のパワーで騎士は切りかかってきたのだ。だが、激しい火花を散らして、蒼銀杖は真っ二つに切られそうである。このパワーじゃ一撃貰ったらヤバい……ここは、一番防護力が高いのでいくしかない!
両手で一気に剣を押し返す、その際に杖も一緒に投げつけることでロックシードを取り換える時間を稼いだ。
「チェンジ!」
【メロンアームズ! 天下御免!】
防御能力が高く、基本スペックが高いメロンアームズなら、なんとかなるか……
騎士は予想以上に強く、アームズチェンジが完了した瞬間には剣が迫っていた。咄嗟に、メロンディフェンダーで防御するも、少し力負けして後ずさってしまう。その隙を狙われて、シールドで叩かれ、後ろへとふっとばされてしまった。
「あがっ!?」
『――ッ!』
しまったと思ったのもつかの間、すぐさま騎士は僕の近くに跳び、剣を横なぎに振るう。どういうわけか、僕の体は浮き上がり、体がしびれたのか、動かなくなった。
いや、正確には……前に痛めたあばらのあたりが痛み出したのだ。どうやら、横なぎに食らったときに、同じ場所にダメージが入ったようだ。ホテルに戻ったときは痛みがなかったけど、こんな時に……
だけど敵も待ってはくれない。理性がないというより、戦闘することしか頭にないらしく、正確に強力な攻撃を繰り出してくる。宙に浮いた僕に、一瞬で何連撃も浴びせてきた。正直、目が追い付かない。
「があああああ!?」
イチゴアームズなら目が追い付くかもしれないけど、あれじゃあ防御しきれない。スイカアームズなら……だめだ、アイツの速さじゃ的にしかならない。パイン、鎧も硬いしいけるか?
痛みに耐え、地面を転げながら次の戦略を立てる。盾と剣、同じ系統の武装なら地力が強い方が勝つ。相手は身体能力だけじゃなく、武器のスペックも上らしい。しかも、切られたところが燃えるように熱い……
とりあえず、立ち上がると同時にアームズをパインへと切り替える。
パインアイアンを振り回し、投げつけるが……やはり盾ではじき返された。しかし、こっちもそれなりに戦闘経験はある。すぐに相手の懐へ転がり込んで、無双セイバーを突きつける……が、寸でのところで相手の剣にはじかれた。だけど、まだだ!
【パインスカッシュ!】
「本日二度目の、サマーソルト!」
『――ッ』
大量の火花が飛び散って、はじかれてしまうが攻撃は通った。すぐに後ろへ下がってパインアイアンを持つ。そして、横へ大きく振るって相手へとたたきつける――のではなく、その後ろを狙う。
当然、盾で防御してきたがそれも織り込み済み。相手が盾で受けたのはロープ。鉄球はまだ動いており、伸びたロープが相手をからめとる!
すぐに前へ飛び出し、再びブレードをたたく。今度は二回!
【パインオーレ!】
「でやああああああああ!」
相手に絡みついたパインアイアンからエネルギーの光があふれ、相手を縛る。パインアイアンからは嫌な音が響いており、ショートしているような火花が飛び散っている。いや、ショートしているのだろう……だけど、僕は短いであろう隙をついて、エネルギーを充填した左拳を叩き込む。と、同時にパインアイアンが爆散してしまった。
さすがにこれは効いただろうと、思っているが……どうやら、一筋縄じゃいかないらしい。騎士はまだ無傷。ゆっくりと立ち上がってきて、まるでこちらを睨みつけているようだ。
そこで、ロックシードが変な瞬きを始めた……そういえば、ロックシード自体にもエネルギー量はあって、限界を超えるとエネルギー切れになって一時的に使えなくなってしまうらしい。特に消耗の激しいスイカロックシードが使用不可になったのは見たけど、まさかここでパインが使えなくなるとは……
仕方がなく、すぐにロックシードを取り換える……メロンじゃ相性が悪かったし、ここはこいつでどうだ!
【マンゴーアームズ! ファイトオブハンマー!】
空に浮かぶのはマンゴー。すぐに展開され、背中にはマントが広がり、肩のアーマーは切れ込みが入ったマンゴー型。そして、先端がマンゴーのデザインのメイス、マンゴパニッシャーを武器とするマンゴーアームズへとチェンジを完了した。
すぐに騎士は切りかかってくるが、僕はメイスを下から上へと叩き上げる。さすがに足元からの攻撃には対処しきれなかったのか、騎士は少しよろめきながら後ろへと下がっていく。その隙を狙って、腰を落として力を入れ……頭めがけて振り下ろす。
盾で受け止められるが、それでもかまわず力を込める。騎士の足元が陥没し、土煙が上がる。変なくぐもった声が聞こえて、少し力が弱まった。その時、一気にブレードを三回たたいた。
【マンゴースパーキング!】
「どおりゃああああああ!!」
右足を軸に、体を回転させてなんどもマンゴパニッシャーをたたきつける。最初はガードしていたが、徐々に力を増す攻撃にだんだんと騎士は押され始めた。そして、力が増すと同時に先端のマンゴー部分も巨大化し始める。これでもかと、力を込めていく。そして、最後に思いっきり上からたたきつける。
『――ッ!?』
「ぜぇ、ぜぇ……これでもまだ平気なのかよ」
吹き飛んで、地面へと横たわった騎士だが……すぐに立ち上がってきた。一撃の威力は高いし、効果はあったけど……ダメだ、このアームズじゃ僕の体力のほうが先に尽きてしまう。
と、そこで一気に騎士は肉薄してきた。息が荒くなって、反応が鈍くなっていた僕はすぐに騎士の剣に浮かされ、そこで――
【ゴールデンスカッシュ】
――絶望を、味わった。
振り下ろされる炎に包まれた剣。縦に切られたかと思ったら、すぐさま横へ、ななめ、縦、横、上、下、二回同時、もっと? 幾重にも別れた斬撃は僕の体を切り刻んでいく。
そして、体はまるで炎そのものとなったかのように燃え上がる。
「あ、がああああああああああああああああああああああ!?」
一瞬、意識が飛んだかと思ったら遠くの木までたたきつけられていた。僕が飛んできたであろう場所には炎で焼かれた道が作られている。予想していなかったわけではないけど、やっぱり戦極ドライバーと同じなのか……だけどあっちの方が段違いに上だ。
だけど、そこで終らなかった。どうやらここは崖の上だったらしい。そして、僕が木に叩きつけられたことでかなり強力な衝撃が伝わったらしく、地面が崩れた。
「う、うわああああああああ!?」
そして、僕は初めての敗北をしたのである。
そして、主人公初めての敗北。
何事も最強系ってのはギャグだったり、突き抜けすぎているなどの場合を除いて面白くないものです。たまには負ける場面も入れるのが大事。
でも負けるタイミングというのはなかなか難しいものです。