仮面ライダー冠 インフィニット・ライジング   作:アドゥラ

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このシーンは初期構想から考えていたことだったり。
この話があるからこそアンチヘイトタグをつけようと思ったのです。


あ、遅れましたがあけましておめでとうございます。


EP152.姉として

 結局、怪我自体は無かったものの俺たちは何も会話することなく旅館の方まで戻っていくことになった。わかっていたことだが、何というか空気が重い。

 

(こういう時こそウィットにとんだジョークで笑いを…………ダメだ。余計に重くなりそうな気がする)

 

 なら小話でとも思ったが……無理だな。俺は小話をしたことがない。

 どうするか悩んでいると、もう海岸が見えて……うん、時間切れ。

 

「あー、とりあえず報告しないとな」

「そうだな。しかし嫁よ、お前は寝ていた方が良いのではないか?」

「だから嫁じゃないって……いや、なんか疲れているだけで体は別に平気なんだよ」

「――ちょっとまってよ。あんたたしか、切り裂かれて……」

 

 鈴の言う通り、箒をかばったときに俺は洒落にならない怪我をしたかとも思ったんだが……インベス相手だし、絶対防御の効きも悪くなるはずだし。

 それなのに俺の体には傷一つない。

 

「うーん……束さんなら何か知ってるかも」

「でしょうけど、教えてくれるかしら?」

 

 …………たぶんはぐらかされるな。なんか俺がIS動かせる理由にも関わっていそうだし。

 

「…………で、箒はさっきから黙ったままだけど言うことはないのかしら?」

「おい、鈴」

「一夏……あんたのことだから気にもしていないんでしょうけど――だからこそ、あたしは許せないのよ」

「………………私は」

 

 何か言おうとした箒の胸ぐらを――鈴が掴み上げる前に止める。

 

「なんで止めるのよ!」

「ちょっと落ち着け! とりあえず話は戻ってからで――」

「生ぬるい! 今言わなきゃ絶対にわからないわよ!」

「わたくしとしても同じ意見ですが、一夏さんの言う通り先に報告を済ませるべきでしょう」

「私も同意見だが――また同じ暴走をしないとも限らない。先に言っておくべきでは?」

 

 いや、それを本人の前で話し合うのもどうかと言う話なのだが……

 箒は唇をかみしめて、何かに耐えるかのような表情をしていた。その胸中は分からないが――正直な話、俺も反省はした方が良いとは思っている。

 

(だけど、俺たちよりも言うよりもふさわしい人がいるんだ)

 

 だからこそまずは戻った方が良いと思ったんだが……

 少し鈴に耳打ちしてそのことを伝える。すると――彼女も俺の考えをわかってくれたのか、この場は引いてくれそうだ。

 

「わかったわよ……でも、本当に大丈夫なの?」

「……こういうのは、相応しい人が言った方がいいんだよ。箒のためにもな」

「本当、甘いんだから……将来後悔するかもよ」

「それでも――誰かを許す心をなくしたらダメだろ」

「――――ハァ……それもそうね」

 

 鈴も納得してくれて良かった……ただ、少し呆れ気味なのが個人的に引っかかるが。

 セシリアもラウラも納得してくれて――すぐに旅館に戻ることとなった。騒がしいけど、みんな元気そうで良かった。他の生徒たちも、俺たちを見るとすぐに駆け寄ってきたのだが、千冬姉が自室に戻れと怒号を上げているよ……元気だなぁ。

 

「一夏、心配したんだぞ……」

「えっと、ごめん」

「まあいい――それよりも篠ノ之」

「――ッ」

「私の方からは何も言わない。正直なところ、個人的には色々言いたいが――私も昔はやんちゃした身だしな」

 

 まあ、束さんと二人でテロまがいのことをしましたからね。

 その後は視覚テロを――余計なことを考えたからか、鈴に足を踏まれた。え、余計なことを考えるなって? なんでお前は俺の考えていることを読めるんだ……顔に出やすいのか?

 

「そこの二人。後で折檻するぞ」

「なんで!?」

「流石に横暴だと思います……」

「……一夏は無自覚なおはいいとして、鈴、お前は自覚してやっているだろ」

「まあそうですね……宣言はしましたよ」

「……ハァ。まあいい。篠ノ之はしばらくここで待機していろ。山田君、篠ノ之に着替えを持ってきてやってくれ」

「は、はい!」

「他のものは自室に戻って待機。各々のISにメッセージを送るから、後で来てくれ」

「わかりました」

「あーシャワー浴びたい……」

「女子連中は温泉にでも行ってこい。ISならそのまま持っていけるだろ。一夏は自室の風呂にでも入ってくれ」

「まあいいけど……俺も汗流したかったし」

 

 箒は……野暮なことを聞くのはやめておこう。千冬姉なりに、反省を促すためにあえて箒は残れと言っているのだ。俺が何か言っても箒には酷だよな……

 とりあえず、汗を流して――そうだ、一応アレ持ってきておこう。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 一方そのころ。医務室にはシャルロットと簪が寝ていた。

 アンバーとの戦闘では外傷はなかったものの、二人ともまだ意識は戻っていない――いや、シャルロットは意識は戻ったものの、起き上がる力が湧かない。

 

(嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ…………そんなの――)

 

 アンバーとの戦いで聞かされたこと。それを必死に否定するシャルロット――しかし、心では否定していても聡明な彼女の頭は事実だと認めてしまっている。

 

『貴女の両親――いえ、貴女の母親が本当に泥棒猫だったって可能性は考えなかったの?』

 

 考えてみればおかしいところはいくつでもあった。

 

『母親が死んだとしても、薄情な父親なら貴女を引き取ったりしないで抹殺でもするわよぉ』

 

 男装をやめてもいまだに振り込まれる生活費や、特記事項があるとはいえ特に自分に何かが起こる様子もない。

 

『デュノア社長にはそれだけの力があるのにねぇ……もしかして、自分は悲劇のヒロインだとでも思っていたの? 笑わせるわぁ……不倫の経緯は知らないけどぉ、貴女の母親が何も悪くはないなんてありえないことだとは思わない?』

 

 やめて――それ以上言わないでくれ。これ以上、私を苦しめないで……

 

『デュノア夫人は愛した男性との間に子供が生まれずに、夫と愛人との間に子供が生まれていてさぞや悲しんだことでしょうねぇ……知ってる? 貴女の継母、本当にあなたの父親を愛しているのよぉ…………なのに、自分には子供ができなかった。ふふふ、泥棒猫の娘。言いえて妙だとは思わないかしらぁ』

 

 本来なら表に出せないような立場の自分。

 なのに、会社がつぶれる可能性さえあるのに私を代表候補生にしてくれたのはなぜだ?

 ――デュノア社という守りがなくなっても生きていけるようにしてくれるためなのでは?

 

「ああ…………あああああああ」

『社長が貴女に直接話すのは難しいでしょうねぇ……だからこそこんな遠回りな――うふふ、尊敬しちゃうわぁ』

「ああああああああああああああああああああ」

『ああかわいそうなシャルロットちゃん。大切な母親は死んで、引き取られた先ではいじめでも受けていた? 本当に受けていたの?』

 

 テストパイロットとして忙しかった――しかし、私をいじめた人などいただろうか?

 不幸な人生だっただろうか? お金はある。今はこうしてある程度の自由がある。

 友達だってできた――じゃあ、私の不幸な部分って?

 

『あなたはただ――失ったモノを認められない子供なのよ。そんなこともわからないの? 自分が不幸というのが自分を表す根幹だとでも思っているんでしょうけど――そんなこと、世界にはありふれているのよ。貴女の周りの人だって、それを乗り越えているのにねぇ……ねえ、そんなにお母さんが死んだことが認められないのかしら?』

「――――――あ」

 

 体に力は入らなかった。

 気が付いてしまえば簡単なことで――心にぽっかりと何かが空いたような気がした。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 シャワーを浴びて――千冬姉から連絡があったから戻って来てみれば……ものすごく重い空気だった。とりあえず、近くにいた鈴に話を聞いてみるけど……たぶん予想通りだよな。

 

(なあ鈴、たぶん俺の考えている通りだと思うけど――この重い空気は?)

(…………箒の目の前で事務作業。被害報告とか、色々)

(うわぁ……)

(流石に同情しちゃったわよ――ちなみに、ラウラは顔色一つ変えていないわ)

(流石だな)

(軍人だしねぇ……命令違反した形になるんだから、これ以上の罰があってもと思っているんでしょう――まあ、山田先生に聞いたんだけど、教師たちも箒が飛んでいくのに気が付かけなかったからそこまで強くは言えないって)

 

 なるほど。だから千冬姉がおとなしいのか……と、そこでセシリアがやってきてこの空気にひきつる。

 うん、やっぱわかるよな……

 

「この重苦しい空気は……」

「やっぱ重いよな」

「一夏とも話していたんだけど、なんていうか重すぎるわよね」

「む? 何を言っているのだ二人とも」

「いや、だから一夏とも話したけど――」

 

 鈴が言い切る前に、俺たちが待っていた人がやってきた――その顔つきは箒に似ているが全体の印象は異なる。箒から鋭さを抜いてどこかほわほわした感じを追加した人。しかし、それも今回ばかりは無い。箒よりも鋭い、いや鋭いと言うよりは重い。

 俺たちでは理解できないような重みをもったその顔は――始めて見る。

 

「束さん……本気でキレてる」

「でしょうね……」

「なるほど、こういうわけですか」

 

 そう。バカやった家族を叱る。当たり前のことだ。

 今日この場においては束さんしか箒に対して本気で如かれる人はいない。この役目は束さんじゃなければだめなのである。

 

「……まず、自力で紅椿のプロテクトやリミッターを解除したのは誉めてあげるよ――――でもね、自分が何をしたのかわかっているの?」

「…………ですが、私だって一夏の力に――」

 

 ――パンッ! そんな音と共に、箒の顔がはじかれた。そこには振り抜かれた束さんの手もあって、箒が何をされたのかは一目瞭然だ。

 

「ふざけないでよ!」

「――ッ」

「貴女のやったことは、いっくんだけじゃない――ここにいた皆を危険にさらしたってことなんだよ! 他の誰かが死んでもおかしくなかった。いっくんだって、白式の機能があったから助かっただけ。怪我人が出なかったのは奇跡って言ってもいい――本当に分からないの!?」

「あ、ああ……」

「インベスの怖さを本当に分かっていない……アレは貴女が考えるような甘いものじゃない――本当に人が死ぬんだ…………人が死ぬってね、本当にあっさりとしているんだよ――何かが劇的に変わるわけじゃない。静かに、生きているって感覚がなくなるんだ」

 

 それは――実感を持った言葉だった。

 ――千冬姉がいつだったか、暗い時期があった。詳しい話は知らないが、クラスメイトの一人が死んだというのを知ったのはしばらくしてからだった。

 

「……で、ですがなぜ一夏はあんなものを――」

「いっくんは遅かれ早かれ、巻き込まれていたよ――ううん。ちーちゃんは何も言わなかっただろうけど、本当に個人的な何かがある。そこにインベスも絡んでいたから……それに、使うかはどうかは自分が決めることだよ」

「…………私にはわかりません」

「だろうね――でも、なんで今回は勝手に出ていったの?」

「それは…………」

「あえて言うよ――あの場において、貴女の出番はなかった。だからこそ、出てくるなって言われたのにそれもわからないんだね」

「――――ッ」

「自衛のためでもあるから、ISは没収しない。でも使用には制限をかけさせてもらうよ。訓練の時も、ちーちゃんの随伴か、ちーちゃんが認めた人と一緒じゃなきゃだめ――改めてリミッターもかけるよ」

「そ、それでは……私は」

「いい加減にしてよ――貰い物の力で強くなったなんて思わないで。使いこなせなければ、それはただ力に振り回されているだけ。そんなことも忘れたの?」

「――――――すいません」

「もう一度だけ言っておくよ――貴女がしたことは、他の生徒たちの命を奪いかねなかったことだから……」

「……」

「それじゃ、あとはよろしくねちーちゃん」

「ああ……だが、いいのか?」

「…………本当はもっと言いたいことはあるよ。でも束さんだって色々とやんちゃはしたからね――もっとも、確実に誰も死なないように、怪我する人が出ないように色々と気を使っていたけど」

「そうだがな……あまり誇らしげに言うことではないぞ」

「――――それでも、覚悟をもってやったことだよ。紅椿の調整もあるし戻るね――あ、みんなのISもメンテしておくから貸して。インベスと戦って不具合が出ている可能性もあるし」

 

 それだけ言うと――束さんは部屋から出ていった。ISも全部受け取って――待機形態のままだけど……束さんだし、なんとかするんだろうな。

 さてと……箒にはまだ考える時間がいるかな? でも、今日を逃すといけないし……

 

「箒」

「…………」

「とりあえず、このバカ」

 

 一発だけ、デコピンをしておく。かなり強めでやったから、涙目になっているが箒は何も言わずにたったままだった。とりあえずこれを渡しておくか。

 

「――――これは」

「今日は誕生日だろ。色々と、やっちゃいけないことはしたんだと俺は思っているし――正直、俺も怒っている」

「…………それは」

「でも、だからって箒の16歳の誕生日は今日しかないんだ」

 

 箒はただ一言――スマンとだけ言って部屋から出ていった。

 ……俺にできるのはこれだけ。後は自分で何とかしなくちゃいけない。

 




GE2、レイジバーストのOPが公開されていましたね。
いやぁカッコいい。というか、神威ヒロが出ていたよオイ。神薙ユウは出れていないのになぁ……そっちはアニメ版ということなのだろうか。

書いてみて思ったのは、束さんが箒を叱るっていう構図がなかなかないよなぁと。
とりあえず、新年も頑張っていきます。
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