仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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年内最後の更新です!
色々はっちゃけたけど……ついてきてくれると嬉しいです。


EP151.不知火

 暗い。暗い……ここは…………

 

 ――ッッ、ジジ…………ズ。

 

 何かノイズの様なものが頭に走る。

 視界は暗いままでここがどこだかわからない――やがて、ドスリとどこか遠い所から音が聞こえたかと思ったら、俺の体が何かにぶつかった。

 体を動かそうにも、ものすごく重くて動かない。

 

(声も出せないし……ここはどこなのだろうか?)

 

 なんか色々なことがあった気がする。

 いや、そもそもどんなことがあったっけか……

 

(IS学園に入学したところまでは覚えているんだよな……あれ? その後は?)

 

 なんか色々大変なことがあったような気がするんだ――誰か、青い鎧をまとった人と戦っている光景が見えた。

 黒とオレンジの鎧も見えた。他にも、たくさんの人たちや――誰かの泣き顔が頭をよぎる。

 

(泣かせた? 誰を? ダレガ?)

 

 暗い……暗い、ここは――海の底。

 

(そうだ。箒をかばって、落ちて……それで俺は海の底まで落ちてきちまったんだ)

 

 じゃあ俺は死んだのか? でもそれにしては意識もはっきりしているし……水が体にまとわりついているわけでもない。相変わらず体は動かせないが……考える余裕は出来た。

 

(そうだ。俺、鈴を泣かせたんだ……)

 

 後悔。箒をかばったこと自体は後悔していない。さすがに、何をしているんだって一言言いたいけど、それでもあの時箒を見捨てるなんてことは俺にはできなかった。だって、それをしたらあの時の決意が全部無駄になっちまう。

 

(誰かを守れる強さが欲しかった――誰かを……もう、目をそらせないよな)

 

 その誰か。明確に思い浮かんだのは一人だけだった。

 守るって言っているだけじゃダメだった。力を手に入れても、決意が無ければ意味がなかった。

 その全てに意味をくれたのは彼女だ。だからこそ、俺は彼女を守りたいと思う。

 

(言葉にすれば簡単だったな……そうだよな。うじうじ悩むなんて俺らしくもない! もっと堂々と、もっとがむしゃらに――前に進むんだ!)

 

 不器用な俺だから――アイツが背中についてくる。追い越そうとしてくるのはちょうどいいのかもななんて思う。だって、立ち止まりそうになればお互いに引っ張っていけるんだから!

 

 ――一夏ぁあああ!!

 

 その声と共に――意識は浮上した。

 世界は一変し、海の底から海上――白い砂浜へと飛び立つ。

 

『さぁ、世界を変える準備は出来た?』

「変えるのは世界じゃない――自分だ。いや、もううじうじ悩むのはやめて――本当の自分をさらけ出すんだ!」

『うん。それでこそ一夏だよ――さあこれを』

 

 白い少女が手渡してきたのは――赤いドライバー。あの人たちは……いつの間に仕込んだんだか。

 

「まったく――でも、ありがたく使わせてもらいます」

 

 いくぜ白式――

 

「『変身!』」

 

 ◇◇◇◇◇

 

 一夏が沈み、鈴が取り乱した。箒も茫然自失といった具合で動くこともできなかった。

 セシリアとラウラがそんな二人を引っ張ってきたことで何とか助かったが、もう作戦は続行できない。

 

「……」

「一夏! 一夏聞こえる!? 一夏!」

「プライベートチャンネルでも拾えない……くそっ」

「ああもう、箒さん細かいことは置いておきますが――一体どういうつもりなんですの!?」

「……」

 

 言葉は出ているが、小さすぎる。ただ、違うんだ違うんだと幼い少女の泣き言の様な言葉が漏れ続けているだけだ――いや、それはセシリアにとって見覚えのあるものだ。

 幼い記憶に、思う浮かぶのは……

 

(ちょっとお値段を口にできない花瓶を割った時の私の様な……そう、自己嫌悪と後悔が織り交ざったような感覚。ただ、小さい頃のことですし……流石にこの年齢でここまで――)

 

 何か違和感を感じたが――自分自身、一夏が沈んだことで精神を強く保っていられる自信はない。そのことは後で考える方が良いだろう。

 この場にラウラがいてよかった。こういうときは彼女が一番冷静なのだから。

 

「ラウラさん、この後は……」

「離脱したがいいだろうな。たまたま近くに島があってよかったが――ここに居続けたら奴がすぐに襲ってくるかもしれん。ISでは奴に勝てる見込みがない……もうエネルギーも残っていないからな」

「そう、ですか……一夏さんは」

「絶対防御もあるから、時間さえかかり過ぎなければ助けられるとは思う――ただ、それも長くは続かないだろう。非常用のエネルギーがあったとしても……そうは長くは」

「いえいいです……」

 

 それ以上は聞きたくなかった。体から、力が抜けるようだ。箒もその言葉を聞いて、膝をつき倒れてしまう。

 ラウラも認めたくないのか、唇をかみしめ、手からは血が流れている。

 セシリアも、立っているのがやっとだ。

 

(一夏さん……)

 

 ふと、鈴の様子が気になってみてみると――ずっと呼びかけていた。ずっと。泣きながら、顔は濡れているところの方が少ないんじゃないかと言うありさまで、一心不乱に呼びかけている。

 

「鈴さん、それ以上は……」

「……ISの通信は元々、宇宙空間で通信するためのもの。だったら、つながらない道理はないわ」

「ですが!」

「それに――信じているから。あのバカが絶対にあのまま終わるわけがないって言うことを――――だから、帰ってきなさいよ。あんたがいなきゃここまで頑張った意味なんて無いじゃない――あんたがいたからあたしは今まで頑張ってこれたのよ。辛いことがあっても、逃げ出したいことがあっても、あたしはあんたと一緒にいたいから今まで頑張ってこれた、強くなれた――だから帰って来てよ…………このまま、さよならなんてしないでよ――――――一夏ぁあああ!!」

 

 その言葉を出し続けていく中――鈴の瞳がまるで機械のモニターのような状態になったのがセシリアに見えた。最後の叫びを放つときには、意識が遠のいたように倒れ――ISが発光したようにも思う。

 この現象には覚えがある。そう、これは……

 

「相互意識干渉!?」

「ならば――鈴が干渉を起こしたのは――――まさか」

 

 驚きと共に、海の方――一夏が沈んだ場所のあたりをみれば――――そこから光が立ち上っていた。

 思わず綺麗と思ってしまうその輝きの中から、白い鎧をまとった彼が姿を現しているではないか。

 

「もう、心配ばかりかけさせて……バカ一夏」

 

 彼はこちらを一度だけ見て微笑むと――すぐに空へと飛び上がってゆく。その鎧は、さらに姿を変えてより荒々しく、攻撃的になっている。

 シルエットでは大きな変化こそないものの、スラスターの噴射に新たな特徴が現れた。

 

「リング状の、エネルギー放射?」

「まさか――三次移行を果たしたというのか!? まだISを動かしてから半年ぐらいしかたっていないのだぞ!? いくらなんでも速すぎるぞ!?」

「それでも出来たものは出来たんだし、アレが一夏なのよ。さあ、やっちゃいなさい!」

 

 鈴の叫びが聞こえたのかどうかは誰にもわからないが――新たな白式。白式・雪羅・不知火は基本の性能こそ大きくは変わっておらず、動きもそのままだ。

 しかし、その特徴は――

 

「ハアアアア!」

『GAAAA?!』

 

 ――エネルギーの形を自在に変えられること。甲龍とブルーティアーズのデータから学習したエネルギー操作により雪片のエネルギー刀をさらに鋭く薄く圧縮することで、ISの攻撃では効果の薄いはずのインベスにダメージを与えたのだ。

 

「おまけだ!」

『――――ッ!?』

 

 そして、内部に零落白夜のエネルギーを流し込むことでインベスの内側を破壊する。いや、このマンティコアインベスの特徴は……中にISコアを三つも呑みこんでいること。そのせいで、コイツに強力な防御フィールドが展開されていることなのだ。このままでは、たとえ変身したとしても倒せななかった。

 それどころか、ISだけではそもそも勝ち目がなかっただろう。

 

「これでコアは一時的にでも機能停止――それじゃあ、いくぜ――――俺の新しい、変身だ!」

 

 腰に装着した――ゲネシスドライバー。そこにはめ込まれていたのは、メロンのロックシード。ただ、今までの者とは形状が異なっている。

 その名は……

 

【メロンエナジーアームズ!】

 

 白いスーツに、黒色の部分が入り今までの物とは形状が変化した。

 空から降ってくる鎧に合わせてISが変形し――空中に浮くバイクのような形状に変わった。展開装甲をさらに発展させ、鈴の呼びかけとともに送られてきた可変装甲のデータがこの変形を可能としたのだ。

 そして一夏の変身も完了する。今までの防御の姿ではなく、攻撃に全力を注いだ姿――斬月・真。

 

「行くぜ――止められるもんなら止めてみな!」

『GUGAAAAA!!』

 

 お互いが交差し――一瞬のつばぜり合いを制したのは一夏だ。エナジーロックシードの力を十二分に引き出し、インベスの腹部を切り裂いて見せた。

 

『AAAA!!』

「お次は――これなんてどうだよ!」

 

 手に持ったのは、無双セイバー……ではなく、雪片弐型。内部にゲネシスドライバーを組み込まれていたことにより、そのデータを学習し、変身した状態でも展開を可能としたのだ。

 さらに、エネルギーラインを構築したことで――

 

【メロンエナジースカッシュ!】

 

 ――ロックシードのエネルギーを使用できる。

 

「喰らええええええ!!」

『――――ッ!?』

 

 インベスが、その一瞬でとった行動は防御。そしてそれは正しかった。かわそうとしようものなら、無防備な部分を斬られていただろう。

 なぜならば、白式がカタパルトのように一夏を射出したからだ。

 そのためインベスですらかわせない速度で一夏は斬りかかってきたのである。しかし、それも防御できれば意味がない。たしかに、零落白夜の力でインベスの力は大分削がれた――素体の影響なのか、それともISコアを取り込んだことで自我にも似た何かを獲得したのか。このインベスは人質を取るという方法を思いついて見せた。

 幸いにも、もう戦う力のない少女たちが近くにいる――そこに行けば、形勢を逆転できると。一夏も海に二Þ尾堕ちただろう。また海面に上がってくるには――

 

『――GA?』

 

 ――ふと、ありえないものを見た。いや、見ることができなかったという方が正しい。

 白式がなくなっていたのだ。先ほどまであった場所に――確かに、そこにあったのに!

 

「探し物はこいつかよ」

『――――!?』

 

 そこにいたのは、ライダーとして変身しているのにもかかわらず――さらにその上からISを纏った一夏だった。インベスの知ることでないが、本来ならばドライバーとISの併用はできない。

 ヘルヘイムの力とISを同時に使用する方法が無いわけではないが……しかし一夏はそれをやって見せた。いや、方法だけならすでに確立しているのである。

 ゲネシスドライバーに対応する人物のデータを入力したうえで、IS側にもそのデータを入力しリンクさせることで同時使用が可能となる。ただ、様々な適性や体が耐えられるような強度がないと無理なため、今まで成功させたのは篠ノ之束ただ一人。しかも同時使用によることで絶対防御の効果範囲があいまいとなるためこの状態では絶対防御は機能しなくなってしまう諸刃の剣。身を守るという意味ではIS単体の方が上であるのだ。

 しかし、それを差し引いてでも高い機動力と攻撃力を併せ持つのがこの姿。

 

「それじゃあ――これで、フィニッシュだ!」

 

 ハンドルを二度動かす。右足にオレンジと青の二色の光が灯り、一気に加速した。

 インベスに襲ってきたのは――死への恐怖。逃げようと、体内のISコアの力を引き出してでも逃げようともがくが――もう遅い。この距離ならば、一夏は一瞬で詰めてくる。

 

「ISコアも返してもらうぜ――あばよ」

 

 繊月加速。一瞬で相手の背後に回り込む一夏の編み出した加速技。

 同時に、放たれた蹴りの軌跡は――まるで三日月のようだった。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 終わってみると、案外あっけなく終わるものだ。

 コアをしっかり三つ回収して、地面に降り立つ――変身を解除するとどっと疲れが出てきてしまった。

 どうやら、かなりの無茶をしたらしい……なんか体がバキバキいっているし…………どうも、同時使用はかなり体に負担をかけるみたいだ。なんか今にも倒れそう――うお!?

 

「一夏ぁああ!」

「おわっ!? 鈴!?」

 

 鈴に押し倒されて、砂浜に転がる。痛い! 体がメッチャ痛い!!

 

「ちょ、鈴! 痛いから許して! なんか体がメキメキいってる!!」

「一夏、一夏……バカ、心配したんだから。ダメなんじゃないかって、もう戻ってこないんじゃないかって心配したんだから……この大馬鹿!」

「あーその……ごめん」

「ごめんで済んだら警察はいらないわよ!」

「じゃあどうすればいいんだよ……」

「…………駅前のパフェ、奢りなさい」

「わかったよ……」

「あと……おかえり」

「……ただいま」

 

 泣かせたのは正直、俺が全面的に悪いとは思ってしまうが、体が痛いって言っているだろとか、この場で言うことなのだろうかとか色々言いたいことは山ほどあるわけで――彼女の下に帰ってこられただけで色々とどうでもよくなってしまったのは……惚れた弱みという奴だろうか。

 




年内には斬月・真も出したかったし、一夏が自覚するシーンも書きたかったんや!

ちなみに、分かり難かったでしょうが最初のシーンは実際の海底ではなく精神世界みたいなもの。


あと1~3話ぐらいで3巻は終わり、いよいよ4巻に入ります。
最初に言っておきます。4巻は他の巻と違って大きな山場とかもないのでそこまで長くやりません。

それではみなさん、また新年に会いましょう。
さて、今年のガキ使も楽しみだぜ…………
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