これにてIS3巻は終了。
さざ波が聞こえる――結局、僕はサンショウアームズの毒のせいでしばらく体がしびれて動けなかったんだけど、ようやく動けるようになった……体が動かせないのって辛い。
誰も気が付かなかったみたいだけど、あの場にいなかったから真耶ちゃんに詳しい話を聞いたが……束が箒ちゃんに怒るってのも昔じゃ考えられなかったとこだ。花村さんのことはまだ根強いかな。いや、それだけじゃなくて百花さんやジョニーたちみんなとの交流もあったからこそと思う。多くの出会いが彼女の内面を育てたのだ。
「だからこそ、こうやって落ち込むこともまた成長だと思うよ」
「……うるさい」
波の音を聞きながら、海を眺めて二人座る。
今日はあんな戦闘があったなんて信じられないほど静かだな……
「やっぱりさ、家族を叱るのって辛い?」
「……うん、これは予想以上だよ――でも必要なことだから……箒ちゃんにちゃんと伝わっていればいいんだけど」
「それは信じるしかないよ。あとは箒ちゃんが自分で行動しなきゃ何も変わりはしない」
「そうだけど、もどかしいよ」
「人が変わるには自分から変わるしかない。それは――」
「分かってる。束さんにそれを教えてくれたのは、英でしょ」
「――そっか」
「何笑ってんだよ」
「いや、僕もちゃんと束の中にいたんだなって……」
「当たり前でしょ――まったく、今更だよ」
そうだな……色々と不安なことが多くて、ちょっと弱音を吐いちゃっただけだよ。
家族を叱るのは辛いか――この先に待ち受けることを考えると、辛いとは思うが……
「僕が、やるしかないんだよな」
そろそろ決着をつけに行かないとな……
ま、その前に説明するべきことを説明しないと。後ろから足音を消して近づいてくるアイツに。
「で、千冬は足音を消して何をしているんだ――――あ」
「ちーちゃん…………何をしているんだよ」
「なんだ? なんでそんなに驚いているんだ?」
そりゃ驚くよ――だってな。なんで魔法少女の衣装なんだよ!?
しかも黒のワンピースに赤いリボンって…………また懐かしいものを……
「おとなしめの衣装にしてみたのだが、どうだ?」
「どうだじゃねぇよ!」
「しかもその箒って……雪片だよね…………そんなんだから暮桜が石化して起動しなくなるんだよ」
「なんだと!? 暮桜はそんな理由で石化したりしない! むしろノリノリで変身エフェクトなどを作ってくれたんだぞ!」
「やべ、悪乗りし過ぎて色々いらないことを教えたかも」
「英……いや、束さんもテレビとか見れるような機能を追加したような……」
「ほら見ろ!」
「じゃあなんで石化したんだよ!」
「…………いや、ちょっと漢女を名乗る連中とやりあったときにな」
「「何があった!?」」
詳しくは聞きたくないけど! なんだか聞いたら後悔しそうだし!
とりあえずその話はわきに置いておいて――本題に入ろう。
「それで、僕たちに何か聞きたいことでもあるんじゃないか?」
「…………一夏がドライバーを持っていたことについてはとやかく言うまい。お前たちの言う通り、織斑家に関しての因縁もあるし、すでに一夏は関わっているだろうからな」
「ま、話に聞いた限りだと一夏個人を狙っていた奴もいたみたいだし」
「いっくんの場合、それで周りが巻き込まれて自分だけ助かったりする方が嫌だとは思うけどねー」
「束の言う通りだな――しかし、あのドライバーは束の使っているものと同型だろう……体への負担はどうなのだ?」
「あー、結構大きい。何の訓練もなしに使うのは厳しいんだが――そこはISがあるからな」
「なに?」
「白式の方からいっくんのパーソナルデータをゲネシスライバーの方に入力しているんだよ。そのおかげで負担は最小限に抑えられている。あと、戦極ドライバーを使い続けていたおかげでヘルヘイムの力に対する耐性が備わっていたからかな」
「……それは体に悪影響はないのか?」
「大丈夫。むしろ体が頑丈になったりするだけで、後遺症とか副作用があったりするわけじゃない。忍者の修行法に少量の毒を少しずつ増やして長年服用するって言うのがあるらしいんだが、それと似たようなものだ。人体に悪影響はないとはいえ、ロックシードのエネルギーを体に取り込んでいるからな。それを数年も続ければ――」
「耐性が出来上がるというわけか」
「私と英も、元々の血筋があるとはいえかなりの耐性ができちゃっているからね。さすがにヘルヘイム植物を食べたりしたらインベスになっちゃうだろうけど、果実を見ただけじゃ食欲に支配されることはないよ」
「……まあ、一夏が大丈夫ならそれはいい。しかし、私ではダメなのか?」
「ダメだね。ハッキリ言うけど、千冬でも耐え切れない。戦極ドライバーじゃ千冬のスペックじゃ逆についてこれないし……千冬はドライバーを使うのに向いていないんだよ」
「そこまですさまじいのか!?」
「相性の問題もあるからね。ちーちゃんは相性最悪の部類だったから……一からちーちゃん専用に設計すればいけると思うけど……時間かかるよ?」
「……そうか、なら仕方がないか…………最近な、一夏がどんどん先に行って寂しい気持ちになるんだ」
「うれしくはないのか?」
「そうだな。昔は、そうなってくれたらうれしいと思っていたんだ。だけど、私には待っていることしかできなくなって、寂しいという気持ちが勝ってきた。自分を追い越してこそだと思っていたのに……」
「そういうもんだとは思うけど――一夏が帰ってくる場所を千冬が守っているから戦えるんだと僕は思うよ」
「…………そうだといいな」
「そうだよ絶対」
「そうか――それでは、最後に一つだけ――――一夏以外も巻き込もうとしているだろお前ら」
「「…………選択肢は自分で選ぶんだよ」」
「だとしてもお前ら何を考えているんだ!」
「いや、本当にあと数か月で全部の決着つくと思うんだよ!」
「マルスの復活スピードとか、アイツの目的を計算したらそろそろ最終段階に移行するからこっちも準備を整えなくちゃだし……」
「とりあえず、今日は朝まで語ろう。この拳でなぁ!」
「いややめて!?」
「まってちーちゃん洒落にならない!」
「魔法少女なめるなぁああああ!!」
「「もうそんな年じゃないだろ!」」
◇◇◇◇◇
あの人たちは何をやっているんだろうか?
ちょっと、人目につかない場所で鈴と話がしたくて夜の海辺に来ていたのだが……あの三人はなんで殴り合いをしているんだ? なんかシリアスな話をしていたと思ったんだが……
目を丸くしていたら、千冬姉が二人を取り押さえて旅館へ連れ去っていった……たぶん、酒を飲ませるつもりなんだろう。とりあえず合掌。それと、山田先生もおそらく巻き込まれるな。止めようとして逆に。
「――無常なり」
「いきなり何を口走っているのよあんたは」
「おうふ!?」
「え、なに!? どうしたの!?」
いや、いきなり声をかけられてびっくりしただけだから。
改めて見るが、鈴は浴衣に着替えていて――それが月の光で照らされて……その…………うん。胸がないと浴衣が似合うって言うのは本当のこと――――ぶほ!?
「は、腹パンはやめてくれ……」
「胸の話はするな。オーケー?」
「オーケー……」
ちょっとだけ落ち着くのを待ってから、鈴になんて言葉をかけようか悩む。
あの時の言葉身に染みたぜ! いや、それは違うだろ。確かにそれも事実だが今言いたいことではない。
ストレートに大好きだ――――無理だ。恥ずかしくて死ぬ。
他に何かいい言葉は無いか考えるものの……思い浮かばない。
そうだ! 例の約束の返事を……鈴の方が待っていてくれって言っているんだった…………
「ど、どうすればいい!?」
「ちょ、一夏!? なに頭を海水に浸けようとしているのよ!? むしろそれじゃ突けようとしているじゃない!」
「放せ! 頭を冷やさないといい考えが浮かばないんだ!」
「だとしても――まずは落ち着け!!」
パシンッといい音が俺の頭に響く――ああ、久々のハリセン。束さん謹製はやっぱり効くぜ。
っていうか鈴も持ってきているとは容姿周到な奴……
「ありがとう。落ち着いた」
「まったく……それで、話って?」
「あーそれはだな……」
なんだ? 何かないか? なにか上手い言葉は……
結局のところ――俺は鈴のことを好きになっていたのだ。そのことは間違いないと言い切れる。
あの俺の背中を押してもらったときのこと。あのクリスマスイブのときのこと。その後も、IS学園まで俺の隣にいるために来てくれたこと……本当に、色々な出来事が俺の中で大きくなっていた。
気がついたら――鈴のことを好きになっていたんだ。
だからこそ想いを伝えたいが……
(今伝えても、鈴には悪いような気がする……)
改めて考えれば、鈴の想いを知ったのは偶然だ。
俺が気が付くべきところで気が付かなかった。そんな俺に鈴を好きになる資格があるのかなんて――そんな馬鹿なことを考えてしまう。
(それでも――もうこの気持ちに嘘はつけない)
だったらせめて――遠回しにでも伝えよう。
「鈴……」
「な、なによ…………」
「その……月が綺麗だな」
「…………」
「…………」
決まったか? 渾身の告白は!
「……あんた、そんなことを言うためだけに呼び出したんかい!」
「おうふ!?」
「まったく――一夏ったら……」
やべぇ、失敗したのか……いや、今はまだ伝えない方が良い。
鈴の心の準備をまとう…………正直、俺の方もまだ心の準備ができていなかった。いろいろあったテンションで言っちまったけど、むしろ勢いに任せていただけで改めて考えると恥ずかしい!
そんな火照った顔を少し冷ましてから旅館に戻ろう……今は鈴の顔を見ることができない。
◇◇◇◇◇
一夏が顔を冷やしているころ、鈴は足早に旅館に戻ってきていた――その顔を赤くして。
「うきゃぁあああああああ!!」
「ちょ、鈴!? どうしたのよ!?」
「一夏が一夏で一夏なのよ! うふ、うふふふふふふ」
「ダメだ完全に壊れている……」
ティナに心配されるほどに壊れている鈴だったが、その頭の中には一夏のことでいっぱいだった。
彼女は一夏の遠回しな告白に気が付いていない――わけもない。
元々、毎日俺の味噌汁を作ってくれという言葉を自分なりにアレンジして使っていた彼女だ。当然、一夏が使った告白の言葉も知っている。
それでもとぼけたのは恥ずかしかったのと――自分だって悩んでいたんだから、一夏も悩みなさいという意趣返しだった。
「もう明日からどんな顔して会えばいいのかわからないじゃない!」
「その割には嬉しそうな顔しているけど……これ新聞部にもっていったら――いや、この顔はしばらくの間独占しておこう。うん」
「もう一夏ッたらもう……うふうふ」
「しかし、この桃色のオーラは……やべぇ、鈴じゃなかったら殴ってるわ私。とりあえず、寝るから静かにしてね…………そもそも織斑君のハートを射止めるトトカルチョは鈴の倍率低いからなぁ……まあ儲けがあるだけマシと思いますか。大穴リコリンに賭けた人の気がしれないよ」
「一夏ぁ」
「凄い。聞こえていない……とりあえず、あったかくして寝ようねー。夏だからって、油断すると風邪ひくわよー」
ティナが世話してくれているおかげで、とりあえず風邪をひきそうにはなかった鈴である。
後で詳しい話を聞いてティナは、そもそも、はぐらかして誰かにかっさらわれたりする心配はないのかとも思わなくはないんだけどと思ったが――
――今更、一夏もあたしも心変わりしないわよ。そのぐらいは分かるわ――
――と言われて、ちょっとイラついたのは余談である。そこまで信頼しているならもっとぐいぐい行けと言いたかったティナであった。
そんな夜も更けて、朝がやってきた。
いろいろあってみんなが疲れた表情になっていたが――もうIS学園に帰らねばならない。
「いろいろあったけど、みんな無事でよかったよね!」
「うん。まだ元気ない人はいるけど……それでも、こうしていられるんだからいいよ」
少女たちは、大変な出来事も素直に呑み込んで次に進む。
そんな彼女たちをみて、英も微笑んだ。千冬はちゃんと先生できているんだな――と。
「束、テロ騒ぎの時千冬のクラスから学校やめた生徒は、一年の中では一番少ないんだってよ」
「そりゃちーちゃんだもん。当然でしょ」
「そうだな――なんだかんだで、教師をしているときの千冬って生き生きしているよ……さて、そろそろ帰るか」
「だね。それじゃあ、私たちも準備を進めなくちゃ――そろそろ、量産型戦極ドライバーの製造工場が完成するみたいだよ」
「それは重畳。弾君から預かったドライバーのデータが役に立ってよかった……」
二人は再び自分たちのすべきことに戻る。今はまだ裏方に徹するべき。今回のことで、一夏なのか箒なのか、それとも他の誰かなのか――それは分からないが、IS学園が亡国機業に狙われていることは分かった。
だからこそ、弟分や親友を信頼して今は裏に回る。この先もみんなで笑い合うために。
「あれ?」
「どうかされましたか? 一夏さん」
「いや、英さんたちがいたような……気のせいかな?」
一夏が見上げると――空には光る星が空へと登っていくような光が見えた……
「そっか、もう帰ったのか――とりあえず、また頑張りますか!」
「なんだか気合十分という感じですわね」
「ああ。色々と悩むこともあるし、考えることも多かったけど――それでも、自分の心に嘘はつきたくないよな」
「……そう、ですわね」
その言葉は、他の少女たちも聞いていた。
素直に聴く者。心に痛みを覚える者。共感した者。様々だ。
されど、この場では何も変わらない。この先、何かが起こるかもしれないが――今はただ、帰るべき場所に帰るだけである。
「それじゃ、帰ろうぜみんな!」
晴れ着夕立可愛いよ。
親戚の集まりでビールを飲んだり……にげぇ。
飲めなくはないけど、度数が高い酒を嗅ぐだけで頭痛くなるので進んでは飲まないかなぁ……
色々なところに書いていますが、すでに小説を書くのが日課となっている自分。
日に日にタイピング速度が上がるおかげで、履歴書に書けるレベル(笑)
次回から4巻に入ります。
正直な話、原作は途中までしかなぞらないので最終章は1月中に入れる――――といいな。